勇者?いいえ、聖・魔剣使いです。〈 聖・魔剣使いの英雄談〉

カザミドリ

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第6章エルフの森

13.使えない聖魔剣

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「間もなく結界が解けます、弓兵用意!」

『おぉ!』

リュエさんの掛け声に一糸乱れることなく、兵士が弓を構える。

「……放て!」

矢がアンデッドに当たると爆発を起こし、周囲諸とも薙ぎ倒す。

「続いて槍兵、前へ!」

『エイ!エイ!エイ!』

掛け声に合わせて槍が振られる、槍には聖属性の魔法が付与されている。

「ほぅ、これが本来のエルフの戦い方か?」

俺は隣に居るエルフ族の族長を見下ろしながら訪ねる。

「はははは、その通り、我らエルフ族は狩猟と魔法の種族、その二つを遺憾なく発揮した戦い方が得意なのです!」

リュカ族長が誇らしげに言う。

「確かに凄いな、どんどんアンデッドを押し込んで行くし」

「はっはっは、そうでしょう、そうでしょう!」

「ところでリュカ族長?」

「はい、何ですかな?」

俺はリュカ族長の足の下を指差す。

「……それ、痛くないのか?」

リュカ族長は洗濯板の上に正座させられている、所謂お仕置き中だ。

「はっはっは、愛があるから痛くありません!」

いや、さっきから大きな声で笑ってるのは、痛いからだよね?

「愛があると痛くないの!?明くん私達も…」

「やらねぇよ?」

………ふと思う、澪はどちらになるつもりか、………どちらもイケそうだな。

「と言うか澪、あれに愛はないと思うぞ?」

「はっはっは、何を言っています、工藤様」

「嫌だってな?」

リュエさんは全体に指示を出した後、リュカ族長に対して、『貴方は邪魔にならないようここに座って居て下さい』と言って、座ったリュカ族長の上に重石を乗せる念の入りようだ。

「………愛、有ると思うか?」

「…………」

その場に居る全員が首を横に振る始末。


さて、リュカ族長の始末は置いといて、どうやら戦況はこちらに大きく傾いた様子、元々傾いていたが、エルフ達の統率が取れて更に有利になったので当然と言えば当然なんだがね。

「そろそろ、日野が見えてくるかな……」

日野を見つけた、見つけたんだが………。

「どうしたの明くん?」

「……いや、えっと、あそこに居るのって日野か?」

「え?えっと、た、たぶん………」

「ねぇ、あれって……」

日野は居た、居たんだが、なんと言うか、形容しずらい、あえて言うなら、閣下になっていた。

「なんで?」

〈恐らく、聖魔剣の影響と思われます〉

「え!?何、聖魔剣ってそうゆう物なの!?使ったら閣下になるの!?」

〈いえ、魔に落ちた結果かと……〉

魔に落ちたら閣下になるらしい、聖魔剣使いたくなくなって来たんだけど。

「工藤さん、そろそろ出番です」

そんなこちらの気も知らず、リュエさんが呼びに来る。

「リュエさん、本当に聖魔剣を使わないとダメなのか?」

「はい、レプリカを壊せるのは、本物の聖魔剣のみです」

はぁ、仕方ない、閣下に生らないように気を付けよう。


さて、いざ戦おうとするとどうするか悩む、うーん、アンデッドの中を突っ切るべきか?

「クックック、やはり居たな、工藤 明!」

あっちから来た、見た目だけならラスボスっぽい噛ませ犬。

「誰が噛ませ犬だ!」

「あ、声に出てたか」

「ふん、余裕でいられるのも今のうちだ!見よ!我が力を!」

口調も完全にそっち系になっている、聖魔剣に飲まれてるな。

日野から黒いモヤが吹き出る、何あれ?なんかばちぃモノっぽいんだけど?

なるべく触れないようにしながら下がる、すると触れたアンデッドが日野に吸収されていく。

「全体下がりなさい!霧に触れてはいけません!下がりなさい!」

リュエさんも慌ててエルフ達を下げさせる、が、一人だけ遅れた者が居た。

「え!?え?何、下がるの?」

鈴である。

「鈴!そのモヤに触っちゃダメ!」

「ええぇ!?そんな急に言われても!」

そうこうしてる間に鈴がモヤに包まれる、
ああ、いつもちゃんと指示を聞いてないから。

「さようなら鈴、君の事は忘れない、どうか日野と共に安らかに……」

「勝手に殺すな!」

鈴がモヤから勢いよく飛び出してくる。

「なんだ、生きてたのか?」

「当たり前でしょ!?てゆーか、このモヤモヤ触っても何も起きないわよ?」

鈴に言われ、手をモヤに入れてみる、確かに何も起きない。

〈どうやらアンデッドのみを吸収するようです〉

「いつからアンデッドマニアになったんだ」

呆れているといつの間にか隣に来ていた、リュリが。

「生きている者にモテないからじゃないですか?」

辛辣!?エルフの姫辛辣過ぎるよ!しかもいい笑顔で!あと、そこの人間の姫!何頷いてんだ!?最初の頃、あんたあれにべたべただったからな!?

「フハハハ!さぁ、我の力を受けてみるがいい!」

「おい、その笑い方やめろ、いろいろまずいから」

振り下ろされるレプリカの聖魔剣を聖魔剣で受けつつ、日野に注意する、いや、本当マジで。

その後何度か打ち合いをするが……。

んー?頃合いを見て後ろに飛び退く。

「なぁ、リュエさん?何か、普通の聖剣の方が強そうなんだけど?」

「お、おかしいですね?聖魔剣がこんなはずは……」

「ごちゃごちゃ何を話してる!?」

はぁ、こいつは待てもできないのか?

若干呆れつつ振り向こうとしたら。

「明くん!危ない!」

ちょうど同じようなタイミングで澪が飛び出してきた、澪の手が聖魔剣に触れると。

ドオォォン!

聖魔剣が一瞬輝いたと思ったら、日野が吹き飛ばされていた。

「何今の?」

「え?え?」

「こ、これは、聖魔剣の力です」

澪が驚いていたが、リュエさんの言葉を聞くと喜び出す。

「きっと、私と明くんの愛の力だよ!」

「………」

「あ、明くん?」

「ん?いや、その可能性もあるかなと」

「明くんがデレた!?」

キャーキャーと喜び出す澪。

「デレてない、とりあえず試しに澪、聖魔剣持ってみて」

「うん、って、んー!持ち上がらない!」

俺が手を離すと、澪は急に重くなった様に持てなくなった。

「やっぱり無理か、じゃあ次は一緒に持つか」

澪と二人で持ち上げる。

「いいか?せーので縦に振るぞ」

「う、うん」

『せーの!』

ブン!

………何も起きなかった。

「あれー?」

「……どうゆう事だ?まさか一回しか使えないとか?」

「いえ、そんなはずは……」

「おい、リミア、何か知らないのか?」

一応魔王のリミアにも聞いてみる。

「ふっふっふ、知らない!…あ、痛い!?」

無駄に溜めたのがうざかったのでゲンコツしとく。

「………仕方ない、今は保留にして、ぶっ飛ばした日野を探そう」

レプリカの聖魔剣も探さないといけないしな、まさか、聖魔剣が使えない剣だなんて。
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