異能ランクEの絶対皇帝≪Absolute Emperor≫

あんねーむど

文字の大きさ
22 / 57
第三部【前編】

ex5 夕飯

しおりを挟む
 栓が抜かれた浴槽の水が配管に吸い込まれていくように、照と咲は一気に引き始めた水に流されていった。
 ウォータースライダーよろしく、アトラクションのゲートから排出された咲と照はぐったりと仰向けで倒れている。そんな二人を腕を組んだ志津が得意気に見下ろしていた。

 照が視線を上げると適度な肉付きをした幼い二本の脚が映った。

 さらに志津の背後には照たちと同じように流されて校舎から強制排出された異能者たちが確認できる。
 両手を拘束されてうな垂れる者、うずくまり呑み込んだ水を吐き出している者、意識を失いエリオットやネイサンたちからCPRを受ける者、無力化された五十人近い異能者たちがゴロゴロと転がっていた。

「ふっふっふ、勝負はウチの勝ちのようやな」

 咲は立ち上がり、金色の髪をかきあげて小さく息を付く。

「……私は異能者を拘束できればそれで構いません。誰が拘束しようと同じですから……、ですが勝負は勝負です。あなたの勝ちです」

「ふむ、素直でよろしい。ほな、約束通り言うこと聞いてもらおうか」

「公序良俗に反しないことが条件ですからね……」
「ズバリ! この研修期間の間、ウチの専属メイドになってもらう!」

 ほくそ笑んだ志津はビシッと咲の顔を指さした。

「は、はい?」



◇◇◇



 午後六時、勤務を終えた照は厚労省庁舎のエントランスで咲と志津が来るのを待っていた。
 晩秋を迎え、日の入りがずいぶん早くやっている。空調の効いた庁舎の外界はすっかり闇夜に包まれていた。
 
 ビニールレザーの長椅子で涅槃仏の如く寝そべる照は、柱の陰に隠れて顔半分だけをのぞかせる咲の姿を見つけた。頬を紅く添め、瞳を潤ませて結んだ口元がプルプルと震えている。
 普段は結われていない彼女の髪が耳の少し上辺りで結ばれていることに照は気付く。

「はよう出んかい!」

 志津に柱から押し出された咲はフリルの施されたフリフリのメイド服に身を包み、艶やかなゴールデンロッドイエローのロングヘアはツインテールに結ばれていた。
 恥ずかしそうに視線を泳がせる咲を尻目に隣に立つ志津は偉そうに踏ん反り返る。

「どや! 金髪ツインテメイドの完成や!」
「お、おお……」

「なんやねんその反応は……、気の利いた言葉一つ言えんのか!」

「いやぁ、実際よく似合ってると思うよ。マジで持って帰りたいレベルだね」

 顔を紅潮させた咲は照の顔面目掛けてトンファーを投げつけ、見事にトンファーは照の額にヒットした。

「理不尽ッ!」
 二人のやりとりを胡乱な目つきで眺める志津は肩をすくめる。
「しょーもないコントはええねん、それより腹減ったわ。なあ、照、この辺にファミレスないか?」

「ファミレス? ああ、この辺にはないからタクシーで行った方がいいかもな」

 照は赤く腫れあがった額を抑え、目の前に落ちたトンファーを拾い上げながら答えた。

「ほな、そこで腹ごしらえしていこか。おい、そこのメイドや、タクシー1台よろしゅうな」

 諦めたように息を付いた咲は手を前で組むと、引きった笑顔で「か、かしこまりました……」と言った。




◇◇◇



「いらっしゃいませ……っ!?」
 ファミリーレストラン・サニーズの店員は入店してきた客の姿にギョッと眼を丸くした。
 もじもじと視線を泳がせた金髪ツインテメイドが指を三本立てる。

「さ、三人です……」
「こ、こちらへどうぞ」

 店員に先導される金髪ツインテメイドの姿に店内の客は箸を止めて眼で追った。自分に注がれる視線に耐えきれずできる限り体を小さくする咲の後ろを志津と照が続く。

 案内されたのは往来に面した窓側のボックス席だった。
 志津は二人掛けのシート中央にドカッと腰を降ろし、広げた両手を背もたれの上に置いた。

「ふわー、疲れたわぁ。さすがにあんだけデカイもんを囲うのはシンドイでホンマ……。ところで平崎はん、あんた何しとんねん」

 志津の対面に照が座り、同じように照の隣に座った咲を志津は咎めた。

「は?」

「『は?』やあらへんがな、メイドが座ってどうすんのや、ウチの注文とらんかい」
「わ、私はこのお店の店員ではありません!」

「しかし主人に仕えるのがメイドの仕事やろ? という訳でドリンク持ってきておくれやす、ウチはホットミルクな」
「じゃあ僕はメロンソーダで」

 やれやれと息を吐いて立ち上がった咲はメイドらしく手を前に組んで頭を下げた。

「かしこまりました……ってなんであなたまで当然のように注文してるんですか!」

「まあええやん、はよとってきてな」

「くぅ……」

 唇を噛みしめて踵を返した咲はドリンクバーカウンターに向かい、黙々と言われた通り作業する。
 その間も他の客から物珍し気な視線が注がれ、金髪メイドは顔を紅潮させて出来るだけ体を小さくさせ、なるべく周囲を見ないように努めた。

 トレーにドリンクを乗せて戻ってきた咲が丁寧に牛乳で満たされたコップを志津の前に置くと、志津は最大限権威を誇示するかのように小さな背中をシートに預け踏ん反りかえる。

「なんやこれ……、ウチはホットミルクいうたやんけ」

「え、でも冷たい牛乳しか置いてませんでした……」

 戸惑う咲に志津はニヤリとほくそ笑む。

「あっためればええやんか」
「あたためる?」

 おもむろにコップを持ち上げた志津は牛乳で満たされたコップを咲の胸に当て、

「そうや、このコップを乳と乳の谷間に挟んで人肌であたため……――ッ! はぅぁ……えーと、その、す、すまんかったな……。さすがにデレカシーがなかったわ……」

「謝らないでください! それになんですかデレカシーって!」

 二人のやりとりを眺めていた照がフッと息を付いて声を上げる。

「諦めるな直江志津! 乳がなくてもフトモモがあるじゃないか!」

 目から鱗が落ちたように志津は極黒の瞳を丸くした。

「お、おお! お前天才!」
「ななな、なにを言っているのですか!?」

 抗議の声を上げる咲であったが、

「ほな平崎はん、うちの隣に座るんや」
「え、あう……」

 躊躇する咲に志津はシートを叩く。

「絶対服従やで」

 隣に座った咲のメイドスカートをたくし上げた志津は、有無を言わさずその白いフトモモとフトモモの間に白濁した液体で満たされたコップを捻じ込んだ。

「きゃっ! つ、冷たい……」

「なんやこれ! めっちゃエロいで! わははっ! たまらんわ! ほなそのまま温まるまで我慢するんやーっ!」

「ただのエロオヤジじゃないか……」

 子供みたいに無邪気に笑う志津の姿に照は呟いた。


 そのまま牛乳を挟み続けること十数分、注文していた料理がテーブルに並んだ。
 入れ替わるように料理を運んできた店員たちが牛乳を太モモに挟む咲の姿を見て、
「え? 何やってるのこの人?」という可哀想な人を見るような視線が咲の心にダメージを与えたことは言うまでもない。

「そろそろええ頃合いか?」

 満を持して太モモに挟まれたコップを引き抜いた志津はコップに唇を付けて牛乳を口に含むと「なまぬる……」と唸って眉間にシワを寄せた。

「当たり前です」
 
「しかしなんとも言えぬ背徳感が味わえるな……、照、お前も飲むか?」

 志津は咲の体温で温められた牛乳を照に差し出す。

「ちょ、ちょっと!」
「マジで? じゃあ遠慮なく」

 咲が制止するも照はサッと志津からコップを受け取る。そしてコップに口を付けてゴクリと喉を鳴らし呑み込むと目をカッと見開いた。
  
「む! こ、これは!?」
「どや?」
「な、なまあたたかい……。しかしそれがリアルでなんかやらしい……、これいいじゃん!」

「せやろ! うーむ、これは新しい商売になるかもしれんなぁ……、後でオトンにメールしとこ」

 志津は腕を組み、照は考え込むように顎に触れてボソリと呟く。

「JKミルクか……」
「うわぁ……、なんやそれめっちゃいかがわしい響きやないか、お前ド変態やな……。せやけどそれいただき」

 デバイスを取り出した志津が画面をタッチしてフリック入力を始めた。

「……いい加減にしなさい」

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語

jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
 中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ  ★作品はマリーの語り、一人称で進行します。

ビキニに恋した男

廣瀬純七
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち

ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。 クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。 それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。 そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決! その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。

リボーン&リライフ

廣瀬純七
SF
性別を変えて過去に戻って人生をやり直す男の話

処理中です...