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円運動(後編)

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 フンスフンスと鼻息荒くこちらへやってくるリットーさん。


「気になっちゃいました?」


「当然だ!」


 ですよねー。スキル『回旋』を持つリットーさんにしたら、持って来いの武術だろう。


「以前、ここに来た時にはスルーだったんですか?」


 リットーさんも俺みたいに裏技使ってトホウ山を攻略した訳じゃああるまい。なら十二の門をクリアしてきたはずだ。その時にガッパさんとも戦っただろう。


「ああ、確かリットーと戦った時は、四元素を中心に戦っていたからな。それにその頃はリットーも坩堝を開放出来ていなかったから、俺がどのように五閘拳を扱っていたか分からなかったのだろう」


 そうか。まだ『全合一』も使えていなかったのなら、『共感覚』で敵の居場所が分かるくらいか。でも、


「その後に、習う時間はなかったんですか?」


「私も中々忙しい身だからな!」


 と胸を張るリットーさん。


「リットー様は国から国へと飛び回っているお方だぞ」


 ゴウマオさんが補足してくれた。忙しいと言うよりは忙しないイメージがあるかな。


「そんなに飛び回っているんだ」


 俺の発言が馬鹿げているからだろう。ゴウマオさんとガッパさんが揃って半眼を向けてくる。


「世界最高と謳われる遍歴騎士だぞ? 世界各地の国々を回って、折衝やら問題解決やら、このお方にしか出来ない事が山積しているんだよ」


 はあ。遍歴騎士ってそんな事までするの?


「遍歴騎士やそれに相当する上級冒険者は他にもいるが、何と言っても飛竜の存在が大きい。それ故、他の者ではなくリットー個人への指名依頼が多いのだ」


 とガッパさんが説明してくれた。ああ、成程。上級冒険者と聞けばラノベのイメージが湧く。あんな感じで国で対処が難しい問題を解決したり、魔物なんかを倒して回っているのだろう。確か俺も最近発行して貰った、バヨネッタさんも持っている黄金の身分証明カードを、リットーさんも持っていたはず。あれがあれば各国で出入国はフリーだ。ゼストルスもいれば国を跨いで回るのも早いだろう。


「まあ、私の話はこれくらいにして、私にもその重拳とやらをご指導願えないだろうか?」


 頭を下げるリットーさんを前に、ガッパさんとゴウマオさんが顔を見合わせる。


「『有頂天』はもう良いのか?」


「ああ!」


 ガッパさんの問いに、拳を握って自信満々のリットーさん。


「なら、俺が教えよう。ゴウマオはハルアキの方を頼む」


「はい」


 そんな訳で、ガッパさんがリットーさんを、ゴウマオさんが俺を教える事となり、俺たちは二手に分かれた。



「はあああああああああッッ!!」


 百メートルは離れた場所で、リットーさんが腕を、脚を、全身をぐるぐる回している。あの太極拳のような動きを高速でしているのだ。確か基本の型だったか。にしても大きな声だ。そして空回りしているのか、あまり進展がないように見える。


 俺も同じように基本の型をしているのだが。俺の方は向こうに比べればゆっくりだ。だが、


 ドスッ!!


 俺の前に出された土壁を、円運動の動きを損なわないように右拳で突けば、重い感触とともに土壁がお椀状に大きく凹む。


「出来ているんだよなあ」


 俺の横にいるゴウマオさんは、つまらなそうにこちらへ半眼を向けている。


「そうですか?」


「ああ」


 生返事をしながら、ゴウマオさんは俺の周囲に、土壁を生成していく。この土壁は『五閘拳・地拳』で生成したものだ。ゴウマオさんは慣れているのだろう。自身の坩堝をギュッと上から下に押し潰すと、それが戻ってくる反動を利用するように指を二本立たせる。これだけで土壁が生まれるのだから面白い。


「なんで実戦でこれ使わないんですか?」


 俺は生成された土壁をコンコンと叩きながら尋ねてみた。ゴウマオさんが地拳を使っているのを見た事がない。重拳は確かヤマタノオロチをぶん殴った時に使っていた気がする。


「あん? ああ、地拳は地形に作用するから、集団戦だと使い辛いんだよ。最初に防衛陣地として出す分には有用だけど、それも壊されると足元が瓦礫だらけになって、動き難くなっちまうからな」


 想像しただけで合点がいくな。


「だからまあ、こう言う修行なんかの的として俺は使っている」


 言って土壁をコンコン叩くゴウマオさん。


「さ、無駄口もこれくらいにして、修行再開だ。と言っても、教える事ないんだよなあ」


 ははは。と俺は苦笑で返し、基本の型から始める。そして坩堝を回転させたら、それを身体の動きと同調させて、土壁を突く。


 ボコッ!!


 今度は更に威力が出たようで、土壁の中央に丸い穴が空いた。


「おー、凄い凄い」


 棒読みだ。褒めてくれているけど棒読みだ。


「もう俺、行っていいか?」


「はあ」


 ゴウマオさんとしては、出来ている俺より、あっちで苦戦しているリットーさんの方が気になるらしい。まあ、考えてみればこうなるのも自然な流れだった。だって俺のプレイヤースキルの欄には、既に『五閘拳・重拳』が表記されているのだ。身に覚えがなくても、使えて当然だったのである。俺は、長らく乗っていなかった自転車の乗り方を思い出すかのように、身体が重拳の使い方を思い出すのを感じていた。


「あ、はい。じゃあ、リットーさんの方をよろしくお願いします」


「おう。じゃあな」


 俺が促せば、ゴウマオさんは素っ気なくリットーさんの方へ行ってしまった。なんかちょっと寂しい。まあ、良いや。今日一日は重拳に充てて、明日から『有頂天』の修行に入ろう。これはゼラン仙者とも事前に打ち合わせてある。


 まあ、『有頂天』もプレイヤースキルの欄に表記されているから、使う事は可能だろう。ただ、それは使う事が出来るだけで、使いこなせるのとは別の話だ。自転車に乗れるのとBMXのプロ選手では、自転車の扱いに天と地程の差がある。


 まずは重拳の方をもう少し使えるようになろう。攻撃の種類が増えるのは良い事だからな。


『海賊剣術の方も忘れるなよ?』


 とアニンのツッコミが入る。はいはい。それも身体が覚えているだろうから、そっちも試してみるか。


 そんな事を考えながら、先程ゴウマオさんがやっていたように、俺は自身の坩堝を押し潰し、その反動と同調させて、両手を上に振り上げる。そうすると、俺の眼前に土壁と言うより、岩の尖塔のようなものがそびえ立った。


 う~ん、デカい。やっぱりゴウマオさんみたいに上手く形に出来ないなあ。なんて、内心では地拳が扱えた事にほくそ笑みながら、重拳でもって眼前の岩の尖塔を攻撃していくのだった。

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