世界⇔異世界 THERE AND BACK!!

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転生? 転移? 居残り?

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 俺の話を聞いてくれ。


 トラックに轢かれて異世界に転移・転生するなんて言うのは、ラノベではもうド定番の導入で、すでに古典である。そんな事態は俺の人生には起こりえないと思っていた。


 目の前にトラックが現れるまでは。



 その日俺は学校帰りの夕方に、友人たち五人と自転車で橋を渡っていた。


「人生ってつくづくクソゲーだよなあ」


 俺の言葉に友人五人が俺を見る。


「だって生まれるスタート前にチュートリアルもなければ、モードも選べないんだぜ?」


「ははははっ、確かにな! ハルアキの言う通り!」


 タカシを中心に俺の話に笑う五人。やはりこの六人でいるのは居心地が良い。そしてこれが六人で一緒に話した最後の会話になるだなんて。


 それなりに通行量の多い橋だが、見慣れた風景で見晴らしも良い。いつも通りであれば事故なんて起こりようがなかった。だがその日、そんな橋に天使が舞い降りた。


 何を言っているんだ? と事情を知らない人ならいぶかしがるだろう。俺一人がそれを見たのなら、見間違いで片付けられるが、その日橋で天使を見た目撃証言は俺だけではなく、何人もの目撃者が証言している。


 俺をはねたトラックの運転手もその目撃者の一人だ。


 トラックの運転手は、いきなり目の前に現れた人ならざる者にして、人に良く似たそれを轢くまいと、トラックのハンドルを切り、そしてその先に俺たちがいたのだ。


 橋は天使が舞い降りた事で大混乱に陥り、多重衝突がそこかしこで巻き起こり、死者、重軽傷者、行方不明者を多数出す大事故となった。


 俺が運良く生き残れたのは、トラックにはね飛ばされて川に落ちた事が幸いしたらしい。


 そう、俺は死んで転生した訳でも、トラックに轢かれてそのまま転移した訳でもなく、現実世界に生き残ったのだ。



 気付いた時には既に病院のベッドの上だった。


 トラックに轢かれたと言うのに、幸いにして俺は軽傷で、数日で退院出来るとの事だった。


 心配していただろう家族が直ぐにやって来て、いまだ前後不覚な俺を抱き締めては「良かった良かった」と泣いて喜んでいた。


 軽傷だった俺は、その時は、そこまで喜ぶ事だろうか? と不思議に思ったものだが、理由は直ぐに分かった。


 家族が出ていくのと入れ替わりに、警察が事故の事情聴取にやって来たのだが、そこで驚く事を知らされたからだ。


 友人たち五人と橋を渡って帰っていた俺だったが、トラックに轢かれて生き残ったのは、俺ともう一人だけだったのだ。


 二人はトラックに轢かれて死亡。二人は未だ行方不明だと言う話だった。生き残ったもう一人も両手足を骨折と、事故は俺が想像するより、余程陰惨なものだったようだ。


 天使の目撃証言が事故の被害者、加害者双方から多数上がっている事から、警官から俺にもその話を振られた。なので、確かに俺もいきなり天使が現れたのを見た。と証言すると、聞いてきた警官たちは何とも言えない表情を浮かべていた。


 天使の夢を見ましたか? と聞かれたが、それには首を横に振るった。何故そんな事を? と逆に尋ねると、何でも今回の事故を巻き起こした張本人の天使が、事故に見舞われた人たちの夢枕に立って、願いを聞いているらしい。そんな事あるのだろうか?


