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【第一章 覇者岑猛】第一節 流亡
私もついていく
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帰順州土官知州岑璋は岑猛と思恩府土官知府岑濬とが争うあいだ、どちらを支援するでもなく沈黙を保っていた。
岑璋には策を好むところがある。ゆえに岑猛は、岑璋が密かに岑濬と通じていることを警戒したのだが、岑璋は満身創痍の岑猛を迎え入れた。
岑璋は岑猛と従者に湯を与え戦塵を払わせ、着替えの衣服を与えた。そして魚膾(海産の珍味を使った膾料理)と高級酒三四熬に歌と舞とで労いの宴を張った。
とはいえ、歓迎の姿勢をみせたのは最初の日だけだった。
翌朝からは顔をみせることすらほとんどない。岑猛らに与えられた部屋は衙門(役所)敷地内の別館に主従六人で一室のみで、日に三度供される食事は次第に粗末になっていく。
岑濬が刺客を送ってくる恐れがあり常に警戒していなくてはならないが、岑璋は岑猛の身を護るための特段の措置を採ろうとしない。もし敵十数人に夜討ちでも掛けられようものなら、岑猛のわずかな手勢では防ぎようがなかった。
(迷惑な客ということか)
岑猛は岑氏の嫡家当主であり、勢力を再び盛り返す日のことを考えれば、岑璋は岑猛を匿わざるを得ない。しかし岑猛を匿っていれば、岑濬の兵が帰順州を襲い、悪くすれば攻め滅ぼされてしまうかもしれない。ゆえに岑璋は、岑猛に早々に立ち去ってもらいたいと思っているのだ。
(ここに長居はできない)
と思う岑猛は情報を欲し、五人の従者のうちで十五歳ながらも偃月刀(薙刀のような長柄片刃の武器)を握らせれば無双の鐘富という者を護衛として手元に残し、二名を田州へ潜入させ、岑栄ともう一名は周辺諸国へ向かわせて連携の可能性を探らせた。
岑猛は落ち着くことのできない日々を過ごしているが、そんななかでも小さな楽しみはあった。
朝餉が終わるころになると岑瓛と花蓮の兄妹がやってくる。
岑瓛は岑猛が経験してきた戦の話を聞きたがった。岑猛はまだ十六歳だが、過去六年にわたって戦い続けてきた。思恩の兵は田州に比べて数も練度もまさり田州は常に劣勢に立たされ、岑猛の戦のほとんどは華のない守城戦だった。ただ、わずかな兵を連れて城から出で奇襲を仕掛けて成功したこともあり、野戦で奇策を用いて兵の多寡を覆し互角以上の戦いをしたこともある。それらの経験を、多少の誇張を交え、戦うことがなにより好きな少年に話して聞かせることは楽しくもあった。
花蓮も最初は興味津々という顔で聞いている。しかし、しばらくするとじっとしていることに堪えられなくなって中庭に出て、ひとりで歌を歌ったり踊ったりしているのだが、それにも飽きると岑猛の手を引いて中庭に引きずりだそうとする。
花蓮に引っ張られて中庭に出るものの、小さな娘と遊んだことなどなくとまどっていると、花蓮は武術を教えてくれとせがんだ。
それならば、と、落ちていた棒切れを拾い花蓮に持たせた。
むろん腕のちからのない幼女では真似事とすらいえないほどの動きだが、花蓮は嬉しそうに剣にみたてた棒切れを振った。
兄の岑瓛がほかに用があるときでも花蓮は侍女ひとりを伴って部屋にやってくる。
読み物をしていたり信書を書いていたりすると、花蓮は周りをくるくると走り回る。しばらく駆けたあと、岑猛のうしろから近づき、その巨躯によじのぼる。そして木の枝を伝う猿のように右肩、頭、左肩と移っていく。その間岑猛は文机に視線を落としつつも首にぐっとちからを入れて頭を動かさないようにしていなければならない。最後に花蓮は岑猛の頭の上から股のあいだにすとんと落ちて、そこに座って顔だけをこちらに向け、けたけたと笑うのである。
