8 / 51
8.追いかけてくる者
しおりを挟む
何とか馬にしがみつきながら俺たちは村に到着した。皆がわらわらと出迎えに来たが今はそれどころではない。
「悪いやつに追われてる。父ちゃんが足止めしてるけど多分そんなにはもたない。おばばの薬草庫に隠れるから森に誘導よろしく。あと父ちゃんに馬届けてあげて。…マリア~あとで兄ちゃんと遊ぼうな~」
と村長たちに簡単に説明し、久しぶりのマリアと手もつなげずに後ろ髪ひかれる思いでおばばの薬草庫を目指す。
薬草庫は村の端、建国の森のすぐそばにある。そこへ2人で逃げ込んだ。
「ふぅー。ここまで来ればもう安心」
薬草くさい倉庫の床に座って休憩していると窓が薄く開き、にゅっと籠を持った手が現れた。
「水とオヤツだよ。友達と食べな」母ちゃんだ。
「気がきくぅー!ありがとう。ルドルフもどうぞ」
「悪いやつ追っ払ったらみんなで美味しい物食べよう。それまで待ってな」
と窓がスッと閉められた。
「あ!大事な事を忘れてた」
「なに?」母ちゃん特製クッキーをむさぼり食いながら俺は答えた。
「仮面…」
「あぁーそういや忘れてた。あれ?でもうちの村の奴ら誰も魅了されてなかったぞ」
「私も驚いた。『普通にリュの友達が来た』って反応だった。どういう事だ?何が…」
「シッ静かに。どうやら追手が来たみたいだぞ」
「この村にルドルフ様がいらしているのはわかってるのよ!早く連れて来なさい!」
村人に怒鳴り散らしているキンキン声が聞こえてきた。怯えてしまっているルドルフを倉庫の奥に隠し、俺は窓からそっと覗いてみた。そこまで美しい顔に執着しているヤツの顔を拝んでやろうという野次馬根性だ。
美しい顔に執着してるならご自身の顔は…って思ってたのに、彼女は意外にも年齢よりずっと若く見える冷たい感じの美人だった。しかし怒りでその顔は歪んでおり、とても綺麗とは言えない。
「うわ取り巻きがあちこち壊して探してる!あーあ馬鹿だなあ」
その声を聞いて奥からルドルフが出てきた
「これ以上皆様にご迷惑はかけられない!」
と外に出ようとするのを必死に止めて
「まあまあここで見てなよ、面白いモノ見られるから。ほら皆も動じてないだろう?」
村長が村人代表でそいつらの前に出てきた。表情はいつも通りでひょうひょうとしている。
「何をお探しか知りませんが、ここははじまりの村ですよ。お分かりでしょう」
「何よ!それが何だっていうのよ!」
呆れ顔をした村長は溜め息をついた。
「国の法律をご存知ない?建国の森を守るこの村では如何なる高位の者であっても暴力、掠奪を許しておりません。違反者は国に対する反逆罪と同罪とするとあります。それをご承知でこの様な乱暴な行為をなさってるのですか?」
キンキン声が止まり、そばにいたお付きの者にこそこそと『本当なの?』『聞いた事があるような気が…かなり古い法律ですが』などとこそこそ話している。
そんな最中うちの母ちゃんが素っ頓狂な声をあげた。
「あ!その坊ちゃん?ルドルフだったっけ?それなら森に入って行ったよ。ついさっきだから追えばまだ間に合うんじゃないかい?行ってみたら?」
どうするか話し合っていた彼女たちはそれを聞いて、渡りに船とばかりに
「全員で行くわよ!急ぎなさい!」
と森に向かった。
その後ろ姿に村長が
「壊した物の代金はお屋敷に請求書を送りますからよろしくお願いします」
声をかけたが無反応だった。
彼女たちの姿が森に消えた後、
「よし行ったと…とりあえず壊れた所を直しましょう!皆手伝って下さい。あとは…リュ!もう大丈夫だぞ。出てきなさい」と村長は声をかけた。
「はーい「ちょっと待て!」
「何だよルドルフ」
「今出たら彼女たちが森から戻った時鉢合わせするだろうが!のんびり『はーい』じゃない!今この隙に逃げないと!」
すっごい慌ててるようだが、やっぱり村の外の人たちはこの森の事知らないんだな。その様子を見ていた村人たちはどっと笑った。そしてそれに驚くルドルフ。
村人のなかから頭1つ分大きな人が出てきた、父ちゃんだ。足止めありがとう。
「あの森の別名は『迷いの森』。大昔住んでいたエルフの魔力が今なお残っているんだ。エルフは邪悪な心を最も嫌う。故に邪悪な心を持った者は一度入ったら出てこられない…」
「え?出てこられないって…死んでしまうんですか?」
ルドルフは心配そうだ。あんな目に合っても心配してやるなんて…お人好しもいいところだ。
「って言い伝えられてるけど、流石にそれはないと思う。1週間であの入り口から帰ってこれた奴もいるし、1ヶ月以上迷った挙げ句全然見知らぬ場所に出た奴もいるらしい。今まで俺が見た中で1番早くて3日で出てこれた奴がいたな。確かーー何やったんだっけ?」
「大物の獲物がないかと森に狩に入った奴らかな。今の人達みたいに物を壊したりしていないしただ狩りがしたかっただけみたいだからやんわり森に帰されたんだろうな」と村長が返した。
「ま、どっちにしろあんだけこの村で大騒ぎしたんだから1週間は出てこれないよ。何なら出口もここではない別の場所だろうな!はっはっは」
