勇者?いいえ、聖・魔剣使いです。〈 聖・魔剣使いの英雄談〉

カザミドリ

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第6章エルフの森

1.獣人族の引っ越し(準備)

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魔王・デスが居なくなってから早一時間、まだダウンロードは終わってなかった。

「長いな」

「そうだね、電波悪いのかな?」

「いや、澪?電波ってそもそもどこから受信してるの?」

ダウンロードするからには発信元があるはず、しかし、ここは異世界。

「うーん、強いて言うなら俺から受信してることになるのか?」

「え!?明くんパソコンだったの!?」

「いや、違うけど」

「本当に?良かった、さすがに私でもパソコンとは子づく……」

「ところで、この後獣人の村に戻るがミーアはそれでいいか?」

澪が久しぶりにあれな発言をするので、言い終わる前に被せる、こうゆうので平和を実感するのは如何なものか。

「村に帰るのは思うところはあります、ですがこの身は明様に捧げていますので、異論はありません」

「あ、そう、あまり気負わないようにな?」

「はい、ありがとうございます!」

あー、やっぱりミーアを置いていけないだろうか?

「それにしても遅いわね!」

鈴が我慢の限界が来たらしく、ホムンクルスの瞳を再度覗こうとしたとき急に頭が持ち上がった。

「うひゃあ!びっくりした!」

鈴が驚いて飛び退く、ホムンクルスはしばらく目を開けず首をかくかく動かしていた。

〈マスターお待たせしました、これよりナビゲーションシステム再開します〉

瞼を開けるとそこにはエメラルド色の瞳があった、髪は黒のロングヘアー、全体的に人形ぽさをのぞかせている。

「声はいつも聞くナビさんの声なんだな」

〈はい、音声データもダウンロード済みです〉

「本当にアプリみたいだな」

ナビさんと話をしていると、困惑していた澪から質問がくる。

「明くんはこの人?の事知ってるの?」

「あー、そこら辺も話さないとな、まずは……」

〈マスター先に獣人の村に戻る事をおすすめいたします、話は落ち着きながらの方がよろしいかと〉

「それもそうだな」

鈴達特に澪の疑問に満ちた目はとりあえず置いておいて、先に村への報告を優先する、道中ミーアがぎこちないように見える。


「ご無事で何よりです工藤様」

「ただいま戻った」

村に戻るとエレナ姫とクロエ、そして村長が待っていた。

「ミーア……」

「村長……」

感動の再会か……。

「お帰り、あっちにスープがあるんで良かったらいただきなさい」

「はーい」

「あ、ちゃんと手を洗うんだよ?」

え?何この学校から帰って来たよ的な会話。

「ちょっと待て!」

『え?』

ミーアと村長が二人してきょとんとしている。

「感動の再会はどうした!?」

「感動?」

「そうだ、会うの久しぶりだろ?」

「ええ、一年ぶりに会いました」

「は?」

一年?割りと最近じゃん!?

「明様、確かにわたしは城に常駐を命令されていました」

「あ、ああ、だから会えないだろ?」

「しかし、一年に一回村に帰るように約束していたのです」

「そうだったのか」

「はい、でないと寂しいからとお爺様が」

「そのお爺様って……」

「こちらの村長です」

じいさん、魔王に頼むって何気に神経図太いな。

「デス様の前で皆が引くぐらい大泣きして、しまいには寝転がって駄々を……」

訂正、ダサいな。

「あの時は、若かったのぅ」

若いって問題じゃなくない?

「俺の感動返してもらっていい?」

目頭が熱くなって損した。



村入り口での一悶着後、村長宅にて腰を落ち着けて話をする事に。

「……なるほど、では工藤様はこれからエルフの森に?」

「ああ、そうゆう順番らしいからな」

「わかりました、では早馬でお母様にお伝えいたします」

「頼んだ」

「はい、ところでそちらの方は?」

そう言ってナビさんを見るエレナ姫、澪達も首を縦に振って、催促をする。

「こちらはホムンクルスだ、魔王・デスがいらないって言うんで貰って来た、中身はナビゲーションシステムと言って、今まで俺のサポートスキルとして助けてくれていた人(?)だ」

