52 / 52
ACT-51
しおりを挟む
「ここが、私が守護している都市、ウアニクスだよ」
少女は、健太郎と翔をウアニクスまで連れてきた。
ウアニクスの門番だけが開くことができる大きな門が、少女により開かれ、都市内に入る。
「はへぇ~、想像じゃ荒れた都市をイメージしてたけど、実際は全然違うな…。荒れた雰囲気は一切感じない、綺麗な都市だ」
健太郎はウアニクスの都市内をぐるっと見渡し、思わず呟いた。
「貴方が抱いているイメージは、所詮"彼ら"に上書きされたモノに過ぎない…」
「どういう意味だ?」
少女が意味深なことを健太郎に言う。
「おーい! ご主人様ー!」
(この声は…)
健太郎たちが歩いていると、後ろの方から聞き覚えのある声が聞こえた。
健太郎はすぐさま振り返り、声の主を確認する。
「シエラ、無事だったのか!」
健太郎はシエラに飛び付き、ぎゅっと抱き締めた。
「はい、ウアニクスに住む魔族の皆さんに、迷子になり困っていたところを助けてもらいました」
「えっ?」
シエラの一言に、健太郎は疑問を抱く。
(女神様やイベエラの皆が言っていた魔族とは、随分かけ離れた性格をしているな…)
シエラの後ろをよく見ると、シエラを助けてくれたであろう魔族たちの姿が見えた。
魔族たちはシエラに、笑顔で手を振り、安心した表情を浮かべていた。
「これが、私たち魔族…。貴方たちが聞かされていた話とは、完全に正反対な種族なの…。芯から他種族を思いやり、共に共存できることを願う…優しい者たちの集まり。それが、魔族の真の姿…」
少女は辛そうに語る。
「俺が戦ってきた魔王軍の奴らは、相当な悪者揃いだったぞ」
「それは、魔王が神族に殺されたからよ…。元々の彼らは、魔王と共に世界の平和を目指す、純粋な魔族たちだった」
「嘘だ! 魔王軍が世界を侵略し、それを止めるために神族が立ち上がったんだ!」
健太郎は少女を否定する。だが、薄々と健太郎は不可解な点に気づいていた。
それは、何で自分たちが魔王軍と戦っているかだ。
転生特典を神族の間で渡し合えば、わざわざ、異世界から人を召喚しなくて済むからだ。
魔王軍と戦わせる以外に、別の目的があるのではないかと、健太郎はずっと考えていた。
「…神族は私たち魔族のことが、気に入らないみたいなの」
「いったい、どんな理由なんだ…?」
健太郎は少女の肩の上に手を置き、神族について問うと、少女は涙を流しながら口を開く。
「……魔族が、世界を平和へと導こうとしたことが…神族たちには、気に入らなかったみたい……。神族は自分たちの箱庭を荒らされた腹いせに……私たち魔族にある呪いをかけたの……」
「まさか…」
「その呪いは…他種族たちが、魔族のことを悪者だと思い込む、記憶操作の呪い……」
少女の言葉に、健太郎は深く絶望し、体の力が全て抜けた。
「そういうことだったのか…」
「師匠…」
気を失っていた翔が目を覚ます。
「話を聞く限り、僕たち転生者は神族に力を与えられた、ただの兵隊だったようだね」
「それだけじゃない…。俺たちは真実を知らされないまま、魔王軍と戦わされていた玩具おもちゃだったんだ…」
二人は真実を知り、複雑な感情を胸に抱く。
「戦いは何も生まない。迫り来る冒険者たちを、私は毎日殺してきた…。本当は誰も殺したくなんかない…。誰もが笑っていられる平和な世界を作りたかっただけ……」
「なら、ここから始めればいいじゃないですか」
「……!?」
シエラが少女の手を強く握り、迷いのない瞳で言った。
「…私たちは殺し合うことを強制されているの! 今さら心を通わせることなんて出来ない!」
「そんなことは、絶対にないですよ。何故なら、私たちが魔族側の本当の姿を知ったからです。そうですよね、お二人とも」
「当たり前だ! 誰かの幸せを願い、戦い続けた者たちを何だと思っていやがる! 神族の野郎共を一発ぶん殴らないと、気が収まらない!」
「僕は魔王軍のことが嫌いだ…。でも、イベエラにいる家族のためにも、神族は決して野放しに出来ない」
シエラの問いかけに、二人は闘志を熱く燃やす。
「何で…何でそこまで、神族と戦おうとするの……。貴方たちは神族の味方なんでしょ……」
「違います。私たちは、困っている人たちの味方です!」
シエラの答えに、少女は希望を見出だす。
「一つだけ聞いてもいい……?」
「何ですか」
「貴方たち三人の名前を教えて…」
「もちろんです。その代わり、貴方の名前も教えてください」
「敵である私の名を…?」
「いいえ、友である貴方の名前をです」
少女は嬉しくて、涙がさらに溢れた。
もう、分かり合えることができないと思っていた他種族と、手を取り合うことができるからだ。
「私の名前はシーツー…。魔界都市ウアニクスの門番をしている、シーツーよ!」
もう一度、魔族と他種族が、心を通わせ合えることができると信じて、少女は自分の名前を告げた。
シエラは、少女の頭を優しく撫でながら、名前を教えた。
今回の出来事が、世界にどんな影響を与えるのかは、これから先のお話。
少女は、健太郎と翔をウアニクスまで連れてきた。
ウアニクスの門番だけが開くことができる大きな門が、少女により開かれ、都市内に入る。
「はへぇ~、想像じゃ荒れた都市をイメージしてたけど、実際は全然違うな…。荒れた雰囲気は一切感じない、綺麗な都市だ」
健太郎はウアニクスの都市内をぐるっと見渡し、思わず呟いた。
「貴方が抱いているイメージは、所詮"彼ら"に上書きされたモノに過ぎない…」
「どういう意味だ?」
