148 / 149
Episode22 クリスマスの願い
クリスマスの願い③
しおりを挟むそうして迎えた、クリスマスイブ。
朝一番に俺は飛び起きて、まだ寝ている成宮先生に抱き着く。
昨夜は誕生日になる瞬間に結ばれよう! なんてロマンティックな考えでベッドにもつれ込んだら、想像以上に燃え上がってしまい……。
気づいたら十二月二十四日になっていた。
喘ぎ過ぎて声はガラガラだし、体は怠いけど、年に一度のお誕生日だから元気よくお祝いしよう! と、俺は張り切っていたのだ。
「千歳さん、お誕生日おめでとうごいざます!」
「あー、うん。ありがとう」
「千歳さんにとって、いい一年になるといいですね!」
「わかった、わかった。お前、朝から元気すぎるだろう? ちょっとうるさい」
「はぁ?」
せっかく誕生日をお祝いしようと頑張っていた恋人を見て、この人は何も感じないのだろうか?
うるさいって……。それはないでしょ?
臍が曲がってしまった俺は、不貞腐れたまま出勤することとなる。
それを見た成宮先生が「面倒くせぇ」と顔を顰めていたのが、更に気に入らなかった。
朝から気分は最悪だったけれど、病棟のクリスマス会が始まった瞬間。朝起きた嫌なことが、全部吹き飛んでしまう。
クリスマス会で、子どもたちの弾けるような笑顔を見ることができたのだ。
俺は真っ赤な衣装に白い髭をつけて、小児病棟に入院している子どもたちに、プレゼントを配って回った。どの子もとても嬉しそうで、その笑顔が俺へのプレゼントのように感じられた。
そんな俺のことを成宮先生は楽しそうに見ていたけれど、俺が小児病棟に来るまでは、成宮先生がサンタクロース役をやっていたらしい。
俺が成宮先生からサンタクロース役を引き継いだ年には、入院期間の長い子に、『今年はイケメンのサンタさんは来ないの?』と聞かれたことを思い出す。
(楽しかったなぁ)
医局に戻った俺は多幸感に満たされる。
「メリークリスマス!」
子どもたちの嬉しそうな顔が目に浮かぶ。
本当なら自宅でクリスマスを迎えることができればいいんだけれど、それでも十分クリスマス気分を満喫できだだろう。
そして俺の恋人であるサンタクロースは「じゃあ、お先に」と、仕事が片付くとさっさと帰ってしまった。
別にプレゼントを期待していたわけではないけれど(俺も用意してないし)、少しだけ寂しかった。
もう少しだけ、一緒にいたかった……。
「誕生日おめでとうございます」くらい、ゆっくり言いたかったなぁ。
俺は唇を尖らせる。
「あ、カード……」
その時俺は、スクラブのポケットに入っていたカードのことを思い出す。
ブーツの形をした、可愛い手作りのカード。
看護師さんや保育士さんの優しさが伝わってくるような気がする。
「ん-、なんて書こうかな?」
俺は首を傾げて考える。
明日の朝、このカードにサンタクロースへの願い事を書いて、成宮先生と交換することになっている。
もともと物欲のない俺が欲しい物は、ゲーム機だったり、ポ〇モンカードくらいだ。
「あ、指輪……」
ふと思いついたもの。
自分の左手を天井にかざす。
ペアリング……。欲しいだなんてねだったことはないけれど、憧れはある。
でも、成宮先生が指輪なんてつけていたら、病院中がひっくり返るほどの大騒ぎになることだろう。しかも、ペアリングの相手が俺だとわかったら、更に騒ぎになってしまう。
ちょっと前に、「いつか、買ってやるから」と成宮先生に言われたことがあるけれど、きっとその指輪は、俺の想像している値段より、一体いくつ『0』が多いのだろうか?
そういうことを具体的に考えると、なんだか照れくさくなってしまう。
でも、すごく楽しみだ。
俺はペンを執るとカードに願いを書き始める。
指輪とか、旅行に行きたい、なんていうのもいいけれど、俺の本当の望みはそんなものじゃない。
形のあるものなら、頑張ってお金を稼げば手に入るだろう。
でも、俺が本当に欲しいものは、目には見えないもの……。
だからこそ、欲しいと思うし、大切にしたい。
『ずっとずっと、成宮先生と一緒にいられますように』
ねぇ、俺の願いは、恋人であるサンタクロースに届くかな?
届くといいなぁ……。
だって、俺はずっと成宮先生と一緒にいたいから。
お願いします、サンタさん。俺の願いを叶えてください――。
7
あなたにおすすめの小説
守り守られ
ほたる
BL
主治医 望月診療所の双子医師
患者 瀬咲朔
腸疾患・排泄障害・下肢不自由
看護師
ベテラン山添さん
準主人公 成海真幌 腸疾患・排泄障害・てんかん
木島 尚久 真幌の恋人同棲中
番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か
雪兎
BL
第二性が存在する世界。
Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。
しかし入学初日、彼の前に現れたのは――
幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。
成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。
だが湊だけが知っている。
彼が異常なほど執着深いことを。
「大丈夫、全部管理してあげる」
「君が困らないようにしてるだけだよ」
座席、時間割、交友関係、体調管理。
いつの間にか整えられていく環境。
逃げ場のない距離。
番を拒みたいΩと、手放す気のないα。
これは保護か、それとも束縛か。
閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。
たとえば、俺が幸せになってもいいのなら
夜月るな
BL
全てを1人で抱え込む高校生の少年が、誰かに頼り甘えることを覚えていくまでの物語―――
父を目の前で亡くし、母に突き放され、たった一人寄り添ってくれた兄もいなくなっていまった。
弟を守り、罪悪感も自責の念もたった1人で抱える新谷 律の心が、少しずつほぐれていく。
助けてほしいと言葉にする権利すらないと笑う少年が、救われるまでのお話。
【完結】君の手を取り、紡ぐ言葉は
綾瀬
BL
図書委員の佐倉遥希は、クラスの人気者である葉山綾に密かに想いを寄せていた。しかし、イケメンでスポーツ万能な彼と、地味で取り柄のない自分は住む世界が違うと感じ、遠くから眺める日々を過ごしていた。
ある放課後、遥希は葉山が数学の課題に苦戦しているのを見かける。戸惑いながらも思い切って声をかけると、葉山は「気になる人にバカだと思われるのが恥ずかしい」と打ち明ける。「気になる人」その一言に胸を高鳴らせながら、二人の勉強会が始まることになった。
成績優秀な遥希と、勉強が苦手な葉山。正反対の二人だが、共に過ごす時間の中で少しずつ距離を縮めていく。
不器用な二人の淡くも甘酸っぱい恋の行方を描く、学園青春ラブストーリー。
【爽やか人気者溺愛攻め×勉強だけが取り柄の天然鈍感平凡受け】
病弱の花
雨水林檎
BL
痩せた身体の病弱な青年遠野空音は資産家の男、藤篠清月に望まれて単身東京に向かうことになる。清月は彼をぜひ跡継ぎにしたいのだと言う。明らかに怪しい話に乗ったのは空音が引き取られた遠縁の家に住んでいたからだった。できそこないとも言えるほど、寝込んでばかりいる空音を彼らは厄介払いしたのだ。そして空音は清月の家で同居生活を始めることになる。そんな空音の願いは一つ、誰よりも痩せていることだった。誰もが眉をひそめるようなそんな願いを、清月は何故か肯定する……。
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる