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第1章
怪しい少女
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わたくし、不知燈汰(しらず・とうた)は突然に異世界へと転生させられた。
現在、ボロの街の門番から奇妙な話を聞いている最中である。
「女の子の知り合い…ですか?」
突然、門番のオジさん兵士であるケインからよくわからないことを聞かれた。
なに?誰か紹介してほしいの?
「いや全く心当たりないですよ。
というか俺、人間関係とかもまるで記憶ないですし。」
だよなぁ…とケインは頭を掻きながら首を傾げている。
そもそも、この異世界に俺の知人なんぞいるわけないのだ。
生まれも育ちも、この異世界とは異なる日本なのだから。
「何かあったんですか?」
俺の質問に、不可思議そうにケインが応える。
「いやな、なんか若い女の子がよ…
『黒髪黒目で真っ黒な服装をした若い男に心当たりはないか!?』
ってすごい剣幕で言ってきたのよ。」
なにそれ。
怖い…。
「しかもね、その子がここに来たのも今日の深夜だったんだよ。
ちょうど、爆音がした後だったかな。
それもあって、ちょっと怪しいというか奇妙な子だな、と思ってね。」
若い門番兵士のエイベルも応える。
「その女の子すんごい勢いでよ、噛みつかれるかと思ったぜ。
興奮してて、何言ってんのかさっぱりわからなかったからな。
で、最近俺らの周りでそんな風貌の奴なんて兄ちゃんだけだからな。
本当に何も心当たりねぇのか?」
そんなの俺が聞きたいくらいである。
異世界に狂犬を飼っていた記憶は全くない。
「兄ちゃん、もしかして記憶を失う前にあの子に何かしたんじゃねーの?
実際に、メチャクチャかわいらしい子だったぞ。」
「いやいやいや!
状況的に巻き込まれたの絶対に俺ですよ!」
何も覚えてないんだから、間違いなく俺が被害者である。
だいたい、そんなかわいい子なら俺が忘れるはずがないと断言できる。
「まぁ確かにそうだわな。」
と、心底愉快そうに笑うケイン。
このオッサン、絶対に俺をからかって遊んでいる。
「安心して良いよ。
トータ君のことは彼女に言ってないから。」
「さすがに怪しすぎたからな。
兄ちゃんみたいにマナカードを持っていたわけでもないし。
ありゃ完全に頭イカれてるぜ。」
2人が俺を安心させてくれた。
本当に、良い人達に最初に出会えて良かった。
「その子って、今どこにいるかわかりますか?」
なるべく、近寄らないようにしなくては。
なにをされるかわかったものではない。
「それがね、こっちが何をいっても聞く耳をもってくれなくて。
気づいたら凄い勢いで外壁沿いを走って行ったよ。」
「西に走って行ったから、もしかしたら今度は西門から入ろうとしたのかもな。
まぁでも、あの調子じゃそこでも足止めくらうだろうけどよ。」
その子は動かないと死んでしまうマグロか何かなのだろうか。
というか、それだけ俺はその子から恨みを買ってしまっているということに…。
まさか、本当に記憶を失う前に何かしちゃったのだろうか。
……ダメだ。何も思い出せない。
「あの、その子の見た目の印象とか覚えてますか?」
風貌だけでもわかれば、最悪近づいてきたらわかる。
「あー…綺麗な金髪に金色の目だったな。
あと貴族様みたいな服を着てたか。珍しいぜ。
特に髪の色と目な。」
「あの見た目はヒト種族では覚えがないですよね。
もしかしたら、ヒト種族ではないのかも。」
そんな得体のしれない存在に俺は狙われてるの?
勘弁してくれ。本当に。
「あとなぜか裸足だったな。とにかく何から何までぶっ飛んでたぜその子。
それもあって、一応こっちで管理してる軽装靴でもやろうかって引き留めようとしたんだがなぁ…」
で、気づいたら走って消えて行ったらしい。
確信。
正真正銘のバケモノである。
目的のすべてが俺を打倒するためだけに存在しているような奴だ。
出会ったら即死イベントかもしれない。
俺は心底震えあがっていた。
なぜ見知らぬ異世界でこんな目に…逆恨みにもほどがある。
「そんなに心配しなくても大丈夫だよ。
こう見えても、この街の警備は強固だからね。」
「まぁあんな明らかに不審な輩は入れないから安心しな。」
その言葉に、少しだが安堵する。
だけど、そんな強烈な女の子だと本当に何をするかわからん。
今日は余計な散策はしないで、さっさとギルドに行って準備ができるのを待っていよう。
ギルドなら、多くの冒険者がいるから安心できるはずである。
「すみません、色々と忠告ありがとうございました。
マジで助かりました。」
本当に聞けて良かった。
何も知らずに歩いていたら、そんなヤバイ奴にエンカウントしていたかもしれない。
「さすがに街の中にいるとは思えんがな。
この警備を抜けて入ってたら正真正銘の化け物だぜ。」
ケインが笑っていたが、俺は全く笑えない。
普通に死活問題である。
「一応、気を付けて帰ってね。
今日またギルドに用事があるんだろ?
あそこは絶対に安全だから。」
俺もそう思う。
さっさとギルドに行こう。
挨拶も手早く終わらせて、俺は足早にギルドに向かうことを決意した。
そして俺を見送った2人の門番は、最後に彼女について話すのだった。
「あ、そうだ。兄ちゃんに言うの忘れてた。
そういやあの子、自分は女神だ何だの言ってたな。」
「はは、そういえば言ってましたね。
本当なら英雄エシュア以来の大事件ですけど。」
呆れた様子で2人は笑っていたが、その会話を俺が聞いていたのなら、ちっとも笑えない状況になっていたはずである。
現在、ボロの街の門番から奇妙な話を聞いている最中である。
「女の子の知り合い…ですか?」
突然、門番のオジさん兵士であるケインからよくわからないことを聞かれた。
なに?誰か紹介してほしいの?
