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「はあ、はあ、はあ……」
「はっ、はっ、はっ……」
シンヤたちが『絶結界』から出てきた。魔力をギリギリまで削ったシンヤたちは、心身ともにクタクタだ。
「ふむ。上々だな。では、仕上げにこれを飲んで貰おう」
皆の状態をチェックしたゼラン仙者が『空間庫』から取り出したのは、封のされた小瓶だった。
「何ですかそれ? って、おい!」
シンヤたちが何の疑問も持たずにそれを飲み込もうとしたので、止めようとしたのだが、一歩遅かった。封を切り小瓶を呷ったシンヤ、ヤスさん、サブさん、ゴウマオさん、ラズゥさん、リットーさんが、飲んだ瞬間その場に倒れ込んだのだ。
慌てて近付いて状態を確認すれば、皆顔面蒼白でまるで死んだよう。いや、胸が上下していない。まさかと思いシンヤの口元に耳を近付けるも、息をしていない。他の皆もそうだ。全員死んでいた。
「どう言う事ですか?」
俺はゼラン仙者の方を見遣る。
「そう睨むな」
睨むな。と言われてもな。状況が状況だ。皆、コレサレの首飾りも付けていないので、普通であれば蘇りはしない。
「皆に飲ませた水薬は、神丹と言ってな。仙者秘中の薬だ」
神丹。金丹とも違うのか。
「蘇るんですよね?」
「その者次第だな」
「その者次第って!?」
「仙者の秘術、有頂天を修得するのだぞ? 死と隣り合わせなのは当然だろう」
な!? 信じられん発言だ。
「これでシンヤたちが死ねば、世界は終わりですよ」
「この程度で蘇れんようでは、どの道世界は終わっている」
あー言えばこー言う。確かに魔王軍との戦力差を考えれば、危険な賭けは必要だろう。だが、騙し討ちは頂けない。やるなら説明してからにして欲しかった。
「すぐに飲んだのはシンヤたちだぞ」
うぐっ。顔に出ていたか。まあ、確かに今回はシンヤたちにも否があるか。
「はあ。分かりました。それでその、神丹? と言うのは何なんですか?」
「飲めば分かる」
「ゼラン仙者!」
諫めるように語気を強めても、ゼラン仙者はどこ吹く風だ。
「私の口から言えるのは、飲めば分かる。それだけだ」
「…………蘇れるんですよね?」
「その者による。と言っただろう」
駄目だ。堂々巡りだ。
「ハルアキ。人は死ぬとどうなるか覚えているか?」
はあ? まあ、この状況では納得させる材料は必要か。確かカロエルの塔でそんな話をしたな。
「肉体から魂が抜けるんですよね? そして肉体は地に還り、魂は天に還る」
「そうだ。では何故、魂は天に還り雲散霧消するのか分かるか?」
何故? 肉体も地に還るんだから、同様の理由だろう。
「なんか魂を食らう微細な何かでもいるんですか?」
「いや、おらんな」
「じゃあ、分かりません」
こう言った禅問答みたいなの、異世界に来てから何度かあるけど、まともに答えられた記憶がないな。
「浸透圧だ」
「はあ?」
思わぬ答えに、俺の声が裏返る。浸透圧? 魂の? どう言う事?
「魂が魔力の塊である事は理解しているな?」
「はい」
「つまり、それは周囲にある自然の魔力よりも、魔力が集中している状態にある事を指す」
言われれば、そうかも。
「ハルアキも知っているだろうが、エネルギーと言うものは通常、高い方から低い方へ移動し、均一な状態になろうと動く」
熱力学第二法則みたいなものか。熱いものが冷たいものと合わされば、混ざってぬるくなるような。高い位置にある水が、低い位置へと流れるような。魔力にもそう言う法則があると?
「肉体と言う容器を失った魂は、魔力の薄皮一枚と言う無防備な状態で周囲の低魔力環境に置かれ、結果、魂を構成する魔力は周囲に解けて雲散霧消する」
成程、浸透圧を彷彿させるな。
「それで、その事が今の状況と関係あるんですよね?」
「そうだ。今、お前たちは魔力を使い果たし、周囲の魔力よりも魔力量が少ない状態にある」
「ああ、それならたとえ死んだとしても、魂の魔力の拡散は起こらず、魂は長時間に渡って魂のままで居続ける事が出来ると?」
「そう言う事だ」
ゼラン仙者は鷹揚に頷いた。
「つまり、魂が長時間魂であり続けている間に、その神丹とやらの力で有頂天に至り、修得し、更に蘇れ。と言う事ですか?」
俺の答えは当たりらしく、またも鷹揚に頷くゼラン仙者。
「これを尸解仙法と言う」
「尸解仙法、ですか?」
俺は思わず首を傾げてしまったが、それが不思議だったのか、ゼラン仙者も首を傾げた。
「どうかしたのか?」
「まあ、確かに方法としては死んで仙者になるんだから、尸解仙法で合っているんでしょうけど、地仙や天仙じゃあないんだなあ。と」
「地仙? 天仙?」
知らないのかな?
「はい。俺たちの世界では、仙人にも位がありまして、一番上が天仙、次が地仙。そして尸解仙は仙人の中でも一番位が低い仙人なんです」
俺の説明にゼラン仙者は目を見開き、ついで手を口元に当てる。
「まあ、俺の世界の仙人は空想上の存在ですけど」
「そうか。何にせよ、私が師より教わった有頂天に至る秘法は、この尸解仙法のみだ。地仙法、天仙法と言うのがあったとしても、それはこの場には存在しないし、それを探す時間もない」
確かになあ。魔王軍との邂逅まで半年もないんだ。有頂天を修得する方法を選んでいる場合じゃない。
「分かりました。飲みましょう」
俺はゼラン仙者から神丹の小瓶を受け取る。
「…………これ、有頂天に至るのに、どれくらい時間が掛かるものなんですか?」
「人によるな。ただしタイムリミットはある。七日だ」
七日か。それまでに蘇れなければ、流石に魂が雲散霧消して死亡って訳か。
俺は小瓶の中をじいっと覗き込む。色は茶黒く、そして漂う匂いは甘ったるい。それが逆に俺の危険察知の感覚を刺激する。やめろと本能が訴える。俺はそれを振り払うように目を瞑ると、小瓶を一気に呷った。
瞬間、舌と喉にピリピリとした刺激が走り、俺の意識は暗転した。
「はっ、はっ、はっ……」
シンヤたちが『絶結界』から出てきた。魔力をギリギリまで削ったシンヤたちは、心身ともにクタクタだ。
「ふむ。上々だな。では、仕上げにこれを飲んで貰おう」
皆の状態をチェックしたゼラン仙者が『空間庫』から取り出したのは、封のされた小瓶だった。
「何ですかそれ? って、おい!」
シンヤたちが何の疑問も持たずにそれを飲み込もうとしたので、止めようとしたのだが、一歩遅かった。封を切り小瓶を呷ったシンヤ、ヤスさん、サブさん、ゴウマオさん、ラズゥさん、リットーさんが、飲んだ瞬間その場に倒れ込んだのだ。
慌てて近付いて状態を確認すれば、皆顔面蒼白でまるで死んだよう。いや、胸が上下していない。まさかと思いシンヤの口元に耳を近付けるも、息をしていない。他の皆もそうだ。全員死んでいた。
「どう言う事ですか?」
俺はゼラン仙者の方を見遣る。
「そう睨むな」
睨むな。と言われてもな。状況が状況だ。皆、コレサレの首飾りも付けていないので、普通であれば蘇りはしない。
「皆に飲ませた水薬は、神丹と言ってな。仙者秘中の薬だ」
神丹。金丹とも違うのか。
「蘇るんですよね?」
「その者次第だな」
「その者次第って!?」
「仙者の秘術、有頂天を修得するのだぞ? 死と隣り合わせなのは当然だろう」
な!? 信じられん発言だ。
「これでシンヤたちが死ねば、世界は終わりですよ」
「この程度で蘇れんようでは、どの道世界は終わっている」
あー言えばこー言う。確かに魔王軍との戦力差を考えれば、危険な賭けは必要だろう。だが、騙し討ちは頂けない。やるなら説明してからにして欲しかった。
「すぐに飲んだのはシンヤたちだぞ」
うぐっ。顔に出ていたか。まあ、確かに今回はシンヤたちにも否があるか。
「はあ。分かりました。それでその、神丹? と言うのは何なんですか?」
「飲めば分かる」
「ゼラン仙者!」
諫めるように語気を強めても、ゼラン仙者はどこ吹く風だ。
「私の口から言えるのは、飲めば分かる。それだけだ」
「…………蘇れるんですよね?」
「その者による。と言っただろう」
駄目だ。堂々巡りだ。
「ハルアキ。人は死ぬとどうなるか覚えているか?」
はあ? まあ、この状況では納得させる材料は必要か。確かカロエルの塔でそんな話をしたな。
「肉体から魂が抜けるんですよね? そして肉体は地に還り、魂は天に還る」
「そうだ。では何故、魂は天に還り雲散霧消するのか分かるか?」
何故? 肉体も地に還るんだから、同様の理由だろう。
「なんか魂を食らう微細な何かでもいるんですか?」
「いや、おらんな」
「じゃあ、分かりません」
こう言った禅問答みたいなの、異世界に来てから何度かあるけど、まともに答えられた記憶がないな。
「浸透圧だ」
「はあ?」
思わぬ答えに、俺の声が裏返る。浸透圧? 魂の? どう言う事?
「魂が魔力の塊である事は理解しているな?」
「はい」
「つまり、それは周囲にある自然の魔力よりも、魔力が集中している状態にある事を指す」
言われれば、そうかも。
「ハルアキも知っているだろうが、エネルギーと言うものは通常、高い方から低い方へ移動し、均一な状態になろうと動く」
熱力学第二法則みたいなものか。熱いものが冷たいものと合わされば、混ざってぬるくなるような。高い位置にある水が、低い位置へと流れるような。魔力にもそう言う法則があると?
「肉体と言う容器を失った魂は、魔力の薄皮一枚と言う無防備な状態で周囲の低魔力環境に置かれ、結果、魂を構成する魔力は周囲に解けて雲散霧消する」
成程、浸透圧を彷彿させるな。
「それで、その事が今の状況と関係あるんですよね?」
「そうだ。今、お前たちは魔力を使い果たし、周囲の魔力よりも魔力量が少ない状態にある」
「ああ、それならたとえ死んだとしても、魂の魔力の拡散は起こらず、魂は長時間に渡って魂のままで居続ける事が出来ると?」
「そう言う事だ」
ゼラン仙者は鷹揚に頷いた。
「つまり、魂が長時間魂であり続けている間に、その神丹とやらの力で有頂天に至り、修得し、更に蘇れ。と言う事ですか?」
俺の答えは当たりらしく、またも鷹揚に頷くゼラン仙者。
「これを尸解仙法と言う」
「尸解仙法、ですか?」
俺は思わず首を傾げてしまったが、それが不思議だったのか、ゼラン仙者も首を傾げた。
「どうかしたのか?」
「まあ、確かに方法としては死んで仙者になるんだから、尸解仙法で合っているんでしょうけど、地仙や天仙じゃあないんだなあ。と」
「地仙? 天仙?」
知らないのかな?
「はい。俺たちの世界では、仙人にも位がありまして、一番上が天仙、次が地仙。そして尸解仙は仙人の中でも一番位が低い仙人なんです」
俺の説明にゼラン仙者は目を見開き、ついで手を口元に当てる。
「まあ、俺の世界の仙人は空想上の存在ですけど」
「そうか。何にせよ、私が師より教わった有頂天に至る秘法は、この尸解仙法のみだ。地仙法、天仙法と言うのがあったとしても、それはこの場には存在しないし、それを探す時間もない」
確かになあ。魔王軍との邂逅まで半年もないんだ。有頂天を修得する方法を選んでいる場合じゃない。
「分かりました。飲みましょう」
俺はゼラン仙者から神丹の小瓶を受け取る。
「…………これ、有頂天に至るのに、どれくらい時間が掛かるものなんですか?」
「人によるな。ただしタイムリミットはある。七日だ」
七日か。それまでに蘇れなければ、流石に魂が雲散霧消して死亡って訳か。
俺は小瓶の中をじいっと覗き込む。色は茶黒く、そして漂う匂いは甘ったるい。それが逆に俺の危険察知の感覚を刺激する。やめろと本能が訴える。俺はそれを振り払うように目を瞑ると、小瓶を一気に呷った。
瞬間、舌と喉にピリピリとした刺激が走り、俺の意識は暗転した。
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