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Episode9 あなた色に染められて
あなた色に染められて②
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「水瀬先生……ちょっといいですか?」
「あ、はい」
「今度、一緒にお食事に行きませんか?」
「はい? 社員食堂、ですか?」
「いえ、違います! プライベートで……です」
「はい?」
最近こういうやり取りか増えてきた。
顔を真っ赤にした女の子が、俯きながら俺を食事に誘ってくる……ヤバい。俺に、何年かぶりのモテ期が来たのかも知れない。
緊張のあまりか、カタカタと肩が震えていて、今にも泣きそうな顔をしている。
きっと、俺に声をかけるまでにかなりの勇気が必要だった事だろう。そんな彼女を見ていれば、愛おしさが込み上げてきた。
あぁ、やっぱり女の子はいいなぁ……。
つい顔が緩んでしまう。でも……やっぱり、成宮先生との約束は破ることなんてできない。
「ごめんなさい。俺、今付き合ってる人がいるから、そんなことしたら怒られちゃう」
「え? 水瀬先生、恋人いらっしゃるんですか?」
「あ、はい。でも、凄くヤキモチ妬きだから大変なんです」
「そうですか……」
彼女に事情を説明しているつもりが、「恋人がヤキモチ妬きで困ってるんですよぉ」と惚気けてるようにしか聞こえないことなんて……自分でよくわかっている。
なぜなら、結局はそういうことだから。
俺は、悔しいくらいに成宮先生が好きなんだ。
◇◆◇◆
「お帰りなさい、成宮先生」
「ただいま」
明らかに不機嫌オーラ全開で帰宅した恋人を、俺は玄関まで出迎えに行く。こういう時の成宮先生は、拗ねた子供みたいで本当に面倒くさい。
こんな時は、どうしたらいいかわからないから、とにかくご機嫌を取るしか方法がないのだ。
「成宮先生……」
わざと甘い声を出して、成宮先生の顔を覗き込む。
「千歳さん……」
「お前、最近モテるんだってな?」
「はい?」
「今日、ナースステーションの看護師達が言ってた。お前がメチャクチャ可愛いって」
不貞腐れたようにソファーにドカッと腰を下ろす。そんな姿は、才色兼備を兼ね備えた、誰もが魅了されて止まない、小児科の若きエース……成宮千歳ではない。
まるで、玩具を買って貰えなかった子供みたいだ。
下唇を尖らせて、不貞腐れきっている。
「別に、今始まった訳じゃない……か。お前は研修医時代からモテてたんだ。でも、お前があまりにも鈍感だったから、気付かなかっただけで……」
「俺が……モテてた?」
「はぁ? モテんだろうが。そんな小動物みたいに可愛らしい見た目してりゃあ」
お前、本当に気付いてなかったのかよ……と言わんばかり、成宮先生が眉を顰めた。
「ただ、最近のお前は医者として立派になってきたから、更にモテるようになったんだろうな。でもさ……」
「でも?」
一瞬、あの強気な成宮先生が泣きそうな顔をしたから、一瞬焦ってしまう。
だって、いつもあんなに冷静沈着で、取り乱すことなんてない成宮千歳が泣くなんて……天変地異でも起こらない限り有り得ない。
俺は、成宮先生の近くにしゃがみ込んで、そっとその頬に触れた。
「俺は元々ゲイだけど、お前はノンケだ。昔、女と付き合ってたのも知ってる」
「千歳さん……」
「俺は女みたいに胸も無ければ、フワフワもしてない。お前に抱かれるのなんて真っ平御免だし、男同士は結婚もできない」
成宮先生の大きな切れ長の瞳が、ユラユラと大きく揺れた気がした。
「俺は……お前を縛り付けておける手段も、魅力もねぇんだよ」
成宮先生に、痛いくらいギュッと抱き締められたから、思わず顔を顰める。
成宮先生の抱き締める力の分だけ、胸の痛みが伝わってきた気がした。
「葵は、俺の物だろう?」
「はい……俺は先生の物です……」
「抱くぞ、葵……」
「……うん。抱いて……?」
せっかく作ったシチューが冷めちゃうな、なんて頭の片隅で思いながらも、素直にソファーの上に押し倒される。
