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最終章 立派な花嫁
立派な花嫁②
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「ほら、湯玄様。お客様に朝食をお出しする時間だよ。早く起きて」
「んー、もう少しだけ寝かせてくれ」
「駄目だよ。最近いつも寝坊しているじゃないか? 早く布団から出て! みんなもう福寿村に向かう準備をしてるとこだよ」
皆が一生懸命働いている時間にも関わらず、未だ布団に包まっている湯玄の体を揺すって起こす。湯玄は昨夜遅くまで、湯花神社と湯福神社の様子を見に行っていたようで、疲れているのはわかっているのだが……。
もう朝日は高い所まで昇っている。本当に寝坊助だなぁ……と湯玄の寝顔を見て愛しさが込み上げてきてしまった。
「わッ!」
凪が湯玄に見とれていると、突然腕を引かれ布団の中に引き込まれてしまう。文句を言おうとしたが、湯玄に唇を奪われてしまい、それは叶わなかった。体格のいい湯玄に、凪は簡単に動きを封じられてしまう。
湯玄に力で敵うはずなんてない……諦めた凪は、素直に湯玄の口付けを受け止めた。
「ん、んッ、はぁ……」
「ふふっ。凪よ、今日はいやに色っぽいではないか? 私を誘っているのか?」
「そんなわけないだろう⁉ みんなもう福寿村に出掛けようとしているんだから、いい加減湯玄様も起きろよな!」
湯玄に向かい拳を振り上げたが、簡単にかわされてしまう。
「其方は本当に可愛らしい」
湯玄が口の端を吊り上げて笑った。
「それより、凪はなぜ湯庵を椿屋に連れて帰ったんだ? あんな奴、放っておけばよかったものを……」
「あぁ。だって湯庵様も大怪我をしてたから。きっと義盛様のお酒を飲めば、傷が治るだろうと思ったんだ」
「だが、あいつは私の凪に酷いことしようとしたのだ。許せるわけがないだろう?」
不満そうに顔を顰める湯玄の髪を、優しく梳いてやる。湯玄は本気で湯庵のことを憎んでいるわけではない。凪を傷つけたことを怒っているだけなのだ。
「湯玄様、湯庵様は決して悪い神様じゃない。ただ、福寿村を復興したかっただけなんだよ。その思いが痛いくらいわかるんだ。俺も、ずっと湯滝村が、また昔のように賑わいますようにって祈って生きてきたから」
「……そうか。其方がそう言うならそれでいい。これ以上は何も言うことはない」
拗ねた子供のように鼻を鳴らす湯玄は、とても可愛らしい。
凪が湯玄の頬を優しく撫でようとした時、下半身のほうに違和感を覚えて凪は体を強張らせた。
「しかし、其方が他の男の話をするのはやはり面白くない」
「ちょ、ちょっと、湯玄様! どこ触ってるんだよ⁉」
「婚礼の前にちょっと味見を……」
「ヤダ、ちょっと待って湯玄様! もう、本当に勘弁して……!」
「何を今更。抱いてもいいと言っていたのは其方だぞ?」
「でも、でも……‼ 駄目だって⁉」
着物の裾を割って侵入してくる湯玄の手を感じた凪は、思い切りその体を突き放した。
危うく流されるところだった……心臓がうるさいくらい早鐘を打ち、頬に熱が籠り熱くて仕方がない。凪は肩で息をしながら湯玄を睨みつけた。
「何すんだよ、この助平神が! 湯の神の花嫁になるには、清らかな体でいなければならないんだ! そんなことくらい知ってるだろう⁉」
「ケチくさいことを言うな。その湯の神が其方の体を所望しているのだぞ?」
「もう、うるさいなぁ! 湯玄様、いいからいい加減店に出て来て! 宿泊客も来る頃だし。みんな福寿村に行っちゃうから神様不足なんだよ」
「やれやれ。私をこんなにもこき使うのは、其方くらいのものだぞ?」
顔を真っ赤にしながら、なんとか布団から逃げ出す凪を見て、湯玄が声を出して笑っている。そんな湯玄の声を背に凪は部屋を飛び出した。
「んー、もう少しだけ寝かせてくれ」
「駄目だよ。最近いつも寝坊しているじゃないか? 早く布団から出て! みんなもう福寿村に向かう準備をしてるとこだよ」
皆が一生懸命働いている時間にも関わらず、未だ布団に包まっている湯玄の体を揺すって起こす。湯玄は昨夜遅くまで、湯花神社と湯福神社の様子を見に行っていたようで、疲れているのはわかっているのだが……。
もう朝日は高い所まで昇っている。本当に寝坊助だなぁ……と湯玄の寝顔を見て愛しさが込み上げてきてしまった。
「わッ!」
凪が湯玄に見とれていると、突然腕を引かれ布団の中に引き込まれてしまう。文句を言おうとしたが、湯玄に唇を奪われてしまい、それは叶わなかった。体格のいい湯玄に、凪は簡単に動きを封じられてしまう。
湯玄に力で敵うはずなんてない……諦めた凪は、素直に湯玄の口付けを受け止めた。
「ん、んッ、はぁ……」
「ふふっ。凪よ、今日はいやに色っぽいではないか? 私を誘っているのか?」
「そんなわけないだろう⁉ みんなもう福寿村に出掛けようとしているんだから、いい加減湯玄様も起きろよな!」
湯玄に向かい拳を振り上げたが、簡単にかわされてしまう。
「其方は本当に可愛らしい」
湯玄が口の端を吊り上げて笑った。
「それより、凪はなぜ湯庵を椿屋に連れて帰ったんだ? あんな奴、放っておけばよかったものを……」
「あぁ。だって湯庵様も大怪我をしてたから。きっと義盛様のお酒を飲めば、傷が治るだろうと思ったんだ」
「だが、あいつは私の凪に酷いことしようとしたのだ。許せるわけがないだろう?」
不満そうに顔を顰める湯玄の髪を、優しく梳いてやる。湯玄は本気で湯庵のことを憎んでいるわけではない。凪を傷つけたことを怒っているだけなのだ。
「湯玄様、湯庵様は決して悪い神様じゃない。ただ、福寿村を復興したかっただけなんだよ。その思いが痛いくらいわかるんだ。俺も、ずっと湯滝村が、また昔のように賑わいますようにって祈って生きてきたから」
「……そうか。其方がそう言うならそれでいい。これ以上は何も言うことはない」
拗ねた子供のように鼻を鳴らす湯玄は、とても可愛らしい。
凪が湯玄の頬を優しく撫でようとした時、下半身のほうに違和感を覚えて凪は体を強張らせた。
「しかし、其方が他の男の話をするのはやはり面白くない」
「ちょ、ちょっと、湯玄様! どこ触ってるんだよ⁉」
「婚礼の前にちょっと味見を……」
「ヤダ、ちょっと待って湯玄様! もう、本当に勘弁して……!」
「何を今更。抱いてもいいと言っていたのは其方だぞ?」
「でも、でも……‼ 駄目だって⁉」
着物の裾を割って侵入してくる湯玄の手を感じた凪は、思い切りその体を突き放した。
危うく流されるところだった……心臓がうるさいくらい早鐘を打ち、頬に熱が籠り熱くて仕方がない。凪は肩で息をしながら湯玄を睨みつけた。
「何すんだよ、この助平神が! 湯の神の花嫁になるには、清らかな体でいなければならないんだ! そんなことくらい知ってるだろう⁉」
「ケチくさいことを言うな。その湯の神が其方の体を所望しているのだぞ?」
「もう、うるさいなぁ! 湯玄様、いいからいい加減店に出て来て! 宿泊客も来る頃だし。みんな福寿村に行っちゃうから神様不足なんだよ」
「やれやれ。私をこんなにもこき使うのは、其方くらいのものだぞ?」
顔を真っ赤にしながら、なんとか布団から逃げ出す凪を見て、湯玄が声を出して笑っている。そんな湯玄の声を背に凪は部屋を飛び出した。
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