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第2話 チュートリアル
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1度見たムービーはアーカイブで見れるため何度も見ることはない。Jは久しぶりに見たオープニング映像に懐かしさを覚えつつゲームを開始する。
~ジマリ森林~
視界内にエリア突入時の地名が表示される。
遠くには直径1キロに及ぶ世界樹がうっすらと見える。
ここからしばらくはチュートリアルをこなしつつ進むことになる一本道だ。周囲には近づくとダメージを受ける茨蔦がはびこっており、触れるとダメージとノックバックが発生する。その先へはいけないようになっている。
――後で焼き払える炎系の武器を手に入れたらまた来ることになるけど。
――へぇ……そうなんだ。
思考会話とは言え声のようにどこから聞こえるかは分かる。声のする方を向くとゲーム内空間にヌルが浮いていた。
――ヌル!?どうしてここに!?
――私の目的はゲームの内容を知ることだから。会いたくなったら呼んで、そっちへ顔を向けてあげる。
――そういう意味じゃないとおもうんだけど……
――あなたは私に気にせずゲームをプレイしてればいい。私はあなたの視界には基本映らないように行動する。手も足も出さないわ。
――それなら別にいいけど。
――せいぜい出すのは口くらい。
――それはそれでやだな……
Jはメニュー画面を開き装備を確認する。自身が体感的に自分の体を動かす以外普段のゲームプレイと変わらないことを確認した。
――これなら問題なく走れるな。
カプセルから体を乗り出し、カプセルの後ろ側に光っているオブジェクトを「調べる」コマンドが確認する。
『回復薬(小)×5』を手に入れた。
森の出口に走りながらメニュー画面を表示し、ショートカットに回復薬(小)を設定する。これでダメージを受けたときに瞬時に使用して回復できるはずだ。使い方はおそらく頭の中で思考するだけでいいはずだとJは考える。本来なら下ボタンだ。
移動中、走る、ジャンプするなどのやり方が目の前に表示され、少し走ると林の中から急に猪タイプのモンスターが出現してきた。進行方向にいるために倒すことが強制される。チュートリアルモンスターだ。Jが最初から持っている武器はない。猪の後方に最初の武器である『木の棒』が落ちてある。
拾うように促されるウィンドウを無視して先へ進む。
まずは回避のやり方だが、このゲームのRTAの回避の基本は『ジャスト回避』『パリングスルー』の2種類だ。回避行動は前転やバク転、バックステップなど多彩なものがあるが、回避行動中は一時的に無敵状態が発生する。その無敵行動中に敵の攻撃をすり抜けるのが『ジャスト回避』敵の攻撃が当たる瞬間に武器を持ってない手で敵の攻撃をはじくことが出来る。瞬間的にゲーム内FPSが増加して時間がゆっくりになるため、その間に追加のカウンターや回避を行いかわすことが出来る。それが『パリングスルー』。
猪の突進をジャスト回避で猪方向に前転して回避する。
――今の当たらなかった?
ヌルがゲームシステムに突っ込んでくる。
――前転中は無敵時間でダメージはないよ。
ジャスト回避が発生した瞬間、数フレームだけ時間が停止するヒットストップも確認した。
そのままなら本来倒すべき敵モブだが、スルーして先へ進む。ダメージを受けていたら回復薬の使用を促されるチュートリアルが出るが、ダメージを受けてないため当然出ない。
攻撃、回避、ダッシュするアクションゲージは常に視界の左上に表示されている。
ある程度進むと『回復薬(小)』が3つ落ちていて、回収したら森の向こうから人がやってきた。
鉄の鎧で全身を覆ったその兵士5人は武器を構えてJへ近づいていく。
1人はフルフェイスの兜に関節まで細かい鉄板で覆われた重装歩兵。
残りはボウガンのような遠距離武器、もう片方は剣と盾を構えている。
「こいつか?天井からの落果遺人っていうのは?」
「分からん。落果遺物を狙った賊かもしれん。ひとまず拘束だ。ひょっとすると樹上人かもしれんからな。」
「樹上人だと?まあいい。ちょうど来訪してらっしゃる姫様へのいい報告にもなる。」
――こいつらもスルーするの?