大人たちの話を聞いて何とか落ち着きを取り戻したルドルフと俺たちは壊された物を直す手伝いをした。途中村長に呼ばれ何か話していたので尋ねると
「彼女の家名と屋敷の場所を聞かれたよ。学園を通して請求書送るみたい。あと『さっき法律で決まってるって話は本当ですか?』と聞いてみた」
「なんて言ってた?」
「『ホコリ被ってるような昔の法だよ。今は運用されてないけどね』だって。なので学園に帰ったら調べてみようと思ってる」
真面目だな。大事な事忘れてるけど。
「あー!あ!忘れてた!魅了!何故ここでは誰もかからないんだ!」
「悪いやつに追われてる。父ちゃんが足止めしてるけど多分そんなにはもたない。おばばの薬草庫に隠れるから森に誘導よろしく。あと父ちゃんに馬届けてあげて。…マリア~あとで兄ちゃんと遊ぼうな~」
と村長たちに簡単に説明し、久しぶりのマリアと手もつなげずに後ろ髪ひかれる思いでおばばの薬草庫を目指す。
薬草庫は村の端、建国の森のすぐそばにある。そこへ2人で逃げ込んだ。
「ふぅー。ここまで来ればもう安心」
薬草くさい倉庫の床に座って休憩していると窓が薄く開き、にゅっと籠を持った手が現れた。
「水とオヤツだよ。友達と食べな」母ちゃんだ。
「気がきくぅー!ありがとう。ルドルフもどうぞ」
「悪いやつ追っ払ったらみんなで美味しい物食べよう。それまで待ってな」
と窓がスッと閉められた。
「あ!大事な事を忘れてた」
「なに?」母ちゃん特製クッキーをむさぼり食いながら俺は答えた。
「仮面…」
「あぁーそういや忘れてた。あれ?でもうちの村の奴ら誰も魅了されてなかったぞ」
「私も驚いた。『普通にリュの友達が来た』って反応だった。どういう事だ?何が…」
「シッ静かに。どうやら追手が来たみたいだぞ」
「この村にルドルフ様がいらしているのはわかってるのよ!早く連れて来なさい!」
村人に怒鳴り散らしているキンキン声が聞こえてきた。怯えてしまっているルドルフを倉庫の奥に隠し、俺は窓からそっと覗いてみた。そこまで美しい顔に執着しているヤツの顔を拝んでやろうという野次馬根性だ。
美しい顔に執着してるならご自身の顔は…って思ってたのに、彼女は意外にも年齢よりずっと若く見える冷たい感じの美人だった。しかし怒りでその顔は歪んでおり、とても綺麗とは言えない。
「うわ取り巻きがあちこち壊して探してる!あーあ馬鹿だなあ」
その声を聞いて奥からルドルフが出てきた
「これ以上皆様にご迷惑はかけられない!」
と外に出ようとするのを必死に止めて
「まあまあここで見てなよ、面白いモノ見られるから。ほら皆も動じてないだろう?」
村長が村人代表でそいつらの前に出てきた。表情はいつも通りでひょうひょうとしている。
「何をお探しか知りませんが、ここははじまりの村ですよ。お分かりでしょう」
「何よ!それが何だっていうのよ!」
呆れ顔をした村長は溜め息をついた。
「国の法律をご存知ない?建国の森を守るこの村では如何なる高位の者であっても暴力、掠奪を許しておりません。違反者は国に対する反逆罪と同罪とするとあります。それをご承知でこの様な乱暴な行為をなさってるのですか?」
キンキン声が止まり、そばにいたお付きの者にこそこそと『本当なの?』『聞いた事があるような気が…かなり古い法律ですが』などとこそこそ話している。
そんな最中うちの母ちゃんが素っ頓狂な声をあげた。
「あ!その坊ちゃん?ルドルフだったっけ?それなら森に入って行ったよ。ついさっきだから追えばまだ間に合うんじゃないかい?行ってみたら?」
どうするか話し合っていた彼女たちはそれを聞いて、渡りに船とばかりに
「全員で行くわよ!急ぎなさい!」
と森に向かった。
その後ろ姿に村長が
「壊した物の代金はお屋敷に請求書を送りますからよろしくお願いします」
声をかけたが無反応だった。
彼女たちの姿が森に消えた後、
「よし行ったと…とりあえず壊れた所を直しましょう!皆手伝って下さい。あとは…リュ!もう大丈夫だぞ。出てきなさい」と村長は声をかけた。
「はーい「ちょっと待て!」
「何だよルドルフ」
「今出たら彼女たちが森から戻った時鉢合わせするだろうが!のんびり『はーい』じゃない!今この隙に逃げないと!」
すっごい慌ててるようだが、やっぱり村の外の人たちはこの森の事知らないんだな。その様子を見ていた村人たちはどっと笑った。そしてそれに驚くルドルフ。
村人のなかから頭1つ分大きな人が出てきた、父ちゃんだ。足止めありがとう。
「あの森の別名は『迷いの森』。大昔住んでいたエルフの魔力が今なお残っているんだ。エルフは邪悪な心を最も嫌う。故に邪悪な心を持った者は一度入ったら出てこられない…」
「え?出てこられないって…死んでしまうんですか?」
ルドルフは心配そうだ。あんな目に合っても心配してやるなんて…お人好しもいいところだ。
「って言い伝えられてるけど、流石にそれはないと思う。1週間であの入り口から帰ってこれた奴もいるし、1ヶ月以上迷った挙げ句全然見知らぬ場所に出た奴もいるらしい。今まで俺が見た中で1番早くて3日で出てこれた奴がいたな。確かーー何やったんだっけ?」
「大物の獲物がないかと森に狩に入った奴らかな。今の人達みたいに物を壊したりしていないしただ狩りがしたかっただけみたいだからやんわり森に帰されたんだろうな」と村長が返した。
「ま、どっちにしろあんだけこの村で大騒ぎしたんだから1週間は出てこれないよ。何なら出口もここではない別の場所だろうな!はっはっは」
大人たちの話を聞いて何とか落ち着きを取り戻したルドルフと俺たちは壊された物を直す手伝いをした。途中村長に呼ばれ何か話していたので尋ねると
「彼女の家名と屋敷の場所を聞かれたよ。学園を通して請求書送るみたい。あと『さっき法律で決まってるって話は本当ですか?』と聞いてみた」
「なんて言ってた?」
「『ホコリ被ってるような昔の法だよ。今は運用されてないけどね』だって。なので学園に帰ったら調べてみようと思ってる」
真面目だな。大事な事忘れてるけど。
「あー!あ!忘れてた!魅了!何故ここでは誰もかからないんだ!」
0
あなたにおすすめの小説
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
つまらない妃と呼ばれた日
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。
舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。
さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。
リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。
――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。
~春の国~片足の不自由な王妃様
クラゲ散歩
恋愛
春の暖かい陽気の中。色鮮やかな花が咲き乱れ。蝶が二人を祝福してるように。
春の国の王太子ジーク=スノーフレーク=スプリング(22)と侯爵令嬢ローズマリー=ローバー(18)が、丘の上にある小さな教会で愛を誓い。女神の祝福を受け夫婦になった。
街中を馬車で移動中。二人はずっと笑顔だった。
それを見た者は、相思相愛だと思っただろう。
しかし〜ここまでくるまでに、王太子が裏で動いていたのを知っているのはごくわずか。
花嫁は〜その笑顔の下でなにを思っているのだろうか??
幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~
二階堂吉乃
恋愛
同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。
1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。
一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。
公爵令嬢は結婚式当日に死んだ
白雲八鈴
恋愛
今日はとある公爵令嬢の結婚式だ。幸せいっぱいの公爵令嬢の前に婚約者のレイモンドが現れる。
「今日の結婚式は俺と番であるナタリーの結婚式に変更だ!そのドレスをナタリーに渡せ!」
突然のことに公爵令嬢は何を言われたのか理解できなかった。いや、したくなかった。
婚約者のレイモンドは番という運命に出逢ってしまったという。
そして、真っ白な花嫁衣装を脱がされ、そのドレスは番だという女性に着させられる。周りの者達はめでたいと大喜びだ。
その場所に居ることが出来ず公爵令嬢は外に飛び出し……
生まれ変わった令嬢は復讐を誓ったのだった。
婚約者とその番という女性に
『一発ぐらい思いっきり殴ってもいいですわね?』
そして、つがいという者に囚われた者の存在が現れる。
*タグ注意
*不快であれば閉じてください。
死んでるはずの私が溺愛され、いつの間にか救国して、聖女をざまぁしてました。
みゅー
恋愛
異世界へ転生していると気づいたアザレアは、このままだと自分が死んでしまう運命だと知った。
同時にチート能力に目覚めたアザレアは、自身の死を回避するために奮闘していた。するとなぜか自分に興味なさそうだった王太子殿下に溺愛され、聖女をざまぁし、チート能力で世界を救うことになり、国民に愛される存在となっていた。
そんなお話です。
以前書いたものを大幅改稿したものです。
フランツファンだった方、フランツフラグはへし折られています。申し訳ありません。
六十話程度あるので改稿しつつできれば一日二話ずつ投稿しようと思います。
また、他シリーズのサイデューム王国とは別次元のお話です。
丹家栞奈は『モブなのに、転生した乙女ゲームの攻略対象に追いかけられてしまったので全力で拒否します』に出てくる人物と同一人物です。
写真の花はリアトリスです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる