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貯古齢糖 壬琉苦

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ACT-45

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~十五分経過~


「ハァ…ハァ…さすがはご主人様のお師匠様です。私が五日かけて自主製作した、ご主人様百問クイズを全て正解するなんて…」

「…君もなかなかやるようだね、僕が彼に作った料理のレシピを、全て事細かに覚えているなんて…」

(最初は誤解を解いているだけの謎空間だったのに、いつの間にかクイズ大会が始まり、料理対決になっていた……。たった十分ちょっとで、いったい何があったんだよ)


 三人は本来の目的を忘れ、ギルド内で騒いでいた。


「あんな楽しそうに笑うカケルは、久々に見るよ」

「ギルドマスター、貴方までどうしたんですか?」

「いや、私の部屋までバカ笑いが聞こえてきてね、何事かと思って見に来たんだよ」

「それは、すみませんでした。二人には、俺からよく言っておくので」

「気にしなくてもいいさ…。彼の姿を見ることができて、私は満足しているから…」

「何か言いたそうですね?」

「分かるかい。私は彼と語り尽くしたいことが山ほどあるからね」

「御子柴堂に行けば、いつでも会えますよ」

「あはは、私も彼の食堂には、何度か足を運んだんだけど、相手にしてもらえなくてね。ご飯だけ食べて帰ってしまったよ」

「優しい師匠が、意外ですね?」

「まぁ、彼が話してくれないのは、私のせいでもあるんだけどね…」

(ギルドマスターが切なそうな顔をしている。二人の間に何があったんだろう?)


 シエラとの言い合いに一区切りつけた翔が、ギルドマスターに気づいて、近寄って来た。


「久しぶりだね、ユージ」

「あぁ、こうやって会話をするのは、あの時以来だね」

「僕は今日、弟子の鈴木くんとシエラちゃんを連れて、魔界都市ウアニクスに行こうと思う」

「そうか…遂に、彼女との因縁に決着をつけにいくんだね」

「僕はもう若くはない。だけど、可能性を繋いでくれる若い命を育成することはできる。僕たちは、"彼女"を失った時に、三人でそう決めたのは覚えているかい」

「忘れるわけがないじゃないか、私はギルドのマスターの座に就いて、カケルはお店を開きながら、最高の逸材を探す。今はこの場にいない彼は、一国の王になって、魔王軍打倒を目指している。三人の夢は違えど、たどり着く場所は必ず一緒になる…。この夢を叶えるために数十年の年月が流れた」

「僕は夢を叶えるために、次に夢を与えるために、今日で全てを終わらせて来るよ」

「そうか…なら、私にはこれぐらいしかしてやれないな」


 ギルドマスターは腰にぶら下げていた立派な剣を、カケルに渡した。


「この剣は……」

「私の夢を実現させるために一緒に連れ添ってくれた、いわば、戦友と呼んでもいい存在だよ。…これを、君に持っていってもらいたい」

「ありがとう……。絶対に成し遂げてみせるよ……」


 翔は健太郎を連れて、シエラのもとに向かう。


「二人には迷惑をかけると思うけど、よろしく頼むね」

「任せてください。事情は分かりませんが、二人の夢を叶えるために、俺は全力で挑みます」

「私は、ご主人様と一緒なら、どんな困難でも乗り越える所存です」

「二人とも気合いが入っていて良いね。…それじゃ、行こうか」


 健太郎の肩に、二人は手を置いた。

 健太郎は二人のことを確認して、魔方陣を展開した。


「ユージ、行ってきます」

「私の戦友、家族のことをしっかり頼んだよ」


 カケルは小さく親指を立て、ユージに合図した。

 健太郎の展開した魔法、空間転移魔法が発動した。


(私たち……俺たちの叶えることができなかった夢を、ちゃんと叶えて来いよ。……天国にいる彼女のためにも)


 ユージが見送る中、三人は魔界都市ウアニクスに向かった。
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