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どんな国?
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ペッグ回廊地下八十階層の転移陣を潜り一階に出てみると、その部屋には壁面にいくつもの『魔の湧泉』が発生していた。壁面に八つの『魔の湧泉』を擁する大広間。俺たちが出た一階はそんな場所だった。
(右の壁面に五つの『魔の湧泉』。左の壁面に三つ。残る二つは魔法陣のままか)
碧色に塗られた大広間は、どことなく荘厳な雰囲気を醸し出していた。なんと言うか、空気の湿度が違う印象がある。
「ハルアキ、行くぞ」
俺が大広間の雰囲気に心を奪われているところに、シンヤから声が掛けられた。大広間に出た一行は、既にこの広間を出て行こうとしていた。確かに、別にここが目的地じゃなかったな。と俺もバヨネッタさんを抱えたまま後に続く。
「なあ、シンヤ」
「何だ?」
回廊の先頭を行くリットーさんが、嬉々として出現する魔物に真・螺旋槍を振るっている姿を横目に、俺はシンヤに尋ねた。
「パジャンってどんな国?」
ここまで来ていて何だが、今更の質問をしてしまった。風聞で物事を語る趣味はないが、パジャンと言う国にあまり良いイメージがない。どちらかと言えば、やや悪い方に傾くかも知れない。ややだけど。
俺の質問に腕を組んで考え込んだシンヤの答えは、
「天国、かな」
と言う何ともぶっ飛んだ答えだった。
「天国!? おいおいシンヤ、この世に天国があるだなんて、本気で言っているのか?」
やや悪いイメージを180度反転させる答えだったが、そんなものを鵜呑みには出来ない。天国って。衣食住に恵まれた国民皆が健やかに暮らし、何ら憂う事もなく、笑って日々を過ごしている。とでも言うのか? それはないだろう。
「本当よ」
と答えてくれたのは、俺の胸に抱きかかえられたままのバヨネッタさんだった。
「ええっ!? 本当に天国なんですか!?」
信じられない。
「あの国の長は自らを『天』と名乗っているの。天の治める国だから天国なのよ」
成程、それで天国なのか。納得である。そこにシンヤから補足説明が入る。
「元々は大昔の戦国時代に、周辺国の二皇四帝八王を降した事から、皇帝王と名乗っていたようなんだけど、時代が下るにつれて、時代の皇帝王の一人が、自身は既に人界の長に収まる器ではない。として、自らを『天』と呼称するようになったんだって。それ以降、パジャンでは国の長は天と呼ばれているんだよ」
いやはやなんとも、スケールのデカい人がいたものだ。確か中国の秦の始皇帝は、三皇五帝と言う神や聖人よりも自身が優れているからと、皇帝と言う造語を創り出して自ら名乗ったとか。なんかそれに似ている気がする。
「確かパジャンって、五爵じゃなくて八爵なのよね」
とバヨネッタさん。爵位が八つに分けられているのか。まあ、日本でも冠位十二階とか、中国にも二十等爵とかあったからなあ。でも八つ爵位があったら覚え辛そう。
「そうですね。上から竜爵、準竜爵、熊爵、準熊爵、狼爵、準狼爵、兎爵、準兎爵の八つです」
意外と覚え易いかも知れない。
「ヤスさんの家は名家で、準竜爵なんですよ」
へえ、ヤスさんって、良いところのお坊ちゃまだったのか。段平背負っているから、そうとは見えないな。俺がちらりと本人を見たら照れていた。
「ヤスって名前も伝統のある名前でね、ヤスは七代目ヤスなのよ」
サブさんが教えてくれた。七代目ヤス。中々に重みがある気がしてきたな。
「そんな事を言うなら、サブだって十三代目サブだろう」
とヤスさんが切り返してきた。へえ、十三代目。それは結構続いている家柄だなあ。
「ただの庄屋の息子よ」
ふむ。庄屋と聞くと豪農のイメージがあるな。身分としては平民だけど、町や村の顔役の印象だ。
