世界⇔異世界 THERE AND BACK!!

西順

文字の大きさ
340 / 643

南国

しおりを挟む
 青い空、青い海、ギラつく太陽。やってきましたガーシャン! いや、南国かよ! パジャン天国の国土の広大さに驚く。冬なのに俺、いつものつなぎの上を脱いで半袖なんですけど?


「お前のモノローグは知らんが、何で俺まで連れてこられているんだ?」


 タカシはのりが悪そうだ。砂浜と海岸が半々で混ざった独特の地形をしているガーシャン海岸を前にして、うんこ座りはどうなんだ?


「半眼で見るんじゃない。肩をすくめて顔を左右に振るな」


「まあまあ。文句もそのくらいにして」


 シンヤが俺とタカシの仲を取り持ってくれた。流石勇者だ。


「なんか、くだらない理由で感心された気がするんだけど」


「ハルアキはいつもくだらない事しか考えていないだろ」


 俺の人物評酷くない?


『当たっていると思うが?』


 アニンまで!? 泣くぞ!


「それで? バイト帰りに拉致ってまでここに連れてきた理由を教えて貰おうか?」


「半眼で睨むなよ」


 俺の意趣返しが気に入らなかったらしく、タカシの眉間のシワが濃くなった。


「まあまあ。でもボクも教えて欲しいな。この街で魔王と会談をするのは半年後だよね? 今来る理由って何? 下見とか?」


 優しいシンヤは、俺たちの間に立って疑問を口にする。ガーシャンの街では既に物資搬入が始まっていて、街は賑わっているが、武器や銃器を携帯した人間が歩き回っていたり、高台に電波塔らしきものが立っていたり、雰囲気の裏に魔王戦へ向けての物々しさを感じられた。


「それもある。どんなところで会談が行われるのか、一度見ておきたかったのは確かだな」


「『それも』って事は、それ以外にも目的があるんだ?」


「暇だったから」


「へ?」


 俺が理由を口にすると、二人は鳩が豆鉄砲を食らったかのように目を点にして驚いた。受ける。そして数秒遅れで顔を真っ赤にするタカシ。


「お前、暇とかそんな理由で異世界まで友達連れてくるなよ!」


「暇じゃなかったら、こんなご時世に友達を異世界まで連れてこれないよ」


 タカシが歯ぎしりしておる。受ける。


「ハルアキ、本当の理由をちゃんと説明してよ」


 おっと、シンヤも少しイライラし始めているな。シンヤは怒らせるとタカシより怖いからなあ。まあ、ちゃんと理由を説明しますか。


「暇だ。って言うのは、本当に理由の一つなんだよ」


「ハルアキ……」


 文句を言いたそうなタカシを手で制する。


「さっきも言ったけど、俺とシンヤはこれから魔王戦に向けてレベリングをしないといけないから、本当に今だけが暇なんだ。それに異世界と地球の行き来に関しても、これからもっと規制が厳しくなるみたいだし、俺たち三人がこうやって異世界で顔を合わせられるのも、最後かも知れない」


「ハルアキ……」


 うんうん。そのなんとも言えないしんみりした顔。予想通りで受ける。


『ハルアキ、南国にやってきて気分がハイになっているな?』


 あはは、確かにそうかも。おっと、肝心な事を話しそびれるところだった。


「それでさ、どうせならもっと人数多い方が良いと思わないか?」


「へ?」


「それって?」


 二人の頭に疑問符が浮かんだところで、俺はくるりと180度反転して、青い海を、いや、その先にある魔大陸を見据える。


「ト~モ~ノ~リ~く~ん!! あ~そ~ぼ~!! おら! トモノリ! 今からそっち行くから、茶菓子用意して待っとけ~!!」


 いやあ、全力で叫ぶと心の中まで吐露するみたいでスッキリするなあ。若干街の人たちの視線が痛いけど。


『ハルアキはそれでスッキリしたかも知れないが、お友達は急展開についていけずに固まっているぞ?』


「ありゃりゃ。お~い、大丈夫かあ?」


 俺の声掛けにハッとする二人。


「ちょ!? ちょっ、ちょっ、本気か?」


「本気です」


 にっかりダブルピースをすると、また固まる二人だった。



「なあ、落ちないよなあ? これ落ちないよなあ!?」


 毎度の如く手を籠にして、その中にタカシを放り込んで魔大陸へと羽ばたいているのだが、なんだろう? 既視感がある。あ! あれだ。トホウ山に行く時のゴウマオさんがこんな感じだった。


「落ちないよ」


「本当か? 本当だろうな!?」


 この状況で友達を疑うってどう言う事? いっそ落としてやろうか?


