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宇宙コースターコース(三)
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二周目最初の縦一回転のコースの最後に鎮座していたデムレイさんのマシンを、マシン前部で弾き飛ばしたカヌスは、そのまま先頭で五連横回転を通り過ぎ、アップダウンを通り過ぎ、深い谷までやって来た。
そこで待ち受けていたのはミカリー卿のマシンだ。深い谷はマシン後部の多段ロケットで飛び越えるのがセオリーとなっているが、谷の向こう側ではミカリー卿のマシンが陣取っていて、直進しか出来ないカヌスのマシンでは、ここを飛び越えるのは無謀に思えた。
だがカヌスはそんな障害など何とも思っていないかのように、深い谷をロケットエンジンを使用して飛び越える。その先に待ち構えている直方体をしたミカリー卿のマシン。路面に磁力でくっついているので、宙を飛ぶカヌスのマシンがぶつかってきたところで、逆にカヌスのマシンが弾き返されるオチかと思いきや、カヌスは宙空で更に後部の多段ロケットを噴射させ、更にスピードを上げた。
まるでミサイルになったかのようなカヌスのマシン。その衝撃をもろに受けたミカリー卿のマシンは、マシンをカヌスのマシンの方へバックさせる事で多少踏ん張りはしたが、カヌスのマシンの速度✕質量=威力、その速度上昇による威力上昇には敵わず、コースから弾き飛ばされてしまった。
とは言え、カヌスのマシンの行く手をほんの数刻にわたって阻止し、更には最後のロケットエンジンを使用させた功績は大きく、後ろに続くリットーさんがカヌスのマシンに追い付いた。それに横並びで最終周に突入する事になったとしても、カヌスのマシンは深い谷をロケットエンジンで飛び越える事が出来ず、遠回りする事になる。
カヌスとリットーさんのマシンが横並びでアステロイド帯に突入する。ここは右から左に隕石群が流れる地帯だ。コースの右側を進むカヌスのマシンの方が、隕石に当たる確率が高く、それを回避する為にも、あまりスピードを上げる事は出来ないだろう。
などと思っていたのだが、カヌスはマシンのスピードを調節しつつも、左のリットーさんのマシンと、危険なアステロイド帯でデッドヒートを繰り広げていた。
いや、むしろリットーさんのマシンの側面に張り付くように走っている。と言う方が正確だ。これは何かしら画策している。と思考するとともに、俺の前を行くバヨネッタさんの視点から、『慧眼』による幻視が、その予想の裏付けをしてくれた。
リットーさんのマシンとぴったり横並びに走るカヌスのマシン。アステロイド帯ももう終わると言うところで、前方をやや大きめの隕石が流れている。このまま突き進めば、前方の隕石がカヌスのマシンの側面に直撃してクラッシュするなり、少なくともコントロールを失うはずだ。普通なら。
それだと言うのに、カヌスはここでマシンのスピードを上げると、リットーさんのマシンの前に出る。そして前方の隕石に自らぶつかりに行ってみせた。そうする事でカヌスは、己のマシンの後部に隕石を当て、カヌスのマシンが左にズレる。特にマシン後部は激しく左にブレて、後続のリットーさんのマシンにぶつかった。これによってリットーさんのマシンも左にズレる事となり、ズレを解消しようと、左側部の噴射口から燃焼ガスを噴射する。
するとこれによって、リットーさんのマシンにぶつかっていたカヌスのマシンも、コースに対して正常な方向へとマシンの位置を戻し、スピードを上げてアステロイド帯を先頭で抜けていく。
(まるで曲芸だな。ずいぶんとこのゲームを楽しんでおられるようで)
こうして先頭でアステロイド帯を抜けたカヌスのマシンは、先の横一回転180度カーブも通り抜け、その先の二回目のアステロイド帯が流れる谷へとやって来た。
前方をのろのろ走る武田さんのマシンを追い抜き、谷を駆け抜けていくカヌスのマシン。これはトップ独走か? と闘技場が盛り上がる中、アステロイド帯の谷を抜けて、緩い坂を登るカヌスのマシンの前方に、三台のマシンが降ってきた。
もちろんその三台とは、リットーさん、バヨネッタさん、俺のマシンである。何が起こった? と驚きで目を見開くカヌス。それはそうだろう。俺がそちらの立場だったとしても、動揺する。この谷でロケットエンジンを使って飛び越えれば、宇宙の彼方に飛んでいってしまうはずなのだから。
まあ、からくりは単純明快で、武田さんのマシンのボディに仕込まれていたウェポンによるものだ。武田さんのマシンにはこのコースと同質のコース素材が搭載されており、これを展開する事で即席の橋を作り出し、俺たち三台は弧を描くこの橋を渡ってアステロイド帯の谷を攻略したのだ。
まさかの事態に観客席から悲鳴が上がる。ここを三台でカヌスのマシンの前を取れたのは大きい。カヌスのマシンは直進しか出来ない仕様だ。前方を三台で塞げば、いくらカヌスでもお手上げだろう。そうちらりとカヌスに視線を向けるが、その目にはまだ闘志が宿っていた。
ここから逆転の目があるとは思えないが、カヌスが諦めていない以上、ゴールするまで注意を怠る事は出来ない。
