勇者?いいえ、聖・魔剣使いです。〈 聖・魔剣使いの英雄談〉

カザミドリ

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第7章 聖・魔剣使い

1.勇者と魔王の秘密

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使えない聖魔剣についてはひとまず置いて、レプリカを探す事数分、瓦礫の中にようやく見つけた。

「おーい、あったぞ!」

見つけた事を知らせると、直ぐに皆が集まって来る。

「よっこらせ!おー、きれいに柄だけになったな、日野付きで……」

レプリカの刀身は砕け散り、柄だけになっていた、そしてそれを握り締めて離さない気絶している日野。

「直ぐにこの者を牢に入れなさい!」

リュエさんが兵士に指示を出す。

「……生きてたな」

「……生きてたね」

「う、うん、良かったね?」

「そ、そうだな?」

「……残念」

誰が何て言ったかは、読み手の想像に任せよう、ひとまずこれでこの騒動については決着した。

「さて、ようやく話を聞けるな」

「話し?」

「リュカ族長、聖魔剣について聞こうか?」

聖魔剣とは何なのか?使えない理由は?聖魔剣と魔王の関係は?など、質問は多々ある。

「その疑問には私達がお話致します」

リュカ族長が答えようとした時、後ろから声が上がる。その人物は………。


場所を移してエルフの里族長の家。

「さて、話を聞こうか?まず何故お前達がここにいる?」

「そうです!答えて下さい、お母様、お父様!」

俺達の前に現れたのはミレナ女王とグラン国王。

「百歩譲ってミレナ女王はいい、だが、グラン国王貴方は確か投獄されているはずでは?」

そう、グラン国王は以前、日野と結託して俺を奴隷扱いした罪でベアトリス城に投獄されたはずだった。

「その話についてまず私から謝罪をさせていただきます」

「謝罪?」

グラン国王は両膝と両手を地面に着く、土下座の体勢になり、グラン国王は。

「知らなかった事とはいえ、日野殿を聖魔剣使いと勘違いし、言いなりになり工藤様に酷い仕打ちをしました!お怒りはごもっともだと思いますが、どうか、私達の話を聞いてください!」

「………わかった話を聞こう、何故そこまで聖魔剣使いに拘るか知りたいしな」

司達を見ると皆も同じ考えのようだった。

グラン国王はポツリポツリと語り始めた。

「……私の本来の名、ミレナと結婚する前の名はグラン・ライ・グランツ、グランツ王国の末裔です」

「グランツ王国?」

エレナ姫を見るが首を振っている、どうやらエレナ姫も知らない事らしい。

「恐らくこの事を知っているのは、私とミレナ、そして、もう御二方だけでしょう」

「そのグランツ王国とは?」

「かつて初代勇者様を召喚した国です」

「初代勇者?それって百年前の?」

鈴が聞くが、グラン国王は首を振る。

「いいえ、初代勇者様は千年前に召喚されたのです」

「千年前……」

「私の知っている全てを話しましょう……」

ーーーーーそう、あれは若かりし頃、私が王女様に恋をしてしまった十代……。

ん?おい、ちょっと?

ーーーーー私は、不敬だと分かりつつ、その気持ちを抑える事が出来なかったのです。

いや、あのな?

