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40.質問
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結局学園長はその果実を正攻法でーつまり直に村長に手紙でお願いする事にしたらしい。
「確実なんだけど、時間がかかるんだよな。果実が傷まないといいけど…そうそう君たちに聞きたい事が…あれ?何だっけ?えー何か質問ある?」
話をしたかったのはそっちなのに『質問ある?』ってなんだよ。
「学園長は氷の魔法をお使いになられるんですか?」
質問してる…お前本当にいい奴だ。
「ほとんどの魔法が使える。先祖返りのおかげだね。火、水、風、氷、草、ほんの少しだけど治癒もできる」
草は初めて聞くな…「エルフのみ使える魔法だよ」とルドルフから注釈が入った。
あれ?
「治癒魔法は無いと授業で聞いてますが?」
「身体強化はできないんですか?」
2人同時に質問をしてしまった。
「ルドルフ君の質問の答えは『たった1人しかできないので授業では無いと教えてる』かな。まぁできるとは言ったけど…」
そう言うとつかつかと机に行き、ペーパーナイフを取り出し、自分の指を傷つけた。じわりとにじむ血。慌てる俺たち。
「大丈夫。自分の傷だから身体強化と区別できないけど仕方ない…」学園長はその傷をじっとみつめた。するとゆっくりとしたスピードではあるが傷が治り始めた。これが治癒魔法か…
「こんな小さな傷でも時間がかかるし、大きな傷や病気はお手上げなんだよね。治癒と胸はって言えない程度だから『無い』でいいのかもね」
「そんなあるないなんてどうでもいいですが、治せても自分を傷つけるなんて絶対ダメですからね。私の父も『怪我はしないにこした事は無い。頑丈だから大丈夫とか油断するな』って言ってますよ」
「そうですよ。こちらの肝が冷えましたよ。これからは絶対やめて下さい」
「君たちはいい子だねえ」
「次にリュ君の質問の答えは『身体強化は使えない』だね。理由はわからないけど、老化を遅らせるのに身体強化用の魔力を使いきっているのでは?と言われているよ。あると便利な魔法なんだけど残念だ」
だから俺で試したい事があるのか…ノラ先生と同じタイプの人間だ。きっとノラ先生のご先祖さんとも気があったんだろうな。
ふと思いついた様に学園長は
「あ、ルドルフ君お姉様はお元気?この前の舞踏会から気になってたんだよね」と言った。
「はい。非常に元気にしております。この前と言いますと?いつ頃でしょうか?」
あの時以来舞踏会はお断りしてるって本人から聞いてるけど。
「お姉様の成人のお披露目の時だね。陛下が仮面を外すよう言ったんだろう?私は止めたんだけど聞いてもらえなくて…大変だっただろう?」
この前が1年以上前か…
「ええ、まあ…でも今は元気に領地経営に勤しんでおります」
元気過ぎるくらいだよな。
「それなら良かった。ちょっと前…50年くらい前かな?君の血縁の方が仮面をつけて舞踏会に来た時に、好奇心で仮面を無理やり外した愚か者がいてね、怪我人も出るような大変な騒ぎになったんだよ。私はそれを実際見ていたので今回は止めようとしたんだけどねぇ、年寄りのいう事は聞いてもらえなくって」
ちょっと前が50年、年寄り…突っ込み所は満載だがシャルロッテさんを守ろうとしてくれたのは分かる。
「お気遣いなく。本当に大変元気でやる気に満ち溢れております…周りは振り回されて大変ですが」
ルドルフ本音が漏れてるよ。
「あぁ、紅茶の生産をやっているのでしょう?貴族の中ではとても有名だよ」
どういった感じで有名なんだろう…知りたいような知りたくないような。横から『知らない方がいい』と聞こえた気がするので深堀りはしない事にした。
「ありがとうございます。お飲みになった事が?」
「あるある!美味しいよね。今日君たちに出したのは王室御用達のだけど…『シャルロッテ』は入手が難しくてね。せっかく君たちが来るのだから欲しかったんだけど」
『シャルロッテ』?
「姉が育てている紅茶の名前だよ。本人は『恥ずかしいから嫌だ』と言ってたけど、家族に押し切られた形で決定したんだ」
あくまでも領地経営の為の現金収入が欲しいだけだから、自分の名前を売りたいとか目立ちたいとか全く考えてないんだろうなあ。
「もしよろしければ少し融通しま…」
「はい!ストップ!そういう事はしたくないんだ。特別扱いでとか横入りみたいな事はしない」
え?何で?欲しいって言ってたよね?
「変な話し、王族として生まれると『欲しい物は言えば手に入る』事が当たり前になってしまって、手に入れた時の感動とかが薄い。それじゃあいけないと私は思っているんだ。なので入手困難な物はその困難さを楽しむ事にしてる。時間は有り余ってるしね」
有り余る時間かあ…そう言えばエルフの先祖返りの人って寿命どのくらいなんだろう…さすがに直に聞けないけど200歳で俺たちと同じくらいの見た目だから…一般的な人間の寿命が70歳くらいとして…1000歳以上?いやいやまさか。
そんな俺の思考をぶった斬ったのは学園長の出した声だった。
「そうそう、思い出したよ!エリザベート!リュ君、エリザベートはどうしてるかい?」
エリザベート?誰?
「君の村にいるはずだよ。年齢的にはもしかしたら…って歳だけど、2、3ヶ月前に論文を出していたから多分大丈夫…なはず」
年齢的には…あぁお年寄りって事か?そんな名前のお婆ちゃんいたか?