ある朝、肩の上の花蓮がいった。
「うちのお庭。春になるとすごくきれいなのよ。花蘇芳の花でいっぱいになるの」
花に興味のない岑猛は、
「ふぅん。そうなんだ」
と、気のない声を出した。
「お花が散ったあともきれいなの。お庭が花びらで薄紫色になるのよ。早く猛哥にみせたいなあ」
「どうかな。みられないんじゃないかな」
「えっ、どうして」
「だって、ずっとここにいるわけにはいかないからね」
花蓮は岑猛の股のあいだに下りて、仰向けになって、いった。
「どうして。ずっといればいいじゃない。いかなくちゃならないところがあるの?」
「おうちに帰らなくてはならないんだよ」
「おうちって?」
「田州。知っているかな。この帰順の北にある国だよ」
「遠いの?」
「歩いて五日くらい」
「お父さんやお母さんが待っているの?」
「いや、母上は思恩という田州のとなりの国にいるらしい。父上は――」
あとで述べるが、岑猛の父は長男、すなわち岑猛の長兄により殺されている。
岑猛は「兄に殺された」という言葉をのみこみ、
「もういない」
と短くいった。
「田州のおうちはいまどうなっているの?」
「ほかの人が住んでいる」
花蓮は体を起こし、岑猛の目をまっすぐにみた。黒く輝く猛禽の瞳だ。この目にみつめられると、いつも軽いめまいのようなものを感じる。
「じゃあ帰らなくてもいいじゃない。ずっとここにいればいいじゃない」
「だめなんだよ。帰らなくてはいけないんだ。田州へ帰って、それから母上を迎えにいって、もういちど田州で家族みんなで暮らすんだよ」
「じゃあ、私もいく。田州にいって猛哥やお母さんといっしょに暮らす」
「だめだよ。そういうわけにはいかない」
花蓮の瞳がみるみる濡れて、目尻から水滴が落ちた。
「どうしてだめなの。いく。私も絶対にいく。私、もう決めたから」
花蓮の侍女が
「お嬢様、無理をいってはいけません」
と諌めた。侍女の名は玉音という。玉音は侍女といってもまだ十三歳で、花蓮とは遊び相手もしくは姉のような関係であり、暴走しがちな花蓮の言動をときには窘める。
花蓮はまるで聞こえないかのように、
「いつ田州に帰るの?私もついていく」
「田州はいますごく危ない。女の子がいける場所ではないよ」
「危なくても平気」
花蓮の頬を水滴が連なって落ちていく。
子供の扱いを知らず、戸惑った岑猛はその場しのぎに、いった。
「わかった、わかった。では田州に帰り、しばらくしたら呼んであげるよ」
花蓮は泣き顔を一瞬で晴らし、目を輝かせた。
「しばらくって、どのくらい?」
「えぇと、どうだろう。そんなに長くはないよ。二ヶ月とか、三ヶ月とかかな。いや、もう少し先になるかな――」
花蓮は最後まで聞かずに「わぁ」と喜び、飛び起きて岑猛の目の前で踊るようにくるくると回った。
心に微かな傷みを覚えた。
が、幼女のことだ。こんな会話をしたことなどすぐに忘れてしまうだろう。気にすることはあるまい。
花蓮が回るのをやめて、訊いた。
「田州に呼んでくれるまでのあいだ、私、なにをしていればいい?猛哥がいなくなったらなにもすることがないの」
岑猛は答えに窮し、「そうだねぇ」といいながら中庭に視線をやった。
庭先に花蓮がせがむので作ってやった短い木刀が立て掛けてある。それを使って日に一度、剣の使いかたなど教えてやっているのだが、それをみながら、
「では武術の腕を磨いておいてくれないかな。俺はいまはこうして静かにしているけど、田州に戻ればまた毎日戦争をしなくてはならないんだ。そのときに助けになってくれるように、武術を身につけておいてくれると嬉しいな」
