俺、何しに異世界に来たんだっけ?

右足の指

文字の大きさ
24 / 105
第2章

どこにでもダメな奴はいる

しおりを挟む
わたくし、不知燈汰(しらず・とうた)は突然に異世界へと転生させられた。
現在、俺達とクエストができる新しいメンバーを募っている最中である。


──────────────────────


「はぁ…ほんとロクでもない奴しかいないわね。」

俺達は、ギルド内の掲示板にメンバー募集の要望を出していた。
ギルドのお姉さんことテロッサに貼ってもらったのだが、俺が予想していた以上に多くの人が面接にやってきた。
しかし、肝心の中身に関しては完全に俺の読みが浅かったし甘かったとも言える。

というのも、本当にまともな奴が来なかったからである。

そもそも、新進気鋭の第10位エレナのパーティがメンバーを募集している…というだけでも、話題性はとんでもなかった。
ただ当然、既に悪名が轟いているエレナの性格や立ち振る舞いを知っているギルド内の冒険者ならば、そもそも参加しようとは思わない。
実際に、あからさまに避けている冒険者も多くいた。

なので、俺達のパーティに面接にやってくる連中と言うのは、そういうことを本当に知らない外から来た新参者であったり、ただエレナの評判を利用したいだけのクズしかいなかったのである。

いくつか一緒にクエストを行おうとしたメンバーもいたのだが、ハッキリ言ってランキング49998位の俺よりも動けない冒険者が大半だった。
これは、『実戦経験を確認します。』とかいうエレナがその場でただやりたかっただけのノリで始まった二次面接でわかったことである。

もちろん、対戦相手は俺。
その様子を伺うエレナはというと、どこかから持ってきた椅子に座りながら、メガホンを叩いて他人を評価するという、さながら黒澤明のようなスタイルであった。
俺達は映画の演者では決してない。

ちなみに、面接会場は外壁修理を行っていた近くの野原なので、ケインやエイベルあたりの南門の門番達も面白がって見物していた。

驚いたのが、たかが1ヶ月程度しか訓練しておらず、身体強化を会得しているだけの俺にさえ全員が手も足も出ないという体たらくだったことだ。

見た目からしても、日ごろから訓練なんてして無さそうな連中だったのだが、それにしても酷い有様であった。
対面でさえ俺の方が素早く動けるのだから、絶対にケルベロス級の相手になると即詰みである。

ただ正直、俺はこの面接と言う名の対戦で少しだけ自信を回復した。

相手が魔力操作を行う瞬間等々もきちんとわかったし、何よりも訓練の成果が出ていると実感できたのが良かった。
一般人に毛の生えた程度の相手なら、俺の方が明らかに強いことがわかったのだ。
もちろん、俺はアレからも欠かさずにずっと修行している。

もしかしたら、この盤面はエレナが俺のために準備してくれたのかもしれない…と思った次第である。
多分、そんなことはなくただの気まぐれなのだろうけど。

しかし、それならばなぜ俺はこんな酷い判定をされているのだろうか。

どう考えても、面接にやってきた連中は49998位の俺以下であるはずなのに…。
全くランキングの変動がある気がしない。
もしかしたら、テンプレ悪代官日本代表の田沼意次のような人物が、本当に不正にランキングを操作しているのかもしれない。

テロッサが言うには、信用や実績を含めた総合点でのランキングらしいのだが…。

まぁ確かに、冒険者には色々な職業があるから単純に戦闘能力だけを見ているわけではない、というのも納得できる理由ではある。
例えば、ものすごい腕の立つ商人であるのならば、その業績で高く評価されるのも頷ける。

それにしても、面接にやってきた連中がこの体たらくとは思わなかったのだ。

普通の仕事を行う時にも支障が出そうな状態にしか見えなかった。
外見ですら、腹が出ていたりモヤシよりも細い参加者すらいたくらいだ。
俺達のパーティに入れば、甘い蜜でも吸えると思ったのだろうか。

どこの世界にも、こういう連中はいるものである。

そして、ただメシを食ってクソをしているだけでも49900位以下になることはない…と言われていた理由もよくわかった。
と、同時にこのレベルですら俺よりも上の判定なのか?と絶望もした。

何1つ納得できない世の中の不条理さに怒り狂いそうになる。
まぁ、それも俺が評価されない嫉妬心なのだろうけども。

さらに、この面接には重大な落とし穴もあった。

それは、エレナに対する信仰心が偽物だとわかった際には、即効で落とされるという仕組みだったことである。
俺は声を大にして反対したのだが、狂ったラジカセのように狂った音量で狂ったことを繰り返すエレナに、俺はついに折れてしまった。