アステロイド帯の谷の先、坂を登り六連横回転のコースを通り過ぎ、二連縦回転のコースを越え、各マシンはスタートラインまで戻って来た。レースはラストの三周目。ここで勝っておきたい。負けて三戦目に突入は、プレッシャーが凄いからなあ。
そこで待ち受けていたのはミカリー卿のマシンだ。深い谷はマシン後部の多段ロケットで飛び越えるのがセオリーとなっているが、谷の向こう側ではミカリー卿のマシンが陣取っていて、直進しか出来ないカヌスのマシンでは、ここを飛び越えるのは無謀に思えた。
だがカヌスはそんな障害など何とも思っていないかのように、深い谷をロケットエンジンを使用して飛び越える。その先に待ち構えている直方体をしたミカリー卿のマシン。路面に磁力でくっついているので、宙を飛ぶカヌスのマシンがぶつかってきたところで、逆にカヌスのマシンが弾き返されるオチかと思いきや、カヌスは宙空で更に後部の多段ロケットを噴射させ、更にスピードを上げた。
まるでミサイルになったかのようなカヌスのマシン。その衝撃をもろに受けたミカリー卿のマシンは、マシンをカヌスのマシンの方へバックさせる事で多少踏ん張りはしたが、カヌスのマシンの速度✕質量=威力、その速度上昇による威力上昇には敵わず、コースから弾き飛ばされてしまった。
とは言え、カヌスのマシンの行く手をほんの数刻にわたって阻止し、更には最後のロケットエンジンを使用させた功績は大きく、後ろに続くリットーさんがカヌスのマシンに追い付いた。それに横並びで最終周に突入する事になったとしても、カヌスのマシンは深い谷をロケットエンジンで飛び越える事が出来ず、遠回りする事になる。
カヌスとリットーさんのマシンが横並びでアステロイド帯に突入する。ここは右から左に隕石群が流れる地帯だ。コースの右側を進むカヌスのマシンの方が、隕石に当たる確率が高く、それを回避する為にも、あまりスピードを上げる事は出来ないだろう。
などと思っていたのだが、カヌスはマシンのスピードを調節しつつも、左のリットーさんのマシンと、危険なアステロイド帯でデッドヒートを繰り広げていた。
いや、むしろリットーさんのマシンの側面に張り付くように走っている。と言う方が正確だ。これは何かしら画策している。と思考するとともに、俺の前を行くバヨネッタさんの視点から、『慧眼』による幻視が、その予想の裏付けをしてくれた。
リットーさんのマシンとぴったり横並びに走るカヌスのマシン。アステロイド帯ももう終わると言うところで、前方をやや大きめの隕石が流れている。このまま突き進めば、前方の隕石がカヌスのマシンの側面に直撃してクラッシュするなり、少なくともコントロールを失うはずだ。普通なら。
それだと言うのに、カヌスはここでマシンのスピードを上げると、リットーさんのマシンの前に出る。そして前方の隕石に自らぶつかりに行ってみせた。そうする事でカヌスは、己のマシンの後部に隕石を当て、カヌスのマシンが左にズレる。特にマシン後部は激しく左にブレて、後続のリットーさんのマシンにぶつかった。これによってリットーさんのマシンも左にズレる事となり、ズレを解消しようと、左側部の噴射口から燃焼ガスを噴射する。
するとこれによって、リットーさんのマシンにぶつかっていたカヌスのマシンも、コースに対して正常な方向へとマシンの位置を戻し、スピードを上げてアステロイド帯を先頭で抜けていく。
(まるで曲芸だな。ずいぶんとこのゲームを楽しんでおられるようで)
こうして先頭でアステロイド帯を抜けたカヌスのマシンは、先の横一回転180度カーブも通り抜け、その先の二回目のアステロイド帯が流れる谷へとやって来た。
前方をのろのろ走る武田さんのマシンを追い抜き、谷を駆け抜けていくカヌスのマシン。これはトップ独走か? と闘技場が盛り上がる中、アステロイド帯の谷を抜けて、緩い坂を登るカヌスのマシンの前方に、三台のマシンが降ってきた。
もちろんその三台とは、リットーさん、バヨネッタさん、俺のマシンである。何が起こった? と驚きで目を見開くカヌス。それはそうだろう。俺がそちらの立場だったとしても、動揺する。この谷でロケットエンジンを使って飛び越えれば、宇宙の彼方に飛んでいってしまうはずなのだから。
まあ、からくりは単純明快で、武田さんのマシンのボディに仕込まれていたウェポンによるものだ。武田さんのマシンにはこのコースと同質のコース素材が搭載されており、これを展開する事で即席の橋を作り出し、俺たち三台は弧を描くこの橋を渡ってアステロイド帯の谷を攻略したのだ。
まさかの事態に観客席から悲鳴が上がる。ここを三台でカヌスのマシンの前を取れたのは大きい。カヌスのマシンは直進しか出来ない仕様だ。前方を三台で塞げば、いくらカヌスでもお手上げだろう。そうちらりとカヌスに視線を向けるが、その目にはまだ闘志が宿っていた。
ここから逆転の目があるとは思えないが、カヌスが諦めていない以上、ゴールするまで注意を怠る事は出来ない。
アステロイド帯の谷の先、坂を登り六連横回転のコースを通り過ぎ、二連縦回転のコースを越え、各マシンはスタートラインまで戻って来た。レースはラストの三周目。ここで勝っておきたい。負けて三戦目に突入は、プレッシャーが凄いからなあ。
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