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37.国王らの処刑(※sideラフィム)
「貴様らのせいで父と母は飢えて死んだんだ!!この暴君め!!」
「恥を知れ!!」
「息子を返せーっ!!うわぁぁっ!!」
「死ね!悪王め!!」
手足にも胴にも縄が食い込んで、長く続く痛みで気が狂いそうだ。そこへ罵詈雑言とともに何度も石が飛んできて、鈍い音とともに、体に、頭に、さらなる痛みを与えてくる。早く感覚がなくなればいい。あんなにも死を逃れたいと思っていたはずなのに、今は一刻も早く楽になりたかった。視界が不明瞭で辺りが見えづらい。目の周りが腫れ上がっているのだろう。
隣で同じように磔にされているタニヤは、最初こそけたたましい声で泣き叫んでいたが、もうその声もここ数日聞こえてこない。ぐったりと項垂れている。先に死んだのだろうか。だとしたら羨ましい。なぜ俺の意識はなくならないのか。
気が遠くなるほどの長い時間、その地獄を味わっていた気がする。皆の罵声、激しい痛み、苦しみ。やがてグラリと視界が揺れたかと思うと、体に大きな衝撃が走った。気が付くと俺は地面の上に這いつくばっており、その後すぐに両脇を抱え上げられ何者かによってどこかへ引きずられていた。
「…………。」
もう抵抗する力がない。喉がひりつく。水……、頼むから、少しでいい……せめて、水をくれ……。
俺たちへの罵声が雑音のように脳にビリビリと響いている。もう意味のある言葉としてとらえることができない。ゆらゆらと引きずられながら、何となく、辺りに目をやる。大勢の群衆が揺れている。揺れながら俺を見ている。憎しみに満ちた目。ギラギラと燃えさかるような目。無数の目。
「……たすけ、て……おねがい……」
どこかから掠れた声が聞こえる。……タニヤか。まだ生きていたのか。残念だったな。お前もまだ苦しむべきだ。最後まで……俺とともに……。
断頭台に向かっているのだろう。俺には分かっていた。もう終わるのだ、俺の人生は。もういい。これ以上はどうせ耐えられない。早く楽になりたい。
これで最後と見渡した景色は、全てが俺を睨みつけて叫ぶ群衆で埋め尽くされている。その中で、黒いベールを深く被った一人の女と目が合った。
不思議と俺はその女にだけ目がとまった。何故だろう。視線を動かせない。群集の中、何故かその女だけが別の世界の生き物のように思えた。じっと静かに俺を見つめている女は、そこにいるようで現実感がない。女の周りだけ、空気が違う。
するとその時、女の黒いベールの中から一房の髪がふわりと外に流れ出た。
「……。……っ、」
その美しく輝くプラチナブロンドを見た瞬間、俺の頭に何かがよぎった。
(……あれは……誰だったか……)
ふいに、いつかの記憶が閃光のように脳内によみがえる。記憶の中の俺はプラチナブロンドを指先で弄びながら、腕の中のその女を手に入れた喜びに浸っている。
女を手に入れるために、俺はイレーヌを捨てた。
そして手に入れた女に飽き、次の女に……そう、タニヤに目移りした。
そして邪魔になったあの女を────処刑、したのだ。
冤罪を被せて────
「………………っ?!」
これは、何だ。今の俺の人生ではない、だが確かにあったはずの、この鮮明な記憶。
「……はぁ……、はぁっ……」
激しい混乱の中、俺は確信していた。この記憶の中の人生も、確かにあったのだと。
俺はもう一度女を探す。俺に罵声を浴びせる多くの群衆の中、女は俺に背を向けて人混みの中に消えゆこうとしていた。
「────助けてくれ……っ!頼む……、助けてくれぇっ!!」
後悔、絶望、恐怖。すっかり枯れ果てていたはずのそれらの感情が記憶とともに俺の中によみがえってきて、俺はガサガサの声で懸命に叫んだ。だが俺が泣き叫ぶほどに群衆の叫びも大きく激しくなり、それらは最高潮に達した。もう俺の掠れた叫びなどあの女には届かない。
その時。
ダーンッ!という大きな音と衝撃とともに、目の前の断頭台の下に何かがごろんと転がった。それがタニヤの頭であると理解した途端、俺は俺の意識とは無関係の金切り声を上げていた。
「ぎゃぁぁぁっ!!助けてくれ!!俺が……俺が悪かった!!誰か……!……ステファニー!!イレーヌ!!だっ……誰か……誰かぁぁ…………!!」
「ええい、見苦しい!貴様仮にも一国の王であったのだろう。最期ぐらい気高き姿で逝こうとは思わぬのか!」
暴れる俺の体を押さえつけながら、誰かがそばで言った。だが恐怖で涙が止まらない。
これは罰なのか。女たちの人生を踏みにじった罰として、俺はひどい悪夢を見せられているのだろうか。きっとそうだ。
ああ、俺が悪かった。心から謝ります。傷付けてきた女たち一人一人に、謝って回ります。だからどうか、お許しください。どうか早く、この悪夢から目覚めさせてください。どうか、どうか…………。
いくつもの乱暴な手によって、うつ伏せの姿勢で固定される。
怖い。怖い。ああ、ステファニー……、お前もこんな思いを味わったのだな。俺のせいで。
