近頃よくある異世界紀行

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 宴会いや、大宴会だ。
 やっとの思いで手に入れた天上の蒼き酒。あの辛さからの解放感なのだろうか?
 ナルさん家の居間で、オレ達がバッケイ山の山頂、龍のねぐらから持ち帰った天上の蒼き酒で、オレとペガサスくんを除く大人達は、飲めや歌えのお祭り騒ぎだった。
 天上の蒼き酒は相当美味いのだろう。皆ドンドン杯が進んでいき、ドンドンベロンベロンに酔っていく。
 マロン様はともかく、他の皆は船に検疫があって持ち込めないため、ここで全部飲んでしまおうという算段のようだ。
「…それってどういう味何ですか?」
「甘露」
 オレの質問に酔っ払った源さんが漢字二文字で答える。
「…源さん甘いの苦手たったんじゃないんですか?」
「酒は別じゃ。甘い酒ならいくらでも呑めるわい」
 未成年には分からん感覚だ。
「…ペガサスくん」
「はい」
「…寝よっか」
「そうですね」
 あれだけ苦労したのにオレとペガサスくんに与えられたのは達成感ではなく徒労感だった。

「仁さんおはようございます! さぁ、今日も一日頑張っていきましょう!」
「…………あい」
 ペガサスくんは朝から元気だった。
「…どうしたの? 朝から元気だねぇ」
「だって悔しいじゃないですか。あんなに苦労して採ってきたのに、ぼくら一滴も飲めなかったんですよ?」
 まだ未成年だからな。それに今回は飲めなかったが一生飲めないという訳じゃない。この旅が終わった後、また旅行でレギンナを訪れるなり、地球から取り寄せるなりすればいいのだ。とんでもなく高くつくだろうけど。
「それでボク気持ちを切り替えることにしたんです。次の冥王の右目と終わりと始まりの理は食べ物なんですよね?」
「…酒とは聞いていないな」
 そもそも話の途中でマロン様がやって来て瞬間移動でバッケイ山に飛ばされたからな。
「ボクは決めました! 残る二つの食べ物を、食べて食べて食べまくってやるって! そのためならどんな努力も惜しまない所存です!」
 そう言ってペガサスくんは部屋を出て行った。
 熱いなぁ。まぁモチベーションになるものを見つけられたのは良いことだ。オレなんていまだにこの試練テンション上がんないもんなぁ。
「おはようございます!」
 おお、居間でも元気にあいさつか、けっこうけっこう。
「おはようございます!」
『うるさいぞ!』
 マロン様の声が響いたかと思うと、ズビィッと光線が放たれる音がする。
 オレは慌てて居間に駆け込んだ。
「…ペガサスくん大丈夫!?」
 光線はペガサスくんに当たることはなく、その横を掠めて家を貫通していた。
「仁さん、ボクもういやです」
 言って膝をつくペガサスくん。
 朝から高かったペガサスくんのモチベーションは、朝のうちにポッキリ折られたのだった。
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