「あれは、農園と言うか荘園と言うか、「見える範囲我が家の土地よ」と言われた時にはア然としましたねえ」
ラズゥさんが遠い目をしている。見える範囲全部かあ。それは凄そうだなあ。しかもそれが農地となると、正にそこら一帯の名主って感じだな。小作人とか抱えているのかねえ。
ヤスさんは準竜爵家の子息で、サブさんも代々続く庄屋の息子、ラズゥさんは極神教の聖女様かあ。流石は勇者パーティだけあって、皆スペックが高いなあ。そしてゴウマオさんは……、
「何だよ?」
睨まれてしまった。まあ、人間、生まれや地位なんて関係ないよね。
「おお~」
思わず声が漏れた。回廊を抜け、入口から外に出ると、当然ながらエルルランドの林とは違う風景が広がっていたからだ。
ここはペッグ高原と呼ばれる高原だそうで、高度が高いからか少し息苦しい。見える景色はところどころ雪に覆われた草原で、木は一本も生えていなかった。
「それで、パジャンの首都とはどれくらい離れているんだ?」
俺はシンヤに尋ねる。
「そうだね、ここから南南東、距離としては馬で一週間と言ったところかな」
「馬で一週間? 結構な距離だな。俺が皆を籠に乗せて飛んで行くにしても、一日二日じゃ着かないな」
俺がバヨネッタさんを抱きかかえたままそう返すと、シンヤがにやりと口角を上げる。
「そんな事しなくたって大丈夫だよ」
とシンヤが指差す先では、ラズゥさんが呪符を展開していた。
「あれってもしかして……」
「そう。簡易転移扉さ。予め定めておいた座標にしか行けないし、使用するのに手間と時間が必要になるから、ダンジョンなんかで使用するには向かないけどね」
とは言え、人の力で空間を捻じ曲げて空間と空間を繋げるとは、流石は聖女、恐るべしだな。などと感心して簡易転移扉が開通するのを見ていると、その準備が終わったところで、ラズゥさんがこちらへ振り返る。
「さあ、準備が出来ましたよ。では参りましょう。これこそパジャンが天国と称するに値するもの。と各国のお歴々から称賛される、天の御座せられる宮殿、碧天城へ」
こうして俺たちは簡易転移扉を潜って、パジャンの宮殿へと向かう事になった。
(右の壁面に五つの『魔の湧泉』。左の壁面に三つ。残る二つは魔法陣のままか)
碧色に塗られた大広間は、どことなく荘厳な雰囲気を醸し出していた。なんと言うか、空気の湿度が違う印象がある。
「ハルアキ、行くぞ」
俺が大広間の雰囲気に心を奪われているところに、シンヤから声が掛けられた。大広間に出た一行は、既にこの広間を出て行こうとしていた。確かに、別にここが目的地じゃなかったな。と俺もバヨネッタさんを抱えたまま後に続く。
「なあ、シンヤ」
「何だ?」
回廊の先頭を行くリットーさんが、嬉々として出現する魔物に真・螺旋槍を振るっている姿を横目に、俺はシンヤに尋ねた。
「パジャンってどんな国?」
ここまで来ていて何だが、今更の質問をしてしまった。風聞で物事を語る趣味はないが、パジャンと言う国にあまり良いイメージがない。どちらかと言えば、やや悪い方に傾くかも知れない。ややだけど。
俺の質問に腕を組んで考え込んだシンヤの答えは、
「天国、かな」
と言う何ともぶっ飛んだ答えだった。
「天国!? おいおいシンヤ、この世に天国があるだなんて、本気で言っているのか?」
やや悪いイメージを180度反転させる答えだったが、そんなものを鵜呑みには出来ない。天国って。衣食住に恵まれた国民皆が健やかに暮らし、何ら憂う事もなく、笑って日々を過ごしている。とでも言うのか? それはないだろう。
「本当よ」
と答えてくれたのは、俺の胸に抱きかかえられたままのバヨネッタさんだった。
「ええっ!? 本当に天国なんですか!?」
信じられない。
「あの国の長は自らを『天』と名乗っているの。天の治める国だから天国なのよ」
成程、それで天国なのか。納得である。そこにシンヤから補足説明が入る。