「いや全く心当たりないですよ。
というか俺、人間関係とかもまるで記憶ないですし。」
だよなぁ…とケインは頭を掻きながら首を傾げている。
そもそも、この異世界に俺の知人なんぞいるわけないのだ。
生まれも育ちも、この異世界とは異なる日本なのだから。
「何かあったんですか?」
俺の質問に、不可思議そうにケインが応える。
「いやな、なんか若い女の子がよ…
『黒髪黒目で真っ黒な服装をした若い男に心当たりはないか!?』
ってすごい剣幕で言ってきたのよ。」
なにそれ。
怖い…。
「しかもね、その子がここに来たのも今日の深夜だったんだよ。
ちょうど、爆音がした後だったかな。
それもあって、ちょっと怪しいというか奇妙な子だな、と思ってね。」
若い門番兵士のエイベルも応える。
「その女の子すんごい勢いでよ、噛みつかれるかと思ったぜ。
興奮してて、何言ってんのかさっぱりわからなかったからな。
で、最近俺らの周りでそんな風貌の奴なんて兄ちゃんだけだからな。
本当に何も心当たりねぇのか?」
そんなの俺が聞きたいくらいである。
異世界に狂犬を飼っていた記憶は全くない。
「兄ちゃん、もしかして記憶を失う前にあの子に何かしたんじゃねーの?
実際に、メチャクチャかわいらしい子だったぞ。」
「いやいやいや!
状況的に巻き込まれたの絶対に俺ですよ!」
何も覚えてないんだから、間違いなく俺が被害者である。
だいたい、そんなかわいい子なら俺が忘れるはずがないと断言できる。
「まぁ確かにそうだわな。」
と、心底愉快そうに笑うケイン。
このオッサン、絶対に俺をからかって遊んでいる。
「安心して良いよ。
トータ君のことは彼女に言ってないから。」
「さすがに怪しすぎたからな。
兄ちゃんみたいにマナカードを持っていたわけでもないし。
ありゃ完全に頭イカれてるぜ。」
2人が俺を安心させてくれた。
本当に、良い人達に最初に出会えて良かった。
「その子って、今どこにいるかわかりますか?」
なるべく、近寄らないようにしなくては。
なにをされるかわかったものではない。
「それがね、こっちが何をいっても聞く耳をもってくれなくて。
気づいたら凄い勢いで外壁沿いを走って行ったよ。」
「西に走って行ったから、もしかしたら今度は西門から入ろうとしたのかもな。
まぁでも、あの調子じゃそこでも足止めくらうだろうけどよ。」
その子は動かないと死んでしまうマグロか何かなのだろうか。
というか、それだけ俺はその子から恨みを買ってしまっているということに…。
まさか、本当に記憶を失う前に何かしちゃったのだろうか。
……ダメだ。何も思い出せない。
「あの、その子の見た目の印象とか覚えてますか?」
風貌だけでもわかれば、最悪近づいてきたらわかる。
「あー…綺麗な金髪に金色の目だったな。
あと貴族様みたいな服を着てたか。珍しいぜ。
特に髪の色と目な。」
「あの見た目はヒト種族では覚えがないですよね。
もしかしたら、ヒト種族ではないのかも。」
そんな得体のしれない存在に俺は狙われてるの?
勘弁してくれ。本当に。
「あとなぜか裸足だったな。とにかく何から何までぶっ飛んでたぜその子。
それもあって、一応こっちで管理してる軽装靴でもやろうかって引き留めようとしたんだがなぁ…」
で、気づいたら走って消えて行ったらしい。
確信。
正真正銘のバケモノである。
目的のすべてが俺を打倒するためだけに存在しているような奴だ。
出会ったら即死イベントかもしれない。
俺は心底震えあがっていた。
なぜ見知らぬ異世界でこんな目に…逆恨みにもほどがある。
「そんなに心配しなくても大丈夫だよ。
こう見えても、この街の警備は強固だからね。」
「まぁあんな明らかに不審な輩は入れないから安心しな。」
その言葉に、少しだが安堵する。
だけど、そんな強烈な女の子だと本当に何をするかわからん。
今日は余計な散策はしないで、さっさとギルドに行って準備ができるのを待っていよう。
ギルドなら、多くの冒険者がいるから安心できるはずである。
「すみません、色々と忠告ありがとうございました。
マジで助かりました。」
本当に聞けて良かった。
何も知らずに歩いていたら、そんなヤバイ奴にエンカウントしていたかもしれない。
「さすがに街の中にいるとは思えんがな。
この警備を抜けて入ってたら正真正銘の化け物だぜ。」
ケインが笑っていたが、俺は全く笑えない。
普通に死活問題である。
「一応、気を付けて帰ってね。
今日またギルドに用事があるんだろ?
あそこは絶対に安全だから。」
俺もそう思う。
さっさとギルドに行こう。
挨拶も手早く終わらせて、俺は足早にギルドに向かうことを決意した。
そして俺を見送った2人の門番は、最後に彼女について話すのだった。
「あ、そうだ。兄ちゃんに言うの忘れてた。
そういやあの子、自分は女神だ何だの言ってたな。」
「はは、そういえば言ってましたね。
本当なら英雄エシュア以来の大事件ですけど。」
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