かつて絶交した幼馴染と再会できたなら、その時はあなたを二度と離さないと決めていました。

白藍まこと

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-友達-

24 あたしは雪の事を考えているのに

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「……なんで、既読無視するかな」

 ゆきとラインでやりとりをしていたら唐突に既読無視された。
 そもそもこっちは朝からラインを送って今ようやく返って来たのに、数ラリーで既読無視ってどういうこと?
 しかも、今起きたんだから絶対目は覚めてるよね?
 え、なに?
 またリアル無視始まってんの?

 ついさっきまで雪とのラインに心が躍っていたのに、秒で雲行が怪しくなる。
 
「おーい、なにスマホと睨めっこしてんの」

 すると、カフェで前に座っていた紗奈さながあたしに声を掛けてきた。

「別に、ちょっと気になるから見てただけ」

白凪しろなさん?」

「……なんで、そうなるの」

陽葵ひなたは分かりやすいからねぇ」

 なぜか紗奈はニヤニヤしながら、物言わぬあたしを見てやりとりの相手が雪だと勘づく。
 色々と察しがいい子なのは間違いないけど、さすがにこれは引いてしまう。

「陽葵がそんなイライラする相手って白凪さんくらいだしね」

「だから何なのよ」

「否定しないんだね」

「……うるさいな」

 紗奈を敵に回すと面倒だ。
 あたしの表情や言葉の端々で心を読んで当ててくるから質が悪い。
 普段は気が利くいい友達なんだけど、こういう時は隠したい事まで見透かされるからソワソワする。

「どうなの、あの後は友達に戻ったの?」

「戻ったけど、それがなに?」

「あら、本当に戻ったんだ」

 あたしが素直に認めたのが予想外だったのか、紗奈がアイスコーヒーをストローを吸おうとした所で口をぽかんと開けていた。

「良かったじゃん、これで晴れて元通り」

「……元通り、ね」

 本当に戻って良かったのかと、このラインを見て改めて考えさせられる。
 友達になって連絡をとってみればこの有り様だ。
 やっぱり、あたしが危惧していた事が起きているんじゃないかと疑ってしまう。
 雪は元の関係性に戻ると、あたしを求める欲求も少なくなるんじゃないかって言う悪い予感。
 それが当たってしまっているようにしか思えない。

「ねぇ、寝起きでいきなり既読無視する友達って……どう思う?」

「え……白凪さんに既読無視されてるの?」

「いや、雪とは言ってないんだけど」

「ああ……まぁ、そういう事にしてあげてもいいけど」

 紗奈はアイスコーヒーに口をつけて、数拍の間を開けて考えている。

「何か気に障ること言ったんじゃない?」

「いや、お互いの状況を確認しただけなんだけど」

「えー……それじゃあ」

 お願いだ。
 何かポジティブな事を言って欲しい。
 このままではあたしのテンションは完全に落ちる。
 そうなる前に、何か希望のある可能性を教えて欲しい。
 察しの良い紗奈になら、それが出来るはずだから。

「単純に、陽葵と連絡するのが面倒くさい気分なんじゃない?」

 一番最悪な可能性を教えてくれた。

「……帰る」

 あたしは席から立ち上がった。

「え、ちょっと、まだ買い物終わってないんだけど」

「あたしの気持ちは終わったの」

「陽葵のカフェラテもまだ半分以上残ってるって」

「あげる」

「要らないって。ていうか、なにほんとに帰るのっ」

 だって、あたしの気持ちは今完全にブルーだ。
 こうなるのが怖くて関係性を戻す事にずっと抵抗していたのに、このありさまだ。
 本当に白凪雪しろなゆきは分からない。
 彼女の取り扱い方を誰かあたしに教えて欲しい。

 そうしないと、この心はいつか壊れてしまうかもしれない。



        ◇◇◇



「休日はお楽しみだったようだね」

「……え」

 週明け、平日の月曜日に雪を迎えに行くと開口一番がそれだった。
 朝の挨拶すら、すっ飛ばして。
 しかし、休日を楽しんでるとは……なんのこと言ってるんだろ。

「まぁ、ほどほどに?」

「良かったね、楽しそうで、友達と」

「……え、ああ、うん」

 なぜか雪は妙に言葉を区切りながら、不機嫌そうに言葉を連ねる。
 何で週明けからこんなに機嫌が悪そうなんだろ。
 学校がダルイのはあたしもよく分かるけど。
 それにしたってここまで露骨な雪もあまり見ない。

