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Episode16 魔法の媚薬
魔法の媚薬②
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「どうしよう……」
俺はその場に蹲り試行錯誤を繰り返す。
今から薬局に行って媚薬の解毒剤をもらったほうがいいだろうか? しかし、なんて説明をすればいいんだ?
『うっかり、成宮先生に媚薬を飲まされてしまいました!』と説明したところで、きっと怪しまれてしまうことなんて目に見えている。
大体、どううっかり間違えれば媚薬を飲まされるのだろうか……そう考えれば、薬局に助けを求めることなんでできるはずもない。
生憎橘先生は公休だし、柏木も今日は見かけていない。助けを求めらる人なんていなかった。
「今は午後三時……業務終了まであと三時間……。薬効が出たとしても三時間我慢すれば家に帰れる。それまでの辛抱か……」
最悪、成宮先生を引き摺って帰るしかない。
そうこうしているうちに体がどんどん火照っていくのを感じる。
倉庫はひんやりと肌寒いくらいなのに異常に体がポッポと熱いし、呼吸も段々浅くなってきて息苦しい。
「はぁはぁはぁ……」
汗がジットリと滲みだしてきて、酸素を求めて肩で息をした。
「苦しい……」
乳首がスクラブに少し擦れただけでビクンと体が跳ね上がるくらいの刺激に感じる。さっきまではこんなことなかったのに……。
下半身もどんどん熱くなってきて、自分自身がドクンドクンと拍動を打っているのがわかるくらいだ。
「ヤリたい……あの人に抱かれたい……」
こみあげてくる衝動を言葉にせずにはいられず、体を抱き締めながら小さく呟いた。
「水瀬、これからカンファレンスだぞ」
「あ、はい……」
「どうした? 辛そうじゃん?」
フラフラと倉庫から出てきた俺を楽しそうに眺める成宮先生。
『はぁ? あなたのせいでしょ?』
言いかけた言葉を呑み込んで「いえ、大丈夫です」と俯いた。そんな俺の顔を覗き込みながら、
「本当に大丈夫か?」
持っていたボールペンで胸の飾りを突きだした。
「あッ……」
思わず口をついた甘い声に、一瞬で頬に熱が籠る。
それに気をよくしたのか、グリグリとペン先で乳首を執拗に刺激してくるものだから、必死に成宮先生にしがみついた。「もっとして……」と言いかけたけれど、奥歯を噛み締めて堪える。
……駄目だ、気持ちいい。
「水瀬先生、カンファレンスに行きましょう? 看護師さん達が待ってますよ」
そう耳打ちされれば涙が溢れ出しそうになってしまった。
「あと少し我慢してくださいね。そんな顔を他の奴らに見られたくないから」
チュッと俺の唇を奪った後、何事もなかったかのように会議室へと向かっていく成宮先生。
涙を拭ってから、そんな成宮先生を追いかけた。
◇◆◇◆
正直なところ、今日の俺はカンファレンスどころではなかった。
体はどんどん熱くなって、自分自身がスクラブのズボンを押し上げてしまっているのがわかる。
恥ずかしくて白衣を脱ぐこともせず、ボタンまでかけた。
少しでも気を抜けば、すぐ隣で真剣に看護師さんの話を聞いている成宮先生に、襲い掛かってしまいそうだ。
その細くて綺麗な手を握って、「ねぇ抱いてください」って耳元で囁いて誘惑したい。
唇を奪ってから、こんな白衣もスクラブも脱ぎ去って、椅子に座る成宮先生の膝の上に跨って……何もわからなくなるくらいグチャグチャにされたい。今すぐに……。
「先生? 水瀬先生? 今の件についてどう思いますか?」
「ふぇ?」
「だから、今年のお餅つき大会のことですよ」
「えっと、ごめんなさい。ボーッとしてました」
司会を務めていた看護師さんが俺の顔を不思議そうに眺めている。俺は来月行われる餅つき大会のカンファレンス中に、卑猥な妄想をしてしまっていた……。
なんてはしたないんだろう……。自己嫌悪に陥ってしまった。
結局、「水瀬先生はお疲れなのね……」と心配されてカンファレンスは終了した。
