転生先は水神様の眷属様!?

お花見茶

文字の大きさ
10 / 21
···❆クラソフィア入都編❆···

領都クラソフィア

しおりを挟む
 私たちは詰所からそのまま領都に入ることになり、向かいながら話すことになった。

「すみません、うるさかったですよね」
「いえ、可愛らしい赤ちゃんですね!!双子ですか?」
「はい。私が抱いてる子が姉の紫、セルの抱いてる子が弟の碧です」
「ユカリちゃんとアオイくんか……。赤ちゃんって見てるだけで癒やされますよね」
「そうなんです。いくら疲れていても、小さい子を見ると疲れも吹き飛んでしまって」
「わかります。あ~、私もユカリちゃんやアオイくんのような兄弟が欲しいです……。ヤヨイさんはこんなに可愛い妹弟がいて羨ましいです……」
「え?紫たちは妹弟じゃないですよ?」
「え?」
「え?」

 デルディルさんの顔を見て、ポカーンと動きを停止する。デルディルさんも私と同じように、こちらを見てポカーンと停止している。そしてハッとして動きを再開した。

「……え?じゃあ、この子たちはいったい……?」
「いったいもなにも、私の子供ですけど」
「はっ?子ども!?」
「はい、私の娘と息子ですが……それが何かしましたか?」
「……弥生さん、まだ15歳未満の未成年ですよね?」
「いえ、17歳ですけど」
「17!?」

 デルディルさんには、いったい何歳に見えていたのだろうか。

「ご結婚、されてたんですか……?」
「?はい、セルは私の夫ですけど……」
「セルンさんと!?てっきりお兄さんかと……」
「言ってなかったか?」
「言ってませんよ、結婚されてるなんて……ハハッ」

 デルディルさんは渇いた声で笑った。

「弥生さんが結婚……」

 何だろう、何かブツブツ言ってる。少し恐い。そうしているうちに領都に通ずる扉が見えた。デルディルさんが扉を開け、私たちは外に出た。

「ここが領都クラソフィアになります」
「わあ!!人がいっぱいですね!!」

 街には人が溢れ、出店が立ち並んでいた。

「今日は特に多いです。それではまた、何か分からないことがあったらここに来てください。ご説明させていただきます。宿屋にこれから行かれるのでしたら、『湖の乙女亭』がオススメですよ。あそこなら、希望によっては無料でお湯が付いてきますし、部屋もキレイですので。そこの食堂の料理は絶品なんです。そして何より、あそこは子連れでも大丈夫ですから。その分、他の宿より結構高めになってしまいますがね。場所としては、中央広場からリズ通りに入ってすぐのところにあります」
「何から何まですまない。世話になった」
「いえ、ではお気をつけて」

 私たちはデルディルさんに別れを告げて、そのままオススメしてくれた『湖の乙女亭』に行くことにした。
中央広場に行くと人がたくさんいたが、東京と比べればそれほどでもなかった。

「セル、リズ通りはあれみたいですよ」

 私は中央広場から右手にある通りを指した。中央広場からは4つの道が通っていた。1つ目がさっき通ってきた門から広場までのサン通り、2つ目は広場から見て右側にあるリズ通り、3つ目は左側にあるシア通り、そして最後に領主邸や貴族街へ向かうルイ通りだ。

 私たちはリズ通りに行き『湖の乙女亭』を探すと、案外すぐに見つかった。

「すみません。部屋は空いてますか?」
「はい、大丈夫ですよ」
「赤ん坊もいるんだが……」
「まぁ、可愛らしい赤ちゃんですね。では、部屋は2つでよろしいでしょうか?」
「いや、1つでいい」
「でも、妹さんはそれでいいのですか?」
「はい」
「では、家族用の大部屋を1つでよろしいでしょうか?」
「その家族用の大部屋とはなんですか?」

