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貯古齢糖 壬琉苦

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ACT-51

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「ここが、私が守護している都市、ウアニクスだよ」

 少女は、健太郎と翔をウアニクスまで連れてきた。


 ウアニクスの門番だけが開くことができる大きな門が、少女により開かれ、都市内に入る。


「はへぇ~、想像じゃ荒れた都市をイメージしてたけど、実際は全然違うな…。荒れた雰囲気は一切感じない、綺麗な都市だ」

 健太郎はウアニクスの都市内をぐるっと見渡し、思わず呟いた。


「貴方が抱いているイメージは、所詮"彼ら"に上書きされたモノに過ぎない…」

「どういう意味だ?」

 少女が意味深なことを健太郎に言う。


「おーい! ご主人様ー!」

(この声は…)

 健太郎たちが歩いていると、後ろの方から聞き覚えのある声が聞こえた。

 健太郎はすぐさま振り返り、声の主を確認する。


「シエラ、無事だったのか!」

 健太郎はシエラに飛び付き、ぎゅっと抱き締めた。


「はい、ウアニクスに住む魔族の皆さんに、迷子になり困っていたところを助けてもらいました」

「えっ?」

 シエラの一言に、健太郎は疑問を抱く。


(女神様やイベエラの皆が言っていた魔族とは、随分かけ離れた性格をしているな…)

 シエラの後ろをよく見ると、シエラを助けてくれたであろう魔族たちの姿が見えた。

 魔族たちはシエラに、笑顔で手を振り、安心した表情を浮かべていた。


「これが、私たち魔族…。貴方たちが聞かされていた話とは、完全に正反対な種族なの…。芯から他種族を思いやり、共に共存できることを願う…優しい者たちの集まり。それが、魔族の真の姿…」

 少女は辛そうに語る。


「俺が戦ってきた魔王軍の奴らは、相当な悪者揃いだったぞ」

「それは、魔王が神族に殺されたからよ…。元々の彼らは、魔王と共に世界の平和を目指す、純粋な魔族たちだった」

「嘘だ! 魔王軍が世界を侵略し、それを止めるために神族が立ち上がったんだ!」

 健太郎は少女を否定する。だが、薄々と健太郎は不可解な点に気づいていた。

 それは、何で自分たちが魔王軍と戦っているかだ。

 転生特典を神族の間で渡し合えば、わざわざ、異世界から人を召喚しなくて済むからだ。

 魔王軍と戦わせる以外に、別の目的があるのではないかと、健太郎はずっと考えていた。


「…神族は私たち魔族のことが、気に入らないみたいなの」

「いったい、どんな理由なんだ…?」

 健太郎は少女の肩の上に手を置き、神族について問うと、少女は涙を流しながら口を開く。


「……魔族が、世界を平和へと導こうとしたことが…神族たちには、気に入らなかったみたい……。神族は自分たちの箱庭を荒らされた腹いせに……私たち魔族にある呪いをかけたの……」

「まさか…」

「その呪いは…他種族たちが、魔族のことを悪者だと思い込む、記憶操作の呪い……」

 少女の言葉に、健太郎は深く絶望し、体の力が全て抜けた。


「そういうことだったのか…」

「師匠…」

 気を失っていた翔が目を覚ます。


「話を聞く限り、僕たち転生者は神族に力を与えられた、ただの兵隊だったようだね」

「それだけじゃない…。俺たちは真実を知らされないまま、魔王軍と戦わされていた玩具おもちゃだったんだ…」

 二人は真実を知り、複雑な感情を胸に抱く。


「戦いは何も生まない。迫り来る冒険者たちを、私は毎日殺してきた…。本当は誰も殺したくなんかない…。誰もが笑っていられる平和な世界を作りたかっただけ……」

「なら、ここから始めればいいじゃないですか」

「……!?」

 シエラが少女の手を強く握り、迷いのない瞳で言った。


「…私たちは殺し合うことを強制されているの! 今さら心を通わせることなんて出来ない!」

「そんなことは、絶対にないですよ。何故なら、私たちが魔族側の本当の姿を知ったからです。そうですよね、お二人とも」

「当たり前だ! 誰かの幸せを願い、戦い続けた者たちを何だと思っていやがる! 神族の野郎共を一発ぶん殴らないと、気が収まらない!」

「僕は魔王軍のことが嫌いだ…。でも、イベエラにいる家族のためにも、神族は決して野放しに出来ない」

 シエラの問いかけに、二人は闘志を熱く燃やす。


「何で…何でそこまで、神族と戦おうとするの……。貴方たちは神族の味方なんでしょ……」

「違います。私たちは、困っている人たちの味方です!」

 シエラの答えに、少女は希望を見出だす。


「一つだけ聞いてもいい……?」

「何ですか」

「貴方たち三人の名前を教えて…」

「もちろんです。その代わり、貴方の名前も教えてください」

「敵である私の名を…?」

「いいえ、友である貴方の名前をです」

 少女は嬉しくて、涙がさらに溢れた。

 もう、分かり合えることができないと思っていた他種族と、手を取り合うことができるからだ。


「私の名前はシーツー…。魔界都市ウアニクスの門番をしている、シーツーよ!」

 もう一度、魔族と他種族が、心を通わせ合えることができると信じて、少女は自分の名前を告げた。

 シエラは、少女の頭を優しく撫でながら、名前を教えた。


 今回の出来事が、世界にどんな影響を与えるのかは、これから先のお話。
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