勇者?いいえ、聖・魔剣使いです。〈 聖・魔剣使いの英雄談〉

カザミドリ

文字の大きさ
41 / 84
4章ルクレア法国侵入編

3.暇

しおりを挟む
翌日、また吟遊詩人が来ていないかと思い澪達と広場に来ていた。

残念ながら吟遊詩人は居なかったが、噴水には人だかりができており近づいて見ることに。

「あ、昨日の兄ちゃん!」

人だかりの中には昨日の少年が居り、俺を見つけて声を上げる。

「昨日の少年か、これは何の集まりだ?」

「失礼します、ひょっとして昨日この子にお金を下さった方ですか?」

「うん?そうだが貴方は?」

「オレが住んでる教会のシスターだよ!」

「お前孤児だったのか?」

「うん、父ちゃんと母ちゃんは魔王に……」

「そうか」

「でも、シスターが居るから平気だぜ!それにいつまでも泣いてたらカッコ悪いからな!」

「そうだな」

「もう、さっきから聞いていれば失礼でしょ、コニ!」

「う、ごめんなさいシスター」

「申し訳ありません」

「いや、気にしないでいい、で、この集まりは?」

「あ、はい、どうにかして広場の噴水を直せないかと……」

「噴水を?」

「この噴水は、魔宝石で動くんですが、以前まであった魔宝石は魔王に奪われてしまい、新しい魔宝石を用意したのですがその石には魔力がなく……」

「魔法を使えるシスターに魔力を入れてもらおうとしたんだ!」

「しかし、わたしは水の魔法が苦手で……」

「なら、澪やってあげたら?」

「うーん、でも確か魔宝石に魔力を入れるのってかなり難しいんじゃ?」

「あー、すまない、ちょっといいか?」

「誰だ?」

「この近辺の復興を任されてる、大工のクマゴロウだ」

「クマゴロウか、いい名前だな」

「ぶふっ!」

「鈴、笑ったら失礼だよ?」

「いや、だって、熊に似てるおじさんの名前がクマゴロウって、ぶふふっ、ご、ごめん」

「どうした?」

「いや、何でもない気にするな、で、大工が何のようだ?」

「ああ、できそうなら、一度魔宝石に魔力を流してみてくれないか?実は冒険者に頼もうかと思ったんだができなくなってな」

「それはなぜだ?」

「何でも、復興の資金が尽きかけているらしく、そんな事に使う余裕は無いと言われてな」

やっぱりか、澪達の視線が刺さる。

ナビさん、魔宝石に魔力を入れるのって大変なの?

〈常人には難しいものです〉

なら、俺には?

〈私がサポート致しますので、難はないと思われます〉

じゃあよろしく!

「大工のおっさん、俺がやってみていいか?」

「いいが、お前さん魔法使いなのか?」

「いや、ただの元冒険者さ」

「おいおい、大丈夫なのかよ」

周りからも不安の声が聞こえるが気にせず魔宝石に近づく。

〈ではマスター、魔宝石に手を置いてください〉

了解

魔宝石に手を置くと淡く光出す。

〈魔宝石がマスターの魔力を関知している証拠です、では、ゆっくり魔力を流してください、この時に……〉

よし、魔力を流せばいいんだな!

〈いけませんマスター、魔力が強すぎます!〉

へ?

ブシュゥゥ!

結果、水は出るようになったが、噴水などと言う穏やかなものではなく、間欠泉と言った方がしっくりくる水柱が立っていた。

どうしてこうなった?

〈……魔宝石に魔力を流す際強すぎると、魔力が飽和状態になり、入りきらなかった魔力が溢れ出してしまいますと、お伝えしている途中でマスターがとんでもない強さの魔力を流したからです〉

ごめんなさい……これ、いつになったら収まりますか?

〈恐らく、二、三日掛かります〉

……マジか、二、三日このままか。

水柱は目立つらしく、周りにはどんどん人が集まり、元々居た皆は余りの出来事にあんぐりと空いた口が塞がらない様子だ。

「これは、いったいどうゆうことだ!」

水柱が見えたからかダイアがやってくる。

「皇帝陛下!」

「挨拶はいい、説明しろ!」

「ハッ!噴水を直そうと、そちらの者に魔宝石に魔力を流させたら、ご覧の有り様に……」

「また、お前の仕業か、明!」

「わざとじゃないぞ!」

「皇帝陛下、お知り合いで?」

「何を言ってるこの国を救った張本人だぞ?」

「な、この方が、も、申し訳ありません、そんな方とは露知らず……」

「いや、こちらこそすまない、こんな大惨事になるとは……」

現在周囲は水浸し、これでは復興どころではない。

「まったく、いくら問題を起こせば気がすむんだ?」

「わざとじゃないと言ってるだろ!」

「結果、復興の妨げになってるだろ!支援を頼んだのに妨害してどうするんだ!?」

「そ、それは……」

今回は反論の余地がない。

「お前はしばらく城で謹慎してもらう!」

「な、しかし……」

「問答無用!これ以上問題を起こされては困るのだ!」

「くっ、了解した」

「すごいねダイア様、明くんにあんなに言えるの」

「いや、多分テンパリ過ぎて自分の言ってる事理解できてないと思う、あとで思い出して戦慄するやつだね」

こうして、謹慎処分が決まった。


翌日、俺は城で謹慎していた、ぶっちゃけ暇である。

「はぁ、暇だ」

「仕方ないですよ、騒ぎを起こしてしまったんですから」

「起こしたくて起こした訳じゃない…」

監視?として、エレナ姫とクロエが部屋にいるが、やることもないので、ただ、ただ暇だ。

「とゆーかこれ、監視の意味をなしてないよな?」

「ほえ?」

「いや、だってエレナ姫で俺を止められると思うか?」

「ク、クロエもいるじゃないですか!」

「わたくしは明様の御心のままに」

「……な?」

「………」

「明様一つご提案が」

「ん?なんだ?」

「いざというときは、エレナ様を人質に取るのが得策かと」

「なんてこというんですか!」

「なるほど、そうゆう手もあるな」

「感心しないで下さい!」

「冗談はさておき、ふぁ~、暇だな~」

「本当に冗談ですよね?」

「では、暇潰しをさせましょう、明様手を二回叩いてください」

「ん?こうか?」

パン、パン!
ザザザッ!

『お呼びですか、明様!』

手を叩くと、見馴れない人影が五人何処からともなく現れた。
誰!?
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双

四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。 「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。 教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。 友達もなく、未来への希望もない。 そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。 突如として芽生えた“成長システム”。 努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。 筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。 昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。 「なんであいつが……?」 「昨日まで笑いものだったはずだろ!」 周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。 陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。 だが、これはただのサクセスストーリーではない。 嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。 陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。 「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」 かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。 最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。 物語は、まだ始まったばかりだ。

処理中です...