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Episode17 said成宮
成宮先生が狼になるとき①
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――無防備な君に恋する5選――
俺は成宮千歳。小児科医だ。
自分で言うのはなんだけど、俺は容姿端麗、文武両道。
医学部では常に成績トップだったし、スポーツだって人に負けたことなんてない。
顔だって、整っているという自覚がある。病院の中を歩けば、皆が俺を振り返り溜息をつく。それに体系維持には細心の注意を払っているから、よくモデルと間違えられた。
今だって、周囲からはスーパードクターともてはやされている。
年間にこなす手術数はかなりのものだし、スタッフからだけでなく、患者からの信頼も厚い。
元々男が好きな俺は、相手に困ることなんてなかったから、自由気ままに遊んできた。放っておいても、向こうから寄ってくるのだから、こんなに楽なことなんてない。
俺にとって、恋愛なんてただの遊びだった。
全てに完璧で、頂点に君臨し続ける俺は、この若さで欲しいもの全てを手に入れている。
それなのに……俺は、そんな自分を見失ってしまう程の恋をした。
俺の想い人は、誰もが認める可愛らしさを持っている。
大きな瞳に、ふっくらした涙袋。
幼い顔立ちのくせに、ひょっこり見せる色香に俺はペースを狂わされてしまう。
職場で見る部下としての水瀬と、ふと二人きりのときに見せる水瀬の素顔は、全く違うように感じられた。とにかく、可愛らしいのだ。
誰もがあいつを好きになるのに、その無防備さ故危なっかしくて仕方ない。
どうすれば、そんなお前を手に入れられるんだろう。
計算高い俺は、今日も頬杖をつきながら、みんなに囲まれて笑うお前を遠くから眺めることしかできないんだ。
これは、俺と葵がまだ付き合う前のお話。
――STEP1:誰にでもスキだらけ――
警戒心が強くて、スキンシップが一見苦手そうに見えるのに、意外とパーソナルスペースが狭い葵。
スタッフがどんなに近くにいても、体を触っても全然動じない。柏木のように昔からの友人に至っては、もはや葵のことを肘置きとか玩具くらいにしか思ってないのではないだろうか?
誰にでも、めちゃくちゃスキだらけ。
そりゃあさ、同性を好きになる奴なんて、そうそういないだろうけど。やっぱり不安は隠しきれなくて。
時には無防備に臍を見せて、看護師達から黄色い声援を浴びたり、ある時には智彰にいいようにからかわれたり。
自分はそれなりに容姿が整っているのだとか、みんなに好かれるタイプだっていう自覚なんか全くない。
髪は無造作に伸びて、好き勝手に跳び跳ねて……。まだまだ寒い日が続く今は、雪だるまみたい洋服を着込んでいる。
誰にでもスキだらけ。
全然何も考えていない。
だからこそ、見ていて面白くないんだよ。
でも俺は、葵の彼氏じゃないんだから、偉そうに口出しなんかできないし、ましてや「少しは自覚しろよな?」なんて怒れる訳ないだろう。
それに部下にこんな独占欲を剥き出しにするなんて、本当に大人げない。そんなかっこ悪い所を見せて、幻滅されることが俺は怖かった。
ホワイトデーに少し高級なキャンディーをあげれば、「ありがとうございます」なんて頬を赤らめながら、可愛らしい顔で笑ってた。
なんで男の自分が、『ホワイトデー』にプレゼントを貰ったんだろう……って不自然に思わないわけ?
俺はさ、お前を女として見てんだよ。
だから、今日もまた、頬杖をつきながら可愛い葵を遠くから眺めることしかできなくて。
あー、イライラするし、モヤモヤする。
――STEP2:眠る君に秘密の愛を――
まだ葵が新人の頃。勉強のために難しい患者を受け持たせてみたら、予想通りにパニクッた。でも投げ出すことなんかせず、一生懸命に患者と向き合っている。
そういうとこは、素直に凄いなって思った。
昨日も今日も、俺の後を追いかけ回して……俺の隣が特等席になってきている。
「成宮先生! これってどう思いますか?」
「成宮先生ー!! どこにいるんですか?」
「成宮先生! 成宮先生!」
少しでも俺が離れてくと、電子カルテを片手に追いかけて来る。
それが可愛くて仕方ないから、わざと葵の前から姿を消したくなった。
ほら、キョロキョロしながら俺を探してる。
バカみたいに可愛いなぁ。
医局のソファーに座り目を擦っている。傍目からも眠いのが見てとれた。一生懸命頑張り過ぎて疲れたのか? 本当に子供みたいじゃん。
「水瀬、眠いのか?」
「んー、眠い、です……」
その姿があまりにも幼くて。隣に座って抱き寄せた。
きっとお前は深く意味も考えないで、俺に身を預けてくるはずだ。
コテン。想像通りに、俺の肩に顔を埋める。
可愛い……けど、残酷だよね。
「少し休めば?」
「クワァ……少しだけ休んでもいいですか?」
「いいよ。おやすみ、水瀬」
「はい。おやすみなさい」
寒いかなって、近くにあったブランケットで体を包んでやる。
葵の穏やかな寝息が聞こえてきたから、深い眠りに落ちたのがわかった。
額と額をコツンと合わせる。そのままそっと……葵の唇に、自分の唇を重ねた。
温かくて、柔らかいその感触に体が跳び跳ねる。 鼓動がうるさい程鳴り響き、起きたらどうしよう……と不安になりながらも、また唇を奪った。
こんなん、童貞がやることじゃん。
俺は葵の無邪気過ぎる寝顔を見ながら、大きく溜息を吐いた。
俺は成宮千歳。小児科医だ。
自分で言うのはなんだけど、俺は容姿端麗、文武両道。
医学部では常に成績トップだったし、スポーツだって人に負けたことなんてない。
顔だって、整っているという自覚がある。病院の中を歩けば、皆が俺を振り返り溜息をつく。それに体系維持には細心の注意を払っているから、よくモデルと間違えられた。
今だって、周囲からはスーパードクターともてはやされている。
年間にこなす手術数はかなりのものだし、スタッフからだけでなく、患者からの信頼も厚い。
元々男が好きな俺は、相手に困ることなんてなかったから、自由気ままに遊んできた。放っておいても、向こうから寄ってくるのだから、こんなに楽なことなんてない。
俺にとって、恋愛なんてただの遊びだった。
全てに完璧で、頂点に君臨し続ける俺は、この若さで欲しいもの全てを手に入れている。
それなのに……俺は、そんな自分を見失ってしまう程の恋をした。
俺の想い人は、誰もが認める可愛らしさを持っている。
大きな瞳に、ふっくらした涙袋。
幼い顔立ちのくせに、ひょっこり見せる色香に俺はペースを狂わされてしまう。
職場で見る部下としての水瀬と、ふと二人きりのときに見せる水瀬の素顔は、全く違うように感じられた。とにかく、可愛らしいのだ。
誰もがあいつを好きになるのに、その無防備さ故危なっかしくて仕方ない。
どうすれば、そんなお前を手に入れられるんだろう。
計算高い俺は、今日も頬杖をつきながら、みんなに囲まれて笑うお前を遠くから眺めることしかできないんだ。
これは、俺と葵がまだ付き合う前のお話。
――STEP1:誰にでもスキだらけ――
警戒心が強くて、スキンシップが一見苦手そうに見えるのに、意外とパーソナルスペースが狭い葵。
スタッフがどんなに近くにいても、体を触っても全然動じない。柏木のように昔からの友人に至っては、もはや葵のことを肘置きとか玩具くらいにしか思ってないのではないだろうか?
誰にでも、めちゃくちゃスキだらけ。
そりゃあさ、同性を好きになる奴なんて、そうそういないだろうけど。やっぱり不安は隠しきれなくて。
時には無防備に臍を見せて、看護師達から黄色い声援を浴びたり、ある時には智彰にいいようにからかわれたり。
自分はそれなりに容姿が整っているのだとか、みんなに好かれるタイプだっていう自覚なんか全くない。
髪は無造作に伸びて、好き勝手に跳び跳ねて……。まだまだ寒い日が続く今は、雪だるまみたい洋服を着込んでいる。
誰にでもスキだらけ。
全然何も考えていない。
だからこそ、見ていて面白くないんだよ。
でも俺は、葵の彼氏じゃないんだから、偉そうに口出しなんかできないし、ましてや「少しは自覚しろよな?」なんて怒れる訳ないだろう。
それに部下にこんな独占欲を剥き出しにするなんて、本当に大人げない。そんなかっこ悪い所を見せて、幻滅されることが俺は怖かった。
ホワイトデーに少し高級なキャンディーをあげれば、「ありがとうございます」なんて頬を赤らめながら、可愛らしい顔で笑ってた。
なんで男の自分が、『ホワイトデー』にプレゼントを貰ったんだろう……って不自然に思わないわけ?
俺はさ、お前を女として見てんだよ。
だから、今日もまた、頬杖をつきながら可愛い葵を遠くから眺めることしかできなくて。
あー、イライラするし、モヤモヤする。
――STEP2:眠る君に秘密の愛を――
まだ葵が新人の頃。勉強のために難しい患者を受け持たせてみたら、予想通りにパニクッた。でも投げ出すことなんかせず、一生懸命に患者と向き合っている。
そういうとこは、素直に凄いなって思った。
昨日も今日も、俺の後を追いかけ回して……俺の隣が特等席になってきている。
「成宮先生! これってどう思いますか?」
「成宮先生ー!! どこにいるんですか?」
「成宮先生! 成宮先生!」
少しでも俺が離れてくと、電子カルテを片手に追いかけて来る。
それが可愛くて仕方ないから、わざと葵の前から姿を消したくなった。
ほら、キョロキョロしながら俺を探してる。
バカみたいに可愛いなぁ。
医局のソファーに座り目を擦っている。傍目からも眠いのが見てとれた。一生懸命頑張り過ぎて疲れたのか? 本当に子供みたいじゃん。
「水瀬、眠いのか?」
「んー、眠い、です……」
その姿があまりにも幼くて。隣に座って抱き寄せた。
きっとお前は深く意味も考えないで、俺に身を預けてくるはずだ。
コテン。想像通りに、俺の肩に顔を埋める。
可愛い……けど、残酷だよね。
「少し休めば?」
「クワァ……少しだけ休んでもいいですか?」
「いいよ。おやすみ、水瀬」
「はい。おやすみなさい」
寒いかなって、近くにあったブランケットで体を包んでやる。
葵の穏やかな寝息が聞こえてきたから、深い眠りに落ちたのがわかった。
額と額をコツンと合わせる。そのままそっと……葵の唇に、自分の唇を重ねた。
温かくて、柔らかいその感触に体が跳び跳ねる。 鼓動がうるさい程鳴り響き、起きたらどうしよう……と不安になりながらも、また唇を奪った。
こんなん、童貞がやることじゃん。
俺は葵の無邪気過ぎる寝顔を見ながら、大きく溜息を吐いた。
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