ーーーーーもちろん親類縁者からは止められました、しかし、私は想いを綴った手紙を出したのでした。

あー、ダメだ、モノローグに入ってしまった。

それから二時間、俺達は大して興味のわかないグラン国王とミレナ女王のラブロマンスを聞かされた。

だが、この中にも重要そうな話があったのでまとめとく。

一つ、グランツ王国は千年前に初めて勇者を召喚した。

二つ、勇者を召喚した目的は突然現れた魔王に対抗するため。

三つ、勇者は魔王を倒せなかった。

四つ、勇者のその後には秘密があり、その秘密を代々、守って来たのがグラン国王の家系。

「で、結局の所その秘密ってなんなのよ?」

鈴が若干イライラしつつ聞く。

「その前に聞かなきゃいけない事がある……」

「なによ明?」

「悪いな鈴、俺も早く結論を出したいんだが、どうしても聞かなきゃいけないんだ………」

「………」

鈴が俺のただならぬ雰囲気に息を飲む、それは鈴以外もそうだった。

「グラン国王、何故今まで黙っていた?」

「…………」

「これから先の話はできれば外れて欲しかった予想の話だ、だが、納得できない事がある、お前達は知っておきながら、何故黙っていた!」

「ちょ、明!どうしたのよ!?」

「そうだよ明くん、一回落ち着いて……」

「ちょっと黙っててくれ!!」

『ッ!?』

珍しい俺の剣幕に、全員が驚く。

「………工藤様は、お気づきなのですね?」

「ああ、残念な事に優秀な情報源があるんでな」

全てナビさんと俺の最悪の推測だったがな。

「左様ですか、では、工藤様の質問に御答えしましょう………世界を護る為です」

「ふ、ふざけるな!その為なら異世界人何て、何人犠牲にしても構わないって言うのか!?」

グラン国王の胸ぐらを掴み上げる。

「落ち着け明!」

「そうよ、犠牲って何?あんたは何を知ってるの!?」

司と敦に抑えられ、鈴に説明を求められる。

「その責任は私が果たすべきですね」

口を開いたのはミレナ女王。

「今さら、責任など……」

「いいえ、私の責任です、そして罪です」

「お母様?」

「魔王と勇者の関係についてお話し致します」

ミレナ女王の声は不思議とよく聞こえた、まるで透き通るように。

「今、皆様が戦っている、魔王・デスは、百年前の勇者様です」

「百年前の……?」

「魔王とは肉体の有る者ではなく、一つの思念体です」

「………」

「その思念体は何処から来たのかは定かではありませんが、代々勇者の身体を依り代に生き永らえています」

「ちょ、ちょっと待ってよ……」

「魔王の思念体は一度依り代を乗り換えると、本来の力を取り戻すのに、およそ百年の年月が必要な事が分かっています」

「ね、ねぇ……」

「故に百年毎に勇者を呼び……」

「ねぇってば!!」

鈴の声に場が静まり返る。

「な、何言ってるか、わかんない、どうゆう事?依り代?じゃあ、あたし達は……」

「聞いての通りだ、こいつらは百年毎に俺達の世界から人を呼び、その度に犠牲にして来た、そして今度は俺達が新しい魔王に成るために呼ばれた生け贄だ……」

「そ、そんな……」

「鈴!?」

崩れ落ちる鈴と駆け寄る敦。

「…………」

司も力なく項垂れる。

「あ、明くん、本当なの?」

澪が覇気無く訪ねてくる。

「ああ、残念ながらな」

「工藤様は気付いておられたのですか?」

エレナ姫に聞かれる。

「………最初は違和感だった、余りにも勇者の情報が少なかったからな、意図的に隠されていたんだろうと思った」

「…………」

「次に気になったのは、ゴーストに会った時だ、どう考えても異世界人だった奴が、いつ来たのか、その答えに行き着いたのがデスに会った時だ、彼らは魔王を倒したはずの前の勇者、ここまで来たら大体の予想は着いたよ、だが、信じたくは無かったな………」

「…………」

再び静寂が包み込む中ようやく声を上げたのは鈴だった。

「………ねぇ、あたし達はこれからどうすればいいの?」

「………もちろん魔王倒す」

鈴に答える、その言葉に全員がぎょっとする。

「は、はぁ!?あんた何言ってるか分かってんの!?倒したら魔王になるんだよ!?みんなと帰れなくなるんだよ!?一緒に、居れなくなるんだよ!?」

「倒しても、倒さなくても、どのみち帰れないさ……」

「な、何言って……」

「ああ、間違った、直ぐには帰れないだな?」

ミレナ女王見て言う。

「………はい、その通りです」

「……お母様?どうゆう事ですか?魔王を倒せば皆さんは帰れるって……」

「………帰還方法は現状判りません」

「そ、そんな……」

「なんでよ!?」

ミレナ女王に掴み掛かる鈴。

「帰った人間が居ないからさ……」

「ッ!あんた知ってたの!?」

「落ち着け、今の話をまとめた結果だ」

召喚された勇者はもれなく魔王になったんだ、なら、帰った勇者なんて居る筈はない。

「正直それなら、それでいい、知ってそうな奴に聞くだけだからな」

「………知ってそうな奴?」

「俺は会った事ないが、澪達は会った事有るだろ?」

上を指さしながら言う。

「女神様?」

「そうだ、まぁ、そこにたどり着くのも大変だろうが、諦めるよりはいい、今はそれよりも魔王を倒す事を考えるべきだな」

「だから、それは!」

鈴の言葉を手で制止、グラン国王に向く。

「知っているんだろ?倒し方を」

グラン国王はゆっくり俺を見返す。

「………はい、魔王・デスより聞き及んでいます」

グラン国王は、はっきりと答えた、魔王を倒せると。

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