花蓮は「うん」と大きくうなずいた。
この岑猛がごく軽い気持ちでいったことばは花蓮の生涯に大きな影響を及ぼすことになるのだが、むろんそのことをいまのふたりは知らない。
花蓮は再び無邪気にくるくると舞うように回り始めた。
岑璋には策を好むところがある。ゆえに岑猛は、岑璋が密かに岑濬と通じていることを警戒したのだが、岑璋は満身創痍の岑猛を迎え入れた。
岑璋は岑猛と従者に湯を与え戦塵を払わせ、着替えの衣服を与えた。そして魚膾(海産の珍味を使った膾料理)と高級酒三四熬に歌と舞とで労いの宴を張った。
とはいえ、歓迎の姿勢をみせたのは最初の日だけだった。
翌朝からは顔をみせることすらほとんどない。岑猛らに与えられた部屋は衙門(役所)敷地内の別館に主従六人で一室のみで、日に三度供される食事は次第に粗末になっていく。
岑濬が刺客を送ってくる恐れがあり常に警戒していなくてはならないが、岑璋は岑猛の身を護るための特段の措置を採ろうとしない。もし敵十数人に夜討ちでも掛けられようものなら、岑猛のわずかな手勢では防ぎようがなかった。
(迷惑な客ということか)
岑猛は岑氏の嫡家当主であり、勢力を再び盛り返す日のことを考えれば、岑璋は岑猛を匿わざるを得ない。しかし岑猛を匿っていれば、岑濬の兵が帰順州を襲い、悪くすれば攻め滅ぼされてしまうかもしれない。ゆえに岑璋は、岑猛に早々に立ち去ってもらいたいと思っているのだ。
(ここに長居はできない)
と思う岑猛は情報を欲し、五人の従者のうちで十五歳ながらも偃月刀(薙刀のような長柄片刃の武器)を握らせれば無双の鐘富という者を護衛として手元に残し、二名を田州へ潜入させ、岑栄ともう一名は周辺諸国へ向かわせて連携の可能性を探らせた。
岑猛は落ち着くことのできない日々を過ごしているが、そんななかでも小さな楽しみはあった。
朝餉が終わるころになると岑瓛と花蓮の兄妹がやってくる。
岑瓛は岑猛が経験してきた戦の話を聞きたがった。岑猛はまだ十六歳だが、過去六年にわたって戦い続けてきた。思恩の兵は田州に比べて数も練度もまさり田州は常に劣勢に立たされ、岑猛の戦のほとんどは華のない守城戦だった。ただ、わずかな兵を連れて城から出で奇襲を仕掛けて成功したこともあり、野戦で奇策を用いて兵の多寡を覆し互角以上の戦いをしたこともある。それらの経験を、多少の誇張を交え、戦うことがなにより好きな少年に話して聞かせることは楽しくもあった。
花蓮も最初は興味津々という顔で聞いている。しかし、しばらくするとじっとしていることに堪えられなくなって中庭に出て、ひとりで歌を歌ったり踊ったりしているのだが、それにも飽きると岑猛の手を引いて中庭に引きずりだそうとする。
花蓮に引っ張られて中庭に出るものの、小さな娘と遊んだことなどなくとまどっていると、花蓮は武術を教えてくれとせがんだ。
それならば、と、落ちていた棒切れを拾い花蓮に持たせた。
むろん腕のちからのない幼女では真似事とすらいえないほどの動きだが、花蓮は嬉しそうに剣にみたてた棒切れを振った。
兄の岑瓛がほかに用があるときでも花蓮は侍女ひとりを伴って部屋にやってくる。
読み物をしていたり信書を書いていたりすると、花蓮は周りをくるくると走り回る。しばらく駆けたあと、岑猛のうしろから近づき、その巨躯によじのぼる。そして木の枝を伝う猿のように右肩、頭、左肩と移っていく。その間岑猛は文机に視線を落としつつも首にぐっとちからを入れて頭を動かさないようにしていなければならない。最後に花蓮は岑猛の頭の上から股のあいだにすとんと落ちて、そこに座って顔だけをこちらに向け、けたけたと笑うのである。
ある朝、肩の上の花蓮がいった。