――……こいつらは逃げられない負けイベントになってる。時間をかければ倒せるけど今は倒しても時間の無駄だ。
あえて兵士の目の前に向かい剣による攻撃を受ける。
「ッ痛ァ⁉」
――言い忘れた。リアルのケガほどじゃないけどこの世界でダメージを受けるとちょっと痛いわ。でも実際のケガじゃないから痛いだけよ。
「そういうのは先に言ってくれない!?びっくりした!」
痛いといっても実際に刃物で切られたほどの痛みはない。ただ気構えていない状態での痛みに驚いただけだ。そもそもここ以外でダメージを喰らうことはほぼないため、無視してもいい設定だろう。…イベントシーンも痛みがないといいなとJは思った。
剣兵士の周りをぐるぐる回りながら視界から石弓兵を外さない。この場は効率よくダメージを受けるのがベストだ。
初ダメージと言うことで目の前にアイテム使用のチュートリアルが表示される。その間、世界の時間は停止している。
「ウィンドウを閉じる」思考をしたJは、剣兵士の前でギリギリの当たらない右手パンチを行う。すると剣兵士は反応して盾を構える。人間塀の敵のAIは近距離兵が盾を構えると遠距離兵が攻撃するアルゴリズムで行動する。その後ボウガン兵の攻撃を受け剣兵士に向かって前転回避。後ろに回り込んですかさずパンチ。すると剣兵士が振り向き武器を構えるため、バックステップを行い。最初の右手パンチ空振りへ戻る。
――これが今最速で負ける方法だ。
――なんか馬鹿みたいね。
――むしろ効率的で賢いって言ってほしいけどね⁉
――チュートリアルキャラだけど鎧で固いわりにあまり攻撃してこないAIだからこっちから攻撃を誘発させる必要があるんだよ。
Jはヌルとの思考会話をしながらボウガン兵の攻撃を背中、前面で受ける。5回ほど攻撃を受けると頭に1本、背中と胸に2本ずつ矢が刺さってその場に倒れこむ。
――通頭に刺さったら即死じゃないかしら?
額から後頭部にかけて矢が貫通している。
――だってゲームだし。それに頭部ダメージならダメージの部位補正がかかって少しばかり受けるダメージ量が増加するから今は頭に全部刺さってくれた方がありがたかったんだけどな。そこは運も絡むから祈るしかない。
――自傷行為を祈るなんて変な話ね。
――君本当に感情ないんだよね?
思考会話をよそに兵士達が近づいてくる。
「はっ!手こずらせやがって…!」
「おいそっち持て。さっさと姫様のところに持って行っちまおう!」
「本当にこいつが……で……なのか?」
「さあな、隊長が言うには……だから……だとよ。」
Jの意識が薄れていく。今後どうなるかすでに知っているため、今のこの状況も想定内だ。――おそらくちょっと冷たいのは覚悟しないといけないな。
この後は兵士に担がれ近くにある村に連れていかれるはずだ。そこで気絶から目を覚まさせるために冷水をぶっかけられるイベントがある。
Jの目の前が暗転する。そして数秒の後にバシャリ!と顔に水をかけられた。
「……おい……起きろ!……御前で……ぞ!」
「いいわ……まで……って……あら…気が付いたようじゃない?」
「う……ぐぁ……」
Jはうめき声をあげて意識を取り戻す。目の前にはゴテゴテした黒鉄の鎧の鎧を身にまとった冷淡な顔つきをした長身の男が一人。背中にはその身の丈を超す大剣を背負い腕を組みJをにらんでいる。年齢は20代後半の容姿で目の下には大きな隅が出来ている。その後方にはJを見下すように見ている美少女がいる。馬車の中からその男に何か命令している少女は豪華なドレスの上に鎧を身に纏い、細剣を腰に携え、毛先がカールしたロングヘア―を靡かせた金髪碧眼の風貌だ。年頃は16、17歳くらいに見える。その馬車の周囲になフードを目深に被った従者と思わしき集団が佇んでいる。
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視界内にエリア突入時の地名が表示される。
遠くには直径1キロに及ぶ世界樹がうっすらと見える。
ここからしばらくはチュートリアルをこなしつつ進むことになる一本道だ。周囲には近づくとダメージを受ける茨蔦がはびこっており、触れるとダメージとノックバックが発生する。その先へはいけないようになっている。
――後で焼き払える炎系の武器を手に入れたらまた来ることになるけど。
――へぇ……そうなんだ。
思考会話とは言え声のようにどこから聞こえるかは分かる。声のする方を向くとゲーム内空間にヌルが浮いていた。
――ヌル!?どうしてここに!?
