エメラルドの宝石姫

夜乃桜

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不審

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日が沈んだ時間帯。依頼を無事に終えて、宿屋に帰ってきたローランドは、一息ついていた。

「ん?」

ドタバタと部屋の外から、階段を慌ただしく上がってくる音。何か前にこんな事があった気がする。
ローランドが嫌な予感を感じていると、それはローランドの部屋の前で止まった。

バンッ!

勢いよくローランドの部屋の扉が開いた。部屋に入ってきたのは、真剣な顔をした宗助。

「知恵を貸せ、ローランド」
「……今度は何だ?」

ローランドは諦めのため息をついて、宗助から事情を聞くことにした。

「……なるほど、アヤネ嬢とデートをすることになったと」
「ああ、そうだ」
「……ちょっと待っていろ」

ローランドは立ち上がり、とある部屋に向かう。
こういったことに自分は戦力外だとローランドは判断した。なので、協力を求めることにした。
目的の部屋、ローランドはトントンと扉を叩く。

「あ、ローランド。何かあった?」

開かれた扉から現れたのは、ローランドのパーティー紅一点、獣人族一の聴力を持つ兎人のエルマ。

「すまない。俺の代わりにあいつにアドバイスをしてくれ」
「え?なに?誰の?」

目を瞬かせるエルマに、ローランドは部屋から顔だけを出している宗助を指さす。

「わかったわ」

察したエルマは、にやけそうになる顔を抑えて頷く。そして、宗助から詳しい話を聞こうと、ローランドの部屋に飛んで行った。
ローランドはそのままエルマに任せるか、部屋に戻るかと悩んだ。その結果、ローランドは部屋に戻ることにした。

「それでそれで、ソウくんはデートプラン、服装とかはどう考えているの?」

楽しそうにエルマはうさ耳をピクピクと動かして、宗助に問う。
二人は部屋に備えつけられている丸机と二脚の椅子に陣取り、綾音とのデートについて作戦会議を始めだした。
出来れば別の場所でして欲しかったが、エルマに頼んだ、押し付けてしまったローランドは何も言えなかった。生き生きと宗助と話し合うエルマにローランドは苦笑して、ベットに座る。
エメラルドの宝石姫、綾音に結婚の申し込む宗助に、ローランドとニールが巻き込まれた時、エルマは容赦なく仲間であるローランド達を見捨てた。それなのに今回は積極的に宗助に協力をしている。

(まぁ、進展するとは思わなかったし)

フォーチュナ劇場、エメラルドの宝石姫である綾音は、歴代宝石姫一の美姫と呼ばれている。稀なる美貌と竜人族の血を引く綾音には、いい意味でも悪い意味でも人の目を引く。
成人前から大店の商人からの婚約話、養女として引き取り、教育して婚約者にしたいという貴族など、綾音を求める者は数多くいたと噂で聞いたことがある。
その本人、綾音はその申し出を全て断っていた。それどころか、綾音はフォーチュナ劇場の団員達以外の者と交流をすることはほとんどなかった。
身内以外に靡くことがなかった綾音が、宗助と交流することが意外で、ローランドは何かあるのではないかと思ってしまう。

「なんて、そんなことがあるはずないか」

宗助が数少ないA級ハンターでも、フォーチュナ劇場にとっては意味もない。フォーチュナ劇場には北の国の貴族さえも恐れられている団長がいるのだ。それに、他の団員達も一癖二癖もある猛者達だ。
考え過ぎだとローランドは振り払うが、胸に浮かんだ不審感は消えなかった。
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