「シンヤ! 笑っているんじゃねえよ! こっちは真剣なんだぞ! ああ、こんな事ならシンヤの雲にしておけば良かった!」


 こちらと並走するように飛ぶ雲に乗るシンヤは、怯えるタカシの姿が余程面白いのだろう。ずっと口元を抑えてくすくすと笑っている。


「じゃあ、今からでもシンヤに乗せて貰うか?」


 と俺がシンヤの方に寄ると、


「いや、待て。確か筋斗雲って心が綺麗じゃないと乗れないんじゃなかったっけ?」


 などと言い出す始末。どこのドラ◯ンボールだよ? もうその設定を覚えている人間の方が少ないよ。それに大丈夫だ。こっちの飛行雲は外道仙者から仕入れた物だから、タカシの心がどれだけ汚れていようと雲から落ちる事はない。


「あ、でもレベル制限とかあったら落ちたりするのかな?」


「ああ、あるかもね」


「ほらあ! そう言うのあったりするんじゃん!」


 喚き散らすタカシだった。



 ひとしきり喚き散らしてタカシが静かになったところで、前方に何かの影が見えてくる。魔大陸ではない。魔大陸はそれ以前から見えていたからだ。もっと黒い雲で大陸全体が覆われているかと思っていたが、案外普通の大陸っぽいので、逆に驚いた。


 そうではなく、俺たちの前方に現れたのは人影だ。空だと言うのに、人影が宙に浮いている。まあ、魔大陸なら十中八九魔族なんだろうけど。


 さて、どうしたものか。とシンヤと顔を見合わせる。俺の手の中にはタカシがいるので、戦闘は避けたいところだ。ここは二手に分かれて煙に巻くかな? でもそうなると前方の人影にこっちが追いかけ回されるパターンが思い付いちゃうんだよなあ。などと思案していると、前方の人影から声を掛けられた。


「遠路はるばるようこそおいでくださいました。魔王様はお三名様の訪問を心より歓迎なさっておいでです」


 やんわりとした女性の声だった。速度を落とし、ゆっくりと人影に近付いていくと、その風貌が見て取れた。黒いローブに黒いマント、頭には三角帽子。眼鏡を掛けた黒髪三つ編みの女性で、ほうきの上に直立している。


「私は案内を務めさせて頂きます、魔女のロコモコと申します」


 いやはやなんともクラシカルな魔女もいたものだ。そして魔族じゃなかった。そして名前が美味しそうだ。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

異世界転生 剣と魔術の世界

小沢アキラ
ファンタジー
 普通の高校生《水樹和也》は、登山の最中に起きた不慮の事故に巻き込まれてしまい、崖から転落してしまった。  目を覚ますと、そこは自分がいた世界とは全く異なる世界だった。  人間と獣人族が暮らす世界《人界》へ降り立ってしまった和也は、元の世界に帰るために、人界の創造主とされる《創世神》が眠る中都へ旅立つ決意をする。  全三部構成の長編異世界転生物語。

異世界に転移した僕、外れスキルだと思っていた【互換】と【HP100】の組み合わせで最強になる

名無し
ファンタジー
突如、異世界へと召喚された来栖海翔。自分以外にも転移してきた者たちが数百人おり、神父と召喚士から並ぶように指示されてスキルを付与されるが、それはいずれもパッとしなさそうな【互換】と【HP100】という二つのスキルだった。召喚士から外れ認定され、当たりスキル持ちの右列ではなく、外れスキル持ちの左列のほうに並ばされる来栖。だが、それらは組み合わせることによって最強のスキルとなるものであり、来栖は何もない状態から見る見る成り上がっていくことになる。

レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~

喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。 おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。 ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。 落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。 機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。 覚悟を決めてボスに挑む無二。 通販能力でからくも勝利する。 そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。 アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。 霧のモンスターには掃除機が大活躍。 異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。 カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。

【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

優の異世界ごはん日記

風待 結
ファンタジー
月森優はちょっと料理が得意な普通の高校生。 ある日、帰り道で謎の光に包まれて見知らぬ森に転移してしまう。 未知の世界で飢えと恐怖に直面した優は、弓使いの少女・リナと出会う。 彼女の導きで村へ向かう道中、優は「料理のスキル」がこの世界でも通用すると気づく。 モンスターの肉や珍しい食材を使い、異世界で新たな居場所を作る冒険が始まる。

『冒険者をやめて田舎で隠居します 〜気づいたら最強の村になってました〜』

チャチャ
ファンタジー
> 世界には4つの大陸がある。東に魔神族、西に人族、北に獣人とドワーフ、南にエルフと妖精族——種族ごとの国が、それぞれの文化と価値観で生きていた。 その世界で唯一のSSランク冒険者・ジーク。英雄と呼ばれ続けることに疲れた彼は、突如冒険者を引退し、田舎へと姿を消した。 「もう戦いたくない、静かに暮らしたいんだ」 そう願ったはずなのに、彼の周りにはドラゴンやフェンリル、魔神族にエルフ、ドワーフ……あらゆる種族が集まり、最強の村が出来上がっていく!? のんびりしたいだけの元英雄の周囲が、どんどんカオスになっていく異世界ほのぼの(?)ファンタジー。

異世界のんびり放浪記

立花アルト
ファンタジー
異世界に転移した少女リノは森でサバイバルしながら素材を集め、商人オルソンと出会って街アイゼルトヘ到着。 冒険者ギルドで登録と新人訓練を受け、採取や戦闘、魔法の基礎を学びながら生活準備を整え、街で道具を買い揃えつつ、次の冒険へ向けて動き始めた--。 よくある異世界転移?です。のんびり進む予定です。 小説家になろうにも投稿しています。

処理中です...