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最終話. 夢に見た夜(※sideトラヴィス)
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幸せそうな微笑みを湛えたメレディアが、俺の目の前まで歩み寄ってくる。その一挙手一投足を、俺は夢を見ているような思いで見つめ続けていた。まるでこの愛しい人に心臓をじかに握られ弄ばれているような、そんな甘い疼きが胸の中を駆け巡る。溢れる愛おしさに気が遠くなりそうだ。
自分のことを穴が空くほど見つめる俺の視線を恥ずかしがってか、メレディアは頬を染めて目を逸らすと小さな声で問いかけてくる。
「……お待たせいたしました、トラヴィス様。……どうですか?」
「…………。」
どうですか、だって?
何と言葉にすればいい?
俺が選び準備したウェディングドレスが、君を今までで一番輝かせている。これほど美しい君を見たことがない。俺は世界一幸せ者だ。子どもの頃からひたすらに想い続けてきた君を、こんなにも稀有な輝きを放つ唯一無二の君を、今日から独占できるのだから。
ああ、今すぐ君を無茶苦茶に抱きしめたい……。
……などと激しく昂る胸の内をさらけ出すこともできず、俺は、
「……ああ。最高に綺麗だよメレディア。よく似合ってる」
と、精一杯落ち着き払ったふりをして答えたのだった。
大聖堂での式は粛々と執り行われ、その後は結婚披露のパレードでメレディアと二人、王都中を馬車でまわった。国民たちからの歓声を浴びながら、気品漂う仕草で手を振り続けるメレディアの横顔を、その間何度も盗み見る。……可愛い。最高に可愛い。今日のメレディアのドレス姿を、この幸せそうな笑顔を、一生胸に焼き付けておこう。
集まってくれた国内外の重鎮たちや高位貴族たちをもてなすための祝賀の会は深夜にまで及び、ようやくメレディアと二人夫婦の寝室に足を踏み入れたのは日付も変わろうとする時刻だった。
先に侍女たちによりウェディングドレスを脱がされ湯浴みを済ませたメレディアは、編み上げていた長い髪を下ろし薄い夜着をまとっていた。ドレスを脱いでしまったのは残念だが……、……初めて見る夜着姿のメレディアの艶かしさに、今にも心臓が飛び出しそうだ。俺の胸はもう張り裂ける寸前だった。体中の血が沸騰しそうだ。
こんなにも余裕をなくす羽目になるとは。
(駄目だ……落ち着け。大事な夜だぞ)
自分の欲望のままにがむしゃらにメレディアに触れるわけにはいかない。
この上なく大切にしたいという思いと、今すぐにでもベッドに組み伏せて何もかも奪ってしまいたいという激情の狭間で、俺は一人戦っていた。
「お疲れ様でした、トラヴィス様。……素敵な一日でしたわ」
そんな俺の内心にはきっと露ほども気付いていないであろうメレディアが、少し緊張した面持ちで俺にそう言った。
「ああ、そうだな。君こそ疲れただろう。……何か飲むか?」
「あ、でしたら果実水を……。私が入れますわ」
「いいよ。そこに座っていろ」
そう言って自ら彼女のための果実水を注ぎにいったのは、自分の気持ちを落ち着ける必要があったからだ。鼓動が激しい。気が急いているのを顔に出さぬよう細心の注意を払いながら、俺はメレディアにグラスを手渡しソファーの隣に腰かけた。
「ありがとうございます、トラヴィス様。……美味しい……」
口をつけたメレディアがそう言って微笑む。愛おしさが抑えきれず、俺は彼女のしっとりとした金色の長い髪を一房手にすると、頬を撫でるように指先を滑らせながらそっと耳にかけた。
今この瞬間でさえも、まるで夢を見ているような心地がする。
「これで俺たちは、正式に夫婦になれたわけだ」
「ええ……。今でもまだ夢の中にいるような、信じられない気持ちでいますわ」
「……君も?」
メレディアが俺と同じ気持ちでいてくれることに、言いようのない喜びを感じる。メレディアは恥ずかしそうに頬を染めると少し笑った。
「ええ。……だって、今日に至るまで怒涛の日々でしたもの。アンドリュー様との婚約が突然解消されて、トラヴィス様とお出かけするようになって……、それから……、いろいろなことがありましたわ。こうして今、あなたの隣にいられることが夢のようです」
「……メレディア……」
健気なその言葉に、胸の奥がむず痒くなる。可愛い。
メレディアの可愛さに我を忘れそうになる自分を落ち着かせようと、俺はあえて冗談っぽくこう言った。
「だけど、本当によかったのか?もうこれで逃げられないぞ、メレディア。君は王太子妃となり、この俺の妻となった。……自由を謳歌する時期は過ぎてしまったというわけだ。少しは悔いが残っているんじゃないのか?」
するとメレディアは俺の言葉に一瞬目を丸くすると、まさか、と微笑んで言ったのだ。
「一人の時間を謳歌するよりも、もっとずっと大きな喜びを得たのですもの。あなたの妻になれたというのに、何の悔いも残るはずがございませんわ」
「……っ、」
「……ありがとうございます、トラヴィス様。私を何度も守ってくださって。私を選んでくださって。……あなたを好きになってよかった。幸せです、私」
「…………っ!」
……か……っ、
可愛すぎる…………っ!!
空色の瞳を潤ませながら、頬を染めて俺を見つめるメレディアがそんな素直な言葉をくれるものだから、俺の理性はついに決壊した。
俺はメレディアからグラスを取り上げローテーブルの上に置くと、そのまま彼女の膝の下に腕を通し抱き上げた。
「きゃ……っ!」
「すまない、メレディア。できる限り優しく触れるよう努力するから……、もし、辛かったら言ってくれ」
そう言いながら俺はメレディアをキングサイズのベッドまで運ぶと、その柔らかな体をゆっくりと寝かせた。
「トッ……、トラヴィス、さま……っ」
羞恥を堪えるようなメレディアの切なく色っぽい視線が、さらに俺を煽る。
体重をかけないよう注意して彼女の上に覆いかぶさりながら、溢れる想いが口をついて出る。
「……俺もだよ、メレディア。この日を、この夜を、どれほど夢に見たか。……幸せだよ、君を得られて。ありがとうメレディア。……愛してる」
「……トラヴィス様……」
見開かれたメレディアの美しい瞳にみるみる涙がこみ上げ、それが一筋目尻から零れた。
髪を撫で、抱きしめながら、俺は愛する人の唇にこの情熱を重ねた。
やがて空が白くなりはじめる頃まで、俺はメレディアを腕の中に抱いたまま片時も離すことはなかった。
ーーーーー end ーーーーー
最後までお読みくださった皆様、ありがとうございました(*^^*)
自分のことを穴が空くほど見つめる俺の視線を恥ずかしがってか、メレディアは頬を染めて目を逸らすと小さな声で問いかけてくる。
「……お待たせいたしました、トラヴィス様。……どうですか?」
「…………。」
どうですか、だって?
何と言葉にすればいい?
俺が選び準備したウェディングドレスが、君を今までで一番輝かせている。これほど美しい君を見たことがない。俺は世界一幸せ者だ。子どもの頃からひたすらに想い続けてきた君を、こんなにも稀有な輝きを放つ唯一無二の君を、今日から独占できるのだから。
ああ、今すぐ君を無茶苦茶に抱きしめたい……。
……などと激しく昂る胸の内をさらけ出すこともできず、俺は、
「……ああ。最高に綺麗だよメレディア。よく似合ってる」
と、精一杯落ち着き払ったふりをして答えたのだった。
大聖堂での式は粛々と執り行われ、その後は結婚披露のパレードでメレディアと二人、王都中を馬車でまわった。国民たちからの歓声を浴びながら、気品漂う仕草で手を振り続けるメレディアの横顔を、その間何度も盗み見る。……可愛い。最高に可愛い。今日のメレディアのドレス姿を、この幸せそうな笑顔を、一生胸に焼き付けておこう。
集まってくれた国内外の重鎮たちや高位貴族たちをもてなすための祝賀の会は深夜にまで及び、ようやくメレディアと二人夫婦の寝室に足を踏み入れたのは日付も変わろうとする時刻だった。
先に侍女たちによりウェディングドレスを脱がされ湯浴みを済ませたメレディアは、編み上げていた長い髪を下ろし薄い夜着をまとっていた。ドレスを脱いでしまったのは残念だが……、……初めて見る夜着姿のメレディアの艶かしさに、今にも心臓が飛び出しそうだ。俺の胸はもう張り裂ける寸前だった。体中の血が沸騰しそうだ。
こんなにも余裕をなくす羽目になるとは。
(駄目だ……落ち着け。大事な夜だぞ)
自分の欲望のままにがむしゃらにメレディアに触れるわけにはいかない。
この上なく大切にしたいという思いと、今すぐにでもベッドに組み伏せて何もかも奪ってしまいたいという激情の狭間で、俺は一人戦っていた。
「お疲れ様でした、トラヴィス様。……素敵な一日でしたわ」
そんな俺の内心にはきっと露ほども気付いていないであろうメレディアが、少し緊張した面持ちで俺にそう言った。
「ああ、そうだな。君こそ疲れただろう。……何か飲むか?」
「あ、でしたら果実水を……。私が入れますわ」