「元々は大昔の戦国時代に、周辺国の二皇四帝八王を降した事から、皇帝王と名乗っていたようなんだけど、時代が下るにつれて、時代の皇帝王の一人が、自身は既に人界の長に収まる器ではない。として、自らを『天』と呼称するようになったんだって。それ以降、パジャンでは国の長は天と呼ばれているんだよ」
いやはやなんとも、スケールのデカい人がいたものだ。確か中国の秦の始皇帝は、三皇五帝と言う神や聖人よりも自身が優れているからと、皇帝と言う造語を創り出して自ら名乗ったとか。なんかそれに似ている気がする。
「確かパジャンって、五爵じゃなくて八爵なのよね」
とバヨネッタさん。爵位が八つに分けられているのか。まあ、日本でも冠位十二階とか、中国にも二十等爵とかあったからなあ。でも八つ爵位があったら覚え辛そう。
「そうですね。上から竜爵、準竜爵、熊爵、準熊爵、狼爵、準狼爵、兎爵、準兎爵の八つです」
意外と覚え易いかも知れない。
「ヤスさんの家は名家で、準竜爵なんですよ」
へえ、ヤスさんって、良いところのお坊ちゃまだったのか。段平背負っているから、そうとは見えないな。俺がちらりと本人を見たら照れていた。
「ヤスって名前も伝統のある名前でね、ヤスは七代目ヤスなのよ」
サブさんが教えてくれた。七代目ヤス。中々に重みがある気がしてきたな。
「そんな事を言うなら、サブだって十三代目サブだろう」
とヤスさんが切り返してきた。へえ、十三代目。それは結構続いている家柄だなあ。
「ただの庄屋の息子よ」
ふむ。庄屋と聞くと豪農のイメージがあるな。身分としては平民だけど、町や村の顔役の印象だ。
「あれは、農園と言うか荘園と言うか、「見える範囲我が家の土地よ」と言われた時にはア然としましたねえ」
ラズゥさんが遠い目をしている。見える範囲全部かあ。それは凄そうだなあ。しかもそれが農地となると、正にそこら一帯の名主って感じだな。小作人とか抱えているのかねえ。
ヤスさんは準竜爵家の子息で、サブさんも代々続く庄屋の息子、ラズゥさんは極神教の聖女様かあ。流石は勇者パーティだけあって、皆スペックが高いなあ。そしてゴウマオさんは……、
「何だよ?」
睨まれてしまった。まあ、人間、生まれや地位なんて関係ないよね。
「おお~」
思わず声が漏れた。回廊を抜け、入口から外に出ると、当然ながらエルルランドの林とは違う風景が広がっていたからだ。
ここはペッグ高原と呼ばれる高原だそうで、高度が高いからか少し息苦しい。見える景色はところどころ雪に覆われた草原で、木は一本も生えていなかった。
「それで、パジャンの首都とはどれくらい離れているんだ?」
俺はシンヤに尋ねる。
「そうだね、ここから南南東、距離としては馬で一週間と言ったところかな」
「馬で一週間? 結構な距離だな。俺が皆を籠に乗せて飛んで行くにしても、一日二日じゃ着かないな」
俺がバヨネッタさんを抱きかかえたままそう返すと、シンヤがにやりと口角を上げる。
「そんな事しなくたって大丈夫だよ」
とシンヤが指差す先では、ラズゥさんが呪符を展開していた。
「あれってもしかして……」
「そう。簡易転移扉さ。予め定めておいた座標にしか行けないし、使用するのに手間と時間が必要になるから、ダンジョンなんかで使用するには向かないけどね」
とは言え、人の力で空間を捻じ曲げて空間と空間を繋げるとは、流石は聖女、恐るべしだな。などと感心して簡易転移扉が開通するのを見ていると、その準備が終わったところで、ラズゥさんがこちらへ振り返る。
「さあ、準備が出来ましたよ。では参りましょう。これこそパジャンが天国と称するに値するもの。と各国のお歴々から称賛される、天の御座せられる宮殿、碧天城へ」
こうして俺たちは簡易転移扉を潜って、パジャンの宮殿へと向かう事になった。
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