そして、その信仰心の判断は完全にエレナの勘で決まる。
果たして、こんな面接と言う名の拷問で受かる合格者は出てくるのだろうか。
現代でこんなシステムがあったとしたら、完全にブラック企業判定である。

そういうことなので、1週間もすればまともに集まってくる人はいなくなった。
その間にも金銭は必要になるので、俺達は別のクエストを受注しなくてはならない。
ハッキリ言って、時間とお金を無駄に消費しているだけな気がする…。

そこから受注したクエストも、実際に別に大したことはなかった。

街に届けられた物資をクライアントに届けたり、店頭販売の手伝いを行ったり、迷子になったペットを見つけに行ったり…と文字通り俺でも余裕で出来そうなクエストしか無かった。
当然、そうした内容のクエストの報酬はそれほど大きくはない。
せいぜい、その日を凌げる程度の稼ぎで終わる。

そうして、こういう退屈なクエストを受けるたびに、仕事中であるにも関わらずエレナは一人遊びを勝手に始めてクライアントに怒られて泣く羽目になるのだ。
落ち着きのないプレーリードッグですら、もう少し冷静に振る舞えるはずである。

だから、ここ2週間程度は完全に色々と停滞してしまっている。
外壁修理のクエストも終わってしまったので、金銭面のことを考えても本当にヤバイ。

事実、お金を使うのがもったいないという理由で、今でも外壁のテントの中で寝泊まりをしているくらいだ。
テントも当然、借りパク状態である。

そろそろ、俺達もまともに別のクエストを探さないといけない。
そのためには、新しいメンバーが必須なわけなのだが…ここまで上手くいかないとは…。

「なぁ、エレナ。
やっぱり1回で良いから魔法使い?みたいな人を誘って、クエストに出てみようぜ。
このままだと、俺達いつまで経っても必要な人材を見つけられないぞ。」

モノは試しに連れて行くしかないと、俺は考え始めていた。
もしかしたら、ものすごくウチのパーティと相性が良い人が見つかるかもしれない。

「イヤよ。
私への信仰心がない奴は顔も見たくないもの。」

という憮然とした感じで、現状は平行線である。
本当に話が進まない。
じゃあお前が見つけて来いよ、とも言えないのが歯がゆい。

なぜなら、この自称女神が連れてくる人間がまともなわけがないからである。

エレナのことは、ここ1ヶ月以上も一緒にいてわかったことがある。
この女神様は、立場の弱い人や困っている人などには基本的に凄く優しい。

実際に、大ケガをした俺を自分の身など気にせずに介抱して、ボロの街まで担いで運んでくれたくらいだ。
話しかけられても、相手に悪意がないと楽しそうに会話もする。

実はモンスターに対してもそうである。
弱いスライムや小さな魔獣程度であるのならば、突いて追い返す程度で抑えている。
無駄な殺生は行わない。
蛾みたいな虫が頭や顔に張り付いても、全く気にしないくらいである。

そこだけを見ていると、神様や聖者として認識できるかもしれない。

ただ、自分に歯向かったりケンカを売ってくる輩には本当に容赦がない。
大の男であろうがモンスターであろうが、躊躇なくボコっている姿を俺はリアルタイムで目撃している。
その姿は、まさしく天界から堕天させられて怒り狂っているサタンそのものである。

そういう意味では、神様の教えとしてもわかりやすいのかもしれないが。
彼女さえ信仰しておけば、後は何でも良い、と。
そして、彼女さえ信仰しておけば呪いや不幸さえも幸せなのだ、と。

人はそれを邪教と呼ぶ。

「邪神…いやエレナもそろそろ折れてくれよ。
せめてお前への信仰心は無くしてくれ。」

「ねぇ、いま邪神って言った?
私のことを邪神って言った?」

考えていたことが、つい口に出てしまった。

「そんなことより、メンバーをどうするかって話だよ。
実際に、お前手持ちのお金って今どれくらいあるんだ?
人を悠長に選別できるほど、余裕があるのか?」

「う……そ、それは……。
あと金貨2枚と銀貨1枚です…。」

「…………。」

だいたい、1ヶ月程度は働いていて収入としては日本円換算で30万円はあったはずである。
もちろん、1日当たりの経費諸々を引けば手取りは半分から3分の2くらいにはなるが。
なのに、この女神様の手持ちは既に3万円を切っているらしい。

つまり、既に10分の1以下なのだ。

「あのさ、食事代はほとんど俺が出してるのに何でそんなにお金がないんだよ。
意味わかんねーぞ。」

「いやあの……それはね。
あはは……。」

エレナの眼が、旬のイワシの大群のように泳いでいた。
それに伴い大量の冷汗も出ている。
しかし、俺は知っているのだ。

この女神がところ構わず自分のお金を使って、日々浴びるようにお酒を飲んでいることを。

前々からオカシイとは思っていた。
だいたい、ケルベロスにやられた後に俺を真摯に看病していた…という話からして胡散臭いと感じていたのだ。
案の定、後からユーガに話を聞いたら…