餅つき大会の当日は、法被《はっぴ》にねじり鉢巻きでもして、一生懸命頑張ろうと心に誓う。
でも、でも俺は……。
体はどんどん火照りだして熱くて仕方がない。体がうずうずして仕方がないのだ。
――成宮先生に抱かれたい。
もうそれしか考えられなくて、頭がおかしくなりそうだった。
――抱かれたい。抱かれたい。抱かれたい。
いくら冷静さを取り戻そうとしても、俺の思考回路はすでにオーバーヒートしてしまったらしく、自分でもコントロールすることさえできない。
もう自分では、どうすることもできないところまできてしまった……。
成宮先生にすがるしか、方法は残されていない。
「千歳さん……」
「ん?」
突然名字ではなく、名前で呼ばれたことにびっくりしたようで、成宮先生が目を見開く。
カンファレンスが終わって会議室を後にしようとしている看護師さん達を横目に、俺は成宮先生のスクラブを掴んだ。「行かないで」、必死にそう伝えたかった。
「成宮先生と水瀬先生も行かれますか?」
「あ、えっと……」
いつまでも会議室を出ようとしない俺達を見て、看護師さんが声をかけてくれる。
震える手で、成宮先生のスクラブを必死に掴む俺の手をそっと握って、成宮先生は看護師さんに笑いかけた。
「ちょっと患者さんとのことで水瀬先生と話がしたので先に行ってください。鍵締めはしておきますから」
「はい、わかりました。よろしくお願いします」
「承知しました」
成宮先生がお得意の満面の笑みを浮かべながらヒラヒラと手を振れば、看護師さんは疑うことなく会議室を後にして行った。
「葵、どうした?」
静まり返った会議室で、プルプルと震える俺にそっと問いかけてくる。その声だけで軽く果てそうになってしまった。
「体が熱くて仕方がないです……」
「ふーん。で?」
「で? って……ひどい、媚薬を飲ませたは千歳さんでしょう?」
「ふふっ。まぁな。で、葵は今、発情してんの?」
「…………」
「可愛いな」
フワリと微笑む成宮先生に少しだけ緊張の糸が解けていく。張り詰めていたいた感情がプツンと音を立てて切れたのを感じた。
俺はその場に蹲り試行錯誤を繰り返す。
今から薬局に行って媚薬の解毒剤をもらったほうがいいだろうか? しかし、なんて説明をすればいいんだ?
『うっかり、成宮先生に媚薬を飲まされてしまいました!』と説明したところで、きっと怪しまれてしまうことなんて目に見えている。
大体、どううっかり間違えれば媚薬を飲まされるのだろうか……そう考えれば、薬局に助けを求めることなんでできるはずもない。
生憎橘先生は公休だし、柏木も今日は見かけていない。助けを求めらる人なんていなかった。
「今は午後三時……業務終了まであと三時間……。薬効が出たとしても三時間我慢すれば家に帰れる。それまでの辛抱か……」
最悪、成宮先生を引き摺って帰るしかない。
そうこうしているうちに体がどんどん火照っていくのを感じる。
倉庫はひんやりと肌寒いくらいなのに異常に体がポッポと熱いし、呼吸も段々浅くなってきて息苦しい。
「はぁはぁはぁ……」
汗がジットリと滲みだしてきて、酸素を求めて肩で息をした。
「苦しい……」
乳首がスクラブに少し擦れただけでビクンと体が跳ね上がるくらいの刺激に感じる。さっきまではこんなことなかったのに……。
下半身もどんどん熱くなってきて、自分自身がドクンドクンと拍動を打っているのがわかるくらいだ。
「ヤリたい……あの人に抱かれたい……」
こみあげてくる衝動を言葉にせずにはいられず、体を抱き締めながら小さく呟いた。
「水瀬、これからカンファレンスだぞ」
「あ、はい……」
「どうした? 辛そうじゃん?」
フラフラと倉庫から出てきた俺を楽しそうに眺める成宮先生。
『はぁ? あなたのせいでしょ?』
言いかけた言葉を呑み込んで「いえ、大丈夫です」と俯いた。そんな俺の顔を覗き込みながら、
「本当に大丈夫か?」
持っていたボールペンで胸の飾りを突きだした。
「あッ……」
思わず口をついた甘い声に、一瞬で頬に熱が籠る。