――私の目的はゲームの内容を知ることだから。会いたくなったら呼んで、そっちへ顔を向けてあげる。
――そういう意味じゃないとおもうんだけど……
――あなたは私に気にせずゲームをプレイしてればいい。私はあなたの視界には基本映らないように行動する。手も足も出さないわ。
――それなら別にいいけど。
――せいぜい出すのは口くらい。
――それはそれでやだな……
Jはメニュー画面を開き装備を確認する。自身が体感的に自分の体を動かす以外普段のゲームプレイと変わらないことを確認した。
――これなら問題なく走れるな。
カプセルから体を乗り出し、カプセルの後ろ側に光っているオブジェクトを「調べる」コマンドが確認する。
『回復薬(小)×5』を手に入れた。
森の出口に走りながらメニュー画面を表示し、ショートカットに回復薬(小)を設定する。これでダメージを受けたときに瞬時に使用して回復できるはずだ。使い方はおそらく頭の中で思考するだけでいいはずだとJは考える。本来なら下ボタンだ。
移動中、走る、ジャンプするなどのやり方が目の前に表示され、少し走ると林の中から急に猪タイプのモンスターが出現してきた。進行方向にいるために倒すことが強制される。チュートリアルモンスターだ。Jが最初から持っている武器はない。猪の後方に最初の武器である『木の棒』が落ちてある。
拾うように促されるウィンドウを無視して先へ進む。
まずは回避のやり方だが、このゲームのRTAの回避の基本は『ジャスト回避』『パリングスルー』の2種類だ。回避行動は前転やバク転、バックステップなど多彩なものがあるが、回避行動中は一時的に無敵状態が発生する。その無敵行動中に敵の攻撃をすり抜けるのが『ジャスト回避』敵の攻撃が当たる瞬間に武器を持ってない手で敵の攻撃をはじくことが出来る。瞬間的にゲーム内FPSが増加して時間がゆっくりになるため、その間に追加のカウンターや回避を行いかわすことが出来る。それが『パリングスルー』。
猪の突進をジャスト回避で猪方向に前転して回避する。
――今の当たらなかった?
ヌルがゲームシステムに突っ込んでくる。
――前転中は無敵時間でダメージはないよ。
ジャスト回避が発生した瞬間、数フレームだけ時間が停止するヒットストップも確認した。
そのままなら本来倒すべき敵モブだが、スルーして先へ進む。ダメージを受けていたら回復薬の使用を促されるチュートリアルが出るが、ダメージを受けてないため当然出ない。
攻撃、回避、ダッシュするアクションゲージは常に視界の左上に表示されている。
ある程度進むと『回復薬(小)』が3つ落ちていて、回収したら森の向こうから人がやってきた。
鉄の鎧で全身を覆ったその兵士5人は武器を構えてJへ近づいていく。
1人はフルフェイスの兜に関節まで細かい鉄板で覆われた重装歩兵。
残りはボウガンのような遠距離武器、もう片方は剣と盾を構えている。
「こいつか?天井からの落果遺人っていうのは?」
「分からん。落果遺物を狙った賊かもしれん。ひとまず拘束だ。ひょっとすると樹上人かもしれんからな。」
「樹上人だと?まあいい。ちょうど来訪してらっしゃる姫様へのいい報告にもなる。」
――こいつらもスルーするの?
