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42. 王太子の変貌(※sideエルシー)

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 その日遅い時間にようやく王太子宮に帰り着くと、アンドリュー様が私を待っていた。……何だかいつもよりキリッとした顔をしてる。どうしたのかしら?

「エルシー、何故こんな時間までグリーヴ男爵家に帰っていたんだ」
「……。別に構わないでしょう。ちょっと実家の母に甘えたくなったんです。学園が終わってここに戻ってくると、疲れ果ててしまうから」
「君はもうウィンズレット侯爵家に籍を置く、王太子の婚約者だ。それに、こなさなければならない教育が山ほどあるのは分かっているだろう。いい加減、気持ちを入れ替えてくれ。……入れ替えるんだ。実家に甘えるのは、止めろ」

(……?)

 は?何?この人。何で急にこんな強気な感じの喋り方してくるわけ?こないだまで私に怒られてベソベソ泣いてたくせに……。
 どういう風の吹き回しかは知らないけれど、その偉そうな態度にカチンときた。

「一日くらい構わないでしょう?!あなたに私の気持ちが分かるの?何も助けてくれないくせに!」
「……っ、……助けられることじゃないんだ、エルシー。王太子妃教育は、君自身が頑張って知識を蓄えてくれなければ。僕は僕できちんと自分の受けるべき教育を受けて、力をつけるよ。だから君も、いい加減に腹をくくってくれ」
「…………は?」

 アンドリュー様は力の入った表情を浮かべ、私に一歩近づいた。その妙な威圧感に、思わずたじろぐ。

「エルシー、僕たちはヘイディ公爵令嬢に対してひどいことをした。長年の婚約者である彼女のことを信用せず、君の言葉だけを真に受けてしまった僕が一番悪い。……だけど……、君にだって大きな責任はある。それは分かるだろう?」
「……何ですって……?」
「ヘイディ公爵令嬢を貶めて僕らの婚約を解消させ、君はその代わりに王太子の婚約者の座に収まった。今さらこれをなかったことにはできない。だったら、僕ら二人は力を合わせて前に進むしかないんだ。この王国を統治する立場になる者として、もっと真剣に勉強に取り組んで自分を高めなければ。エルシー、君ももう泣き言を言うのは……や、止めろ。僕も頑張るから。心を入れ替えてくれ。それがメレディアに、ヘイディ公爵令嬢に対する償いであり、僕らの責務だ」
「……な……」
「さぁ、勉強だエルシー。すぐに部屋に戻って、就寝時間までしっかり集中して取り組むんだよ。……連れて行ってくれ」
「ち、ちょっと!」

 アンドリュー様は言いたいことだけ言うと、控えていた私付きの侍女たちにそう告げた。

「な、何なのよ急に!強引すぎますわ!」
「むしろ今までが甘すぎたんだ。しっかり頑張ってくれエルシー。僕らはもっと気持ちを強く持って取り組まなくては」
「ゆ、夕食もいただいてませんのよ私!急いで戻ってきたんですから!」
「じゃあ後で部屋に夜食を運ばせよう。それまでしっかりやってくれ」
「ち……ちょっと!!」

 アンドリュー様はくるりと背を向けた。私は両腕を侍女たちにがしっと掴まれ、まるで連行される罪人のように自分の部屋に連れて行かれた。

「何なのよあんたたち!離しなさいっ!不敬罪だわ!!」
「不敬罪には該当いたしません、エルシー様。これは王太子殿下のご指示でございますし、あなた様はまだ王族ではございませんので」
「~~~~~~っ!!」

 淡々と答える侍女の言葉に、腹が立ってしかたがない。

 何よあいつ!頼りない泣き虫男のくせに、急に偉そうにして……!
 鬱陶しいわね!!




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