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49.表舞台の大人たち ④
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話が終わり、部屋を出た私はハンスさんとリュ君を廊下で引き止め
「ハンスさん、リュ君、息子を助けていただいてありがとうございました」と深々と頭を下げた。
するとハンスさんは愛嬌のある顔をくしゃっとさせて
「いやーうちの子もだいぶルドルフ君にお世話になっているようですし…お互い様ってことで」
「その上娘もそちらの村でご迷惑をおかけしているようで…」
シャルロッテの肝入りで、今はじまりの村で我が領内で栽培できる商品価値の高い植物を探してもらっているのだ。春になったら本格的に始動するらしい。
「あーシャルロッテさんね。お優しい娘さんでお父さんも嬉しいでしょう?彼女はうちの村では大人気で、全く迷惑なんかじゃないですよ」
「お優しい?」
ルドルフが不満げな声をあげた。そうシャルロッテはとても「優しい」のだ。わからない人が多すぎて困る。
「ルドルフ君、確かにお姉さんは意志が固くて、行動力があるから周りの人にとっては『押しが強くて我儘な人』に見えるかもしれない。でもね、彼女の行動とかの根本は『自分の身の回りの人たちをどう幸せにしていくか』なんだよ。自分の為じゃない。そういう人は『優しい人』だと思わないかい?」とハンスさんは諭した。
その通り。だからこそ領民も家族も『彼女が言っているからちょっと大変そうでもやってあげよう』となるのだ。それが『彼女の意見はなんでも通る』に見えてしまう事が多くとても残念だ。あと父親としては、自分自身の幸せも考えてもらいたいとつくづく思う。
ハンスさんの人を見る目は確かなようで安心した。なんなら屋敷に招待して2人でお酒でも酌み交わしたいくらいだ。
「そうだ!お会いできたら聞いておこうと思っていたのですが、ハンスさんのうちにあの『短剣』があると聞いたのですが」王家から賜ったあの短剣だ。
すると彼は軽い調子で
「ありますよ。うちにも代々伝わっていて、今は俺…私が保管してます。今度娘さんがいらしたら見せて差し上げますからお宅のと同じ物か確認してみて下さい。触ることはできませんけどね」と言った。
「ほほう、やはり家宝だからですか?」
「いや、短剣に弾かれるからですよ。正当な持ち主以外が触れようとするとこう…パチンってね」
パチン?弾かれる?そんな事が?
「やった事がない?私はリュくらいの時、父の目を盗んであの短剣に触ろうとして思いっきり弾かれましたよ。痛かったなぁあれ。あ、これ娘さんに教えたら自分で試しそうですね、困ったな…でも怪我するほどでもないからいいか。しかしそこまで大事にされているということは、ひょっとして切れ味も試したことがない?」
切れ味…王からいただいた家宝を?我が家では傷むのが怖くて鞘から出すことすらしていない。
「やっぱり試した事ないですか。でもやらないのが正解ですよ。私、アレを受け継いですぐ試し切りを…今なら絶対やらないけど若かったんでしょうねー。そうしたら…」
そうしたら?
「小枝から少しづつ太い物を切っていったのですが切れ味が良すぎて手応えが全くなくて、とうとう薪にする私の腕回りくらいの太さの丸太を切ってみたんです。そしたら台にしていた木の切り株までスパンと切れて…それ以来鍵のかかる場所にしまっています。危なすぎるんでねえ。何の金属でできてるんだろうなぁアレ」」
「あの短剣で何かを切るなんて考えてもいなかった…大事な物でしょう?刃こぼれとか怖くないのですか?」
彼はキョトンとした顔をして
「うーん、どんな由来があろうとも短剣は短剣ですよね?道具は使う為にあるんで、使って壊れたら仕方ないかな?まあアレは切れ味が良すぎて自分も周りの人間も危険に晒す事になるんで道具としては使えないですけどね」と言い、豪快に笑った。
こんな感じで会話をしていると彼をトントンとつついてリュ君がこう言った。
「お話し中失礼します。父ちゃん、ノラ先生が待ってるよ、そろそろ行かないと。エルンスト様も行くところがあるのでは?」
話しに夢中で忘れるところだった。王宮だ。
「お引き止めして申し訳ありませんでした。ではまた。ルドルフも一緒に王宮に行くかい?」
「行きます」少し硬い声で答えが返ってきた。よし、少し早いがルドルフの王宮デビューだ。
私たちは2人にもう一度お礼をし王宮に向かった。
ーーー
父と子の会話
「身体強化か…面倒ごとは嫌いなんだよな、走って逃げようかな」
「ノラ先生の方が早いから捕まるよ父ちゃん」
「じゃ力づくで何とか…」
「多分先生の方が強い」
「他になんか逃げようはないのか!」
「諦めなよ父ちゃん…。あ、村の外の人に祝福の事がばれたんだけど、おばばにどうしたらいいか聞いといてくれない?」
「もう知ってる。フォーちゃんがマリアに嬉々としてこの事件の事話していたのを聞いて驚いたぜ。慌てておばばと今後の話し合いしたあと出発したからちょっと出発が遅れたんだよな。そうそう『人数は最低限に、口止めもしろ。ただしラディには教えてもいい』だってさ。ラディって誰?」
「学園長だよ。最低限か…頑張ってはみるけどダメだったらまた知らせるね」
廊下の角辺りでノラ先生がチラチラとこちらを窺っているのがみえる。逃すつもりは毛頭ないらしい。それを見たハンスは大きな溜め息をついた後、諦めたようにそちらへ渋々と向かって歩いて行ったのだった。
「ハンスさん、リュ君、息子を助けていただいてありがとうございました」と深々と頭を下げた。
するとハンスさんは愛嬌のある顔をくしゃっとさせて
「いやーうちの子もだいぶルドルフ君にお世話になっているようですし…お互い様ってことで」
「その上娘もそちらの村でご迷惑をおかけしているようで…」
シャルロッテの肝入りで、今はじまりの村で我が領内で栽培できる商品価値の高い植物を探してもらっているのだ。春になったら本格的に始動するらしい。
「あーシャルロッテさんね。お優しい娘さんでお父さんも嬉しいでしょう?彼女はうちの村では大人気で、全く迷惑なんかじゃないですよ」
「お優しい?」
ルドルフが不満げな声をあげた。そうシャルロッテはとても「優しい」のだ。わからない人が多すぎて困る。
「ルドルフ君、確かにお姉さんは意志が固くて、行動力があるから周りの人にとっては『押しが強くて我儘な人』に見えるかもしれない。でもね、彼女の行動とかの根本は『自分の身の回りの人たちをどう幸せにしていくか』なんだよ。自分の為じゃない。そういう人は『優しい人』だと思わないかい?」とハンスさんは諭した。
その通り。だからこそ領民も家族も『彼女が言っているからちょっと大変そうでもやってあげよう』となるのだ。それが『彼女の意見はなんでも通る』に見えてしまう事が多くとても残念だ。あと父親としては、自分自身の幸せも考えてもらいたいとつくづく思う。
ハンスさんの人を見る目は確かなようで安心した。なんなら屋敷に招待して2人でお酒でも酌み交わしたいくらいだ。
「そうだ!お会いできたら聞いておこうと思っていたのですが、ハンスさんのうちにあの『短剣』があると聞いたのですが」王家から賜ったあの短剣だ。
すると彼は軽い調子で
「ありますよ。うちにも代々伝わっていて、今は俺…私が保管してます。今度娘さんがいらしたら見せて差し上げますからお宅のと同じ物か確認してみて下さい。触ることはできませんけどね」と言った。
「ほほう、やはり家宝だからですか?」
「いや、短剣に弾かれるからですよ。正当な持ち主以外が触れようとするとこう…パチンってね」
パチン?弾かれる?そんな事が?
「やった事がない?私はリュくらいの時、父の目を盗んであの短剣に触ろうとして思いっきり弾かれましたよ。痛かったなぁあれ。あ、これ娘さんに教えたら自分で試しそうですね、困ったな…でも怪我するほどでもないからいいか。しかしそこまで大事にされているということは、ひょっとして切れ味も試したことがない?」
切れ味…王からいただいた家宝を?我が家では傷むのが怖くて鞘から出すことすらしていない。
「やっぱり試した事ないですか。でもやらないのが正解ですよ。私、アレを受け継いですぐ試し切りを…今なら絶対やらないけど若かったんでしょうねー。そうしたら…」
そうしたら?
「小枝から少しづつ太い物を切っていったのですが切れ味が良すぎて手応えが全くなくて、とうとう薪にする私の腕回りくらいの太さの丸太を切ってみたんです。そしたら台にしていた木の切り株までスパンと切れて…それ以来鍵のかかる場所にしまっています。危なすぎるんでねえ。何の金属でできてるんだろうなぁアレ」」
「あの短剣で何かを切るなんて考えてもいなかった…大事な物でしょう?刃こぼれとか怖くないのですか?」
彼はキョトンとした顔をして
「うーん、どんな由来があろうとも短剣は短剣ですよね?道具は使う為にあるんで、使って壊れたら仕方ないかな?まあアレは切れ味が良すぎて自分も周りの人間も危険に晒す事になるんで道具としては使えないですけどね」と言い、豪快に笑った。
こんな感じで会話をしていると彼をトントンとつついてリュ君がこう言った。
「お話し中失礼します。父ちゃん、ノラ先生が待ってるよ、そろそろ行かないと。エルンスト様も行くところがあるのでは?」
話しに夢中で忘れるところだった。王宮だ。
「お引き止めして申し訳ありませんでした。ではまた。ルドルフも一緒に王宮に行くかい?」
「行きます」少し硬い声で答えが返ってきた。よし、少し早いがルドルフの王宮デビューだ。
私たちは2人にもう一度お礼をし王宮に向かった。
ーーー
父と子の会話
「身体強化か…面倒ごとは嫌いなんだよな、走って逃げようかな」
「ノラ先生の方が早いから捕まるよ父ちゃん」
「じゃ力づくで何とか…」
「多分先生の方が強い」
「他になんか逃げようはないのか!」
「諦めなよ父ちゃん…。あ、村の外の人に祝福の事がばれたんだけど、おばばにどうしたらいいか聞いといてくれない?」
「もう知ってる。フォーちゃんがマリアに嬉々としてこの事件の事話していたのを聞いて驚いたぜ。慌てておばばと今後の話し合いしたあと出発したからちょっと出発が遅れたんだよな。そうそう『人数は最低限に、口止めもしろ。ただしラディには教えてもいい』だってさ。ラディって誰?」
「学園長だよ。最低限か…頑張ってはみるけどダメだったらまた知らせるね」
廊下の角辺りでノラ先生がチラチラとこちらを窺っているのがみえる。逃すつもりは毛頭ないらしい。それを見たハンスは大きな溜め息をついた後、諦めたようにそちらへ渋々と向かって歩いて行ったのだった。
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