【完結済】自由に生きたいあなたの愛を期待するのはもうやめました

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2.切ない新婚初夜

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 月日は瞬く間に流れ、私たちは成長し王立学園に通うようになった。

 この頃にはダミアン様とお会いする回数は子どもの頃に比べかなり減っていた。

 私たちは婚約者として時折会ってはお茶をしてお喋りしたりしていたけれど、ダミアン様はいつもお忙しくて、逢瀬は慌ただしいものだった。


「すまないね、クラウディア。本当はもっとゆっくり君と話していたいのだけれど、この後家庭教師が来る予定なんだ…」


「今日はこれから父の領地の視察についていくんだよ」


 いつも何かしらの用事が入っているダミアン様に、もっとお話したいですと我が儘を言って引き留めることはできなかった。



 また学園の中では彼はとても人気者で、いつも大勢のご友人に囲まれていて、内気な私はなかなか彼に話しかけることなどできなかった。
 ダミアン様はすれ違えば「やぁ、クラウディア」と軽く挨拶をしてくださるけれど、それだけ。その後は周りのご友人たちとそのまま通り過ぎていってしまう。
 ご友人の中にはよそのご令嬢も何人もいらっしゃって、私は心密かに羨んだものだった。

(いいな、あの子たちは…。私ももっと社交的で明るい性格だったら、あの輪の中に自然に入っていけたかもしれないのに…)

 自分の性格を恨めしく思ったものだ。





 そうして学園を卒業し、私たちはついに結婚の日を迎えた。二人が出会ってからちょうど13年後のことだった。

 幸せでたまらなかった。式の時、ダミアン様の隣に立ちながら、私は緊張と高揚感でずっとドキドキしていた。ダミアン様は子どもの頃よりずっとずっと素敵な殿方に成長なさっていた。背がスラリと高く整ったお顔立ち…、まるでおとぎ話の王子様のようだった。

 これからはやっと一緒にいられるのね。子どもの頃に誓い合ったように、ずっと一緒に。良い妻になれるよう努力しよう。公私に渡ってダミアン様の助けとなり、支えていくんだ。ダミアン様に生涯愛していただけるように。
 そう、私は愛に満ちた家庭を築くことを夢見ていたのだ。





 しかし、その夜。

 ウィルコックス伯爵より与えられた私たちの新居となる屋敷に戻ってきて二人きりになった途端、ダミアン様は私に言った。

「さて、と。クラウディア、こうして俺たちはまるっきり愛のない政略結婚をしたわけだ。まぁ仕方ない。あとは割り切って互いに自由に生きようじゃないか。はは」

「………………え……?」

 期待していた言葉とは正反対のことを言われ、私の脳はフリーズした。

 ……まるっきり……、愛のない、……結婚……?
 ……割り切って…………、って……



『ずーっと仲良しでいようね、クラウディア』



「…………っ、」

 じゃあ……、それなら、あの日の言葉は……?
 屈託なく笑いながら言ってくださったあなたのあの言葉を、私は今日までずっと信じてきたんです。

 たしかに、私たちは幼い頃に親同士によって決められた婚約者で、この結婚は政略結婚ではあるけれど。

 あなたとなら、きっと愛のある温かい家庭を築いていけると、そう信じていました。

 あなたは……、違ったのですか……?

 立ち尽くす私に構いもせず、彼は上着を脱ぎながらさらりと言った。

「ところで、子作りはどうする?君は子どもがすぐに欲しいかい?俺はどっちでもいいよ。まぁどうせそのうち作らなきゃいかんだろうがな」
「…………。」

 返事を待つ彼に、私は黙ったままフルフルと首を振った。
 その私の反応をどう思ったのか、ダミアン様はにやりと笑って言った。

「ふ、そうだな。まぁ君もしばらくは自由に過ごしたいだろうしな。どうせいずれは俺の子を産んで育てていかなきゃいけないんだ。せいぜい束の間の自由を謳歌しておいてくれ。ならまぁ、しばらく俺たちは“白い結婚”だな、ははははは」

 違う。違います。私は自由に過ごしたいわけじゃありません、ダミアン様。私はあなたと夫婦となって寄り添いあって暮らしていける日を夢見ていたのですから……。
 愛のない結婚で渋々子作りのために同衾なんて、そんなの、あまりにも……

 ダミアン様は笑いながら「じゃあお疲れ、おやすみ」と言って居間を出て行ってしまった。

「……………………。」

 シンと静まり返った居間に一人取り残された私は、しばらく立ち尽くしたまま呆然としていた。

 待ち望んでいた、今日というこの日。思い描いていた新婚生活の始まりとはあまりにもかけ離れていて、惨めで悲しくてならなかった。

(夫婦になって仲睦まじく一緒に暮らす……。それをずっと楽しみに待っていたのは、私だけだったんだ……)

 胸がぎゅうっと苦しくなって、私は声を堪えて涙を流した。



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