――……こいつらは逃げられない負けイベントになってる。時間をかければ倒せるけど今は倒しても時間の無駄だ。
あえて兵士の目の前に向かい剣による攻撃を受ける。
「ッ痛ァ⁉」
――言い忘れた。リアルのケガほどじゃないけどこの世界でダメージを受けるとちょっと痛いわ。でも実際のケガじゃないから痛いだけよ。
「そういうのは先に言ってくれない!?びっくりした!」
痛いといっても実際に刃物で切られたほどの痛みはない。ただ気構えていない状態での痛みに驚いただけだ。そもそもここ以外でダメージを喰らうことはほぼないため、無視してもいい設定だろう。…イベントシーンも痛みがないといいなとJは思った。
剣兵士の周りをぐるぐる回りながら視界から石弓兵を外さない。この場は効率よくダメージを受けるのがベストだ。
初ダメージと言うことで目の前にアイテム使用のチュートリアルが表示される。その間、世界の時間は停止している。
「ウィンドウを閉じる」思考をしたJは、剣兵士の前でギリギリの当たらない右手パンチを行う。すると剣兵士は反応して盾を構える。人間塀の敵のAIは近距離兵が盾を構えると遠距離兵が攻撃するアルゴリズムで行動する。その後ボウガン兵の攻撃を受け剣兵士に向かって前転回避。後ろに回り込んですかさずパンチ。すると剣兵士が振り向き武器を構えるため、バックステップを行い。最初の右手パンチ空振りへ戻る。
――これが今最速で負ける方法だ。
――なんか馬鹿みたいね。
――むしろ効率的で賢いって言ってほしいけどね⁉
――チュートリアルキャラだけど鎧で固いわりにあまり攻撃してこないAIだからこっちから攻撃を誘発させる必要があるんだよ。
Jはヌルとの思考会話をしながらボウガン兵の攻撃を背中、前面で受ける。5回ほど攻撃を受けると頭に1本、背中と胸に2本ずつ矢が刺さってその場に倒れこむ。
――通頭に刺さったら即死じゃないかしら?
額から後頭部にかけて矢が貫通している。
――だってゲームだし。それに頭部ダメージならダメージの部位補正がかかって少しばかり受けるダメージ量が増加するから今は頭に全部刺さってくれた方がありがたかったんだけどな。そこは運も絡むから祈るしかない。
――自傷行為を祈るなんて変な話ね。
――君本当に感情ないんだよね?
思考会話をよそに兵士達が近づいてくる。
「はっ!手こずらせやがって…!」
「おいそっち持て。さっさと姫様のところに持って行っちまおう!」
「本当にこいつが……で……なのか?」
「さあな、隊長が言うには……だから……だとよ。」
Jの意識が薄れていく。今後どうなるかすでに知っているため、今のこの状況も想定内だ。――おそらくちょっと冷たいのは覚悟しないといけないな。
この後は兵士に担がれ近くにある村に連れていかれるはずだ。そこで気絶から目を覚まさせるために冷水をぶっかけられるイベントがある。
Jの目の前が暗転する。そして数秒の後にバシャリ!と顔に水をかけられた。
「……おい……起きろ!……御前で……ぞ!」
「いいわ……まで……って……あら…気が付いたようじゃない?」
「う……ぐぁ……」
Jはうめき声をあげて意識を取り戻す。目の前にはゴテゴテした黒鉄の鎧の鎧を身にまとった冷淡な顔つきをした長身の男が一人。背中にはその身の丈を超す大剣を背負い腕を組みJをにらんでいる。年齢は20代後半の容姿で目の下には大きな隅が出来ている。その後方にはJを見下すように見ている美少女がいる。馬車の中からその男に何か命令している少女は豪華なドレスの上に鎧を身に纏い、細剣を腰に携え、毛先がカールしたロングヘア―を靡かせた金髪碧眼の風貌だ。年頃は16、17歳くらいに見える。その馬車の周囲になフードを目深に被った従者と思わしき集団が佇んでいる。
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