エメラルドの宝石姫

夜乃桜

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一目惚れ2

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自分が何をしていて、何をしようとしているか、宗助はわからない。ただ湧き上がる衝動を抑えることが出来なかった。

「おい、あれ!」
「えっ、なんだ?!」
「おい、あれ風斬じゃないか」

一階の席で食事、舞台を見ていた観客が、自分達の頭上を飛ぶ宗助の姿に声を上げる。しかし、宗助にはそんな声など聞こえない。
そして、宗助は彼女の前に降り立つ。

「あ、あの」

戸惑う彼女の手を宗助は取る。柔らかく、冷たい鱗の感触に宗助の胸は高鳴り、跪く。
清廉な美しさを持つ美少女、エメラルドの宝石姫を見上げ、まっすぐに言葉を紡いだ。

「俺と結婚して、白い屋根の屋敷で俺の子供、息子一人と娘二人を産んでくれ」

風斬の異名を持つ、A級ハンター、竜人族の宗助、一目惚れだった。
衝撃の展開に、フォーチュナ劇場は静まり返った。皆何が起きたのかが理解できなかった。
何拍かの無言。最初に立ち直ったのは、フォーチュナ劇場の古参、サファイアの宝石姫。

バシンっ!

次の出番のために、舞台袖で控えていたサファイアの宝石姫、コーデリアは海人族。海人族は水中で呼吸が出来る鰓と指の間に膜がある、平べったい手足の鰭を持つ種族。
コーデリアは自分の、鰭の右足で狼藉者の宗助を蹴り上げた。それとも、叩いたと言ったほうが正しいだろうか。
不意を突かれた、と言うよりもエメラルドの宝石姫に夢中になっていた宗助は、無様に舞台から蹴落とされた。A級ハンターがかっこ悪い。

「フォーチュナ劇場一の宝石姫であるわたくしを差し置いて、求婚とは何事です!」

舞台から落ちた宗助にコーデリアはビシッと指さした。フォーチュナ劇場の団員は我に返り、コーデリアの意図に察する。

「っ、そうだ!サファイアの宝石姫がフォーチュナ劇場の一番だ!」
「違うぞ!エメラルドの宝石姫が、宝石姫の中の宝石姫!」
「いいえ、ルビーの宝石姫が素敵よ!」

コーデリアの言葉に便乗するように、声をあげる。
団員の言葉につられて観客達も、自分にお気に入りの宝石姫や役者の名前を叫ぶ。その間に、他の団員が狼藉者の宗助に声を掛けて、常連客であるニールが宗助を引きづって連れていく。なんとか誤魔化せそうだ。

「ならば、わたくしの魅力を教えて差し上げますわ!」

フォーチュナ劇場一の歌姫、サファイアの宝石姫の高らかな宣言に、観客達が盛り上がる。コーデリアの合図でフォーチュナ劇場の楽師が曲を奏で始める。
サファイアの宝石姫、コーデリアは宝石姫一の歌姫。コーデリア自慢の魅力、甘い妖艶な歌声が劇場に響き渡る。観客達はコーデリアに注目する。
コーデリアは歌いながら、未だに混乱しているエメラルドの宝石姫に、舞台から下がりなさいと合図を送る。
何が起きたのか。エメラルドの宝石姫こと、綾音は全くわからない。なので綾音はコーデリアの指示に従い、舞台から降りたのであった。

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