俺、何しに異世界に来たんだっけ?

右足の指

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第4章

消えない疑念

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俺達は、【スノウグッマ】というモンスターを討伐するために、とあるダンジョンの入り口まで来ていた。
さすがに、ここまで来ると緊張感がもう一段上がる。

「俺、ダンジョンに来たことはあるんだけど、パーティを組んで俺自身がダンジョンのクエスト攻略をするのって実は初めてなんだよ。
ルクスもないんだよな、確か。」

「あぁ、自慢ではないが僕も初めてだ。
そもそも、ハミの街で冒険者登録をした時には既に冬が来ていたしな。
まともなクエストが、雪かきや交通安全のパトロールくらいしか無かったんだよ。
だから僕は、そういうクエストしかやってこなかった。」

「この季節って、そういうのどこの街でも一緒なんだな。
安心したよ。」

やっぱり、これだけ寒いと誰も外に出たがらないので、依頼を出してもそれをこなす人が出てこないのだろう。
そういう意味では、やる気さえあればこの時期は独占的にクエストをこなしていくことができることを意味する。

まぁ、凍死する可能性も十分にあるのだが。

「ルディアはどうなのだ?
ボロの街の憲兵は、遠征と言う名目でダンジョン攻略も視野に入れていると聞いたが。」

「私は経験があるぞ。
憲兵としてもだが、元々は冒険者でそこである程度は鍛えたからな。」

ボロの街の一部の門番には、何故かとてつもない実力者がいる。
おそらく、一部の憲兵達もそうなのだろう。
確か、不在だったが憲兵には《隊長》や《副隊長》なる存在がいるらしいし。

きっと、前にルディアが言っていたカターユの方針なのだと感じる。

「それは心強いな。
ならば、先行は僕達ではなく経験者のルディアに任せた方が良いか。」

「あぁ、任せてもらって問題ない。
まずは、私が先頭で行こう。」

その前に、俺も彼女達に聞いておかなくてはならないことがあった。

「その前にさ、俺2人の戦い方を知っておきたいんだけど。
まさか、魔法特化の魔法使いや神官ってわけではないだろ?
俺は、戦士と武道家の中間くらいかな。
でも戦闘タイプだとは言っても、後ろからのサポートしかやったことがない。
あとサポートとは言っても援護射撃みたいなもので、魔法や補助系スキルは一切使えない。
ほぼ役に立てなくて、悪いな。」

というか、サポートするまでもなく先行するエレナやユキノが全てを蹂躙するので、彼女達の戦闘を記録するだけのただの小坊主である。

しかも、奴らは畑や農作物が存在する場所で平気でそういう戦い方をする。
多分というか間違いなく、アニムスも同じだろう。
おかげで、損失がバカにならないのだ。

「気にする必要はない。そのために僕がいる。
僕はオールラウンダーだ。
剣技もできるし、魔法も少しは使える。
回復も多少はできるぞ。
弓も使えるが、さすがにダンジョン内ではどうかな。」

「私はこの大剣を見てもわかる通り、戦士タイプだ。
肉体強化をして、来るものを全て叩き潰す。
先ほど見せたように、初級の魔法は使えるが別に得意と言うわけではない。」

…なるほど。
なんか、性格が表れてるなぁ。

モンスター討伐のクエストに慎重だったルクスは、何でもできるようにしている。
猪突猛進で天然が入っているルディアは、文字通り戦士か。
で、慎重居士の俺は後ろでコッソリ…と。

結構わかりやすい。
俺、才能があったら性格的には補助系の魔法使いとか神官が向いていたんだろうな。

「オッケー。
なら、俺は2人の邪魔をしないようにサポートするよ。」

「まぁそれで問題ないだろう。
僕がいるのだから。」

俺からすると、お前が一番不安なのだが。
絶対にギルド内ランキングも忖度と不正だろうし。

不安だから、1人でこういうクエストにも来られないのだろうし。

「あ、そういえばルディアって今もランキングに載ってるの?」

「載ってるぞ。
今は5000位前後だな。
まぁ、しばらく活動をしていないから当然のランクだ。
なーに、見ていろ。きちんと私の実力を見せてやる。」

「いやいや、十分にすごいって。
本当に頼もしいし、羨ましいよ。」

憲兵と冒険者の兼業で、憲兵としての地位や名声はあるはずなのに、ギルドで活動していないとやっぱりそれくらいのランキングに落ち着くんだな。
そう考えると、ギルドのランキングの査定って本当に厳しいし信用できるのだろう。
俺のすぐ横にいる男のような、ごく一部を除いて。

