世界⇔異世界 THERE AND BACK!!

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宝箱

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 周囲を見回すも、俺以外誰もいない部屋。


「皆、生きている?」


 皆に持たせた通信魔道具に話し掛けるが、応答はない。くっ、通信的にも遮断されたか。それならばと、俺は夢幻香の指輪に火を点し、『有頂天』状態となって辺りの気配を探索する。


 そうすれば見えてくる目茶苦茶な地下一階の構造。大きさは半径一キロ以内に収まっているが、その中に仕掛けられている罠の数は百を有に超えるだろう。そんな地下一階で、仲間はバラバラの位置に飛ばされていた。間違いなくバヨネッタさんがエメラルドの像を取ったのがトリガーだったよなあ。


「はあ」


『どうするのだ?』


 と腹の中のアニンが尋ねてくる。そのどうするは、仲間との合流をって事? それとも迂闊な行動をしたバヨネッタさんに対する追求?


『最初の階層でこうなったのは、教訓として受け止められるが、ハルアキの仲間にはレベルが低い者も少なくないのだ。待っていては死ぬぞ』


 そうだ! 既にカッテナさんとダイザーロくんは戦闘に突入しているようで、俺と同じく『空織』で感知出来る武田さんは、ヒカルの結界に閉じこもっている。他の皆も各々動き出しているようだし、こちらも動き出すか。まずは武田さんとの合流かな。


 と一歩踏み出したところで、床に隠されていた魔法陣が発動した。そして出てくる魔物たち。はあ。何もない部屋はないって事かな。俺はアニンをバトルスーツのようにまとい、『清塩』と『聖結界』で出来た白い曲剣で、出現してくるアンデット系魔物たちを斬り伏せていく。



 部屋の魔物を全て倒したところで、入り口から廊下に顔を覗かせる。と、


 ズシャンッ!


 と入り口上部からギロチンが落ちてきた。『瞬間予知』で避けなければ、危うく首が胴体から離れるところだった。とりあえず落ちてきたギロチンを蹴りで壊すと、再度廊下に顔を覗かせる。


 左右は一見すると何もない廊下が続いているが、そんな訳ないよな。俺は壊したギロチンの欠片を、まず右の通路に投げ入れた。すると、


 バカンッ、ドシャンッ!


 と結構長い距離の落とし穴が開いたかと思うと、その逃げ道を塞ぐように天井が落ちてきた。そして一定時間が経過したら元に戻った。成程。


 次いで左側は? とギロチンの欠片を投げ込むと、


 ジャリンジャリンジャリンジャリン! ドスドスドスドス!!


 と廊下を埋め尽くす刃物とぶっとい矢の雨あられ。こちらも一定時間を過ぎると元の状態に戻った。


 う~ん。『有頂天』で感知した感じ、右の落とし穴の中には鋭い槍が所狭しと配置されていたし、その下は何か液体が満たされているんだよなあ。あれって毒か?


『毒だろうな』


 殺意が高い。まあ、でも、進むなら右かな。武田さんの方に進むには近道だし。となればと俺はギロチンの欠片を右の廊下に投げ入れた。


 バカンッ、ドシャンッ!


 開く落とし穴、落ちてくる天井。が、それで通路が塞がれた訳ではない。俺は落ちてきた天井の上を、悠然と歩いていく。


「ま、こうすればこっちの道の方が楽勝なのよ」


 と独り言ちながら、歩く事数歩。


 ガンッ! ギンッ!


 落とし穴の続く廊下の向こうから、槍が飛んできた。それを曲剣ではたき落とす。


『そうは問屋が卸さないようだぞ』


「変な言葉覚えるなよ」


 とアニンへ返しながら俺は走り出した。槍の対処をしながらは面倒だが、ゆっくり移動していたら、天井が元の位置に戻ってきてしまい、それによって押し潰されてしまうからだ。


 長い落とし穴の廊下を全力疾走している間も、天井は徐々に元に戻り始め、もう天井によって圧迫死させられる寸前で、俺は落とし穴のある廊下の外にある部屋に滑り込んだ。


「ふうう、罠相手だと、『逆転(呪)』のスキルも通用しないから、廊下一つ通り抜けるのも簡単じゃないな」


 などと俺は額の汗を手で拭いながら部屋を観察する。入った部屋は小部屋で、俺が入ってきた入り口を東とすると、南と西の二方向にも入り口がある部屋で、入り口のない北の壁面に凹みがあり、そこに祭壇があり、小さな宝箱が2つ置かれていた。


 何とも怪しい部屋だ。明らかに罠がありそうで、しかし宝箱は魅力的で、さてどうしたものか? と悩んだのも一瞬。これを取り逃がしたのがバヨネッタさんにバレたら、叱られるのは確定な訳だし、ダンジョンの宝は男のロマンなのだから、取らない選択肢はない。と俺は宝箱へと歩を進めた。


 コンコン。


 まずは罠が設置されていないか、二つの宝箱を叩いてみた。場合によっては人食い宝箱なんて可能性もあるので、俺は曲剣をいつでも振れるようにしていたが、いきなり何かが飛び出すと云う事はないようだった。


 宝箱は片方には鍵が掛かっていて、もう片方には鍵は掛かっていなかった。と言うか、鍵の掛かっていない方の宝箱に、鍵が入っていた。他には何も入っていない。まあ、小さい宝箱だし、そんな事もあるか。しかし鍵は金銀魔石で装飾された美しいもので、この鍵自体に価値がありそうだが、


「これって、絶対もう片方の宝箱を開ける鍵だよね?」


『であろうな』


 う~ん、参ったな。この鍵でもう片方の宝箱を開けるべきか悩むな。ゲームなんかだと鍵は消耗品で、宝箱を開けると消滅するのがお約束である。この装飾された鍵も同様だとすると、もう片方の宝箱を開ければ、なくなってしまうだろう。


 それで宝箱の中身が鍵よりも値打ちのあるものならば良いが、カスを掴まされる可能性だってゼロじゃない。う~ん、悩む。


 この宝箱、小さいし、宝箱ごと持って行く事も可能なんじゃないか? と鍵の掛かっている宝箱を持ち上げようとしたところで、ガガガッと三方向の入り口が閉まりかけ、慌てて手を離した。


 成程。宝箱自体を持っていこうとすると、この部屋に閉じ込められる仕組みか。


『何なら、我が開けるか?』


 それも考えた。アニンを鍵に変化させて、開ける事は可能か? でももし宝箱に仕掛けがあって、正規の鍵以外は受け付けず、偽鍵だと中身が壊れる仕組みだとしたら?


 …………いや、やってみるか。あからさまな罠だ。正規の鍵で開けても、何が起こるか分からないしな。


「アニン」


『うむ』


 鍵に変化したアニンを、俺は宝箱の鍵穴に挿し込んだ。そしてゆっくりゆっくり回す。どうやら開きそうは開きそうだ。このまま何事もなく開いてくれ。と祈りながら回すと、


 カチャン。


 と鍵の開く音がして、宝箱が開いた。その中に入っていたのは……。

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