かつて絶交した幼馴染と再会できたなら、その時はあなたを二度と離さないと決めていました。

白藍まこと

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-幼馴染-

03 喧嘩じゃない

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白凪しろなさん、調子悪いの?」

「……え」

 机に顔を突っ伏したままでいたら、声を掛けられて驚いてしまう。
 その声に聴き馴染みがあったからだ。

「……北川きたがわさんだ」

「え、うん、北川だけど」

 そこには若返った金髪ショートの北川紗奈きたがわさなさんがいた。
 だが一番驚いたのはそのルックスより、声。

「北川さん、そんなに声高かったんだね?」

 同窓会で会った時の北川さんの声はもっと低かった。
 金髪姿に若さは感じるけど、そのクールな雰囲気は過去も未来もそう変わっていない。

「え、そう? 周りからは低いって言われるけど……」

「あ、そっか。お酒の影響で……」

「え、飲まない飲まない。さすがにそこまでハッちゃけてないよ、わたし」

 ぶんぶんと片手を左右に振る北川さん。
 あ、すいません。つい、未来の話を……。
 私の体感ではついさっきの感覚なので……。

「いずれ飲めるようになっても、飲み過ぎには気を付けてね」

「え、あ、うん……よく分からないけど、そうするね」

 不思議そうに首を傾げながらも、頷いてくれる。
 やっぱり同窓会の時の飲みっぷりおかしかったもんね。
 余計なお節介だろうけど。

「でも、なんか思ったより白凪さん元気そうだね」

 北川さんは肩をすくめた。

「……どうかな、元気な感じはしないけど」

 状況は複雑だった。

「陽葵と喧嘩したんだもんね、仲直りできそう?」

 北川さんは私の事を心配してくれているみたいだ。
 こんなこと、全然記憶になかったな。
 同窓会の時と言い、北川さんは面倒見がいい。
 対比として、当時の私のコミュ障と薄情者ばかりが浮き彫りになっていく……。
 黒歴史がツラい。

「出来るか分かんないけど、したい……かも」

 自分で言っていて自信がなくなって、語尾が曖昧になる。

「そっか。何かあったら言ってよ、手伝うからさ」

「……よく、そんなに良くしてくれるね?」

「白凪さんと上手く行ってないと陽葵すぐ不機嫌になるからさ。するとわたしも困っちゃうから、それだけだよ」

「……そうなの?」

「そうそう、陽葵はすぐ態度に出るから。こっちも大変なんだよ」

 しかし、視界の隅に映る陽葵は談笑に花を咲かせ、愉快そのもの。
 私はその光景を指差す。

「すっごい楽しそうにしてるけど」

「いや、アレは作り笑いだよ。ほら、目が笑ってないじゃん」

 言われてみると目の奥が笑っていない……ように見えなくもない。

「……そうかも」

「でしょ」

 今の私だからかろうじて分かるけど、多分当時の私だと“笑顔”として受け取って分からなかったと思う。
 こういう相互理解のなさが、関係性を壊した原因なのかもしれない。。

「何があったかまでは聞かないけど、早く仲直り出来るといいね。その方が私も助かるし」

「……善処します」

 そして、北川さんはひらひらと手を振って陽葵の元へ戻っていく。

 こうして振り返ってみると、やはり私は陽葵の事を全然分かっていない。
 私は彼女との対話を避けて、無視をすることで自分を守ってしまった。
 そこから一度も話す事はなかった、話そうとすらしなかった。
 彼女だけが唯一の友達だったのに。