『いや、アイツはギルドの食堂で冒険者と一緒に毎日酒盛りしてたぞ。』

だったらしい。
つまり、テント内の俺を最初から最後まで看病してくれたのは南門の門番であるケインとエイベルなのである。

その間、こいつはお金を散財して良い思いをしていたわけだ。
ちなみに、ケルベロス討伐報酬である金貨15枚のうち10枚もいつのまにか消えていた。
間違いなく、この自称女神の酒代とメシ代に消えたに違いない。

俺は、残りのケルベロス討伐の報酬はお世話になった門番の人達に寄付した。
最初から半分は寄付して、残りのお金を使うつもりはなかったのに…。

なんという忌々しい女神である。

「言っとくけど、お金が無くなっても俺はあげないからな。
ご飯も寝床も自分でなんとかしろよ。テントも俺が占拠する。」

「なんで!?
ちょっとくらい貸してよ!!!」

貸すわけないだろう。
流水のようにお金を垂れ流すこの女に貸せるのは、それこそ油田を引き当てたどこぞの王族くらいである。

「エレナ、知ってるか?日本には便利な言葉がある。
金の切れ目が縁の切れ目、だ。」

「やめて!お願いよ!!
私を見捨てないで!!!!!」

ギルドの食堂でまさに昼ドラが始まろうとしている最中、ある1人の少女が俺達に近づいてきていた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。 彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。 優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。 それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。 その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。 しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。 ※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。 詳細は近況ボードをご覧ください。

異世界転生した俺は、産まれながらに最強だった。

桜花龍炎舞
ファンタジー
主人公ミツルはある日、不慮の事故にあい死んでしまった。 だが目がさめると見知らぬ美形の男と見知らぬ美女が目の前にいて、ミツル自身の身体も見知らぬ美形の子供に変わっていた。 そして更に、恐らく転生したであろうこの場所は剣や魔法が行き交うゲームの世界とも思える異世界だったのである。 異世界転生 × 最強 × ギャグ × 仲間。 チートすぎる俺が、神様より自由に世界をぶっ壊す!? “真面目な展開ゼロ”の爽快異世界バカ旅、始動!

伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります

竹桜
ファンタジー
 武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。  転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。  

知識スキルで異世界らいふ

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ

無能と呼ばれたレベル0の転生者は、効果がチートだったスキル限界突破の力で最強を目指す

紅月シン
ファンタジー
 七歳の誕生日を迎えたその日に、レオン・ハーヴェイの全ては一変することになった。  才能限界0。  それが、その日レオンという少年に下されたその身の価値であった。  レベルが存在するその世界で、才能限界とはレベルの成長限界を意味する。  つまりは、レベルが0のまま一生変わらない――未来永劫一般人であることが確定してしまったのだ。  だがそんなことは、レオンにはどうでもいいことでもあった。  その結果として実家の公爵家を追放されたことも。  同日に前世の記憶を思い出したことも。  一つの出会いに比べれば、全ては些事に過ぎなかったからだ。  その出会いの果てに誓いを立てた少年は、その世界で役立たずとされているものに目を付ける。  スキル。  そして、自らのスキルである限界突破。  やがてそのスキルの意味を理解した時、少年は誓いを果たすため、世界最強を目指すことを決意するのであった。 ※小説家になろう様にも投稿しています

転生したら王族だった

みみっく
ファンタジー
異世界に転生した若い男の子レイニーは、王族として生まれ変わり、強力なスキルや魔法を持つ。彼の最大の願望は、人間界で種族を問わずに平和に暮らすこと。前世では得られなかった魔法やスキル、さらに不思議な力が宿るアイテムに強い興味を抱き大喜びの日々を送っていた。 レイニーは異種族の友人たちと出会い、共に育つことで異種族との絆を深めていく。しかし……

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

封印されていたおじさん、500年後の世界で無双する

鶴井こう
ファンタジー
「魔王を押さえつけている今のうちに、俺ごとやれ!」と自ら犠牲になり、自分ごと魔王を封印した英雄ゼノン・ウェンライト。 突然目が覚めたと思ったら五百年後の世界だった。 しかもそこには弱体化して少女になっていた魔王もいた。 魔王を監視しつつ、とりあえず生活の金を稼ごうと、冒険者協会の門を叩くゼノン。 英雄ゼノンこと冒険者トントンは、おじさんだと馬鹿にされても気にせず、時代が変わってもその強さで無双し伝説を次々と作っていく。

処理中です...