それに気をよくしたのか、グリグリとペン先で乳首を執拗に刺激してくるものだから、必死に成宮先生にしがみついた。「もっとして……」と言いかけたけれど、奥歯を噛み締めて堪える。
……駄目だ、気持ちいい。
「水瀬先生、カンファレンスに行きましょう? 看護師さん達が待ってますよ」
そう耳打ちされれば涙が溢れ出しそうになってしまった。
「あと少し我慢してくださいね。そんな顔を他の奴らに見られたくないから」
チュッと俺の唇を奪った後、何事もなかったかのように会議室へと向かっていく成宮先生。
涙を拭ってから、そんな成宮先生を追いかけた。
◇◆◇◆
正直なところ、今日の俺はカンファレンスどころではなかった。
体はどんどん熱くなって、自分自身がスクラブのズボンを押し上げてしまっているのがわかる。
恥ずかしくて白衣を脱ぐこともせず、ボタンまでかけた。
少しでも気を抜けば、すぐ隣で真剣に看護師さんの話を聞いている成宮先生に、襲い掛かってしまいそうだ。
その細くて綺麗な手を握って、「ねぇ抱いてください」って耳元で囁いて誘惑したい。
唇を奪ってから、こんな白衣もスクラブも脱ぎ去って、椅子に座る成宮先生の膝の上に跨って……何もわからなくなるくらいグチャグチャにされたい。今すぐに……。
「先生? 水瀬先生? 今の件についてどう思いますか?」
「ふぇ?」
「だから、今年のお餅つき大会のことですよ」
「えっと、ごめんなさい。ボーッとしてました」
司会を務めていた看護師さんが俺の顔を不思議そうに眺めている。俺は来月行われる餅つき大会のカンファレンス中に、卑猥な妄想をしてしまっていた……。
なんてはしたないんだろう……。自己嫌悪に陥ってしまった。
結局、「水瀬先生はお疲れなのね……」と心配されてカンファレンスは終了した。
餅つき大会の当日は、法被《はっぴ》にねじり鉢巻きでもして、一生懸命頑張ろうと心に誓う。
でも、でも俺は……。
体はどんどん火照りだして熱くて仕方がない。体がうずうずして仕方がないのだ。
――成宮先生に抱かれたい。
もうそれしか考えられなくて、頭がおかしくなりそうだった。
――抱かれたい。抱かれたい。抱かれたい。
いくら冷静さを取り戻そうとしても、俺の思考回路はすでにオーバーヒートしてしまったらしく、自分でもコントロールすることさえできない。
もう自分では、どうすることもできないところまできてしまった……。
成宮先生にすがるしか、方法は残されていない。
「千歳さん……」
「ん?」
突然名字ではなく、名前で呼ばれたことにびっくりしたようで、成宮先生が目を見開く。
カンファレンスが終わって会議室を後にしようとしている看護師さん達を横目に、俺は成宮先生のスクラブを掴んだ。「行かないで」、必死にそう伝えたかった。
「成宮先生と水瀬先生も行かれますか?」
「あ、えっと……」
いつまでも会議室を出ようとしない俺達を見て、看護師さんが声をかけてくれる。
震える手で、成宮先生のスクラブを必死に掴む俺の手をそっと握って、成宮先生は看護師さんに笑いかけた。
「ちょっと患者さんとのことで水瀬先生と話がしたので先に行ってください。鍵締めはしておきますから」
「はい、わかりました。よろしくお願いします」
「承知しました」
成宮先生がお得意の満面の笑みを浮かべながらヒラヒラと手を振れば、看護師さんは疑うことなく会議室を後にして行った。
「葵、どうした?」
静まり返った会議室で、プルプルと震える俺にそっと問いかけてくる。その声だけで軽く果てそうになってしまった。
「体が熱くて仕方がないです……」
「ふーん。で?」
「で? って……ひどい、媚薬を飲ませたは千歳さんでしょう?」
「ふふっ。まぁな。で、葵は今、発情してんの?」
「…………」
「可愛いな」
フワリと微笑む成宮先生に少しだけ緊張の糸が解けていく。張り詰めていたいた感情がプツンと音を立てて切れたのを感じた。
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