「えっと存じあげませんが…本当に私の村に?」
「確実なんだけど、時間がかかるんだよな。果実が傷まないといいけど…そうそう君たちに聞きたい事が…あれ?何だっけ?えー何か質問ある?」
話をしたかったのはそっちなのに『質問ある?』ってなんだよ。
「学園長は氷の魔法をお使いになられるんですか?」
質問してる…お前本当にいい奴だ。
「ほとんどの魔法が使える。先祖返りのおかげだね。火、水、風、氷、草、ほんの少しだけど治癒もできる」
草は初めて聞くな…「エルフのみ使える魔法だよ」とルドルフから注釈が入った。
あれ?
「治癒魔法は無いと授業で聞いてますが?」
「身体強化はできないんですか?」
2人同時に質問をしてしまった。
「ルドルフ君の質問の答えは『たった1人しかできないので授業では無いと教えてる』かな。まぁできるとは言ったけど…」
そう言うとつかつかと机に行き、ペーパーナイフを取り出し、自分の指を傷つけた。じわりとにじむ血。慌てる俺たち。
「大丈夫。自分の傷だから身体強化と区別できないけど仕方ない…」学園長はその傷をじっとみつめた。するとゆっくりとしたスピードではあるが傷が治り始めた。これが治癒魔法か…
「こんな小さな傷でも時間がかかるし、大きな傷や病気はお手上げなんだよね。治癒と胸はって言えない程度だから『無い』でいいのかもね」
「そんなあるないなんてどうでもいいですが、治せても自分を傷つけるなんて絶対ダメですからね。私の父も『怪我はしないにこした事は無い。頑丈だから大丈夫とか油断するな』って言ってますよ」
「そうですよ。こちらの肝が冷えましたよ。これからは絶対やめて下さい」
「君たちはいい子だねえ」
「次にリュ君の質問の答えは『身体強化は使えない』だね。理由はわからないけど、老化を遅らせるのに身体強化用の魔力を使いきっているのでは?と言われているよ。あると便利な魔法なんだけど残念だ」
だから俺で試したい事があるのか…ノラ先生と同じタイプの人間だ。きっとノラ先生のご先祖さんとも気があったんだろうな。
ふと思いついた様に学園長は
「あ、ルドルフ君お姉様はお元気?この前の舞踏会から気になってたんだよね」と言った。
「はい。非常に元気にしております。この前と言いますと?いつ頃でしょうか?」
あの時以来舞踏会はお断りしてるって本人から聞いてるけど。
「お姉様の成人のお披露目の時だね。陛下が仮面を外すよう言ったんだろう?私は止めたんだけど聞いてもらえなくて…大変だっただろう?」
この前が1年以上前か…
「ええ、まあ…でも今は元気に領地経営に勤しんでおります」
元気過ぎるくらいだよな。
「それなら良かった。ちょっと前…50年くらい前かな?君の血縁の方が仮面をつけて舞踏会に来た時に、好奇心で仮面を無理やり外した愚か者がいてね、怪我人も出るような大変な騒ぎになったんだよ。私はそれを実際見ていたので今回は止めようとしたんだけどねぇ、年寄りのいう事は聞いてもらえなくって」
ちょっと前が50年、年寄り…突っ込み所は満載だがシャルロッテさんを守ろうとしてくれたのは分かる。
「お気遣いなく。本当に大変元気でやる気に満ち溢れております…周りは振り回されて大変ですが」
ルドルフ本音が漏れてるよ。
「あぁ、紅茶の生産をやっているのでしょう?貴族の中ではとても有名だよ」
どういった感じで有名なんだろう…知りたいような知りたくないような。横から『知らない方がいい』と聞こえた気がするので深堀りはしない事にした。
「ありがとうございます。お飲みになった事が?」
「あるある!美味しいよね。今日君たちに出したのは王室御用達のだけど…『シャルロッテ』は入手が難しくてね。せっかく君たちが来るのだから欲しかったんだけど」
『シャルロッテ』?
「姉が育てている紅茶の名前だよ。本人は『恥ずかしいから嫌だ』と言ってたけど、家族に押し切られた形で決定したんだ」
あくまでも領地経営の為の現金収入が欲しいだけだから、自分の名前を売りたいとか目立ちたいとか全く考えてないんだろうなあ。
「もしよろしければ少し融通しま…」
「はい!ストップ!そういう事はしたくないんだ。特別扱いでとか横入りみたいな事はしない」
え?何で?欲しいって言ってたよね?
「変な話し、王族として生まれると『欲しい物は言えば手に入る』事が当たり前になってしまって、手に入れた時の感動とかが薄い。それじゃあいけないと私は思っているんだ。なので入手困難な物はその困難さを楽しむ事にしてる。時間は有り余ってるしね」
有り余る時間かあ…そう言えばエルフの先祖返りの人って寿命どのくらいなんだろう…さすがに直に聞けないけど200歳で俺たちと同じくらいの見た目だから…一般的な人間の寿命が70歳くらいとして…1000歳以上?いやいやまさか。
そんな俺の思考をぶった斬ったのは学園長の出した声だった。
「そうそう、思い出したよ!エリザベート!リュ君、エリザベートはどうしてるかい?」
エリザベート?誰?
「君の村にいるはずだよ。年齢的にはもしかしたら…って歳だけど、2、3ヶ月前に論文を出していたから多分大丈夫…なはず」
年齢的には…あぁお年寄りって事か?そんな名前のお婆ちゃんいたか?
「えっと存じあげませんが…本当に私の村に?」
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