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Episode13 甘いのに苦い飴
甘いのに苦い飴①
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Wikipediaによると、『可愛いは、日本語の形容詞で、いとおしさ、趣き深さなど、何らかの意味で「愛すべし」と感じられる場合に用いられる』とされている。
俺のイメージは? と聞いたら、大概の女性は『可愛い』って答えると思う。あと、優しいとか癒し系とか?
看護師さん達は俺を見る度に、まるで小動物を見た時のように「水瀬先生、可愛い~!」と目を輝かせる。
その度に、褒め言葉にもならない形容詞のオンパレードに、なんでだろう?と頭を抱えてしまいそうになる。
だいたい鏡を見ればそこにいるのは、アラサーのオッサンが映し出されていた。
「かわ……いいかぁ……?」
女の子の思考回路が理解できなくて困ってしまう。こんなオッサンのどこが可愛いのか教えてほしい。この俺の、どこが『愛すべき』、なんだろう。
全然可愛くなんかない。
俺は、他人から可愛いって言われる事が嫌いだ。
だって、年をとれば嫌でも可愛くなくなってしまうから。
『可愛い』には賞味期限があるって俺は思うんだ。俺は、可愛いの賞味期限切れになることが本当に怖かった。
可愛いの賞味期限が切れて、成宮先生に見捨てられることが、本当に本当に怖くて仕方なかった。
◇◆◇◆
「今日から小児科病棟でお世話になります、研修医の日下部結弦です。よろしくお願いします」
「やだ可愛い!」
「日下部先生、よろしくお願いします」
「先生、今何歳なんですか?」
「彼女っていますか?」
久しぶりに来た研修医に、頬を赤らめた看護師さんが一斉に群がる。あまりにも分かりやすい色目遣いとゴマすりに、遠くから見ていて鳥肌がたった。
「彼が可愛いって噂の研修医かぁ……」
噂に疎い俺ですら、日下部先生の噂は聞いたことある。タレントみたいに可愛らしい容姿をした研修医がいるって。
確かに、一見したら女の子みたいに可愛らしい。体は華奢なのに筋肉はきちんとついているし、ニコッと微笑めばエクボができた。
物腰は穏やかだし、緩いパーマがかかった髪が彼が動く度にフワフワと揺れる。
つい最近研修に来た、武尊とは大違いで嫌な予感しかしなかった。
「確かに、男の俺から見ても可愛いや」
日下部先生に少しだけ見蕩れてしまった自分にびっくりしながらも、納得せずにはいられなかった。
「よろしくお願いします。水瀬先生」
「こちらこそよろしくお願いします」
自分に向けたられた無邪気な笑顔に、ドキドキしてしまう。
それと同時に思う。
可愛いって言うのは、きっと日下部君みたいな人のことを言うんだろうな……。
そして、やっぱり自分は可愛くないんだ、と再確認した瞬間。
日下部君を見ていると、心の中に小さなさざ波が立つのを感じた。
◇◆◇◆
「ねーねー柏木。俺って可愛いかな?」
昼休みにわざわざ内科病棟まで出向き、CT画像と睨めっこしている柏木の顔を覗き込んで聞いてみる。
俺を良く知る人物に、真相を聞いてみたかった。嘘偽りない、第三者の意見が知りたかったのだ。
突然何を言い出すんだ? という顔をしながらも、仕事の手を止めて、マジマジと俺を見つめてくるものだから何だか照れ臭い。
「う~ん、そうだなぁ」
柏木が自分の前髪を触りながら低く唸り、次の瞬間パッと笑顔になった。
「うん! 水瀬は可愛いよ。目がパッチリしてるし、童顔だし……動きも小動物みたいだ。お前が女だったらなぁ……あ、そんなこと言ったら成宮先生に怒られちゃう」
残念そうな顔をした直後、わかり易く狼狽え始めた。
「あっ、男でごめん!」
咄嗟に謝ってしまった。そんな俺を見て柏木が声を出して笑う。
「けどそんなん、成宮先生に聞いたほうがいいんじゃないか? お前のこと、一番わかってるだろうに」
「あぁ、成宮先生はアテにならないよ」
小さく溜め息をつきながら立ち上がる。
「アテになんない?」
「そう、アテになんない。それより、変なこと聞いてごめんね。仕事頑張れ!」
そう言い残して、首を傾げる柏木に手を振った。
俺のイメージは? と聞いたら、大概の女性は『可愛い』って答えると思う。あと、優しいとか癒し系とか?
看護師さん達は俺を見る度に、まるで小動物を見た時のように「水瀬先生、可愛い~!」と目を輝かせる。
その度に、褒め言葉にもならない形容詞のオンパレードに、なんでだろう?と頭を抱えてしまいそうになる。
だいたい鏡を見ればそこにいるのは、アラサーのオッサンが映し出されていた。
「かわ……いいかぁ……?」
女の子の思考回路が理解できなくて困ってしまう。こんなオッサンのどこが可愛いのか教えてほしい。この俺の、どこが『愛すべき』、なんだろう。
全然可愛くなんかない。
俺は、他人から可愛いって言われる事が嫌いだ。
だって、年をとれば嫌でも可愛くなくなってしまうから。
『可愛い』には賞味期限があるって俺は思うんだ。俺は、可愛いの賞味期限切れになることが本当に怖かった。
可愛いの賞味期限が切れて、成宮先生に見捨てられることが、本当に本当に怖くて仕方なかった。
◇◆◇◆
「今日から小児科病棟でお世話になります、研修医の日下部結弦です。よろしくお願いします」
「やだ可愛い!」
「日下部先生、よろしくお願いします」
「先生、今何歳なんですか?」
「彼女っていますか?」
久しぶりに来た研修医に、頬を赤らめた看護師さんが一斉に群がる。あまりにも分かりやすい色目遣いとゴマすりに、遠くから見ていて鳥肌がたった。
「彼が可愛いって噂の研修医かぁ……」
噂に疎い俺ですら、日下部先生の噂は聞いたことある。タレントみたいに可愛らしい容姿をした研修医がいるって。
確かに、一見したら女の子みたいに可愛らしい。体は華奢なのに筋肉はきちんとついているし、ニコッと微笑めばエクボができた。
物腰は穏やかだし、緩いパーマがかかった髪が彼が動く度にフワフワと揺れる。
つい最近研修に来た、武尊とは大違いで嫌な予感しかしなかった。
「確かに、男の俺から見ても可愛いや」
日下部先生に少しだけ見蕩れてしまった自分にびっくりしながらも、納得せずにはいられなかった。
「よろしくお願いします。水瀬先生」
「こちらこそよろしくお願いします」
自分に向けたられた無邪気な笑顔に、ドキドキしてしまう。
それと同時に思う。
可愛いって言うのは、きっと日下部君みたいな人のことを言うんだろうな……。
そして、やっぱり自分は可愛くないんだ、と再確認した瞬間。
日下部君を見ていると、心の中に小さなさざ波が立つのを感じた。
◇◆◇◆
「ねーねー柏木。俺って可愛いかな?」
昼休みにわざわざ内科病棟まで出向き、CT画像と睨めっこしている柏木の顔を覗き込んで聞いてみる。
俺を良く知る人物に、真相を聞いてみたかった。嘘偽りない、第三者の意見が知りたかったのだ。
突然何を言い出すんだ? という顔をしながらも、仕事の手を止めて、マジマジと俺を見つめてくるものだから何だか照れ臭い。
「う~ん、そうだなぁ」
柏木が自分の前髪を触りながら低く唸り、次の瞬間パッと笑顔になった。
「うん! 水瀬は可愛いよ。目がパッチリしてるし、童顔だし……動きも小動物みたいだ。お前が女だったらなぁ……あ、そんなこと言ったら成宮先生に怒られちゃう」
残念そうな顔をした直後、わかり易く狼狽え始めた。
「あっ、男でごめん!」
咄嗟に謝ってしまった。そんな俺を見て柏木が声を出して笑う。
「けどそんなん、成宮先生に聞いたほうがいいんじゃないか? お前のこと、一番わかってるだろうに」
「あぁ、成宮先生はアテにならないよ」
小さく溜め息をつきながら立ち上がる。
「アテになんない?」
「そう、アテになんない。それより、変なこと聞いてごめんね。仕事頑張れ!」
そう言い残して、首を傾げる柏木に手を振った。
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