こんなに熱っぽい顔で迫られたら、断ることなんて……俺にできるはずなんかないんだから。
「あ、はい」
「今度、一緒にお食事に行きませんか?」
「はい? 社員食堂、ですか?」
「いえ、違います! プライベートで……です」
「はい?」
最近こういうやり取りか増えてきた。
顔を真っ赤にした女の子が、俯きながら俺を食事に誘ってくる……ヤバい。俺に、何年かぶりのモテ期が来たのかも知れない。
緊張のあまりか、カタカタと肩が震えていて、今にも泣きそうな顔をしている。
きっと、俺に声をかけるまでにかなりの勇気が必要だった事だろう。そんな彼女を見ていれば、愛おしさが込み上げてきた。
あぁ、やっぱり女の子はいいなぁ……。
つい顔が緩んでしまう。でも……やっぱり、成宮先生との約束は破ることなんてできない。
「ごめんなさい。俺、今付き合ってる人がいるから、そんなことしたら怒られちゃう」
「え? 水瀬先生、恋人いらっしゃるんですか?」
「あ、はい。でも、凄くヤキモチ妬きだから大変なんです」
「そうですか……」
彼女に事情を説明しているつもりが、「恋人がヤキモチ妬きで困ってるんですよぉ」と惚気けてるようにしか聞こえないことなんて……自分でよくわかっている。
なぜなら、結局はそういうことだから。
俺は、悔しいくらいに成宮先生が好きなんだ。
◇◆◇◆
「お帰りなさい、成宮先生」
「ただいま」
明らかに不機嫌オーラ全開で帰宅した恋人を、俺は玄関まで出迎えに行く。こういう時の成宮先生は、拗ねた子供みたいで本当に面倒くさい。
こんな時は、どうしたらいいかわからないから、とにかくご機嫌を取るしか方法がないのだ。
「成宮先生……」
わざと甘い声を出して、成宮先生の顔を覗き込む。
「千歳さん……」
「お前、最近モテるんだってな?」
「はい?」
「今日、ナースステーションの看護師達が言ってた。お前がメチャクチャ可愛いって」
不貞腐れたようにソファーにドカッと腰を下ろす。そんな姿は、才色兼備を兼ね備えた、誰もが魅了されて止まない、小児科の若きエース……成宮千歳ではない。
まるで、玩具を買って貰えなかった子供みたいだ。
下唇を尖らせて、不貞腐れきっている。
「別に、今始まった訳じゃない……か。お前は研修医時代からモテてたんだ。でも、お前があまりにも鈍感だったから、気付かなかっただけで……」
「俺が……モテてた?」
「はぁ? モテんだろうが。そんな小動物みたいに可愛らしい見た目してりゃあ」
お前、本当に気付いてなかったのかよ……と言わんばかり、成宮先生が眉を顰めた。
「ただ、最近のお前は医者として立派になってきたから、更にモテるようになったんだろうな。でもさ……」
「でも?」
一瞬、あの強気な成宮先生が泣きそうな顔をしたから、一瞬焦ってしまう。
だって、いつもあんなに冷静沈着で、取り乱すことなんてない成宮千歳が泣くなんて……天変地異でも起こらない限り有り得ない。
俺は、成宮先生の近くにしゃがみ込んで、そっとその頬に触れた。
「俺は元々ゲイだけど、お前はノンケだ。昔、女と付き合ってたのも知ってる」
「千歳さん……」
「俺は女みたいに胸も無ければ、フワフワもしてない。お前に抱かれるのなんて真っ平御免だし、男同士は結婚もできない」
成宮先生の大きな切れ長の瞳が、ユラユラと大きく揺れた気がした。
「俺は……お前を縛り付けておける手段も、魅力もねぇんだよ」
成宮先生に、痛いくらいギュッと抱き締められたから、思わず顔を顰める。
成宮先生の抱き締める力の分だけ、胸の痛みが伝わってきた気がした。
「葵は、俺の物だろう?」
「はい……俺は先生の物です……」
「抱くぞ、葵……」
「……うん。抱いて……?」
せっかく作ったシチューが冷めちゃうな、なんて頭の片隅で思いながらも、素直にソファーの上に押し倒される。
こんなに熱っぽい顔で迫られたら、断ることなんて……俺にできるはずなんかないんだから。
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