 だが実際、夢枕に天使が立ってから重傷者は驚異的な回復を見せていたり、軽傷者や加害者となった者の所には、宝くじの一等当選の報告が舞い込むなど、まるで天使が事故の埋め合わせをしているかのように、不可思議な事が続出しているそうだ。


 そんな事本当に起こっているのか? と訝しんでいた俺だったが、その日の夜、確かにあの日見た天使が俺の夢に出てきた。



 銀髪に金色の瞳、整った顔立ちはこの世のものとは思えない程美しく、透き通るような白い肌を、同じ白い衣が被い、背中には白鳥のような翼が付いていた。確かにあの日見た天使だ。


「こんばんは、お兄さん」


 鈴のように美しい声は、男とも女ともとれる声だった。思えば体つきも華奢で、男とも女ともとれる中性的な感じだ。


「えっと~、こんばんは」


 夢の中で対面する天使に、俺は返事をする。美人なんて正面から見慣れないからだろうか、何だかちょっと緊張する。


「遅くなってごめんなさい。あの事故の謝罪に来ました」


 天使は反省しているのだろう。美しい顔も翼もシュンとしている。


「望みがあれば仰ってください。私に出来る限り叶えます」


 成程。様々な不可思議な事が起こっていると言うのも、あながち警官の嘘じゃないのかも知れない。いや、警官のあんな話を聞いたから、こんな夢を見ているのかも知れない。


「どうかしましたか?」


「いえいえ」


 俺は愛想笑いで場をごまかす。さて、どうしたものか。いきなり、願いを叶えます。と言われてもな。凡人の俺には特に思い浮かばない。俺は平々凡々と生きられれば良いのだ。


「願いを叶えて貰う前に、いくつか質問しても良い?」


「ええ」


「何であの日、あの場所にいきなり現れたんですか?」


 思わず敬語で話してしまった。これだから美人は困る。


「それは……」


「それは?」


「お恥ずかしい話、私はまだ新人なのです。その為、転移魔法の空間座標がズレてしまって……」


「思いがけずあの橋の真ん中に転移してしまった。と?」


 天使は顔を真っ赤にして首肯した。いや、ちょっとかわいいな。なんて思ったけど、あの事故で死者まで出ている。俺の友人たちも死んでいるんだ。それで許してやろうとはならないな。


「俺の願い……、あの事故で死んだ友達を生き返らせてくれ。ってのは無理なんですかね?」


「無理ですね」


 そうか、天使でも無理か。


「何せ、あの事故で死亡されたお二人は、既に別の世界に転生されましたから」


 は?


「どう言う事?」


「今回の事件の関係者様には、程度の酷い方から順に謝罪をさせて頂いているのです。お兄さんの死亡されたご友人方には、真っ先に謝罪に行き、その要望を叶えさせて頂きました。お二方とも、この世界に生き返るより、異世界への転生を望まれましたので、そのように、手配させて頂きました」


 なんじゃそりゃ!?


「え? じゃあ行方不明の二人は?」


「そちらのお二方も異世界への転移を望まれましたので、そのように」


 なんだそりゃあ!?


「ええ~と、俺って何番目の謝罪なの?」


「…………最後です」


 どうやら俺の怪我が一番軽かったらしい。


 しかし、我が友よ。死亡した二人はともかく、行方不明の二人まで異世界行くとか、どうなってるんだよ。死んでなかったんだろ? そんなに現実が嫌だったのだろうか?


 こうなってくると、俺も異世界転移なり転生なりした方が良いのだろうか?


「あのう」


「はい」


「仮に俺が異世界に転移したとして、その世界ってどんな世界なんですか?」


「それはある程度ご希望に添えると思います」


「そうなんですか?」


「はい。この世界と似た世界がお望みならば、そのように取り計らいますし、もっと科学文明の発達した世界や、人間のまだ生まれていない原初の世界なども選べます」


 へえ、意外と幅広く取り揃えているんだな。


「ですが、何故かほとんどの方が剣と魔法の世界、それもステータスやパラメータ、スキルなどのあるゲームのような世界を望まれ、その世界に送り届ける事になりましたが」


 まあ確かに。剣と魔法の世界に憧れはあるよな。と言うか、俺の友人たち以外にも異世界に行った人がいるのか。


 さて、俺はどうしたものかな。

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