111 / 149
第一章 僕たちの始まり
僕たちの始まり②
しおりを挟む
「ん……ッ」
次に目を覚ました時には、俺は病室のベッドに寝かされていた。体には、たくさんの機械や管が取り付けられていて、身動きが取れない。
ただ転げ回る程の頭痛と吐き気は嘘のように消えていて、体の痺れもないせいか手足をピクピク動かすこともできる。
「俺、生きてる……生きてるんだ……」
そう実感した瞬間、俺の心が歓喜で打ち震える。ピッピッと俺の心拍を刻むモニターの音が、はっきりと聞こえてきた。
「あ、目が覚めたかな?」
声がするほうに視線を向けると、そこには成宮先生が立っていた。そして、その姿を見た俺は、思わず唸り声を上げてしまう。
「マジか……」
病院に着いた時は必死過ぎて分からなかったけど、今目の前にいる成宮先生は思わず言葉を失ってしまう程の美青年だった。
『綺麗』という形容詞は、まるでこの人のために存在する言葉のようだ。モデルみたいにスラリとした長い手足に、人形のように整った顔立ち。色素の薄い髪がサラサラと揺れて、スッと切れ長の瞳は慈愛に満ちている。身長も百八十センチはあるだろう。俺は少しの間、呆然と成宮先生を見つめてしまう。
成宮先生がいるだけで、この病室にミントの爽やかな風が吹き込んでくるようだ。
「良かった。でも危ないところだったね。あと少し病院に来るのが遅かったら、命に危険があったかもしれない。でも大丈夫だよ、手術は成功したから」
そう優しく微笑む成宮先生を見ると、不思議と恐怖心がスッと消えていくのを感じる。この人がいれば大丈夫。そんな不思議な安心感に、俺は再び包まれた。
「きちんとリハビリを頑張れば、元の生活に戻れるからね。よく頑張りました」
成宮先生は俺の右手を優しく撫でてくれた。その瞬間、胸に熱い物が込み上げてくる。俺はきっと、この日の成宮先生の笑顔と手の温もりは一生忘れないと思う。
今回のことは、空手をしている時に頭を強く打ったことで、ジワジワと頭の中に血液が溜まってしまったことが原因だったと、成宮先生が教えてくれた。
その血液は、六時間にも及ぶ手術で成宮先生が綺麗に取り除いてくれたらしい。
状態が安定した俺は、翌日、集中治療室から脳外科の一般病棟に移った。
それからは、リハビリの毎日。
窓を開けて、真っ青な空に向かって手を伸ばす。あの夜は、体中が痺れてこうして手を動かすこともできなかった。でも今は手足を動かすことだってできるし、まだフラフラするけど歩く事だってできる。
ただ確かにあの時、俺は『死』というものをすぐ近くに感じた。絶対に死にたくないって思ったし、死ぬことがめちゃくちゃ怖かった。だから、当たり前に生きている毎日が、本当に幸せだったんだと思い知る。
「成宮先生……ありがとうございます」
俺はポツリと呟く。
あの夜の出来事を思い出すだけで、背筋が凍り付くほどの恐怖を感じる。でも、成宮先生のあの優しい笑顔を思い出せば自然と心が奮い立つのを感じた。
何より俺は、あの夜自分を救ってくれた成宮先生に、感謝せずにはいられなかった。
次に目を覚ました時には、俺は病室のベッドに寝かされていた。体には、たくさんの機械や管が取り付けられていて、身動きが取れない。
ただ転げ回る程の頭痛と吐き気は嘘のように消えていて、体の痺れもないせいか手足をピクピク動かすこともできる。
「俺、生きてる……生きてるんだ……」
そう実感した瞬間、俺の心が歓喜で打ち震える。ピッピッと俺の心拍を刻むモニターの音が、はっきりと聞こえてきた。
「あ、目が覚めたかな?」
声がするほうに視線を向けると、そこには成宮先生が立っていた。そして、その姿を見た俺は、思わず唸り声を上げてしまう。
「マジか……」
病院に着いた時は必死過ぎて分からなかったけど、今目の前にいる成宮先生は思わず言葉を失ってしまう程の美青年だった。
『綺麗』という形容詞は、まるでこの人のために存在する言葉のようだ。モデルみたいにスラリとした長い手足に、人形のように整った顔立ち。色素の薄い髪がサラサラと揺れて、スッと切れ長の瞳は慈愛に満ちている。身長も百八十センチはあるだろう。俺は少しの間、呆然と成宮先生を見つめてしまう。
成宮先生がいるだけで、この病室にミントの爽やかな風が吹き込んでくるようだ。
「良かった。でも危ないところだったね。あと少し病院に来るのが遅かったら、命に危険があったかもしれない。でも大丈夫だよ、手術は成功したから」
そう優しく微笑む成宮先生を見ると、不思議と恐怖心がスッと消えていくのを感じる。この人がいれば大丈夫。そんな不思議な安心感に、俺は再び包まれた。
「きちんとリハビリを頑張れば、元の生活に戻れるからね。よく頑張りました」
成宮先生は俺の右手を優しく撫でてくれた。その瞬間、胸に熱い物が込み上げてくる。俺はきっと、この日の成宮先生の笑顔と手の温もりは一生忘れないと思う。
今回のことは、空手をしている時に頭を強く打ったことで、ジワジワと頭の中に血液が溜まってしまったことが原因だったと、成宮先生が教えてくれた。
その血液は、六時間にも及ぶ手術で成宮先生が綺麗に取り除いてくれたらしい。
状態が安定した俺は、翌日、集中治療室から脳外科の一般病棟に移った。
それからは、リハビリの毎日。
窓を開けて、真っ青な空に向かって手を伸ばす。あの夜は、体中が痺れてこうして手を動かすこともできなかった。でも今は手足を動かすことだってできるし、まだフラフラするけど歩く事だってできる。
ただ確かにあの時、俺は『死』というものをすぐ近くに感じた。絶対に死にたくないって思ったし、死ぬことがめちゃくちゃ怖かった。だから、当たり前に生きている毎日が、本当に幸せだったんだと思い知る。
「成宮先生……ありがとうございます」
俺はポツリと呟く。
あの夜の出来事を思い出すだけで、背筋が凍り付くほどの恐怖を感じる。でも、成宮先生のあの優しい笑顔を思い出せば自然と心が奮い立つのを感じた。
何より俺は、あの夜自分を救ってくれた成宮先生に、感謝せずにはいられなかった。
3
あなたにおすすめの小説
守り守られ
ほたる
BL
主治医 望月診療所の双子医師
患者 瀬咲朔
腸疾患・排泄障害・下肢不自由
看護師
ベテラン山添さん
準主人公 成海真幌 腸疾患・排泄障害・てんかん
木島 尚久 真幌の恋人同棲中
番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か
雪兎
BL
第二性が存在する世界。
Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。
しかし入学初日、彼の前に現れたのは――
幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。
成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。
だが湊だけが知っている。
彼が異常なほど執着深いことを。
「大丈夫、全部管理してあげる」
「君が困らないようにしてるだけだよ」
座席、時間割、交友関係、体調管理。
いつの間にか整えられていく環境。
逃げ場のない距離。
番を拒みたいΩと、手放す気のないα。
これは保護か、それとも束縛か。
閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。
たとえば、俺が幸せになってもいいのなら
夜月るな
BL
全てを1人で抱え込む高校生の少年が、誰かに頼り甘えることを覚えていくまでの物語―――
父を目の前で亡くし、母に突き放され、たった一人寄り添ってくれた兄もいなくなっていまった。
弟を守り、罪悪感も自責の念もたった1人で抱える新谷 律の心が、少しずつほぐれていく。
助けてほしいと言葉にする権利すらないと笑う少年が、救われるまでのお話。
【完結】君の手を取り、紡ぐ言葉は
綾瀬
BL
図書委員の佐倉遥希は、クラスの人気者である葉山綾に密かに想いを寄せていた。しかし、イケメンでスポーツ万能な彼と、地味で取り柄のない自分は住む世界が違うと感じ、遠くから眺める日々を過ごしていた。
ある放課後、遥希は葉山が数学の課題に苦戦しているのを見かける。戸惑いながらも思い切って声をかけると、葉山は「気になる人にバカだと思われるのが恥ずかしい」と打ち明ける。「気になる人」その一言に胸を高鳴らせながら、二人の勉強会が始まることになった。
成績優秀な遥希と、勉強が苦手な葉山。正反対の二人だが、共に過ごす時間の中で少しずつ距離を縮めていく。
不器用な二人の淡くも甘酸っぱい恋の行方を描く、学園青春ラブストーリー。
【爽やか人気者溺愛攻め×勉強だけが取り柄の天然鈍感平凡受け】
病弱の花
雨水林檎
BL
痩せた身体の病弱な青年遠野空音は資産家の男、藤篠清月に望まれて単身東京に向かうことになる。清月は彼をぜひ跡継ぎにしたいのだと言う。明らかに怪しい話に乗ったのは空音が引き取られた遠縁の家に住んでいたからだった。できそこないとも言えるほど、寝込んでばかりいる空音を彼らは厄介払いしたのだ。そして空音は清月の家で同居生活を始めることになる。そんな空音の願いは一つ、誰よりも痩せていることだった。誰もが眉をひそめるようなそんな願いを、清月は何故か肯定する……。
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる