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踏み車を引かされるサムソン

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「出来ますか武田さん?」


「隠れたものを見付け出すのは、得意中の得意だ」


 と武田さんはサムズアップするなり、部屋中央にある天使の像が納められた直径十メートルはある円筒形の祭壇を調べ始めた。まあ、怪しいものと言ったらこれくらいだろうから、そうなるか。


「しかし何事なの? 逃げもしないで、何故この方たちは歌を歌い続けているの?」


 武田さんの様子を見守っていた俺に、ラズゥさんが尋ねてきた。


「こいつらはアンゲルスタと言うものに取り憑かれた狂信者たちよ」


 それに答えたのはバヨネッタさんだ。


「どう言う事?」


「ええと、何でも、ドミニクは『信仰』と言うスキルを持っているらしくて、この歌で経験値を吸い上げているとか」


 と俺はバヨネッタさんの補足をする。


「『信仰』ですって!? しかもこの人数から!? 危険過ぎるわ! 何で放っておくのよ!」


「手段がないんですよ。確かに電撃と呪式の魔弾は持っていますけど、下手にここでそれを使用すると、もしどこかでこの映像を中継でもされていたら、無辜の一般市民を無差別攻撃しているかのような映像が、全世界に流れる事になりますから、アンゲルスタを倒した後の政治運営に影響が出てくるんです」


 俺の説明に、腕を組んで首を傾げるラズゥさん。


「良く分からないけれど、あなたたちにこの人数を無力化する事が出来ない事は伝わってきたわ」


「ならあなたなら出来ると言うのかしら?」


 売り言葉に買い言葉ではないだろうが、挑発的なラズゥさんの発言に、バヨネッタさんが反発を口にする。


「当然よ。まあ、見ていなさい」


 そう口にしたラズゥさんは、懐から百枚を優に超える呪符を取り出し、それを規則正しく中に浮かせると、何やら呪文を唱え始めた。そうして未だに人々が歌を歌い続ける中、それらの呪符は万遍なく部屋中を四方八方へと飛んでいく。


 ひとしきり呪文を唱え終えたラズゥさんが右手の指を二本立ててスーッと横に移動させると、歌のボリュームが段々と小さくなっていき、一分もすれば、部屋にいた人々は、俺たちを残して全員眠ってしまったのだった。


「は~~、凄いですね。見事な無力化です」


「まあ、私ほどの聖女となれば、このくらい出来て当たり前なのよ。どこかの魔女と違ってね」


 煽るなあラズゥさん。


「私だって、ここの人間たちを殲滅するのなら、同じくらいの時間で出来るわよ」


「止めてください」


「野蛮ねえ」


「なんですって!」


 と二人がいがみ合っている間に、


「良し! これで起動するはずだ!」


 武田さんの方は祭壇の絡繰からくりを解いていたようで、ガチャンと音がしたと思って振り返ったら、武田さんがクランクハンドルを回していた。それに合わせて祭壇から長さ五メートル程の横棒が八本、ニョキリと姿を表す。


「なんですかこれ?」


 良く分からない事態に、思わず首を傾げる。転移扉なり何なりが姿を現すかと思ったら、出てきたのは横棒である。何が何だか分からない。


「良し! これを押すぞ!」


 と武田さんがまさかの行動に出た。横棒を横に押し進める事で、円筒形の祭壇を回転させ始めたのだ。すると、徐々に祭壇が上へ上昇し始め、その下から上へと続く階段が姿を現し始めた。


「ほら、何をボサッと突っ立っているんだ! 皆で押すんだよ! これを押して天井へと繋げないと、上階へは行けない仕組みなんだぞ!」


 マジかよ~。これって、まるっきりアレじゃん。漫画やアニメに出てくる、悪人に捕まった捕虜とか奴隷が、何でぐるぐる回転させられるのか分からない、例の回転装着じゃないですか! まさか実物をこの目にする時が来ようとは思わなんだ。


「工藤、手伝えよ!」


 気付けば俺を除く男性陣がぐるぐる棒を押していた。まあ、あれだな。何故やらされているのか、理由が分かっている分マシだと思おう。俺も男性陣に混じって、ぐるぐる棒を押し始める。



 ぐるぐる…… ぐるぐる……


「なんだろう。凄く心が空虚になっていくのを感じるんですけど」


「口に出さないで。私だって耐えているだから」


 不満を口にしたら、俺の後ろでぐるぐる棒を押しているサブさんに叱られてしまった。


「これ、絶対にこの映像を観ているドミニクたちがゲラゲラ笑っているよな」


 シンヤの言葉に、更に心の闇が広がる。


「武田さん、本当にこれ以外に上階に行く方法見付からなかったんですか?」


「俺の『空識』を馬鹿にするなよ。多少レベルも上がっているんだ。これ以外に方法はない」


「じゃあドミニクたちは、毎度毎度こんな馬鹿げた方法で上階に上がっていると?」


「これは緊急事態用のものだろうな。普段は別の移動方法があるはずさ」


 とはヤスさんの言。まあ、そう考えた方が良いか。転移扉を持っているかそれに相当するスキル持ちでもいるのだろう。


「バヨネッタさんの転移扉では移動出来ないんですよね?」


「無理ね」


 すがるように尋ねてみるが、素気ない返事だった。


「ここの壁や天井は、魔法やスキルを反射するように作られているようなのよ。だから天井や壁の向こうを探知出来ないから、転移扉を設置出来ないの」


 成程、理解出来ました。それはそれとして、


「手伝ってくれません?」


 バヨネッタさんにラズゥさん、ゼラン仙者は一歩離れたところから、俺たちを見守っているだけだ。男だけでこのぐるぐる棒を回し続けるの、結構辛いものがあるんですけど。


「嫌よ。馬鹿みたいだもの」


 当然のように断られた。


「私は子供だぞ? そんな力があると思ったか?」


 とはゼラン仙者の言。いや、仙者なら魔法とか仙術でどうにかしてくれ。


「私もお断りよ。女性がする事じゃないわ」


 ラズゥさんも嫌と。だがそこに、


「俺は手伝っているんだけどなあ!」


 との声が響く。この声、ゴウマオさんか。姿が見当たらないから、俺の反対側でぐるぐる棒を回しているのかな。


「ゴウマオは肉体派だけど、私は違うもの」


 首を横に向けるラズゥさんに、


「てめえ、覚えておけよ!」


 とゴウマオさんが怒りの声を飛ばしていた。


「かーっはっはっはっ!! 元気だな皆! この調子でどんどん回転させていこう!」


 そんな高笑いを上げるリットーさんが、一番元気な気がするよ。

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