冴えないOL、目を覚ますとギャル系女子高生の胸を揉んでた

白藍まこと

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02 出勤前は忙しい

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 さて、私の家にギャルが住むことになった。

 うん。

 文章にしてみても意味が分からない。

 これは悪い夢だ。

 きっと酒に酔いすぎて、まだ夢から覚めていないに違いない。

 瞼を閉じて、こめかみを自分でほぐしてみる。

 大丈夫、これは悪い夢。

 目を覚ませば、いつも通りの私の部屋が視界に広がって……。

「いきなり目閉じて何してんの?」

 ……ああ、なんか聞こえてきたぁ。

 視覚に飽き足らず、聴覚まで再現するとは本当に夢とはよく出来ている。

 しかし、私はめげない。

 今度は耳を抑える。

 よし、もう何も聞こえない。

 ――ユサユサ

 私の両肩に手の平の重みが加わり、前後左右に体が揺すられる。

 こ、今度は触覚まで……!

「ええい、気安く触るなっ」

 私は面倒になって、その手を振り払った。

「あ、やっと構ってくれた」

 目を開けると、そこには制服姿のギャルがいた。

 やっぱり夢でも何でもなかった。

「頭が痛い……」

「あはは、飲み過ぎなんだってー」

 ちっがう、そっちじゃないんだよ。

 爆弾を抱えてしまったこの案件に頭を痛めてるんだよ。

「それは、そうとさ」

 ギャル……雛乃寧音ひなのねねと言ったか。

 雛乃ひなのは、私の顔を覗き込んでくる。

 彼女の方が背が高く、私に目線を合わせようとすると少しばかり屈む必要があるらしい。

 何とも生意気だ。

「なによ」

上坂うえさかさんって、社会人だよね?」

「そうだよ」

 恋人なしのアラサーOLだよ。

 我ながら残念すぎる。

「今日は仕事?」

「平日だからね、そりゃ仕事だよ」

「ふぅーん……」

 雛乃が壁掛け時計を指差す。

「時間、大丈夫そ?」

 時計の針は8時を差している。

 ちなみに私がいつも家を出る時間である。

「ああああっ!大丈夫じゃなぁい!!」

 今現在、何の準備も出来ていない。

 完全に遅刻コースだ。

「おおっ、頑張れ社会人っ」

 他人事のように言って……いや、まあ他人事か。

 何でもかんでも目くじらをたてるのは良くない。

 と言うより、そんなことをしている場合じゃない。

 とりあえず、着替えようとスーツを探すが……。

「うわっ、なぜスーツが床に!?」

 ジャケットもスカートもブラウスも。

 全て床にぐちゃぐちゃに散乱していた。

「昨日、帰るなり脱ぎ散らかしてベッドインしたじゃん」

「くっ……!」

 そこまで欲求不満だったのか、私は……!?

 こんな子に手を出してまで性欲を満たさないといけないほど、深層心理での私は飢えていたのだろうか……。

 怖い、シラフの私では全く想像がつかない。

「って、朝から変なこと言わないでくれるっ?」

「えー。不思議そうにしてるから教えてあげたのにぃ」

 雛乃は頬を膨らませて唇をとがらせる。

 こいつ……自分が可愛いと分かっていて、意図的にこういう仕草をとっているのか?

 10代で既にあざとい女子だな、こいつめ。

 きっと酔っていた私はこれにイチコロだったのだろう。

「私はもう騙されないからなっ」

「……?」

 首を傾げて不思議そうな表情を浮かべる雛乃。

 ……くそー。

 10代だと、理解してない時の仕草も可愛く見えるな。

 職場の同僚だったらイラっとする場面でしかないと言うのに。

 いや、だからそんなことをしている場合じゃないんだって。

「急がないとっ」

 クローゼットに向かい、別のスーツに手を掛ける。

 着替えを終えて、化粧台に座る。

 鏡に映るのは冴えない黒髪のアラサー女子。

 見たくないが自分の顔なので、見るしかない。

 髪もセットしている時間はないので、手早くまとめて縛ることにした。

 化粧は最小限に済ませる。

 そのままバッグを持って玄関へと向かう。

「おお、やっぱりOLさんぽい」

 私の着替えた姿を見て雛乃が声を上げる。

「ぽいじゃなくて、OLなの」

「なるほど、マジで社会人」

 ……中身のない会話だなぁ。

 まあ、ギャルに中身のある会話なんて求める方がおかしいか。

 私はパンプスを履いて、ドアノブに手を掛ける。

「とりあえず私はもう仕事に行くから」

 願わくば、帰ってきた時にはもうその姿を見ないでいられると助かるのだが。

「オッケー、あたしはいい子にして待ってるねぇ」

 ……うん、本人にその気は至ってなさそうだ。

 ていうか、この家に滞在する時点で私にとっての“いい子”とは正反対の対象になるのだが。

 私はため息を吐きながら、いつも以上に重く感じる扉を開く。

「上坂さん」

「え、なに?」

 仕事に行くって言ってるでしょ?と半ばイラつきを伴いながら振り返る。

 そんなピリついた私とは対照的に、雛乃はニコニコと屈託のない笑みを浮かべている。

「行ってらっしゃい」

 そして、ひらひらと私に向けて手を振ってくるのだ。

「あ、うん……い、行ってきます」

 するりと私の中に入り込んでくる雛乃の見送りに、少しだけ戸惑いながら手を振り返した。

 その含みのない笑顔と仕草に、毒気を抜かれてしまった。

 扉を閉めて、鍵を掛ける。

「……久しぶりだな、こういうの」

 誰かに見送られて、家を出るのなんて。

 それこそ社会人になってからは初めてだな、多分。

 それまでの動揺も憤慨もどこか忘れてしまうほど、何だか妙な感慨にふけってしまった。

 
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