〈マスター、ここでご提案があります〉

「提案?」

〈はい、肉体を得ると言う悲願を達成しました〉

「肉体を得るって悲願だったんだ……」

〈はい、具体的には第1章4話33行目付近です〉

「いや、そこまで具体的に話すのはやめて貰っていいかな」

〈失礼しました、改めて悲願を達成した暁に、この身に名前を下さい〉

「じゃあナビさんで」

〈え?〉

ピシッと音が聞こえそうな程ナビさんの動きが止まる。

〈いえ、いえいえそうではなくマスター〉

「ナビさんで」

〈いえ、あの〉

「ナビさんで」

〈マスター……〉

「改めてナビさんだ」

今度は澪達に向かって紹介する様に言う、一連のやり取りを見ていた澪達は苦笑いである。

〈………ナビです〉

「あ、はい、よろしくお願いします」

「な、何て言うか、親しみやすい名前でいいと思いますよ」

「う、うむ、そうだな親しみやすさは大事だな」

「そ、そうだね、僕も大事だと思います、あの、ハンカチどうぞ」

どうやら無事打ち解けられたようで何よりだ。

〈まさか、肉体を得て初めて流す涙がマスターによる物とは〉

「人聞きの悪い事言うなよ、後とりあえず着替えたら?」

ナビさんの格好はデスの趣味なのか、薄手の白いワンピースのみである。

「クロエ、着替えを用意してやれ」

「畏まりました、ナビ様こちらへ」

クロエはナビさんを様付けなんだな。

数分後、着替えを済ませたナビさんとクロエが戻って来たが、あー、これはツッコまずにはいられないな。

〈ただいま戻りました、マスター〉

「うん、おかえり、で聞きたい事があるんだけど、なんでメイド服なの」

「ご説明いたしましょう!」

クロエが前に出る、なんでこんなにテンション高いの?

「聞けばナビ様は、明様がこの世界に下り立ってから仕えていたとか」

うん、仕えていたが正しいか分からないが、何せスキルだしな。

「そんなナビ様が着るものにメイド服以上の物はありません!」

「力説している所悪いけど、まったく分からん」

〈マスター〉

「うん?」

ナビさんの方を向くと、くるりと回って見せた。

〈どうでしょう?似合いますか?〉

「無表情じゃなけりゃな」

〈……解せません〉

やっぱりナビさんはナビさんでした。


「もういいや、とりあえずもういい、問題は……」

頭を抑えながらミーアの方を見る。

「ミーアさん?その格好は何かな?」

「はい、明様メイド服でございます」

「お前もか」

クロエにナビさんを頼んだ時、ちゃっかり着いていってたのは見えていたがやっぱりか。

「まぁ、いいそれももういい、が、村長はいいのか?」

「………」

「村長?」

「………」

「やばい!息してないぞ!」

「ぎゃー、心臓マッサージ!」

「あぁ、お爺様、ゆっくりお休みください」

「身内が一番諦めるの早い!?」


何とか村長の蘇生を試みる。

「ゴホァ!」

「良かった何とか戻って来た」

「おぉ、天使が、天使が下りましたじゃ」

「大丈夫だ、そんな奴いても俺が斬り倒す」

「お爺様大丈夫ですか?」

「お、おぉ、天使……」

「天使って自分のミーアの事かよ!?」

「そしてまた息を引き取った!?」

「いい加減にしろ!じじい!」

拳で村長の胸を殴打する。

「ゴホァ!」

大丈夫、歴とした蘇生術の一つだ、他意はない。


「いや、いや、ご迷惑をお掛けしました」

「あぁ、本当にな」

「お爺様が無事で何よりです」

「お前諦めてたろ、それで村長、あんたの孫はついてくる気みたいだけどいいのか?」

「はい、かわいい孫には旅をさせろと言いますし」

「微妙に違う気がするが」

「しかし、条件があります」

「嫌な予感がするが聞こう」

「週に一度帰って来て貰いたいのです」

「やっぱりか、それは無理だ、幾らなんでもそんな余裕ないだろ」

「では、だめですじゃ」

「そうですか、では仕方ありませんね」

お?以外とミーアはすんなり諦めるのか?そうか、クロエみたいになっていたのは一時的なものだったんだな、さすがにあんなの大量に居たら堪らないからな、当然か。

「お爺様、お命頂戴!」

「何でそうなる!?」

「障害を排除してでも貫きたいものがあるのです!例えそれが身内であっても!」

「かっこいいなおい、でも、そこまでのものじゃないからね?」

「くっくっく、お主にできるかな?」

「じいさんもかっこいいな」

そしてじいさん強!ミーアの割りと本気の拳を避けてる!?

〈村長はミーアの武術の師でもあるそうです〉

「あー、ミーアの戦い方ってなんかの拳法じみてるなと思ったけど、そうだったのか」

「それより、明!止めなさいよ」

「明様、ここはお任せください」

クロエが前に出る、クロエもそれなりに強いしこれで止まるだろう。

「ミーア、力添えします」

「ありがとうございます、クロエ先輩!」

違った、止まるのは村長の心臓の方だった。

「いつの間に先輩、後輩の関係に……」

〈先ほど、着替えの際に〉

「そんな短時間で、あそこまで連携のできる往年のダブルスみたいに成るものなの?」

〈それほどまでに深い絆が芽生えたのでしょう〉

「明くん、これどうするの?」

「もうほっとこう、俺達は先に引っ越しを手伝おう」

「いいの本当に?」

「なら、あの中に入りたいか鈴?」

現在三人は、拳と暗器の応酬をしている。

「うん、ほっとこう」

さあ、引っ越し、引っ越し。

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