「……だから、ここからやり直せって事なのかな」

 陽葵の事を理解したい、もっと深く知りたい。
 過去の過ちを清算したかった。



        ◇◇◇



「おーい、そこの意地っ張りさん」

 わたしは、陽葵ひなたの肩を叩いてみる。

「なによ紗奈さな

 すると陽葵は眉間に皺を寄せながらわたしを睨む。
 なるほど、彼女の不機嫌は絶賛継続中のようだ。

白凪しろなさんと仲直りしないの?」

「……別に、拒否ったのあっちだし」

 むすっと面白くなさそうにそっぽを向く。
 芯を突くとすぐにコレだ。
 子供みたいに分かりやすい。

「さっき白凪さんと喋ったけど、なんかツラそうにしてたよ?」

「……は? ツラいのって無視シカトされたあたしでしょ?」

 そんなオラオラしてるツラそうな人は見た事がない。

「白凪さんにも事情があって、無視しか出来なかっただけかもよ?」

「直接あたしに言えばいいだけでしょ」

「そんな怖い顔してたら、白凪さんが話したい事も話せなくなるって」

 友好的な人間関係には、時に歩み寄るのも大事だと思うんだけどね。

「ていうか、なんで紗奈がゆきと喋るの?」

 仏頂面な事には変わりないが、視線がこちらに動く。
 気にする所はそこなんだ。

「いや、二人が喧嘩してるから。こっちは気を遣ってんだけど」

「喧嘩じゃないから、向こうが先に拒否ってきただけだから、あたし被害者だから」

 うわー……子供ぉ……。
 このモードの陽葵と付き合うのは、ちょっと大変だ。

「白凪さんが加害者だとしたら、あんな寂しそうにしないと思うけどね」

 教室の席で一人佇む白凪さんに視線を送る。

「知らない、気のせいでしょ」

 ほんと、意地っ張り。
 そんな意固地になる必要ないと思うんだけど。

「で?」

「……え、なに」

 よく分からない質問。
 主語がなさすぎる。

「雪と話したんでしょ? 何言ってたの、雪は」

 白凪さんと関わりたいのか、関わりたくないのかどっちなんだ。
 ……なんて、わたしが感情的になっても意味ないしなぁ。
 
「さぁね、自分で聞いてみたら?」

「………じゃあ、いい」

 だいぶ間を空けてから、ぷいっと改めてそっぽを向く陽葵。
 話は終わりと言いたいらしい。
 でも、もう少しだけ助言をしてみる。

「白凪さんが拒否ったとか言ってるけど。そもそも、いきなりうちらの輪に入れようとしたのが原因なんじゃないの?」

 白凪さんがいい子だというのは分かる。
 でも明らかにさ、あるじゃん。
 タイプが違うっていうか、混ざれない空気感って。
 むしろアレを強要されて、一時的にでも同じ場所にいた白凪さんが偉いと思う。
 はたから見ても相当ストレスだったと思うから、何ならわたしは白凪さんに同情すらしている。

「だって雪、いつも一人で可哀想じゃん。だから紹介しようとしただけなんだけど。なに、あたしが間違ってんの?」

「……んー……あー」

 いやぁ、気持ちは間違ってないと思うんだけど。
 方法が間違ってるというか、紹介する相手を間違えてるというか、それで喧嘩して白凪さんを一人にさせてたらもっと可哀想じゃんとか。
 色々ツッコミたい所はあるんだけど……。

「とりあえず、それを白凪さんに伝えてみたら?」

 それだけで話がだいぶ進む感はある。

「は? そんなの雪分かってるから、分かった上で拒否られたんだから、あたしと絡みたくないって事でしょ」

 それって白凪さんの理解を期待しすぎている気がする……。
 陽葵は言葉足らずな事も多いから、絶対に白凪さんには伝わってない事もあると思う。
 今話したわたしが、ようやく理解できたくらいなんだから。

「……喧嘩するほど仲が良いって事にしとく?」

 今の陽葵は、これをいちいち説明したところで響きそうにないんだよなぁ。
 時間が経てば雪解けして、元通りになる事を期待するしかないか。
 そもそも、わたしがこれ以上身を削る話でもないし。
 ていうか関係ないし。

「だから喧嘩じゃないって」

「ああ、はいはい、そうだね」

 そんなに“喧嘩”にして欲しくないなら、もうちょっと機嫌を直して欲しいなって思ったり。


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