つまり、ギルド内での信用獲得は継続と実績がやっぱり第一ということである。

「じゃあ、さっそくダンジョンに入るか。」


───────────────────────────────────


初めてのダンジョン攻略。
どうやら、新しくできたダンジョンらしく地下3階層とかなり浅い。

ダンジョンは生き物のように突然生じるらしく、その仕組みは未だにわかっていない。
しかも、時が経つにつれて成長するのだという。
ダンジョン内に存在する死骸などを糧に、成長していくのだろうか。

ただわかるのは、そこはかとなく不気味であるという点である。

生きているかのように、鼓動するダンジョン。
そこかしこに存在するモンスター。
地獄に誘うかのような、地下への階段。
なんという緊張感…。

でも、やっぱりちょっとワクワクしている俺。

「それにしても、ルディアは本当に強いんだな。
俺が言うのもなんだが。
ルクスも、口だけだと思っていたけど普通にやるな。」

ルディアは誰に言われるまでもなく、勇猛果敢にモンスターを撃破している。
おそらく、突破してくる一番強いであろうモンスターは、すべてルディアが倒している。

身体強化が得意なようだけど、雰囲気的には全然余裕で、正直そこらへんの冒険者程度には負ける要素が見当たらない。

ルクスも意外や意外、普通に動ける男だった。
何もできない金持ちのボンボンかと思いきや、少なくとも過去に俺が面接をしたどうしようもない連中よりかは、遥かに冒険者として動けている気がする。
実は一般人に毛の生えたレベルだと思っていたが、ちゃんとした冒険者である。

まぁそれでも、ランキング214位は絶対にないと思うが。
ケルベロスあたりには、単独で挑むと間違いなく返り討ちに合うレベルだ。

「誰が口だけか、バカモノが。
言っただろう?
僕は凄いんだ。」

「しかし、ここの魔物はなかなか歯ごたえがあるぞ。
出来たばかりだと聞いていたが、立地的に人が入りづらいということもあって、奴らも集まりやすいのだろうな。
街の治安を維持するという意味でも、良い情報を得られた。」

少し興奮気味の2人を見て、俺も楽しかった。
単独撃破…とは言わないまでも、後ろから2人をサポートするくらいはできている。
邪魔してくる敵を散らしたり、注意をそらしたり。

今まではそんなことすらできなかったからな。

「それにしても、トータも凄いぞ。
ハッキリ言って、君が後ろにいてくれると戦いやすい。
余計な邪魔が入らないからな。」

「確かに、君を連れてきて正解だった。
おかげで、僕も自分の戦いだけに集中できる。」

「まぁ、ああいう役割は任せてくれよ。
俺1人じゃ何もできないけど、小賢しいのは得意なんだ。」

間違っても、率先して前に出て戦う…などということはしない。
近くで見ると、やっぱり前世で見たこともないようなモンスターが出てくるとかなり躊躇してしまう。

恐ろしいのが、この異世界にはああいったモンスターを食料としている冒険者もいるのだという。
前世でイカやタコを最初に食べようと考えた連中と、同じである。
普通の神経ではない。
ナマコなんて、見た目ただのウンコにしか見えないのに。

そんなモンスターどもが倒れる中、俺達は歩きながら会話を始めた。

「それにしても、アレだな。
全然関係ないけど、ルクスって綺麗な髪だよな。
戦っててもすげー目立つぞ。
俺、そういう髪の色をしている人を初めて見た。」

綺麗な金髪。
まるで、本来の女神フィエレナのそれである。
この異世界では、茶髪が基本で金髪は珍しいって言っていた気がするのだが。

まぁでも、ルディアのピンクっぽいような赤っぽいような髪も珍しいのか?