「うちのお庭。春になるとすごくきれいなのよ。花蘇芳の花でいっぱいになるの」
花に興味のない岑猛は、
「ふぅん。そうなんだ」
と、気のない声を出した。
「お花が散ったあともきれいなの。お庭が花びらで薄紫色になるのよ。早く猛哥にみせたいなあ」
「どうかな。みられないんじゃないかな」
「えっ、どうして」
「だって、ずっとここにいるわけにはいかないからね」
花蓮は岑猛の股のあいだに下りて、仰向けになって、いった。
「どうして。ずっといればいいじゃない。いかなくちゃならないところがあるの?」
「おうちに帰らなくてはならないんだよ」
「おうちって?」
「田州。知っているかな。この帰順の北にある国だよ」
「遠いの?」
「歩いて五日くらい」
「お父さんやお母さんが待っているの?」
「いや、母上は思恩という田州のとなりの国にいるらしい。父上は――」
あとで述べるが、岑猛の父は長男、すなわち岑猛の長兄により殺されている。
岑猛は「兄に殺された」という言葉をのみこみ、
「もういない」
と短くいった。
「田州のおうちはいまどうなっているの?」
「ほかの人が住んでいる」
花蓮は体を起こし、岑猛の目をまっすぐにみた。黒く輝く猛禽の瞳だ。この目にみつめられると、いつも軽いめまいのようなものを感じる。
「じゃあ帰らなくてもいいじゃない。ずっとここにいればいいじゃない」
「だめなんだよ。帰らなくてはいけないんだ。田州へ帰って、それから母上を迎えにいって、もういちど田州で家族みんなで暮らすんだよ」
「じゃあ、私もいく。田州にいって猛哥やお母さんといっしょに暮らす」
「だめだよ。そういうわけにはいかない」
花蓮の瞳がみるみる濡れて、目尻から水滴が落ちた。
「どうしてだめなの。いく。私も絶対にいく。私、もう決めたから」
花蓮の侍女が
「お嬢様、無理をいってはいけません」
と諌めた。侍女の名は玉音という。玉音は侍女といってもまだ十三歳で、花蓮とは遊び相手もしくは姉のような関係であり、暴走しがちな花蓮の言動をときには窘める。
花蓮はまるで聞こえないかのように、
「いつ田州に帰るの?私もついていく」
「田州はいますごく危ない。女の子がいける場所ではないよ」
「危なくても平気」
花蓮の頬を水滴が連なって落ちていく。
子供の扱いを知らず、戸惑った岑猛はその場しのぎに、いった。
「わかった、わかった。では田州に帰り、しばらくしたら呼んであげるよ」
花蓮は泣き顔を一瞬で晴らし、目を輝かせた。
「しばらくって、どのくらい?」
「えぇと、どうだろう。そんなに長くはないよ。二ヶ月とか、三ヶ月とかかな。いや、もう少し先になるかな――」
花蓮は最後まで聞かずに「わぁ」と喜び、飛び起きて岑猛の目の前で踊るようにくるくると回った。
心に微かな傷みを覚えた。
が、幼女のことだ。こんな会話をしたことなどすぐに忘れてしまうだろう。気にすることはあるまい。
花蓮が回るのをやめて、訊いた。
「田州に呼んでくれるまでのあいだ、私、なにをしていればいい?猛哥がいなくなったらなにもすることがないの」
岑猛は答えに窮し、「そうだねぇ」といいながら中庭に視線をやった。
庭先に花蓮がせがむので作ってやった短い木刀が立て掛けてある。それを使って日に一度、剣の使いかたなど教えてやっているのだが、それをみながら、
「では武術の腕を磨いておいてくれないかな。俺はいまはこうして静かにしているけど、田州に戻ればまた毎日戦争をしなくてはならないんだ。そのときに助けになってくれるように、武術を身につけておいてくれると嬉しいな」
花蓮は「うん」と大きくうなずいた。
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