「いいよ。そこに座っていろ」
そう言って自ら彼女のための果実水を注ぎにいったのは、自分の気持ちを落ち着ける必要があったからだ。鼓動が激しい。気が急いているのを顔に出さぬよう細心の注意を払いながら、俺はメレディアにグラスを手渡しソファーの隣に腰かけた。
「ありがとうございます、トラヴィス様。……美味しい……」
口をつけたメレディアがそう言って微笑む。愛おしさが抑えきれず、俺は彼女のしっとりとした金色の長い髪を一房手にすると、頬を撫でるように指先を滑らせながらそっと耳にかけた。
今この瞬間でさえも、まるで夢を見ているような心地がする。
「これで俺たちは、正式に夫婦になれたわけだ」
「ええ……。今でもまだ夢の中にいるような、信じられない気持ちでいますわ」
「……君も?」
メレディアが俺と同じ気持ちでいてくれることに、言いようのない喜びを感じる。メレディアは恥ずかしそうに頬を染めると少し笑った。
「ええ。……だって、今日に至るまで怒涛の日々でしたもの。アンドリュー様との婚約が突然解消されて、トラヴィス様とお出かけするようになって……、それから……、いろいろなことがありましたわ。こうして今、あなたの隣にいられることが夢のようです」
「……メレディア……」
健気なその言葉に、胸の奥がむず痒くなる。可愛い。
メレディアの可愛さに我を忘れそうになる自分を落ち着かせようと、俺はあえて冗談っぽくこう言った。
「だけど、本当によかったのか?もうこれで逃げられないぞ、メレディア。君は王太子妃となり、この俺の妻となった。……自由を謳歌する時期は過ぎてしまったというわけだ。少しは悔いが残っているんじゃないのか?」
するとメレディアは俺の言葉に一瞬目を丸くすると、まさか、と微笑んで言ったのだ。
「一人の時間を謳歌するよりも、もっとずっと大きな喜びを得たのですもの。あなたの妻になれたというのに、何の悔いも残るはずがございませんわ」
「……っ、」
「……ありがとうございます、トラヴィス様。私を何度も守ってくださって。私を選んでくださって。……あなたを好きになってよかった。幸せです、私」
「…………っ!」
……か……っ、
可愛すぎる…………っ!!
空色の瞳を潤ませながら、頬を染めて俺を見つめるメレディアがそんな素直な言葉をくれるものだから、俺の理性はついに決壊した。
俺はメレディアからグラスを取り上げローテーブルの上に置くと、そのまま彼女の膝の下に腕を通し抱き上げた。
「きゃ……っ!」
「すまない、メレディア。できる限り優しく触れるよう努力するから……、もし、辛かったら言ってくれ」
そう言いながら俺はメレディアをキングサイズのベッドまで運ぶと、その柔らかな体をゆっくりと寝かせた。
「トッ……、トラヴィス、さま……っ」
羞恥を堪えるようなメレディアの切なく色っぽい視線が、さらに俺を煽る。
体重をかけないよう注意して彼女の上に覆いかぶさりながら、溢れる想いが口をついて出る。
「……俺もだよ、メレディア。この日を、この夜を、どれほど夢に見たか。……幸せだよ、君を得られて。ありがとうメレディア。……愛してる」
「……トラヴィス様……」
見開かれたメレディアの美しい瞳にみるみる涙がこみ上げ、それが一筋目尻から零れた。
髪を撫で、抱きしめながら、俺は愛する人の唇にこの情熱を重ねた。
やがて空が白くなりはじめる頃まで、俺はメレディアを腕の中に抱いたまま片時も離すことはなかった。
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最後までお読みくださった皆様、ありがとうございました(*^^*)
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