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廃団地
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昨日友達のカズくんが死んだ。いや違う。正確には遺体が見付かったのが昨日なのだ。行方不明になったのは一週間前だから、もしかしたら一週間前に死んでいたのかも知れない。でも遺体は腐乱していた。
カズくんの遺体が見付かったのは、近くの廃団地だ。危ないから近付くなと各親から言われていたのに、カズくんは向かったのだ。それは六年生たちから売られたケンカを買った形だった。
それだと言うのに、その六年生たちも通夜に参列しているのが、胸の中をモヤモヤさせる。
「お前たちのせいだぞ! お前たちがあんな事言わなきゃ、カズくんがこうなって帰ってくる事は無かったんだ!」
レンが六年生たちに食って掛かっているのを、大人たちが止めているが、僕も同じ気持ちだったと気付く。何であの六年生たちが生きていて、カズくんが死ななきゃいけなかったのか。
危ないから近寄るなと言われている廃団地には、ある噂が流れていた。良くあるオカルト系の噂だ。廃団地の第四棟の四階の一室で、一家心中があり、それは人知れずに行われた為に、腐乱臭が辺りに漂うまで気付かれる事無く、通報で警察が駆け付けた時には、一家全員腐っていたそうだ。それ以来、その部屋に引っ越してくる一家は幽霊に悩まされ、すぐに引っ越していくのだ。
これがあの廃団地の噂だ。カズくんは誰から聞いたのか、この噂を廃団地前の公園で学校帰りに遊んでいる時にしたのだが、そんな時に限って六年生たちが通り掛かり、カズくんを笑い飛ばした。
「五年生にもなって、そんな事で盛り上がっているのかよ。ガキだな。幽霊なんている訳ないだろ」
これにカッとしたカズくんが六年生と言い合いとなり、もう夕暮れだと言うのに、「証明してやる!」と廃団地に向かっていってしまったのだ。
六年生たちは呆れて帰っていってしまったが、友達の僕とレンはどうしようかと顔を突き合わせて考えた。後を追って止めるべきだ。もう夜になるからカズくんの親御さんに言うべきだ。そんな言い合いをしているうちに周囲はもう真っ暗になってしまい、今から廃団地に向かうのは危険と判断した僕たちは、カズくんの親御さんに応援を頼んだ。
カズくんの親御さんはすぐに警察に通報して、PTAの連絡網も使って、大人を総動員して廃団地を隅から隅まで探したが、カズくんの姿は影も形も見当たらず、あっという間に一週間が経過した。
その間も誘拐だの神隠しだの色々噂が上ったが、地元警察が総動員されても、痕跡も見当たらず、やっぱりあの廃団地にいるんじゃないか? と僕とレンは学校帰りに廃団地を取り囲む警察の包囲網を潜り抜けて廃団地内に入ると、第四棟の四階の一室へと向かったのだ。
それはもう夕暮れも終わりの逢魔が時の事だった。一室の前にやって来た僕たちは、玄関扉のノブに手を掛け、開いている事を確認すると、ゆっくり扉を開いたのだ。
記憶はそこで途切れている。警察の話では僕たちの悲鳴を聞き付けてやってくると、僕たちは玄関前で気絶していたそうで、そんな僕たちの直ぐ側で、カズくんの腐乱死体が見付かったのだそうだ。警察は当然廃団地を一室一室調べ、この部屋も調べたはずなのに、何故今頃になって出てきたのか、謎だと首を捻っていた。
僕はあれ以来たまに変な夢を見るようになった。あの玄関扉を開けた僕たちに向かって、何体もの腐乱死体が襲い掛かってくるのを、どこからともなく現れたカズくんが押し留め、
「早く逃げろ!」
と叫ぶカズくんに促されて、その一室から逃げ出すのだ。あれは夢だったのだろうか。それとも現実だったのだろうか。でも僕とレンは、カズくんに救われて今生きていられると思っている。
カズくんの遺体が見付かったのは、近くの廃団地だ。危ないから近付くなと各親から言われていたのに、カズくんは向かったのだ。それは六年生たちから売られたケンカを買った形だった。
それだと言うのに、その六年生たちも通夜に参列しているのが、胸の中をモヤモヤさせる。
「お前たちのせいだぞ! お前たちがあんな事言わなきゃ、カズくんがこうなって帰ってくる事は無かったんだ!」
レンが六年生たちに食って掛かっているのを、大人たちが止めているが、僕も同じ気持ちだったと気付く。何であの六年生たちが生きていて、カズくんが死ななきゃいけなかったのか。
危ないから近寄るなと言われている廃団地には、ある噂が流れていた。良くあるオカルト系の噂だ。廃団地の第四棟の四階の一室で、一家心中があり、それは人知れずに行われた為に、腐乱臭が辺りに漂うまで気付かれる事無く、通報で警察が駆け付けた時には、一家全員腐っていたそうだ。それ以来、その部屋に引っ越してくる一家は幽霊に悩まされ、すぐに引っ越していくのだ。
これがあの廃団地の噂だ。カズくんは誰から聞いたのか、この噂を廃団地前の公園で学校帰りに遊んでいる時にしたのだが、そんな時に限って六年生たちが通り掛かり、カズくんを笑い飛ばした。
「五年生にもなって、そんな事で盛り上がっているのかよ。ガキだな。幽霊なんている訳ないだろ」
これにカッとしたカズくんが六年生と言い合いとなり、もう夕暮れだと言うのに、「証明してやる!」と廃団地に向かっていってしまったのだ。
六年生たちは呆れて帰っていってしまったが、友達の僕とレンはどうしようかと顔を突き合わせて考えた。後を追って止めるべきだ。もう夜になるからカズくんの親御さんに言うべきだ。そんな言い合いをしているうちに周囲はもう真っ暗になってしまい、今から廃団地に向かうのは危険と判断した僕たちは、カズくんの親御さんに応援を頼んだ。
カズくんの親御さんはすぐに警察に通報して、PTAの連絡網も使って、大人を総動員して廃団地を隅から隅まで探したが、カズくんの姿は影も形も見当たらず、あっという間に一週間が経過した。
その間も誘拐だの神隠しだの色々噂が上ったが、地元警察が総動員されても、痕跡も見当たらず、やっぱりあの廃団地にいるんじゃないか? と僕とレンは学校帰りに廃団地を取り囲む警察の包囲網を潜り抜けて廃団地内に入ると、第四棟の四階の一室へと向かったのだ。
それはもう夕暮れも終わりの逢魔が時の事だった。一室の前にやって来た僕たちは、玄関扉のノブに手を掛け、開いている事を確認すると、ゆっくり扉を開いたのだ。
記憶はそこで途切れている。警察の話では僕たちの悲鳴を聞き付けてやってくると、僕たちは玄関前で気絶していたそうで、そんな僕たちの直ぐ側で、カズくんの腐乱死体が見付かったのだそうだ。警察は当然廃団地を一室一室調べ、この部屋も調べたはずなのに、何故今頃になって出てきたのか、謎だと首を捻っていた。
僕はあれ以来たまに変な夢を見るようになった。あの玄関扉を開けた僕たちに向かって、何体もの腐乱死体が襲い掛かってくるのを、どこからともなく現れたカズくんが押し留め、
「早く逃げろ!」
と叫ぶカズくんに促されて、その一室から逃げ出すのだ。あれは夢だったのだろうか。それとも現実だったのだろうか。でも僕とレンは、カズくんに救われて今生きていられると思っている。
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