俺、何しに異世界に来たんだっけ?

右足の指

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第2章

かわいい子ほど旅をさせろ

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わたくし、不知燈汰(しらず・とうた)は突然に異世界へと転生させられた。
現在、ギルドの食堂で自称女神と昼ドラを繰り広げそうになっていたところである。


──────────────────────


「あの…ちょっと良いですか?」

エレナに三行半を投げつけていた俺に、後ろから誰かが声をかけてきた。
俺は振り返ってその声の主を確認する。

そこには少女が立っていた。美少女だった。
しかも、今まで見てきたどの人間よりも珍しい風貌であったため、俺は少し戸惑ってしまった。

真っ白な髪。
真っ白な肌。
年齢と身長は俺より少し低いくらい。
全身を、絵本から飛び出てきたようなまるで魔女のような服装で着飾っていた。

何より驚いたのが、眼である。
真っ赤だった。
確か、この異世界では魔力がありすぎるとそれが隠せないほどになるんだっけ。

ということは、この子は生まれながらにして膨大な魔力を持っていると言うことだろうか。
何とも羨ましい限りである。

俺が呆けて彼女を見ていると、それまで喜劇を演じていたエレナが先に反応した。

「あら、何この子?どうしたの?
……あれ?………あれあれ?
あなた、もしかして……。」

そうエレナが言うと、彼女が慌てた顔で人差し指を立てて口の前に持ってきた。
言わないでくれ…というポーズである。

何か言われたくない秘密でもあるのだろうか。
気になるのだが。
後でエレナにコッソリ聞こう。

「えっと、俺達に何か用?」

その言葉に反応するように、恥ずかしそうにこちらを見てきた。
なんだか新鮮な反応である。

「メンバー募集の紙を見て来たのですけど…。
エレナさんと忘却さんのコンビですよね?」

忘却さんはやめてほしい。
真性のアホのように聞こえる。

それにしても、久しぶりの面接である。
諦めかけていた俺は、正直うれしかった。
しかも、この子もしかしたらメッチャ強いんじゃないだろうか?

この異世界の良いところの1つは、見た目の情報で相手の強さがわかる点である。
特に、真っ赤に燃えるようなこの眼は誤魔化しが効かない。
異世界に来て既に1ヶ月以上だが、初めてこういうタイプの人を見た。

本当にいるんだなぁ…と小学生のような感想が出てくる。

「面接に来てくれたのか?
だとしたら、すごくありがたいんだけど。」

「はい。良ければ私のことを審査してほしいです。
あの…お食事中でしたか?
それなら、また後でお伺いさせていただきますが…。」

なんて丁寧で常識がわかっていそうな子だ…。
俺はこの対応だけでも感動した。

やっとまともな子が来てくれたのだ。

「いや、今でも全然構わないよ。
君が良いならさっそくやろう。」

このチャンスを逃すわけにはいかない。
ハッキリと、目の前にいるのは大魚である。

そう考えていると、全く予期せぬ方向からの援護射撃があった。

「うん、良いんじゃないの?
ねぇ、このまま3人でクエストやってみましょうよ。」

エレナである。
さすがに俺は面を食らった。

今までもこの手の希望者はいたのだが、そのたびに…
『子どもはダメ。』
という至極真っ当な理由で門前払いだったからである。

俺は、エレナに小声で確認する。

「おい、お前どういう風の吹き回しだ?
今までは散々子どもはダメだって突っぱねてたじゃないか。」

「そりゃそうでしょ。
だって危ないじゃない。」

またしても、正論も正論だった。
ということは、エレナが直感するくらいには彼女はやっぱり強いと言うことである。
少なくとも、自分の身は自分で守れるくらいには。

あ、そういえば…。

「あの、悪いけど君のギルドカードを見せてもらえるかな?」

ギルドカードを見れば、どの程度の実力かはある程度はわかる。
今まで面接に来た人たちはだいたい最上位ですら4万5000位前後だった。
今から考えると、ヒエラルキーとしては本当に最底辺だったのかもしれない。
俺を含めて。

それを基準で考えると、だいたいランクで彼女の実力は推し計れるはず…。

「あ、はい。
どうぞ。」

素直に渡してくれたその行動1つに、俺はいちいち感動する。
今までの希望者は、それすら躊躇していたのだ。

「ゴメンな。ありがとう。
えっと、ランキングは………え!!?」

俺はそのランキングを見て驚愕した。
まるでミケランジェロのダビデ像のように固まった俺の姿を見て、エレナがギルドカードを覗き見てきた。

「なになに、えー……332位!!?」

そのランクは俺の想像の遥か上を行った。
なんと、50000人中の332位である。

このランキングは、戦士や武道家など全てを含めた総合ランクである。
細分化された職業として、表示されているわけではないのだ。

つまり、この子は間違いなく上位クラスの魔法使いだといえる。

「へぇへぇ凄いじゃない!
やるわねアナタ!!
褒めてあげるわ!」

本当にその通りだ。
おそらく転生した今の俺よりも若いはずなのに…。
とんでもない才能である。

「ステータスは…いやマジですげぇな。
魔力と魔力総量はメチャクチャ高いけど、まだカンストもしていない。
しかも身体能力も高い。」

「本当ね。
コレそこらへんにいる武道家よりも高いんじゃないの?」

しかも、ギルドに登録した日付を見るとまだ3ヶ月程度らしい。
俺達の少し先輩である。

ということは、素の能力だけでほぼこのステータスとランキングなのだろう。
成長する余地がまだまだあるのも頷ける。
もしかして、この子も超天才なのだろうか。

俺と違って。

「いやあの…身体能力は高いのですけど。
私、人を叩いたりするのが凄く苦手で…。
だから、せめて魔法で頑張ろうかなって。」

人をサンドバッグのように殴りつけるエレナとは大違いである。

正直、俺の心は既に決まっていた。
こんな優良物件は、めったにお目にかかれない。
よくぞ俺達の元に来てくれた。

「よし、じゃあこのままクエスト行ってみるか?
もちろん、君が良かったらだけど。」

「あ、はい。私なら全然大丈夫です。
準備もできています。」

このステータスの子が加わって3人なら、ハッキリ言ってケルベロスなど全く問題ないはずだ。
まぁでも、いきなりそんな相手は厳しいか。

「はぁ…あのねトータ。
あなた本当にダメな男ね。」

いきなり、エレナにダメ出しされた。
この自称女神にだけは言われたくない。

「なんだよいきなり。
お前もクエストに行こうって言ったじゃないか。」

「そうじゃないわよ。
あのね、初対面の女の子に会ったら名前くらい聞きなさいよ。」

「あ……。」

意識外から右フックで殴られたように俺は立ち眩みがして、猛省をした。
というか、彼女の名前どころか自分の名前すら名乗っていなかったことに気づいた。

まさか、エレナからそんなことを指摘されるとは…恥ずかしい。

「ゴ、ゴメン。俺はシラズ・トータ。
彼女はエレナ。両方とも呼び捨てで良いから。」

「エレナさん…エレナは知っていましたけど。
忘却さんはシラズ・トータって言うのですね。」

変わった名前…とボソって言っているのが聞こえた。
確か前にも誰かに言われた気がする。
俺の名前はこの異世界ではそんなに奇怪なものなのだろうか。

「君の名前は?」

「私はユキノです。
気軽にユキノと呼んでください。」

こうして、メンバー候補として面接にやってきたユキノと、俺達はお試しのクエストに3人で行くことになるのであった。
そして、俺はこの時のことを今でも思い出す。
そして後悔する。

本当にやめておけば良かった…と。
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