呪いなんて怖くない!〜木こりの息子と仮面の少年

閑人

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36.口止めとお願い

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 これまで俺は身分を超えてルドルフやオットー先生と付き合ってきたが、今この瞬間
 『やはり彼らは貴族だ』と実感した。

 ラディさんの姿を見てすぐ王族と判断し、最上級の礼がとれる。礼儀を骨身に染みるほどキッチリと躾けられている人たちは違う。反面俺は頭が真っ白になり身体が動かない。

 そんな対照的な俺たちを見て楽しそうに

 「礼は要らないよ。あなたたちはお客様なのだから…ソファに座って」と言った。

 それでもまごまごしていると副学園長が「早く座って話をしないと夜が明けてしまいますよ。座って座って」と無理やり俺たちを座らせた。

 「はい!全員座りましたね。まずは自己紹介します。私はラディスラウスと言います。家名は…皆さんご存知なので省略…ラディと呼んでもらう方が嬉しいかな。よろしくお願いします」

 「…お願いします」

 何お願いされてるんだ俺たち?
 
 「そして信じてはもらえないかもしれませんが、私がこの学園の学園長です」

 何となく白ヒゲのお爺ちゃんを想像してたけどこんな若い人だったんだな…

 「ちなみに歳はそろそろ200歳を超えます」

 「「「はあ?」」」

いやいやどう見ても俺と同年代にしか見えないよ!緊張でカチカチになってるのが吹き飛ぶくらいの発言だ。

 副学園長はそんな皆の状態を見て、

「学園長…きちんと説明しないと冗談にしか思われませんよ。ちゃんとやって下さいね」と学園長に釘をさした。

 「…わかってるよ」
 
 私は『先祖返り』ー王家に入っているエルフの血が強く出てしまった人間なんだ。何代かに1人王家に生まれるこの『先祖返り』はとにかく長生きで、見た目の成長が遅いのが特徴。あと、人の色が見える事が多い。

 「色?って何ですか?」

 うーん、その人間固有の色が肩から頭辺りに見えるんだけど…何て言えばいいのかな。例えばオットー先生だと、透明感のある青と緑が混ざって見えるね。落ち着いていて、悪い事なんて考えたら気分が悪くなってしまうほどの真面目さ、そして責任感の高さを表しているんだ。

 「『人格』が見えるという事か。じゃあ入試の合否を決めてるのって…」

 そうそう。集まった子どもたちの色を私がこっそり見て、合否を決めているんだ。いやーハインリヒ君の時は驚いたよ。試験の時は綺麗な紫だったのに、入学式で見たらどす黒いなんて…不正がなかったか慌てて調べてもらったよ。顔が似ていれば誤魔化せると思ったんだね。

 ちなみに君たちの色は金。ルドルフ君は透明度の高い金で、リュ君は銀が混ざった感じの金。どちらも滅多にない良い色なので見つけた時とっても興奮したよ。

 どうりでほぼ0点の答案の俺でも合格できたはずだ

 ー色を見る事によって優秀な人材を選び、そして長い目で育てるーだから『先祖返り』が代々学園の長として選ばれているんだ。


 ルドルフがビシッと手を上げた

 「せっかくのその能力を政治とか外交とかにはお使いにならないんですか?」

 まあそうだよな。ぱっと見で人の中身がわかるなら色々な事に役立てそうな気がする。

ルドルフのその発言を聞いたラディさんーいや学園長は笑顔のままで、しかし少し寂しげに

 「もし君が外交官だとして、相手方に私が出て来たらどう思う?」

 なるほど。絶対『何故子どもが?』と思われるし、下手すると『馬鹿にされた』と怒り出す可能性すらあるな。説明しても理解してくれるかは怪しいし、下手すれば『化け物』扱いされるかも。そう考えると表舞台での活躍はなかなか難しいのか…と俺は理解した。長生きできる『先祖返り』も大変なんだな。

 「頼まれれば、隠れてアドバイスしたり、政治的な意見も出したりはするけどそこまでかな」

 「学園長、まだ他の説明が残ってますよ」

 「…あぁ幽霊騒ぎね。私が壁に消えたように見えたのはあの壁に私専用の出入り口があるからなんだ。この塔は私の住居も兼ねてるのだけど、学園長室に行くのにあの出入り口の方が階段を上がる段数が少なくて楽なんだよね」
 
 塔が住居…だから塔の中の調度品が豪華なのか
 
 「なるべく見つからないようにして出入りしてるのだけど怪談話にまでなってるとは思わなかった。そこで君たちにお願いが。これからもあの出入り口を使いたいので今夜の事は秘密にしておいて欲しい。まぁ当分学生はあの棟を立ち入り禁止にするけどね」

 「秘密にするのは構いませんが、何故そのように色々と説明をして下さったのですか?『君たちの見間違えだ』と警備の人か副学園長先生が私たちに言って終わりにする事もできたと思うのですが」

 だよねえ。そっちの方が早そう。

 「…もし頭ごなしに『見間違えだ』と言ったら君たち『あぁそうですか』と引いてくれる?消えたラディさんを何とか探そうとしないかい?」

 「します。人の命がかかってるかもしれないので、壁を壊しても探します」
 
 「だから説明してその上で口止めした方がいいと判断したんだ。でも口止めした事で君たちの様子が変わったらオットー先生に怪しまれてしまう事が想定されたので、だったら最初から先生も一緒にまとめてやってしまおうと」

 さっきから何か引っかかるんだよ…そうか!俺もルドルフに倣ってビシッと手を上げて発言した。

 「何故そこまでして学園長は見つからない様にしているんですか?外では色々差し障りがあるかもしれないけど、学園内は今私たちにしたような説明をすれば皆受け入れてくれると思います。こそこそする必要がないですよね?」

 俺の言葉を聞いたオットー先生も
 「そうですよ。皆学園長が選んだ精鋭たちですよ?分かってくれるはずです」

 ルドルフも
 「仮面をつけた学生を普通に受け入れているのですから、それに比べれば全く問題ないと思います」

 学園長の貼りついたような笑顔が少し固まった。(後で聞いた話だが王族は基本『笑顔』でいなければならないそうだ。顔つりそう)
 「そう決まっているからかな…理由は私にも分からない。君の」と学園長はルドルフを差して
 
 「君の顔が『呪われている』と言われている理由がわからないのと同じだね。本当は『祝福』なのにね」

 知ってるのか…
 
 「私もおかしな決まりだと思っているんだ。でも一気に無くしてしまうのも少々怖い。そこで提案なんだが、いいかな?」

 乗り掛かった船なんでどうぞ

「今まで学園内では私と直に接触できるのは副学園長とノラ先生だけだったのだけど、これからはオットー先生、ルドルフ君、リュ君の3人も許可します。ちょっとづつ接触できる人数を増やして様子をみてみようと思ってね。では、よろしくお願いします」

 …お願いします?えっ?断われ…なさそうだな。

 「「「はい!こちらこそお願いします」」」
 
 俺たちは大きな声でそう言うしかなかった。
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