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原始・古代

実々:やさぐれ実々兵衛

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 海の匂いがする。
 何だろう?今は布団で寝ている筈なのに…。それにしても…海の匂いはするのに海の音はしない……無音だわ。
 あぁー…あれか!これは夢の中でも今の今まで寝ていて、その中で起きちゃったやつかな?夢って自覚があるやつね、はいはい。
 瞼の向こう側が明るいし、目を開けたくないけど開けないといけないやつか……。
 はい、開けまし……
 
 「うわっ!!はいっ??!…っ……!!?」
 
 開けない方が良かった!!
 どうして普段着ないパジャマに焦げ茶色のサンダルルックで駅前の交差点の真ん中にポツンと立ってるの?!!…というか今の季節にこの格好はっ!!
 
 「寒っっ!!…っ…??……くはないな。うん。」
 
 夢だからか全然寒く無かった。むしろ温度を感じない温度…適温ってやつですな。それよりも、誰も居ないしパジャマだしサンダルだしで……凄く変な夢だわ。
 まぁ取り敢えず万が一車が来たら跳ねられちゃうから歩道に上がろう。
 そして歩道に上がって改めて周りをキョロキョロと見回してみる。
 うむ、いつもの駅前の光景ですな。それにしてもこんなに鮮明に覚えているなんて私って中々洞察力があったのかしら…なんて思ったり。
 
 さて、これからどうするかだけど、これは夢だからかその内目が醒めるでしょう。
 何が言いたいかと言うと、家までの道のりの徒歩約10分は正直歩きたくない。歩きにくいことこの上無い、サイズも合っていないサンダルで歩きたく無いし、そもそも家の鍵が開いてるかも分からない。
 そして何よりも!!昨日多神さんと夢で話して全く寝た気がしていないのにまた今日も満足に寝られないのは大変不服だと言うこと!!
 
 よって、歩かないことを此処に宣言する!!
 
 私はいつも買い物で利用している大手スーパーの自動ドアの入り口横に移動し、その隣の太い柱に背中を預けてそのままちょこんと腰を下ろした。
  ……大手の柱の安心感半端ないわぁ~…。
 そして体育座りとどちらにするかで悩んだが、両足を前に伸ばしてリラックスの体勢を取ることにした。(これ現実でやったらかなりヤバい奴だわ~…)と思いながら目を閉じた。その際に勿論、
 
 『さぁ、夢ならとっとと醒めて普通に寝かせろ!!』
 
と念じることも忘れない。
 ゆっくり瞼を閉じてぼんやり休んでいたら何処からか男の人達の声がしてきた。
 
 「…えっ?今どきの子って皆こんななの?」
 「「絶対違うから!!」」
 
 あれ?これもしかして私のことディスってない?
 もっと良く男の人達の声を聞こうと目を開けて確認しようとしたら…ー
 
ザァアァァァァァァーッ!
 
と、波が押し寄せてくる大きな音と今までで一番強い潮の匂いを感じた瞬間に夢の中の私の意識は途切れたー…。
 

 シャララララー…シャララ……もぞそもぞ…シャラ…ッ…プチッ!!
 

 次に目を開けると、しっかり布団の中でいつも通りうつ伏せで寝ている私が居た。
 
 くそぉぉぉぉ!寝た気がしないっ……!!
 こうなったら、起きてる間は何がなんでも静かに暮らそう。そのためにも、今日はあーちにいつもの3割くらいの発言量に抑えてもらう。いや、私がサイコの手綱を握る。全てを黙殺する勢いでいく。
 そして1つ欲を言うならば、図書館とスーパーで癒しに会えたらと思う。夢の中でイケメンと会話したところで心の疲れは取れませんから。寧ろ、変に気を使って疲労が蓄積しただけだった。…嗚呼、思い返しただけでも疲れる。
 
 沈んできた気持ちを切り替えるためにも、私は右隣の布団の膨らみと毎度ながら布団から溢れている毛束を横目に見ながら、今日の1歩を踏み出した。
 
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