 思わず気になって口を挟む。

「子連れのお客様用のお部屋になります。ベビーベッド、おむつなど、無料で揃えて部屋においています」
「では、それで頼む」
「家族用の大部屋は1泊で銀貨2枚となります。最初の10日はその料金になりますが、それ以降は銀貨1枚銅貨5枚となります。何泊いたしますか?」
「そうだな……1ヶ月頼む」
「1ヶ月ですと、金貨5枚になります」
「これで頼む」

 セルがバッグから金貨をちょうど5枚出す。

「お湯はお付けいたしましょうか?」
「頼む。子どもたちを洗ってやりたいしな」
「了解しました。おむつなど備え付けの物が足りなくなりましたら、また声をかけて下さい。ただし、備え付けの物がなくなれば、それ以降は購入していただくことになりますので、あらかじめご了承ください。お食事は朝と夜の2回になります。朝は7時~10時、夜は5時~9時となっておりますので、ご注意下さい。それを過ぎますと、お金を払っていただかないとなりません。ただ、厨房は無料でお貸ししてますので、食料を持っていらっしゃるのでしたら、お作りになることをオススメします。他に何かありますか?」
「いえ、特には」
「では、こちらがお部屋の鍵になります。ご案内致します」

 受付の女性は、私達を連れて上に上がった。4階につくと、403号室と書かれた部屋の前で止まった。

「ここがお部屋になります。お呼びになる場合、部屋にあるベルを鳴らしていただければ、来ますので。ベルは受付にあるベルと連動しており、部屋のベルが揺れると受付のベルがなる仕組みになってますので、ならなくても壊れているわけではありません。それでは、夕食前にお湯をお持ち致します」

 女性派そう言って、帰っていった。

「中に入るとしよう」
「うん、そうだね」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫

むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

悪役令嬢が美形すぎるせいで話が進まない

陽炎氷柱
恋愛
「傾国の美女になってしまったんだが」 デブス系悪役令嬢に生まれた私は、とにかく美しい悪の華になろうとがんばった。賢くて美しい令嬢なら、だとえ断罪されてもまだ未来がある。 そう思って、前世の知識を活用してダイエットに励んだのだが。 いつの間にかパトロンが大量発生していた。 ところでヒロインさん、そんなにハンカチを強く嚙んだら歯並びが悪くなりますよ?

そのご寵愛、理由が分かりません

秋月真鳥
恋愛
貧乏子爵家の長女、レイシーは刺繍で家計を支える庶民派令嬢。 幼いころから前世の夢を見ていて、その技術を活かして地道に慎ましく生きていくつもりだったのに—— 「君との婚約はなかったことに」 卒業パーティーで、婚約者が突然の裏切り! え? 政略結婚しなくていいの? ラッキー! 領地に帰ってスローライフしよう! そう思っていたのに、皇帝陛下が現れて—— 「婚約破棄されたのなら、わたしが求婚してもいいよね?」 ……は??? お金持ちどころか、国ごと背負ってる人が、なんでわたくしに!? 刺繍を褒められ、皇宮に連れて行かれ、気づけば妃教育まで始まり—— 気高く冷静な陛下が、なぜかわたくしにだけ甘い。 でもその瞳、どこか昔、夢で見た“あの少年”に似ていて……? 夢と現実が交差する、とんでもスピード婚約ラブストーリー! 理由は分からないけど——わたくし、寵愛されてます。 ※毎朝6時、夕方18時更新! ※他のサイトにも掲載しています。

訳あり冷徹社長はただの優男でした

あさの紅茶
恋愛
独身喪女の私に、突然お姉ちゃんが子供(2歳)を押し付けてきた いや、待て 育児放棄にも程があるでしょう 音信不通の姉 泣き出す子供 父親は誰だよ 怒り心頭の中、なしくずし的に子育てをすることになった私、橋本美咲(23歳) これはもう、人生詰んだと思った ********** この作品は他のサイトにも掲載しています

処理中です...