誰にも邪魔させない

咲倉なこ

文字の大きさ
上 下
3 / 20
誰に向かって言ってんの?

3

しおりを挟む


「じゃあ、待ち合わせしてるから行こ」


「え、今から!?」


いつも唐突過ぎなんだって!


と口に出そうになるのをぐっと堪える。


またキレられるとイヤだから、言葉を飲み込んで素直について行くことにした。




だから珍しく一緒に帰ろうなんて誘ってきたんだ。


それならそれで、前もって言ってほしかった。


心の準備とか色々あるのに。




でも今更柊にそんなこと言っても、また言い負かされて終わり。


仕方ない。


こうなったらむしろ彼女のフリを楽しもう。






「お待たせ」


駅前で待ち合わせしていたらしく、柊は一人の女の子に手を振りながら近づいて行った。


それはそれはキラキラ輝く作り笑顔を決め込んで。


そんなことしてるから勘違いされちゃうんでしょ?


そんな柊に少なからずイラッとする。




柊との待ち合わせ場所にいた女の子は、私たちとは違う制服を着ているから、他校の生徒っぽい。


ふんわりとした雰囲気で、とっても可愛らしい子。


いや、こんな可愛い子、
いつもどーやって知り合ってんの…?


柊の人脈には、いつも驚かされる。




「えっと、誰…?」


他校の女の子は、私を下から上までまじまじと見ながら、柊にそう聞いた。


「言わなきゃって思ってたんだけど、俺こいつと付き合ってるんだ」




柊はそう言って、不意に私の手を握った。




…し、心臓に悪いんですけど!




「嘘でしょ?私、こんなにも柊くんのこと好きなのに…」


女の子は目を潤ませながら柊に訴えかけている。


か、かわいい。


私が男子だったら、絶対断れない。




「勘違いさせちゃったならごめん。悪いんだけど俺のこと諦めてくれない?」


そう言いながら握っている手を、胸の高さまで持って来て、更にギュッと握る。


それだけでも私はいちいちドキドキしちゃうわけで。


柊は表情一つ変えないで、淡々としている。


柊にとって私と手を繋ぐことなんて、どうってことないんだろうな。


だからナチュラルにこんなことができるんだ。




そんな柊の行動を見て、他校の女の子は私を睨みつけた。


そして急に柊に近づいたと思ったら、柊のネクタイをひっぱって。


その子は柊にキスをしようとしているように見えたから、思わず目をそらした。






「あっぶね…」


柊がそんなことを言うから、たぶん未遂に終わったんだろう。


ゆっくり顔を上げると、他校の女の子がさらに睨みをきかせて私を見た。


めちゃくちゃ怖いんですけど…!




「こんなブス女のどこがいいの?!
柊は騙されてるんだよ!
私の方がこんなにも柊を愛してるのに…。
こんな女なんかより、私の方が絶対柊を幸せにしてあげれる!」


その女の子は更に目を潤ませながら柊に泣きついた。


いやー、結構きついこと言うな…。


確かにそうかもしれないけどさ、本人を目の前にして言うのはないよ。


ただでさえミジンコしかないメンタルが崩壊しそう。


また何か言われるんじゃないかと思うと、怖くて顔を上げられない。




しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

私も愛してはいないので

恋愛 / 完結 24h.ポイント:390pt お気に入り:326

妃となったのに今更離婚ですか?

恋愛 / 完結 24h.ポイント:589pt お気に入り:564

皆さん、覚悟してくださいね?

恋愛 / 完結 24h.ポイント:489pt お気に入り:748

初恋の君と再婚したい?お好きになさって下さいな

恋愛 / 完結 24h.ポイント:788pt お気に入り:161

意地悪な姉は 「お花畑のお姫様」

恋愛 / 完結 24h.ポイント:85pt お気に入り:105

旦那様は別の女性を求めました

恋愛 / 完結 24h.ポイント:923pt お気に入り:502

【短編】柚季くんのギャップについていけない。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:7pt お気に入り:6

[完結]病弱を言い訳に使う妹

恋愛 / 完結 24h.ポイント:134pt お気に入り:5,186

最愛の人の子を姉が妊娠しました

恋愛 / 完結 24h.ポイント:1,569pt お気に入り:832

処理中です...