少女が意味深なことを健太郎に言う。
「おーい! ご主人様ー!」
(この声は…)
健太郎たちが歩いていると、後ろの方から聞き覚えのある声が聞こえた。
健太郎はすぐさま振り返り、声の主を確認する。
「シエラ、無事だったのか!」
健太郎はシエラに飛び付き、ぎゅっと抱き締めた。
「はい、ウアニクスに住む魔族の皆さんに、迷子になり困っていたところを助けてもらいました」
「えっ?」
シエラの一言に、健太郎は疑問を抱く。
(女神様やイベエラの皆が言っていた魔族とは、随分かけ離れた性格をしているな…)
シエラの後ろをよく見ると、シエラを助けてくれたであろう魔族たちの姿が見えた。
魔族たちはシエラに、笑顔で手を振り、安心した表情を浮かべていた。
「これが、私たち魔族…。貴方たちが聞かされていた話とは、完全に正反対な種族なの…。芯から他種族を思いやり、共に共存できることを願う…優しい者たちの集まり。それが、魔族の真の姿…」
少女は辛そうに語る。
「俺が戦ってきた魔王軍の奴らは、相当な悪者揃いだったぞ」
「それは、魔王が神族に殺されたからよ…。元々の彼らは、魔王と共に世界の平和を目指す、純粋な魔族たちだった」
「嘘だ! 魔王軍が世界を侵略し、それを止めるために神族が立ち上がったんだ!」
健太郎は少女を否定する。だが、薄々と健太郎は不可解な点に気づいていた。
それは、何で自分たちが魔王軍と戦っているかだ。
転生特典を神族の間で渡し合えば、わざわざ、異世界から人を召喚しなくて済むからだ。
魔王軍と戦わせる以外に、別の目的があるのではないかと、健太郎はずっと考えていた。
「…神族は私たち魔族のことが、気に入らないみたいなの」
「いったい、どんな理由なんだ…?」
健太郎は少女の肩の上に手を置き、神族について問うと、少女は涙を流しながら口を開く。
「……魔族が、世界を平和へと導こうとしたことが…神族たちには、気に入らなかったみたい……。神族は自分たちの箱庭を荒らされた腹いせに……私たち魔族にある呪いをかけたの……」
「まさか…」
「その呪いは…他種族たちが、魔族のことを悪者だと思い込む、記憶操作の呪い……」
少女の言葉に、健太郎は深く絶望し、体の力が全て抜けた。
「そういうことだったのか…」
「師匠…」
気を失っていた翔が目を覚ます。
「話を聞く限り、僕たち転生者は神族に力を与えられた、ただの兵隊だったようだね」
「それだけじゃない…。俺たちは真実を知らされないまま、魔王軍と戦わされていた玩具おもちゃだったんだ…」
二人は真実を知り、複雑な感情を胸に抱く。
「戦いは何も生まない。迫り来る冒険者たちを、私は毎日殺してきた…。本当は誰も殺したくなんかない…。誰もが笑っていられる平和な世界を作りたかっただけ……」
「なら、ここから始めればいいじゃないですか」
「……!?」
シエラが少女の手を強く握り、迷いのない瞳で言った。
「…私たちは殺し合うことを強制されているの! 今さら心を通わせることなんて出来ない!」
「そんなことは、絶対にないですよ。何故なら、私たちが魔族側の本当の姿を知ったからです。そうですよね、お二人とも」
「当たり前だ! 誰かの幸せを願い、戦い続けた者たちを何だと思っていやがる! 神族の野郎共を一発ぶん殴らないと、気が収まらない!」
「僕は魔王軍のことが嫌いだ…。でも、イベエラにいる家族のためにも、神族は決して野放しに出来ない」
シエラの問いかけに、二人は闘志を熱く燃やす。
「何で…何でそこまで、神族と戦おうとするの……。貴方たちは神族の味方なんでしょ……」
「違います。私たちは、困っている人たちの味方です!」
シエラの答えに、少女は希望を見出だす。
「一つだけ聞いてもいい……?」
「何ですか」
「貴方たち三人の名前を教えて…」
「もちろんです。その代わり、貴方の名前も教えてください」
「敵である私の名を…?」
「いいえ、友である貴方の名前をです」
少女は嬉しくて、涙がさらに溢れた。
もう、分かり合えることができないと思っていた他種族と、手を取り合うことができるからだ。
「私の名前はシーツー…。魔界都市ウアニクスの門番をしている、シーツーよ!」
もう一度、魔族と他種族が、心を通わせ合えることができると信じて、少女は自分の名前を告げた。
シエラは、少女の頭を優しく撫でながら、名前を教えた。
今回の出来事が、世界にどんな影響を与えるのかは、これから先のお話。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
冷遇された聖女の結末
菜花
恋愛
異世界を救う聖女だと冷遇された毛利ラナ。けれど魔力慣らしの旅に出た途端に豹変する同行者達。彼らは同行者の一人のセレスティアを称えラナを貶める。知り合いもいない世界で心がすり減っていくラナ。彼女の迎える結末は――。
本編にプラスしていくつかのifルートがある長編。
カクヨムにも同じ作品を投稿しています。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
ここは少女マンガの世界みたいだけど、そんなこと知ったこっちゃない
ゆーぞー
ファンタジー
気がつけば昔読んだ少女マンガの世界だった。マンガの通りなら決して幸せにはなれない。そんなわけにはいかない。自分が幸せになるためにやれることをやっていこう。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる