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第2章
どこにでもダメな奴はいる
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わたくし、不知燈汰(しらず・とうた)は突然に異世界へと転生させられた。
現在、俺達とクエストができる新しいメンバーを募っている最中である。
──────────────────────
「はぁ…ほんとロクでもない奴しかいないわね。」
俺達は、ギルド内の掲示板にメンバー募集の要望を出していた。
ギルドのお姉さんことテロッサに貼ってもらったのだが、俺が予想していた以上に多くの人が面接にやってきた。
しかし、肝心の中身に関しては完全に俺の読みが浅かったし甘かったとも言える。
というのも、本当にまともな奴が来なかったからである。
そもそも、新進気鋭の第10位エレナのパーティがメンバーを募集している…というだけでも、話題性はとんでもなかった。
ただ当然、既に悪名が轟いているエレナの性格や立ち振る舞いを知っているギルド内の冒険者ならば、そもそも参加しようとは思わない。
実際に、あからさまに避けている冒険者も多くいた。
なので、俺達のパーティに面接にやってくる連中と言うのは、そういうことを本当に知らない外から来た新参者であったり、ただエレナの評判を利用したいだけのクズしかいなかったのである。
いくつか一緒にクエストを行おうとしたメンバーもいたのだが、ハッキリ言ってランキング49998位の俺よりも動けない冒険者が大半だった。
これは、『実戦経験を確認します。』とかいうエレナがその場でただやりたかっただけのノリで始まった二次面接でわかったことである。
もちろん、対戦相手は俺。
その様子を伺うエレナはというと、どこかから持ってきた椅子に座りながら、メガホンを叩いて他人を評価するという、さながら黒澤明のようなスタイルであった。
俺達は映画の演者では決してない。
ちなみに、面接会場は外壁修理を行っていた近くの野原なので、ケインやエイベルあたりの南門の門番達も面白がって見物していた。
驚いたのが、たかが1ヶ月程度しか訓練しておらず、身体強化を会得しているだけの俺にさえ全員が手も足も出ないという体たらくだったことだ。
見た目からしても、日ごろから訓練なんてして無さそうな連中だったのだが、それにしても酷い有様であった。
対面でさえ俺の方が素早く動けるのだから、絶対にケルベロス級の相手になると即詰みである。
ただ正直、俺はこの面接と言う名の対戦で少しだけ自信を回復した。
相手が魔力操作を行う瞬間等々もきちんとわかったし、何よりも訓練の成果が出ていると実感できたのが良かった。
一般人に毛の生えた程度の相手なら、俺の方が明らかに強いことがわかったのだ。
もちろん、俺はアレからも欠かさずにずっと修行している。
もしかしたら、この盤面はエレナが俺のために準備してくれたのかもしれない…と思った次第である。
多分、そんなことはなくただの気まぐれなのだろうけど。
しかし、それならばなぜ俺はこんな酷い判定をされているのだろうか。
どう考えても、面接にやってきた連中は49998位の俺以下であるはずなのに…。
全くランキングの変動がある気がしない。
もしかしたら、テンプレ悪代官日本代表の田沼意次のような人物が、本当に不正にランキングを操作しているのかもしれない。
テロッサが言うには、信用や実績を含めた総合点でのランキングらしいのだが…。
まぁ確かに、冒険者には色々な職業があるから単純に戦闘能力だけを見ているわけではない、というのも納得できる理由ではある。
例えば、ものすごい腕の立つ商人であるのならば、その業績で高く評価されるのも頷ける。
それにしても、面接にやってきた連中がこの体たらくとは思わなかったのだ。
普通の仕事を行う時にも支障が出そうな状態にしか見えなかった。
外見ですら、腹が出ていたりモヤシよりも細い参加者すらいたくらいだ。
俺達のパーティに入れば、甘い蜜でも吸えると思ったのだろうか。
どこの世界にも、こういう連中はいるものである。
そして、ただメシを食ってクソをしているだけでも49900位以下になることはない…と言われていた理由もよくわかった。
と、同時にこのレベルですら俺よりも上の判定なのか?と絶望もした。
何1つ納得できない世の中の不条理さに怒り狂いそうになる。
まぁ、それも俺が評価されない嫉妬心なのだろうけども。
さらに、この面接には重大な落とし穴もあった。
それは、エレナに対する信仰心が偽物だとわかった際には、即効で落とされるという仕組みだったことである。
俺は声を大にして反対したのだが、狂ったラジカセのように狂った音量で狂ったことを繰り返すエレナに、俺はついに折れてしまった。
そして、その信仰心の判断は完全にエレナの勘で決まる。
果たして、こんな面接と言う名の拷問で受かる合格者は出てくるのだろうか。
現代でこんなシステムがあったとしたら、完全にブラック企業判定である。
そういうことなので、1週間もすればまともに集まってくる人はいなくなった。
その間にも金銭は必要になるので、俺達は別のクエストを受注しなくてはならない。
ハッキリ言って、時間とお金を無駄に消費しているだけな気がする…。
そこから受注したクエストも、実際に別に大したことはなかった。
街に届けられた物資をクライアントに届けたり、店頭販売の手伝いを行ったり、迷子になったペットを見つけに行ったり…と文字通り俺でも余裕で出来そうなクエストしか無かった。
当然、そうした内容のクエストの報酬はそれほど大きくはない。
せいぜい、その日を凌げる程度の稼ぎで終わる。
そうして、こういう退屈なクエストを受けるたびに、仕事中であるにも関わらずエレナは一人遊びを勝手に始めてクライアントに怒られて泣く羽目になるのだ。
落ち着きのないプレーリードッグですら、もう少し冷静に振る舞えるはずである。
だから、ここ2週間程度は完全に色々と停滞してしまっている。
外壁修理のクエストも終わってしまったので、金銭面のことを考えても本当にヤバイ。
事実、お金を使うのがもったいないという理由で、今でも外壁のテントの中で寝泊まりをしているくらいだ。
テントも当然、借りパク状態である。
そろそろ、俺達もまともに別のクエストを探さないといけない。
そのためには、新しいメンバーが必須なわけなのだが…ここまで上手くいかないとは…。
「なぁ、エレナ。
やっぱり1回で良いから魔法使い?みたいな人を誘って、クエストに出てみようぜ。
このままだと、俺達いつまで経っても必要な人材を見つけられないぞ。」
モノは試しに連れて行くしかないと、俺は考え始めていた。
もしかしたら、ものすごくウチのパーティと相性が良い人が見つかるかもしれない。
「イヤよ。
私への信仰心がない奴は顔も見たくないもの。」
という憮然とした感じで、現状は平行線である。
本当に話が進まない。
じゃあお前が見つけて来いよ、とも言えないのが歯がゆい。
なぜなら、この自称女神が連れてくる人間がまともなわけがないからである。
エレナのことは、ここ1ヶ月以上も一緒にいてわかったことがある。
この女神様は、立場の弱い人や困っている人などには基本的に凄く優しい。
実際に、大ケガをした俺を自分の身など気にせずに介抱して、ボロの街まで担いで運んでくれたくらいだ。
話しかけられても、相手に悪意がないと楽しそうに会話もする。
実はモンスターに対してもそうである。
弱いスライムや小さな魔獣程度であるのならば、突いて追い返す程度で抑えている。
無駄な殺生は行わない。
蛾みたいな虫が頭や顔に張り付いても、全く気にしないくらいである。
そこだけを見ていると、神様や聖者として認識できるかもしれない。
ただ、自分に歯向かったりケンカを売ってくる輩には本当に容赦がない。
大の男であろうがモンスターであろうが、躊躇なくボコっている姿を俺はリアルタイムで目撃している。
その姿は、まさしく天界から堕天させられて怒り狂っているサタンそのものである。
そういう意味では、神様の教えとしてもわかりやすいのかもしれないが。
彼女さえ信仰しておけば、後は何でも良い、と。
そして、彼女さえ信仰しておけば呪いや不幸さえも幸せなのだ、と。
人はそれを邪教と呼ぶ。
「邪神…いやエレナもそろそろ折れてくれよ。
せめてお前への信仰心は無くしてくれ。」
「ねぇ、いま邪神って言った?
私のことを邪神って言った?」
考えていたことが、つい口に出てしまった。
「そんなことより、メンバーをどうするかって話だよ。
実際に、お前手持ちのお金って今どれくらいあるんだ?
人を悠長に選別できるほど、余裕があるのか?」
「う……そ、それは……。
あと金貨2枚と銀貨1枚です…。」
「…………。」
だいたい、1ヶ月程度は働いていて収入としては日本円換算で30万円はあったはずである。
もちろん、1日当たりの経費諸々を引けば手取りは半分から3分の2くらいにはなるが。
なのに、この女神様の手持ちは既に3万円を切っているらしい。
つまり、既に10分の1以下なのだ。
「あのさ、食事代はほとんど俺が出してるのに何でそんなにお金がないんだよ。
意味わかんねーぞ。」
「いやあの……それはね。
あはは……。」
エレナの眼が、旬のイワシの大群のように泳いでいた。
それに伴い大量の冷汗も出ている。
しかし、俺は知っているのだ。
この女神がところ構わず自分のお金を使って、日々浴びるようにお酒を飲んでいることを。
前々からオカシイとは思っていた。
だいたい、ケルベロスにやられた後に俺を真摯に看病していた…という話からして胡散臭いと感じていたのだ。
案の定、後からユーガに話を聞いたら…
『いや、アイツはギルドの食堂で冒険者と一緒に毎日酒盛りしてたぞ。』
だったらしい。
つまり、テント内の俺を最初から最後まで看病してくれたのは南門の門番であるケインとエイベルなのである。
その間、こいつはお金を散財して良い思いをしていたわけだ。
ちなみに、ケルベロス討伐報酬である金貨15枚のうち10枚もいつのまにか消えていた。
間違いなく、この自称女神の酒代とメシ代に消えたに違いない。
俺は、残りのケルベロス討伐の報酬はお世話になった門番の人達に寄付した。
最初から半分は寄付して、残りのお金を使うつもりはなかったのに…。
なんという忌々しい女神である。
「言っとくけど、お金が無くなっても俺はあげないからな。
ご飯も寝床も自分でなんとかしろよ。テントも俺が占拠する。」
「なんで!?
ちょっとくらい貸してよ!!!」
貸すわけないだろう。
流水のようにお金を垂れ流すこの女に貸せるのは、それこそ油田を引き当てたどこぞの王族くらいである。
「エレナ、知ってるか?日本には便利な言葉がある。
金の切れ目が縁の切れ目、だ。」
「やめて!お願いよ!!
私を見捨てないで!!!!!」
ギルドの食堂でまさに昼ドラが始まろうとしている最中、ある1人の少女が俺達に近づいてきていた。
現在、俺達とクエストができる新しいメンバーを募っている最中である。
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「はぁ…ほんとロクでもない奴しかいないわね。」
俺達は、ギルド内の掲示板にメンバー募集の要望を出していた。
ギルドのお姉さんことテロッサに貼ってもらったのだが、俺が予想していた以上に多くの人が面接にやってきた。
しかし、肝心の中身に関しては完全に俺の読みが浅かったし甘かったとも言える。
というのも、本当にまともな奴が来なかったからである。
そもそも、新進気鋭の第10位エレナのパーティがメンバーを募集している…というだけでも、話題性はとんでもなかった。
ただ当然、既に悪名が轟いているエレナの性格や立ち振る舞いを知っているギルド内の冒険者ならば、そもそも参加しようとは思わない。
実際に、あからさまに避けている冒険者も多くいた。
なので、俺達のパーティに面接にやってくる連中と言うのは、そういうことを本当に知らない外から来た新参者であったり、ただエレナの評判を利用したいだけのクズしかいなかったのである。
いくつか一緒にクエストを行おうとしたメンバーもいたのだが、ハッキリ言ってランキング49998位の俺よりも動けない冒険者が大半だった。
これは、『実戦経験を確認します。』とかいうエレナがその場でただやりたかっただけのノリで始まった二次面接でわかったことである。
もちろん、対戦相手は俺。
その様子を伺うエレナはというと、どこかから持ってきた椅子に座りながら、メガホンを叩いて他人を評価するという、さながら黒澤明のようなスタイルであった。
俺達は映画の演者では決してない。
ちなみに、面接会場は外壁修理を行っていた近くの野原なので、ケインやエイベルあたりの南門の門番達も面白がって見物していた。
驚いたのが、たかが1ヶ月程度しか訓練しておらず、身体強化を会得しているだけの俺にさえ全員が手も足も出ないという体たらくだったことだ。
見た目からしても、日ごろから訓練なんてして無さそうな連中だったのだが、それにしても酷い有様であった。
対面でさえ俺の方が素早く動けるのだから、絶対にケルベロス級の相手になると即詰みである。
ただ正直、俺はこの面接と言う名の対戦で少しだけ自信を回復した。
相手が魔力操作を行う瞬間等々もきちんとわかったし、何よりも訓練の成果が出ていると実感できたのが良かった。
一般人に毛の生えた程度の相手なら、俺の方が明らかに強いことがわかったのだ。
もちろん、俺はアレからも欠かさずにずっと修行している。
もしかしたら、この盤面はエレナが俺のために準備してくれたのかもしれない…と思った次第である。
多分、そんなことはなくただの気まぐれなのだろうけど。
しかし、それならばなぜ俺はこんな酷い判定をされているのだろうか。
どう考えても、面接にやってきた連中は49998位の俺以下であるはずなのに…。
全くランキングの変動がある気がしない。
もしかしたら、テンプレ悪代官日本代表の田沼意次のような人物が、本当に不正にランキングを操作しているのかもしれない。
テロッサが言うには、信用や実績を含めた総合点でのランキングらしいのだが…。
まぁ確かに、冒険者には色々な職業があるから単純に戦闘能力だけを見ているわけではない、というのも納得できる理由ではある。
例えば、ものすごい腕の立つ商人であるのならば、その業績で高く評価されるのも頷ける。
それにしても、面接にやってきた連中がこの体たらくとは思わなかったのだ。
普通の仕事を行う時にも支障が出そうな状態にしか見えなかった。
外見ですら、腹が出ていたりモヤシよりも細い参加者すらいたくらいだ。
俺達のパーティに入れば、甘い蜜でも吸えると思ったのだろうか。
どこの世界にも、こういう連中はいるものである。
そして、ただメシを食ってクソをしているだけでも49900位以下になることはない…と言われていた理由もよくわかった。
と、同時にこのレベルですら俺よりも上の判定なのか?と絶望もした。
何1つ納得できない世の中の不条理さに怒り狂いそうになる。
まぁ、それも俺が評価されない嫉妬心なのだろうけども。
さらに、この面接には重大な落とし穴もあった。
それは、エレナに対する信仰心が偽物だとわかった際には、即効で落とされるという仕組みだったことである。
俺は声を大にして反対したのだが、狂ったラジカセのように狂った音量で狂ったことを繰り返すエレナに、俺はついに折れてしまった。
そして、その信仰心の判断は完全にエレナの勘で決まる。
果たして、こんな面接と言う名の拷問で受かる合格者は出てくるのだろうか。
現代でこんなシステムがあったとしたら、完全にブラック企業判定である。
そういうことなので、1週間もすればまともに集まってくる人はいなくなった。
その間にも金銭は必要になるので、俺達は別のクエストを受注しなくてはならない。
ハッキリ言って、時間とお金を無駄に消費しているだけな気がする…。
そこから受注したクエストも、実際に別に大したことはなかった。
街に届けられた物資をクライアントに届けたり、店頭販売の手伝いを行ったり、迷子になったペットを見つけに行ったり…と文字通り俺でも余裕で出来そうなクエストしか無かった。
当然、そうした内容のクエストの報酬はそれほど大きくはない。
せいぜい、その日を凌げる程度の稼ぎで終わる。
そうして、こういう退屈なクエストを受けるたびに、仕事中であるにも関わらずエレナは一人遊びを勝手に始めてクライアントに怒られて泣く羽目になるのだ。
落ち着きのないプレーリードッグですら、もう少し冷静に振る舞えるはずである。
だから、ここ2週間程度は完全に色々と停滞してしまっている。
外壁修理のクエストも終わってしまったので、金銭面のことを考えても本当にヤバイ。
事実、お金を使うのがもったいないという理由で、今でも外壁のテントの中で寝泊まりをしているくらいだ。
テントも当然、借りパク状態である。
そろそろ、俺達もまともに別のクエストを探さないといけない。
そのためには、新しいメンバーが必須なわけなのだが…ここまで上手くいかないとは…。
「なぁ、エレナ。
やっぱり1回で良いから魔法使い?みたいな人を誘って、クエストに出てみようぜ。
このままだと、俺達いつまで経っても必要な人材を見つけられないぞ。」
モノは試しに連れて行くしかないと、俺は考え始めていた。
もしかしたら、ものすごくウチのパーティと相性が良い人が見つかるかもしれない。
「イヤよ。
私への信仰心がない奴は顔も見たくないもの。」
という憮然とした感じで、現状は平行線である。
本当に話が進まない。
じゃあお前が見つけて来いよ、とも言えないのが歯がゆい。
なぜなら、この自称女神が連れてくる人間がまともなわけがないからである。
エレナのことは、ここ1ヶ月以上も一緒にいてわかったことがある。
この女神様は、立場の弱い人や困っている人などには基本的に凄く優しい。
実際に、大ケガをした俺を自分の身など気にせずに介抱して、ボロの街まで担いで運んでくれたくらいだ。
話しかけられても、相手に悪意がないと楽しそうに会話もする。
実はモンスターに対してもそうである。
弱いスライムや小さな魔獣程度であるのならば、突いて追い返す程度で抑えている。
無駄な殺生は行わない。
蛾みたいな虫が頭や顔に張り付いても、全く気にしないくらいである。
そこだけを見ていると、神様や聖者として認識できるかもしれない。
ただ、自分に歯向かったりケンカを売ってくる輩には本当に容赦がない。
大の男であろうがモンスターであろうが、躊躇なくボコっている姿を俺はリアルタイムで目撃している。
その姿は、まさしく天界から堕天させられて怒り狂っているサタンそのものである。
そういう意味では、神様の教えとしてもわかりやすいのかもしれないが。
彼女さえ信仰しておけば、後は何でも良い、と。
そして、彼女さえ信仰しておけば呪いや不幸さえも幸せなのだ、と。
人はそれを邪教と呼ぶ。
「邪神…いやエレナもそろそろ折れてくれよ。
せめてお前への信仰心は無くしてくれ。」
「ねぇ、いま邪神って言った?
私のことを邪神って言った?」
考えていたことが、つい口に出てしまった。
「そんなことより、メンバーをどうするかって話だよ。
実際に、お前手持ちのお金って今どれくらいあるんだ?
人を悠長に選別できるほど、余裕があるのか?」
「う……そ、それは……。
あと金貨2枚と銀貨1枚です…。」
「…………。」
だいたい、1ヶ月程度は働いていて収入としては日本円換算で30万円はあったはずである。
もちろん、1日当たりの経費諸々を引けば手取りは半分から3分の2くらいにはなるが。
なのに、この女神様の手持ちは既に3万円を切っているらしい。
つまり、既に10分の1以下なのだ。
「あのさ、食事代はほとんど俺が出してるのに何でそんなにお金がないんだよ。
意味わかんねーぞ。」
「いやあの……それはね。
あはは……。」
エレナの眼が、旬のイワシの大群のように泳いでいた。
それに伴い大量の冷汗も出ている。
しかし、俺は知っているのだ。
この女神がところ構わず自分のお金を使って、日々浴びるようにお酒を飲んでいることを。
前々からオカシイとは思っていた。
だいたい、ケルベロスにやられた後に俺を真摯に看病していた…という話からして胡散臭いと感じていたのだ。
案の定、後からユーガに話を聞いたら…
『いや、アイツはギルドの食堂で冒険者と一緒に毎日酒盛りしてたぞ。』
だったらしい。
つまり、テント内の俺を最初から最後まで看病してくれたのは南門の門番であるケインとエイベルなのである。
その間、こいつはお金を散財して良い思いをしていたわけだ。
ちなみに、ケルベロス討伐報酬である金貨15枚のうち10枚もいつのまにか消えていた。
間違いなく、この自称女神の酒代とメシ代に消えたに違いない。
俺は、残りのケルベロス討伐の報酬はお世話になった門番の人達に寄付した。
最初から半分は寄付して、残りのお金を使うつもりはなかったのに…。
なんという忌々しい女神である。
「言っとくけど、お金が無くなっても俺はあげないからな。
ご飯も寝床も自分でなんとかしろよ。テントも俺が占拠する。」
「なんで!?
ちょっとくらい貸してよ!!!」
貸すわけないだろう。
流水のようにお金を垂れ流すこの女に貸せるのは、それこそ油田を引き当てたどこぞの王族くらいである。
「エレナ、知ってるか?日本には便利な言葉がある。
金の切れ目が縁の切れ目、だ。」
「やめて!お願いよ!!
私を見捨てないで!!!!!」
ギルドの食堂でまさに昼ドラが始まろうとしている最中、ある1人の少女が俺達に近づいてきていた。
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