呪いなんて怖くない!〜木こりの息子と仮面の少年

閑人

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39.本と紅茶

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 「色々試しちゃってごめん。魅了も身体強化も一応私の研究対象なのでつい…本題に入ろうか」

 本題までが長かった。わかったのはこれからも身体強化を試される事がありそうだという事。なかなか厄介なお爺ちゃん(見た目10代)だな。

 学園長の言葉を聞いて、ルドルフが横で紙とペンを取り出した。メモする気満々だ。…じゃ俺はやらなくていいかなと思っていると
 「はい、リュも。書かないと忘れるよ」とルドルフが紙とペンを俺にもくれた。俺の行動が読まれてる…学園長ときたらそんな俺たちを見てちょっと吹き出してた。

 「で、どういう手順で蔵書整理をすればいいですか?」ルドルフが前のめりで聞くと
 
 「1番お願いしたいのはここ!」
 
 学園長はスタスタ自分の机の方に行き、机の背後の本棚を指した。
 
 「ここには何種類か全集があるんだけど、良く見てもらうと巻数が抜けているのがあるんだ。こことか」
 
 ホントだ。この全集の3巻がない。こっちのは5、6巻が…何で?普通揃えるよね。
 
 「それを探して欲しい」
 
 「え?ひょっとして…」嫌な予感。
 
 「なるほど、この抜けている本がこの学園長室の他の本棚のどこかに紛れていて、それを探して欲しいという事でよろしいでしょうか?」平然と言い切るルドルフ。
 
 「よろしくない!ここ何冊本があると思ってるんだよ!正気か?何年かかると思ってるんだよ!」
 あ、礼儀が吹っ飛んだ。
 
 「大丈夫だよ、リュ。あの全集をよく見てご覧。背表紙に印がついているだろう。多分一式購入した時つけた印だろう。他の棚の本にはついていない…だからあの印のある本を探していけばいいんだ。大変ではあるけどそこまで無茶なお願いじゃない」さらっとルドルフが言った。すごい観察力…本の事になると半端ない。
 
 「あと1つお伺いしたいのですが、学園長は寝る際にここにある本をベッドまで持ち込んで読む習慣がございますか?」
 「…寝る前ベッドで読む本は格別だよね」
 「至福の時間ですよね、私もそう思います」
 なに2人で意気投合してるんだよ。
 「とするとこの抜けている本が学園長の自室にある可能性もありますね」
 「ぐっ、そ、そうだな」
 「では次回の蔵書整理の日までに自室の本をご自身で調べておいて頂けると無駄な捜索をしなくて良くなるので助かります。よろしくお願いします」

  学園長のあの様子だと自室にもかなりの量の本があるんだろうなぁ…頑張って探して欲しい。
 
 とりあえず今日は全集の抜けている巻をリストにし
 
 「あとこの手前の棚にある本を奥の空いている棚に移して、そっちの積んである本を空いた手前の棚に移して欲しい。並べ方とかは君たちに任せるから」
 わかりにくい作業だ。
 
 「何故そのようにするんですか?この奥の空いている棚に積んである本を入れればいいんじゃないですか?」
 
 苦笑いしつつ学園長は説明してくれた。

 「えーっと、この奥の空いている棚は『読了した本(けどまだ読み返すかも)』の棚なので読み終わった本を移してもらおうと」
 「では、手前の棚は?」
 「『未読の本』の棚」
 
 なるほど、意味があるんだな。それを聞いたルドルフはぶつぶつ小声で
 「いい分別方法だ。私も…いやこの方法はたくさんの本棚がないと成り立たないか…」とか言っている。その姿はちょっと怖い。あいつの部屋も本だらけ(ただしきちんと整理されているが)だからなぁ。その後俺はルドルフの指示通りに本を入れ始めた。最初適当に入れようとしたらとんでもなく怒られたので仕方ない。
 
 小一時間後今日の作業が終了した。
 
 「お茶にしよう」

 学園長自ら紅茶を入れてくれるようだ。いい香りが学園長室に広がる。
 紅茶と一緒に出された茶菓子はクッキーと果実の砂糖漬けだった。

 「「いただきます」」

 ん!この紅茶美味しい。なんて表現したらいいのか…
 「紅茶です!どうだ!みたいな味がするなこれ」とルドルフに言うと「渋みと深みと…うちのとは方法性が違うけど、いい紅茶だね。さすがご用達製品」

 お菓子は…この果実何だろう?1口パクリ。

 「あれ?これ食べた事あるかも。建国の森で取れるよ。うちはジャムにする事が多いかな」

 「この果実は暖かい南方の国でしか収穫できない品種だよ。似たような果実の間違いじゃない?」
 
 2人で言い合っていると学園長が
 「確かにルドルフ君の言う通りこれは南方でしか取れない果実だが、リュ君も強ち間違っているとは言えないんだ」俺たちの頭の上にでっかい『?』が出た。
 
 「建国の森はある意味めちゃくちゃな森で、気候的に育たないはずの植物があったりするんだ。今度リュ君に持ってきてもらおうか…あ、でも学園にそんな物持ち込めないか…残念。確かめたいなあ」

 しゅんとする学園長。どう見ても俺たちと同じ年の子どもに見える姿がちょっと愛らしい。
 
 「クラウス君に頼んだら…いや、断られるに決まってるな。じゃあ、ジャムなら食堂で使うと言えば持ち込めるか?いやいやそんな嘘がバレたら食堂の職員に叱られる…」

 クラウス?副学園長の事か…諦めきれない学園長はぶつくさ何やら呟いている。その間に俺たちは紅茶とお菓子を堪能。クッキーもバターがきいてて風味がいいし、砂糖漬けの果実も爽やかな酸味が楽しい。そうか、このお菓子ならルドルフの紅茶よりこっちの紅茶が合うな。
 
 「なあルドルフ」
 「なんだい?」
 「お前のうちの紅茶に合うお菓子ってどんな物?」
 「そうだな…メレンゲを使った軽いお菓子とかかな?あまり詳しくないのだけど」
 「紅茶に合うお菓子を作ってみたらどうかな?材料はなるべくお前の領地で取れる物で。紅茶とセット売りするとかも面白そう」
 「…姉に伝えておくよ。あと『リュ君を連れてくる様に』って手紙が届いているのだけど、どうする?」
 「怖…のらくら逃げてもらえると助かる」
 「わかった。善処はするが期待しないで」

 だよね。ルドルフがシャルロッテさんに勝てる訳ないもんな。でも俺の為になるべく頑張って欲しいと願ってやまない。





 
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