3 / 3
三 魔法について
しおりを挟む
――それから一心、気合いを入れた私たちは今、何故か誰も居ない昼下がりの講義室の中にいます。
あれ? 実技の方はしないのでしょうか?
カルミアが「坐れ」と言うので、教わる側の私は一先ず反駁せずにもの大人しく最前列の、両側へ誰もいないド真ん中の席へと淑やかに着きます。
そして一体、私は何をすれば良いのでしょうか?
皆目検討が着きません。
カルミアは得意げに教鞭を摂ります。
片や席へと着く私は現状、終始キョトンとしています。
そして私の目前には魔法に関する教科書一式が机の上へズラり、と置かれています。
これでは丸で座学もとい授業のいち風景ではありませんか。
タン、タン、と教壇を護謨製の鞭で叩いてからカルミアは淡々と教科書片手に述べ上げます。
「良いか、先ず実技へと入る前に予習がてら魔法に関する復習だ。先ず、魔法とは身体のエネルギーを恣意的に顕現化した、概念的総称だ。これを打ち出すには脳が神経を通じて『魔法よ出ろ!』と強く想う事で具現化する。それも事前に産まれてくる時に定められた、個体差の烈しい”魔力”と呼ばれる物の範疇内……でな」
「基本中の基本、基礎中の基礎な座学ね」
「ああ……だがネモフィラの場合は先ずこの基盤からクリアしていかねぇと意味がねぇんだ」
「……と言いますと?」
「ネモフィラ、先ず、一旦、声高らかに”魔法の杖”を持って〈来たれ火よ!〉と強く念じてみろ」
「……此処で、ですか?」
「ああ、此処で、だ」
下手をすると火事になりませんか? と変に勘繰ってしまう私。
何せこの講義室は左右上下、何処を見渡しても自然の薫りが漂う木造なのです。
謂わば可燃物もとい火にとっては重要なる火種でして……はたして、此処でぶっ放して良いものか、と暫しの間、裡で思考を逡巡とさせます。
まぁ、燃えたら燃えたで、カルミアが「やれ」と言ったからやりました、と弁明すれば事無きを得ましょうか?
しかし実際にぶっ放すの、私なんですよね。
仮に弁明したとしても正直、苦し紛れの詭弁になりかねないのですが……ともかく今は、後を深く考えずにカルミアの言う通り、魔法が放てる、魔法の杖を持って強く念じます。
そして、
「――来たれ火よっ!」
と一喝を力一杯に入れるのですが、魔法の杖から出た物はボワッ、とした蠟燭よりも小さき、炎らしき火の玉がちょろっと出ただけに終わってしまいました。
……あれ? この魔法の杖、やっぱり不良品か何かじゃあないですか?
あれ? 実技の方はしないのでしょうか?
カルミアが「坐れ」と言うので、教わる側の私は一先ず反駁せずにもの大人しく最前列の、両側へ誰もいないド真ん中の席へと淑やかに着きます。
そして一体、私は何をすれば良いのでしょうか?
皆目検討が着きません。
カルミアは得意げに教鞭を摂ります。
片や席へと着く私は現状、終始キョトンとしています。
そして私の目前には魔法に関する教科書一式が机の上へズラり、と置かれています。
これでは丸で座学もとい授業のいち風景ではありませんか。
タン、タン、と教壇を護謨製の鞭で叩いてからカルミアは淡々と教科書片手に述べ上げます。
「良いか、先ず実技へと入る前に予習がてら魔法に関する復習だ。先ず、魔法とは身体のエネルギーを恣意的に顕現化した、概念的総称だ。これを打ち出すには脳が神経を通じて『魔法よ出ろ!』と強く想う事で具現化する。それも事前に産まれてくる時に定められた、個体差の烈しい”魔力”と呼ばれる物の範疇内……でな」
「基本中の基本、基礎中の基礎な座学ね」
「ああ……だがネモフィラの場合は先ずこの基盤からクリアしていかねぇと意味がねぇんだ」
「……と言いますと?」
「ネモフィラ、先ず、一旦、声高らかに”魔法の杖”を持って〈来たれ火よ!〉と強く念じてみろ」
「……此処で、ですか?」
「ああ、此処で、だ」
下手をすると火事になりませんか? と変に勘繰ってしまう私。
何せこの講義室は左右上下、何処を見渡しても自然の薫りが漂う木造なのです。
謂わば可燃物もとい火にとっては重要なる火種でして……はたして、此処でぶっ放して良いものか、と暫しの間、裡で思考を逡巡とさせます。
まぁ、燃えたら燃えたで、カルミアが「やれ」と言ったからやりました、と弁明すれば事無きを得ましょうか?
しかし実際にぶっ放すの、私なんですよね。
仮に弁明したとしても正直、苦し紛れの詭弁になりかねないのですが……ともかく今は、後を深く考えずにカルミアの言う通り、魔法が放てる、魔法の杖を持って強く念じます。
そして、
「――来たれ火よっ!」
と一喝を力一杯に入れるのですが、魔法の杖から出た物はボワッ、とした蠟燭よりも小さき、炎らしき火の玉がちょろっと出ただけに終わってしまいました。
……あれ? この魔法の杖、やっぱり不良品か何かじゃあないですか?
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持
空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。
その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。
※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。
※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
家族の肖像~父親だからって、家族になれるわけではないの!
みっちぇる。
ファンタジー
クランベール男爵家の令嬢リコリスは、実家の経営手腕を欲した国の思惑により、名門ながら困窮するベルデ伯爵家の跡取りキールと政略結婚をする。しかし、キールは外面こそ良いものの、実家が男爵家の支援を受けていることを「恥」と断じ、リコリスを軽んじて愛人と遊び歩く不実な男だった 。
リコリスが命がけで双子のユフィーナとジストを出産した際も、キールは朝帰りをする始末。絶望的な夫婦関係の中で、リコリスは「天使」のように愛らしい我が子たちこそが自分の真の家族であると決意し、育児に没頭する 。
子どもたちが生後六か月を迎え、健やかな成長を祈る「祈健会」が開かれることになった。リコリスは、キールから「男爵家との結婚を恥じている」と聞かされていた義両親の来訪に胃を痛めるが、実際に会ったベルデ伯爵夫妻は―?
「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます
七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。
「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」
そう言われて、ミュゼは城を追い出された。
しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。
そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる