転生先は水神様の眷属様!?

お花見茶

文字の大きさ
7 / 21
···❆転生前・狭間編❆···

俺の子ども〜side.ヴィグセルツ〜

しおりを挟む
 それから、彼女に眷属の説明ををして、珠に魔力を流させる。すると珠が青白くピカーッと光り、足元に子どもが現れる。まだ、1歳にも満たないような赤ん坊だ。

 珠がなくなったことに驚いている彼女に、ここだと赤ん坊を指差す。すると、彼女は急いで赤ん坊を抱き上げた。と思ったら、俺に抱かせて、自分はどこからかもう1人赤ん坊を抱き上げた。どうやら、草に隠れて、俺の位置からは見えなかったらしい。どうやら双子だったようだ。

 赤ん坊を抱いて立ち上がった彼女に、本題を突きつける。この子たちの子育てだ。
驚いて叫ぶ彼女に、この子たちが珠から生まれ、俺たちの子どもだということを伝える。

 しばらくの間戸惑っていた彼女だが、時間が経つに連れ落ち着いて、しっかりとした顔つきになり始めた。

「私がお母さんか……。よし、ならまず名前をつけましょう!!」
「何かいい名前はあるか?」

 俺が聞くと、彼女は少しの間考え、チラリと俺を見る。

「……ゆかりあおいなんてどうでしょう?」

 ゆかりあおい……。

「目の色から取ったんですが……。や、やっぱりそのまますぎますか……?」

 不安そうな顔の彼女に首を振って、気に入ったことを伝える。

「俺が抱いている子が碧で、弥生の抱いている子が紫か」

 俺は子どもたちを見て、思わず頬を緩めた。俺たちの愛しい子どもは、腕の中ですやすやと眠っていた。

 彼女にこの子たちが何なのかと聞かれたため、聖竜の後継者であることを説明する。

 紫は紫がかった紺色の髪に紫の瞳の女の子、碧は水色っぽい白い髪に青緑の瞳の男の子だ。二人共顔立ちは整っていて、将来はさぞかし美形になるだろうと思うのは、親の贔屓目だろうか?

 飽きもせず碧の寝顔を見ていた俺は、同じく紫を見ていた彼女の体がビクッと震えたことに気づいた。

「とうしたんだ?」
「いえ、あの……紫を見てたら何かが頭の中に浮かんできて……」
「それは鑑定だな」

 俺の眷属になったときにいくつかスキルを与えたが、鑑定は与えてない。もとからのスキルだろう。鑑定は世界中に3人いるかどうかのスキルだ。それをもとから持っているという彼女は、とても珍しい。ちなみに俺も持っている。

 紫のステータスを見ていたらしい彼女は、困惑した顔になる。

「あの、セル様。種族が聖竜じゃないんですけど……」
「何!?そんなはずない。もう1回よく見てみろ!!」
「何回見ても“黒龍”です」

 何!?俺も慌てて鑑定をする。

「本当に“黒龍”だ……」

 彼女に黒龍の説明をする。まだ黒龍は最初の1頭しか確認されていない幻の生き物だ。そんな幻級の生物に会えるとは……。

 急いで世界神に報告しようとする俺を止めて、彼女がとんでもない発言をする。

「あの……もしかしたら、もしかしたらなんですけど……碧も、なんてことは……」
「……確認、しておこう」

 結果。“白龍”だった……。白龍は黒龍と同じく、幻級の生き物。こちらも黒龍の兄弟である1頭しか確認できてないらしい。

 とりあえず世界神に報告の手紙を送り、待つこと数分。世界神からの手紙が返ってきた。

「ひ、開くぞ……?」
「は、はい」

 ドキドキとしながら手紙を広げる……。俺たちは文面に目を走らせた。

 ………………。

 グシャッ
 ビリビリッ
 ドシャッ

 地面に叩きつけた手紙の残骸をグリグリと踏みつける。

 そうだ。すっかり忘れていた。世界神はこういう奴だった。紫たちへの動揺で、頭が回らなかった。

 何が『僕は元気だぜ★』だ、クソが!!お前の事情なんて知るか!!というか、お前が何十年も仕事の書類を隠してサボってたのが悪い!!お前に紫たちを見せるわけないだろ!!お前に会わせたらどうなることか…!!初代聖竜もどうなるか分かってたから見せなかったんだよ!!初代聖竜が会わせなかったのに、どうして俺たちが会わせると思ったんだ、このボケ!!

 ドスドスと踏み続ける。落ち着いたときにはもうそれが何なのかわからなくなっていた。

「よし、行くか」
「え!?どこにですか!?」
「俺の世界だ。大丈夫だ。しばらくの間は俺たちに干渉できない。神は地上に干渉できないんだ。」

 俺は行かないのかと不安そうな顔をする彼女に、俺も行くことを伝える。世界神が許可を出したんだ。神界と地上を行き来して良いと。緊急事態でない限り、神界には戻らなくてもいいとも。

 ふむ、そうだな……普通に人になろうかと思ったが、紫たちは龍だし、龍人になるとしよう。龍人は竜人から稀に生まれる種族で、その力は竜人の何倍も強い。俺は神だから余計に強くなるだろうが。ちなみに、龍も同じく竜の何倍も強く、全てにおいて竜よりも秀でている。まぁ、そんな龍でも聖竜には勝てないがな。結局のところ、最強なのは黒龍と白龍だ。

「それと、俺のことはセルと呼べ。セル様だと、どこかの貴族に思われる」
「わ、分かりました」
「敬語も無しでいい。それじゃあ、行くぞ」
「はい!!……じゃなかった、うん!!」

 俺は右手で碧を抱き、左手を彼女に差し出した。同じ様に左手で紫を抱いた彼女――弥生は、右手を俺の手に重ねた。





・・・・・・・・・・・・・・・

これで転生前・狭間編は終了です。

次回はしばらく置いての、5日後となります。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫

むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

悪役令嬢が美形すぎるせいで話が進まない

陽炎氷柱
恋愛
「傾国の美女になってしまったんだが」 デブス系悪役令嬢に生まれた私は、とにかく美しい悪の華になろうとがんばった。賢くて美しい令嬢なら、だとえ断罪されてもまだ未来がある。 そう思って、前世の知識を活用してダイエットに励んだのだが。 いつの間にかパトロンが大量発生していた。 ところでヒロインさん、そんなにハンカチを強く嚙んだら歯並びが悪くなりますよ?

そのご寵愛、理由が分かりません

秋月真鳥
恋愛
貧乏子爵家の長女、レイシーは刺繍で家計を支える庶民派令嬢。 幼いころから前世の夢を見ていて、その技術を活かして地道に慎ましく生きていくつもりだったのに—— 「君との婚約はなかったことに」 卒業パーティーで、婚約者が突然の裏切り! え? 政略結婚しなくていいの? ラッキー! 領地に帰ってスローライフしよう! そう思っていたのに、皇帝陛下が現れて—— 「婚約破棄されたのなら、わたしが求婚してもいいよね?」 ……は??? お金持ちどころか、国ごと背負ってる人が、なんでわたくしに!? 刺繍を褒められ、皇宮に連れて行かれ、気づけば妃教育まで始まり—— 気高く冷静な陛下が、なぜかわたくしにだけ甘い。 でもその瞳、どこか昔、夢で見た“あの少年”に似ていて……? 夢と現実が交差する、とんでもスピード婚約ラブストーリー! 理由は分からないけど——わたくし、寵愛されてます。 ※毎朝6時、夕方18時更新! ※他のサイトにも掲載しています。

訳あり冷徹社長はただの優男でした

あさの紅茶
恋愛
独身喪女の私に、突然お姉ちゃんが子供(2歳)を押し付けてきた いや、待て 育児放棄にも程があるでしょう 音信不通の姉 泣き出す子供 父親は誰だよ 怒り心頭の中、なしくずし的に子育てをすることになった私、橋本美咲(23歳) これはもう、人生詰んだと思った ********** この作品は他のサイトにも掲載しています

処理中です...