頭上から、大きな音がした─────
「恥を知れ!!」
「息子を返せーっ!!うわぁぁっ!!」
「死ね!悪王め!!」
手足にも胴にも縄が食い込んで、長く続く痛みで気が狂いそうだ。そこへ罵詈雑言とともに何度も石が飛んできて、鈍い音とともに、体に、頭に、さらなる痛みを与えてくる。早く感覚がなくなればいい。あんなにも死を逃れたいと思っていたはずなのに、今は一刻も早く楽になりたかった。視界が不明瞭で辺りが見えづらい。目の周りが腫れ上がっているのだろう。
隣で同じように磔にされているタニヤは、最初こそけたたましい声で泣き叫んでいたが、もうその声もここ数日聞こえてこない。ぐったりと項垂れている。先に死んだのだろうか。だとしたら羨ましい。なぜ俺の意識はなくならないのか。
気が遠くなるほどの長い時間、その地獄を味わっていた気がする。皆の罵声、激しい痛み、苦しみ。やがてグラリと視界が揺れたかと思うと、体に大きな衝撃が走った。気が付くと俺は地面の上に這いつくばっており、その後すぐに両脇を抱え上げられ何者かによってどこかへ引きずられていた。
「…………。」
もう抵抗する力がない。喉がひりつく。水……、頼むから、少しでいい……せめて、水をくれ……。
俺たちへの罵声が雑音のように脳にビリビリと響いている。もう意味のある言葉としてとらえることができない。ゆらゆらと引きずられながら、何となく、辺りに目をやる。大勢の群衆が揺れている。揺れながら俺を見ている。憎しみに満ちた目。ギラギラと燃えさかるような目。無数の目。
「……たすけ、て……おねがい……」
どこかから掠れた声が聞こえる。……タニヤか。まだ生きていたのか。残念だったな。お前もまだ苦しむべきだ。最後まで……俺とともに……。
断頭台に向かっているのだろう。俺には分かっていた。もう終わるのだ、俺の人生は。もういい。これ以上はどうせ耐えられない。早く楽になりたい。
これで最後と見渡した景色は、全てが俺を睨みつけて叫ぶ群衆で埋め尽くされている。その中で、黒いベールを深く被った一人の女と目が合った。
不思議と俺はその女にだけ目がとまった。何故だろう。視線を動かせない。群集の中、何故かその女だけが別の世界の生き物のように思えた。じっと静かに俺を見つめている女は、そこにいるようで現実感がない。女の周りだけ、空気が違う。
するとその時、女の黒いベールの中から一房の髪がふわりと外に流れ出た。
「……。……っ、」
その美しく輝くプラチナブロンドを見た瞬間、俺の頭に何かがよぎった。
(……あれは……誰だったか……)
ふいに、いつかの記憶が閃光のように脳内によみがえる。記憶の中の俺はプラチナブロンドを指先で弄びながら、腕の中のその女を手に入れた喜びに浸っている。
女を手に入れるために、俺はイレーヌを捨てた。
そして手に入れた女に飽き、次の女に……そう、タニヤに目移りした。
そして邪魔になったあの女を────処刑、したのだ。
冤罪を被せて────
「………………っ?!」
これは、何だ。今の俺の人生ではない、だが確かにあったはずの、この鮮明な記憶。
「……はぁ……、はぁっ……」
激しい混乱の中、俺は確信していた。この記憶の中の人生も、確かにあったのだと。
俺はもう一度女を探す。俺に罵声を浴びせる多くの群衆の中、女は俺に背を向けて人混みの中に消えゆこうとしていた。
「────助けてくれ……っ!頼む……、助けてくれぇっ!!」
後悔、絶望、恐怖。すっかり枯れ果てていたはずのそれらの感情が記憶とともに俺の中によみがえってきて、俺はガサガサの声で懸命に叫んだ。だが俺が泣き叫ぶほどに群衆の叫びも大きく激しくなり、それらは最高潮に達した。もう俺の掠れた叫びなどあの女には届かない。
その時。
ダーンッ!という大きな音と衝撃とともに、目の前の断頭台の下に何かがごろんと転がった。それがタニヤの頭であると理解した途端、俺は俺の意識とは無関係の金切り声を上げていた。
「ぎゃぁぁぁっ!!助けてくれ!!俺が……俺が悪かった!!誰か……!……ステファニー!!イレーヌ!!だっ……誰か……誰かぁぁ…………!!」
「ええい、見苦しい!貴様仮にも一国の王であったのだろう。最期ぐらい気高き姿で逝こうとは思わぬのか!」
暴れる俺の体を押さえつけながら、誰かがそばで言った。だが恐怖で涙が止まらない。
これは罰なのか。女たちの人生を踏みにじった罰として、俺はひどい悪夢を見せられているのだろうか。きっとそうだ。
ああ、俺が悪かった。心から謝ります。傷付けてきた女たち一人一人に、謝って回ります。だからどうか、お許しください。どうか早く、この悪夢から目覚めさせてください。どうか、どうか…………。
いくつもの乱暴な手によって、うつ伏せの姿勢で固定される。
怖い。怖い。ああ、ステファニー……、お前もこんな思いを味わったのだな。俺のせいで。
頭上から、大きな音がした─────
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