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『良くぞいらした。異界よりの大使よ』


 玉座に座するパピー王の前で、立ったまま一礼する。仮にも一国の君主であるバヨネッタさんがいる手前、ここで跪礼する事は出来ない。それでもパピー王はその事に文句も言わず、こちらと対等にあいさつしてくれた。懐の広い方らしい。


「この度は歓待して頂き、ありがとうございます。まさかここまでもてなして頂けるとは思っておらず、一同望外の喜びであります」


 俺の謝意に鷹揚に頷くパピー王。


『良いのです。あなた方には、ボッサム一族を掃討して頂いた恩がありますから。こちらとしても、相応の歓迎を、と配下には計らいました』


「ボッサムの件、ですか?」


 まあ、確かにエキストラフィールドで、トロルロードのボッサムを倒しはしたが、それはエキストラフィールドに害があっての事だ。それに直接手を掛けたのはジオだし。それがこの国にも影響があったと言う事だろうか?


『ボッサムが治めていた国と、このフォルンケインは国境を接しているのですが、ボッサムは立ち回りが上手く、その為に長年に渡り、ボッサムの国が有利となる不平等条約を結ばされておりました。これによって我が国の民たちには、不本意ながら負担を強いていたのです。それがあなた方の活躍により、それも解消される事でしょう。本当に感謝しているのですよ』


 成程。ボッサムはエキストラフィールドだけでなく、この地下界でもやりたい放題していたのか。確か、六領地同盟の内、五カ国は小国だったな。国力に劣っていれば、不平等条約を交わされても仕方ないか。ここの魔王であるブーギーラグナは、強者を尊重すると言う話だし、不平等である事を魔王に訴えたところで、一蹴されて終わりだったろう。


「いえ、あの件はたまたま私たちとフォルンケイン双方に利があっただけの事。今後は上下なく公平な関係を築いていければ、我々としてもありがたい限りです」


『出来るだけそのように差配しましょう』


 良し! 王様から言質取ったぞ! たとえ小国でも、一国の王からこの言葉を引き出せたのは大きい、はず。魔物だから、すぐ反故にする。って事はないよね?


『ここまでの道中、中々に苦労なされたご様子。話は一先ずここまでにして、部屋を用意してあります。皆様休憩をお取りください』


「お気遣い感謝致します」


 こうして、パピー王との面会は終わった。



『こちらをお使いください』


 配下の浮馬族の方が、部屋へ案内してくれた。なんと俺たち十三人に対して、一人一部屋との待遇だった。


『後程、饗応の席の準備が整いましたら、お迎えに参りますので、それまでどうぞ、ご自由にお過ごしください。部屋の前には小間使いを待機させておりますので、何かお困りの際には、その者らにお申し付けください』


 案内役の浮馬族は、そう言ってどこかへ行ってしまった。


(どう思う?)


 部屋にはシャコガイを更に大きくしたような大きな二枚貝のベッドがあり、メルヘンだなあ。と思いながらそのベッドにゴロンと横になりつつ、アニンに尋ねる。


『なんだ、信用していないのか?』


 俺の問いに、呆れたように返事をするアニン。


(半々かな)


『理由を聞こう』


(パピー王は話の最後に、「道中苦労したようですね」と言っていた。それはつまり、俺たちの行動が筒抜けだったと言う事だ。地下界に着くなり、迎えの使者たちが待ち受けていたしね)


『成程な』


 俺の中でアニンが首肯している感覚がある。


(苦戦しているのが分かっていたのに、助けに来なかった。感謝しているなら、助けるくらいしてもおかしくないだろう?)


『だが、ブーギーラグナが強者を優遇するなら、ここの王もそれに倣うだろう。いくら感謝をしていても、地下界まで来れないような弱者なら、切り捨てるのはあり得るだろうな』


(まあな。だからまあ、そこは俺も納得している)


『他にも気になる事が?』


 何を疑っているのか? とアニンの声は語る。


(こうして十三人全員に一部屋与えている事さ)


『これはおかしな事だと?』


(言ってみれば、十三人が分断された形だからな。扉の前には小間使いと言う名の見張りまで立てている。明らかに俺たちを監視していると考えて良いと思う)


 これにはアニンも納得したらしく、


『確かに、そう言われればそうだな。一ケ所に集めておくのではなく、バラバラに分けたと言う事は、我々が一ケ所に集まるのを危惧しての行動と取れる。集まられると困る理由…………、転移か』


 これに俺は首肯する。


(俺たちが全員集まっていたら、転移系のスキルや魔法で簡単にここから逃げ出せるからな。だけどバラバラだと、誰か一人が逃げても、他の仲間を人質に取れる。バヨネッタさんにサングリッター・スローンを使わせなかったのも、逃げられたら追う手段がないからだと、この現状は物語っている)


『ふむ。奴らが何を企んでいるかは分からぬが、この状況は良いとは言えない訳か。通信魔導具や『六識接続』で皆と連絡を取るか? ホウレンソウだったか?』


 俺はそれに対して首を横に振る。


(それも悪くないけど、パピー王は道中の俺たちのやり取りを感知していた。それに浮馬族は『念話』で会話する種族だ。となると、ここで通信魔導具を使えば、恐らくその内容は向こうに筒抜けになると思う。同じく『六識接続』での会話も『念話』だからねえ)


『ではどうする? 向こうの真意が分からぬ以上、こちらに打つ手はない。指を咥えて何かが起こるのを待っているしかないぞ』


 そうなんだよなあ。向こうの真意が分かれば、立ち回りのしようもあるんだけど。…………、


「座して待っていても状況は変わらない。動くか」


 そう独り言ち、俺はベッドから立ち上がった。

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