「そういう雪も充実してそうだったじゃん?」

 結局あの後、ラインは夕方くらいになってようやく返事が返って来た。
 
【二度寝してた】

 という事らしい。
 どれだけ寝るんだよ、とは思ったけど。
 まぁ、休日にダラダラするのはある意味一番休日らしいような気もする。
 あたしはあまりそういうのが得意じゃないから、そういう休日に憧れもあったりする。

「え、煽ってる?」

 しかし今日の雪は刺々しい。
 なぜか横目であたしの事を見てくる。
 多くは語らないけど、不満げなのはありありと伝わって来る。

「なんで、いいじゃん。ダラダラ過ごす休み」

「……お買い物してカフェで満喫する休日に比べたらダメダメだと思うけど、しかも友達と」

 語尾がよく分からない。
 とりあえず雪は自分の休日がいいものと思ってない事だけは分かった。

「でも雪、あんまり外に出て遊ぶの好きじゃないでしょ」

「……そうやって決めつけないで欲しいんだけど」

「え、だって昔からそーいうの興味ないじゃん」

 欲しい物とかもあまりない方で、人がいる所も好まない。
 基本的に外出を好まないのが雪だ。
 だから、あたしの方からはよっぽどの事がない限りは遊びに誘ったりしない。
 こっちはこれでも結構、遠慮している方なんだけど。

「興味はないけど、陽葵と遊ぶのは興味ないわけじゃない」

「……あ、はぁ」

 む、難しい言い回し……。
 それはプラマイゼロという解釈でいいのか?
 どっちにしても誘いづらいんだけど……。

「陽葵はどうして友達と買い物するの? 買い物するだけなら一人でも出来るよね」

「え、ええ……? そんなのあんまり考えた事ないんだけど」

 別に一人でも出来るけど、何人かいても出来るし。
 自然とそうしているだけで、特に何かを意識した事はない。

「じゃあ今考えて」

 しかし、ご機嫌斜めな雪がそう言うのだから考えよう。
 これ以上彼女を不機嫌にさせても、あたしとしても嬉しい事ではない。
 普段使わない脳みそをフル回転させる。

「……友達といた方が楽しいから、じゃない?」

 一人で買い物しても楽しいけど、友達といた方が色々話せるし相談乗ってもらえるし。
 まぁ、それくらいな単純な理由だと思う。

「だよね、そういう事だよ。私も」

「……えっと」

 それは、つまり……?

「買い物とかは興味ないけど、あたしといるのは楽しいって事でいい?」

 雪は気持ちを言葉にするようにはなってきたけど、ちょっと表現が遠回しなのであたしには分かりづらい。
 間違ってしまう事もあるだろうから、こうして直接確認するのが大事だと思った。

「それ以外に何かある?」

「……ああ、うん」

 雪は視線こそ合わないけど、否定しない。
 じゃあ、それで合っているって事なんだろうけど。

「じゃあ遊びに誘ったら来てくれる?」

「行くけど」

「……乗り気で?」

「だから、それはさっき言った」

“買い物とかは興味ないけど、あたしといるのは楽しいって事でいい?”

 が、答えという事なんだろうけど……。
 つまり、まとめると?

 雪にとって休日ダラダラするのはダメダメな休日で。
 買い物やカフェで過ごす休日の方がお楽しみみたいで。
 そこに興味こそ薄くても、あたしといる事は楽しいって事で。

「雪はあたしと休みの日に遊びたいってことでいい?」

 そこでようやく雪はこちらを見た。
 その瞳にさっきまでの不機嫌さは浮かんでいない……気がする。

「休日に遊ばない友達より、遊ぶ友達の方が友達だよね」

「……難しく言う」

 本当に白凪雪は分からない。
 彼女の取り扱い方を誰かあたしに教えて欲しい。

 でも今の雪は、あたしの心を躍らせていた。


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