「あぁこれか?
これは、洗礼を受けたものの証だよ。
僕というか、僕の家系は代々フィエリエル様の信徒だからな。」

「洗礼…?あぁ、教会での儀式的な?」

「まぁそんなところだ。
そういうわけで、その時にこの色に魔道具で染めたのだよ。
今では、そういう洗礼も珍しいのかもしれないが。
今は簡易的な祈りの儀式が中心だからな。」

ようは、宗教的な儀式の一環らしい。
前世にも、髪を染めたり身体に穴をあけたりする文化は残っていたから、言っていることは俺にもわかる。

この異世界にも、やっぱり色々と宗教的な事情はあるようだ。

「なんで金髪なんだ?」

「それは、降臨された女神フィエリエル様の姿がそれはそれは美しい黄金色だったからだよ。
髪も、眼も、そしてそこから溢れ出る魔力も。そう伝えられている。
ほら、カターユ様の館の眼下に森が広がっていただろ?
あそこが、女神が降臨なされた場所だ。」

「神護の森だよな?
その話は、聞いたことがあるよ。
ルディアも、フィエリエルの信徒というか、降臨を信じているのか?」

「教会に属しているわけではないが、信仰はしているよ。
昔から、この世界を救った女神の話を聞いて育ってきたからな。
それに、女神がこの世界を見守ってくれていると考えると、少しは安心感も生まれるじゃないか。」

ルディアが、嬉々として説明をしてくれた。

確か、アニムスの話ではカターユは無神論者の可能性が高いはずなのだが、そこらへんの宗教的な信条は強制していないようだ。

それにしても…神護の森に降臨した女神フィエリエル、か。

こうやって、第三者から話を聞くといよいよもって、エレナですら知らない女神がこの異世界の中心にいることがわかる。
そして、その情報は俺がよく知っている女神のそれである。

つまり、エレナにソックリなのだ。
いや、もっと言い換えればその伝承が正しいのならば…。

この異世界に降臨した女神なる存在は、本当に神格を持った存在であった可能性が極めて高い。

これは、天界の関係者である俺とエレナにしかわからない事情であり、この異世界攻略における究極のアドバンテージだ。

前提として、天界はこのフィエリエルの存在を把握していない可能性がある。
あるいは、隠している可能性もある。
もっと言えば、天界とは異なる場所からフィエリエルは降臨したという可能性すらある。

……なんのために?

例えば、本当に女神なる存在が過去にこの異世界に降臨したとして。
この世界を救った、とルディアは言ったがそれは何のことを指しているのだろう。

500年以上も前。
世界を恐怖に陥れた魔王は、ヒトの英雄であるエシュアなる人物が討伐したとユキノが言っていた。
じゃあ、もっとそれ以前の話か?

いや、それ以前の話が伝わっているのならこの500年間の歴史、魔王討伐の歴史が曖昧な点に納得ができない。
なぜスッポリと、人々の記憶や記録からこの異世界の歴史が切り取られているんだ?

……さっぱり意味がわからない。

まさか、本当に天界も理解できない女神が存在していたということか?
いやいや、それだとやっぱりこの異世界を管理している…という天界側の言い分に矛盾が生まれる。
そもそも、天界側の都合で俺が転生者になったことは間違いなく、そうじゃないとエレナと出会うこともなかったはずなのだ。

……何がどうなっているのか。
俺は一体何をどうしたら、この異世界を攻略したことになるのだろう。

…………。

「どうした、シラズ・トータ?
ボーっとして。」

「…あ、いや!すまん、なんでもない。
じゃあ、お前がいつも着けてるその指輪も儀式関係か?」

「指輪?」

そう。
実は、俺はずっと気になっていたのだ。

ルクスは、パンツ1枚だった時もその指輪だけはずっと着けていた。
ゆえに、大切な人からの贈り物か何かだと考えていたのだ。

まさか、婚約者がいるとか…?

「あぁ、これは君達を連れて来るクエストを受注した時に、同じパーティメンバーから貰ったんだよ。
大切なものだから、僕が預かっておいてくれ…と。」

「なんだそりゃ。
なんで、そんな大切なものを初対面のお前に託すんだよ。」

「それは当然、僕への信頼が厚いからに決まっているだろう。
冒険者として、男として。
これはきっと、彼らにとって大切なものなのだ。」

「なら、早く返してやれよ。」

「それはムリだ。
何故なら、僕は彼らが今どこにいるのか知らないのだから。
それがわかるまで、僕が預かっておこう。」

なぜ、見知らぬ人物からの贈り物をそこまで大切にできるのか。

クエストを受けた時、ということはユキノやアニムスがボコった連中が、ルクスにその指輪を与えた…ということである。

…なんか怪しくね?

「2人とも!
おしゃべりはそこまでだ!!」

ルディアの号令で前を見ると、そこには体長5メートルはある、信じられないくらい巨大で真っ白なクマっぽいモンスターが、2体もいた。
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